魔法少女ばあやの日常
夜になってから、ぺぺが戻ってきました。開けておいた窓から飛び込んで、窓際に置いてあるぺぺ用のベッドに座ります。
どれだけ大冒険したのか、葉っぱだらけ。葉っぱを取って毛並みをブラッシングしてあげます。
「それで、どうだったのぺぺ。ルークはなぜわたしを邪魔者扱いするようなまねを?」
「それが〜、『自分で会いに来ることができたら教えてやる。俺はわかったんだから、そちらがわからないのは対等じゃない』って」
「なんなんです、それ?」
ルークの言い分は、まるで10代の子どもがするケンカのようです。
「ミラ自身が変身していないルークを見つけて聞かなきゃだめって言ったでし。それまではミラより先に魔物と戦うし、ミラの出番はないと。だからぺぺは誰がルークなのか知っていても言えないのでし」
「……そう」
持っているヒントを再度頭の中で検証すると
ルークに初めて会った日の朝、ノノらしき生き物が城の中を逃げ回っていた。
その後すぐ、魔物と戦うルークの肩に乗っているのを見た。
この事から、ルークはバルログ城内の人間だと考えられます。
そして“魔法の力が強い……若い頃の自分に戻る”とぺぺが普段から言っているので、黒髪の男性。
そしてルークとわたし・ソフィア組ではもっとも違う点がある。
魔物をあしらうルークの動きには一切無駄がなく、普段から戦いに慣れた人のものでした。
騎士団に黒髪の男性はいくらでもいますが、魔法少女のわたしをひと目見てエデルミラだと当てた人間。
ぺぺはあたりともハズレとも言いません。そこまでルークに言われているんでしょう。
「まさか」
たった一人だけ、思い当たる人がいます。
ブランケットをはおり、使用人寮を出るとまっすぐ剣術の修練場に向かいました。
途中、夜間警備している騎士が何人かいましたが、長年城務めしているのでみんな顔見知り。
特に警戒されることもなく入ることができました。
若いメイドたちが騎士の打ち合いを見学してキャーキャー言っているので、見物客が一人増えたところでどうとも思わないでしょう。
壁際に座って休憩している騎士の1人に尋ねます。
「騎士団長ーールーカスは今こちらにいるかしら。急ぎ確認したいことがあるのだけど」
「やーやー、これはエデルミラさん。あなたも訓練の見学すか。珍しいっすね。僕の勇姿を見るなら〜、あと10分待ってもらわないと」
「……話を聞いていなかったの? ルーカスに話があるの」
人選ミスだったかしら。やけにお調子者。これがメイドならお説教の一つでもしたくなる。
「あ、すんません。団長はほら、奥の方で新入りたちに騎馬の乗り方を教えてます」
指差す先、騎士団厩舎の前にルーカスの姿が見えました。
「何があっても手綱は離すなよ。振り落とされたら命に関わるからな」
「はい!」
厩舎に向かって足を踏み出しながら、わたしは思い出していた。
ルークはベールマスクで口元を隠していたけれど、あの射るような緑の眼光は、ルーカスそのもの。
そして55年前、バルログ城に来たばかりの頃。ルーカスに憧れているのだと言った同期の子に引きずられるようにして訓練の見学に何度か来た。
荒削りな剣術を先輩に指摘されて、必死に剣を習っていた。当時騎士見習いでも最年少の17歳。
今では年齢を重ねてシルバーグレイになったけれど、少年の頃のルーカスは、名馬も悔しがると言われるほど見事な黒髪だった。
どれだけ大冒険したのか、葉っぱだらけ。葉っぱを取って毛並みをブラッシングしてあげます。
「それで、どうだったのぺぺ。ルークはなぜわたしを邪魔者扱いするようなまねを?」
「それが〜、『自分で会いに来ることができたら教えてやる。俺はわかったんだから、そちらがわからないのは対等じゃない』って」
「なんなんです、それ?」
ルークの言い分は、まるで10代の子どもがするケンカのようです。
「ミラ自身が変身していないルークを見つけて聞かなきゃだめって言ったでし。それまではミラより先に魔物と戦うし、ミラの出番はないと。だからぺぺは誰がルークなのか知っていても言えないのでし」
「……そう」
持っているヒントを再度頭の中で検証すると
ルークに初めて会った日の朝、ノノらしき生き物が城の中を逃げ回っていた。
その後すぐ、魔物と戦うルークの肩に乗っているのを見た。
この事から、ルークはバルログ城内の人間だと考えられます。
そして“魔法の力が強い……若い頃の自分に戻る”とぺぺが普段から言っているので、黒髪の男性。
そしてルークとわたし・ソフィア組ではもっとも違う点がある。
魔物をあしらうルークの動きには一切無駄がなく、普段から戦いに慣れた人のものでした。
騎士団に黒髪の男性はいくらでもいますが、魔法少女のわたしをひと目見てエデルミラだと当てた人間。
ぺぺはあたりともハズレとも言いません。そこまでルークに言われているんでしょう。
「まさか」
たった一人だけ、思い当たる人がいます。
ブランケットをはおり、使用人寮を出るとまっすぐ剣術の修練場に向かいました。
途中、夜間警備している騎士が何人かいましたが、長年城務めしているのでみんな顔見知り。
特に警戒されることもなく入ることができました。
若いメイドたちが騎士の打ち合いを見学してキャーキャー言っているので、見物客が一人増えたところでどうとも思わないでしょう。
壁際に座って休憩している騎士の1人に尋ねます。
「騎士団長ーールーカスは今こちらにいるかしら。急ぎ確認したいことがあるのだけど」
「やーやー、これはエデルミラさん。あなたも訓練の見学すか。珍しいっすね。僕の勇姿を見るなら〜、あと10分待ってもらわないと」
「……話を聞いていなかったの? ルーカスに話があるの」
人選ミスだったかしら。やけにお調子者。これがメイドならお説教の一つでもしたくなる。
「あ、すんません。団長はほら、奥の方で新入りたちに騎馬の乗り方を教えてます」
指差す先、騎士団厩舎の前にルーカスの姿が見えました。
「何があっても手綱は離すなよ。振り落とされたら命に関わるからな」
「はい!」
厩舎に向かって足を踏み出しながら、わたしは思い出していた。
ルークはベールマスクで口元を隠していたけれど、あの射るような緑の眼光は、ルーカスそのもの。
そして55年前、バルログ城に来たばかりの頃。ルーカスに憧れているのだと言った同期の子に引きずられるようにして訓練の見学に何度か来た。
荒削りな剣術を先輩に指摘されて、必死に剣を習っていた。当時騎士見習いでも最年少の17歳。
今では年齢を重ねてシルバーグレイになったけれど、少年の頃のルーカスは、名馬も悔しがると言われるほど見事な黒髪だった。