魔法少女ばあやの日常

「お姉様、今日の戦いは終わりました!」

 2日後。
 ぺぺが呼びに来たから出動したら、草原は平和そのもの。
 魔物の姿はどこにもなく、ソフィアがわたしに冒頭のセリフを告げました。

「え、えええ!?」

 これまでふたりがかりでなんとかしてきたのに、わたしが来る前に送還済み?
 困惑するしかありません。

「ルークさんが剣でバシッと魔物を叩いてくれたので、その隙にビューッと」

 身振り手振りで教えてくれるのですが、説明されてもまだ頭が追いつきません。

「と、とにかく、魔物送還に協力してくれてるってことはやっぱりルークは味方なのね」
「ええ。さっさと倒して何も言わず行っちゃいましたけど」

 話していると足元にちょこちょことノノが走ってきて、わたしの手に飛び乗りました。

「ミラ。ルークから伝言なの」
「はい? わたしに、ですか。さっきソフィアと会ったときに伝えればよかったのでは……?」

 まともに会話したこともないのに、会ったのは1度きりなのに、なぜわたしに。
 
 よくわからないまま、ノノの伝言を聞きます。

「『俺が全部片付けるからお前は来なくていい』ですの」
「はぁ!?」

 声を荒らげたのは、わたしではなくソフィア。

「お姉様に対してなんて言い草なの! あたし、いくら強い人だからってそういうの許せないわ!」
「お、落ち着いてソフィア。ノノ、どうしてルークはそんなことを? 理由を聞かせて。戦うなら、三人で力を合わせたほうがいいじゃない」

 両手を振り上げて怒り狂うソフィアをなだめつつ、ノノに聞きます。

「ノノにはわからないですの。ノノは言われたことをそのまま伝えただけですの」
「そう。なら、ノノ。ルークに伝えて。その話は聞けません、と。仲間と助け合うのは必要なことよ」
「わかったの!」

 ノノは私の手から飛び降りると、またトコトコ走って草むらに消えていきました。

「まったく。ルークさんは、お姉様に来るな! なんてどういうつもりなんでしょうね。強いのはわかりますけど、でもなんか納得いきません」
「ええ、本当に」

 ようやく落ち着きを取り戻したソフィアだけど、まだちょっと鼻息が荒め。

「ぺぺが聞いてくるでし。ぺぺは精霊だから、魔法の気配をたどればルークのところに行けるでし」
「なら、お願いするわ。今後も一緒に戦うことがあるでしょうから、来るなと言われたままではやりにくいですもの」
「任されたでし!」

 ぺぺは頼もしくもふもふの胸を叩いて、飛んでいきました。



image

image
13/27ページ
スキ