魔法少女ばあやの日常

「ノノはぺぺと同じ精霊なのでし。ノノが選んだからには、彼は魔法の才能がある人なのでし」

 ぺぺがわたしとソフィアに説明してくれます。

「ねーねー、ぺぺ。あたしとお姉様も、ルークさんみたいに攻撃系の力を得ることできるのかな。今のままじゃ、素早いやつとか力の強いやつに勝てないもの」
「コンジョーでシュギョーするしかないでし。コンジョーがあればなんとかなるでし」
「つまり、攻撃魔法覚えたいぞー! って心から思えば使えるようになるのね!」
「そうでし!」

 空を飛ぶのと同じでイマジネーション、根性論。
 伝説の魔法って、そんな感じでいいんですか。

 ツッコむのは無粋というやつでしょう。

「すみません。そろそろ変身が解けてしまいますので、わたしは仕事に戻ります」
「あ、そうだ。あたしもバイトの途中だったんだ。それじゃお姉様、また!」

 ソフィアに挨拶をし、ホウキに乗って城に戻ります。
 物陰に降りると同時に魔法が解けました。

「ふぅ。兵舎の倉庫を片付けないと」

 そういえばノノは城の厨房にいたんですよね。
 ということは、ルークは城内の誰か?
 剣術に秀でているようだから、騎士団の誰かかしら。

 そんなことを考えながら、倉庫の重い扉を引きます。


 ……汗臭い、埃臭い、かび臭いの三拍子が揃っていました。
 メイドの仕事は基本王族の方々が住まう区画や来賓棟の掃除と維持。

 兵舎の倉庫は騎士たちが自身で掃除をしているので、片付けとは名ばかりなのです。
 毎日訓練に使ってすぐ戻すからか、使用頻度の高いものはごちゃごちゃ詰め込まれ、それ以外のものは分類されず端っこに積まれています。

 うん。普段からきちんと整理したほうがいいと思います。

 とりあえず換気窓をあけて埃臭さとカビ臭さをどうにかしないと。何年開けていなかったのか、窓の取っ手は埃をかぶっています。

 ルーカス、もしかして助け船というだけでなく本当にここを掃除させたかったんですか。

 二時間かけて積もった埃を払い落としました。

 武具は重いので、私にはどうもできません。自分たちでどうにかしてもらいましょう。

「だいぶ片付いたな」
「ルーカス」

 ルーカスが倉庫に顔を覗かせました。

「ええ。見ての通り埃とカビだけはどうにかしたから、あとの整理整頓は自分たちでやってください」
「すまないな」

 ふいに、ルーカスがわたしの頬にハンカチをあてます。

「怪我をしている」
「え、あら。いつの間に」

 魔物との戦いで弾き飛ばされたときでしょう。若返るだけで無敵になるわけじゃないので、どうしたって怪我をしてしまいます。

「あまり無理をするな」
「それは無理な相談よ。ソフィア一人に任せるなんてできない。魔物が現れる限り私が行かないと」

 なら、とルーカスが言います。

「他に戦える者がいるなら、エデルミラが行かなくてもいいんだな」
「え?」

 どういう意味なのか聞き返す前に、ルーカスは足早に立ち去ってしまいました。


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