第1話 地獄大一番
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「ただいま戻りました」
2時間ほど仕事場を離れていた鬼灯が帰ってきたので、慌てて立ち上がってお茶を入れる。
「お疲れ様です。どちらへ?」
疲れたといわんばかりに椅子に腰かけると頬杖をつく鬼灯。鬼灯はここのところ毎日のように多忙であるので彼の顔に疲れが出るのも当然だ。
「天国と不喜処です。」
私の質問に答えると手元の書類を意味もなくパラパラとめくる。そんな彼の机の上に湯呑を差し出す。
「もしかして桃太郎御一行さんですか?」
「えぇ」
ずずっとお茶をすすって目を細めた。目の下に少しだけ隈が目立ってきた。少し痩せたようにも見える。彼の背後に回ると肩に手をかけた。そして肩甲骨の周りを重点的に親指を入れていく。
「どうでした?桃太郎さん」
「桃源郷で芝刈りですが、家業だったんで天職だそうです」
「なら、よかった。」
私はふふっと笑う。芝刈り違いには黙っておく。
「シロさん、柿助さん、ルリオさんもご活躍なさっているようですよ。」
「また会いに行かなきゃ。」
そう言って彼の肩から手を離すと、
「そうでした」
彼の手が伸びて私の腕をつかみグイと強引に引き寄せた。前のめりに倒れ、鬼灯の背中に全体重がかかる。
「手、大丈夫ですか。」
「え?」
ずっと握っていた右手の平をこじ開けられる。そこには刀を砕いたときの破片の傷跡が残っていた。痛々しいその傷は下手をすれば化膿するところであったが、いつか習った傷の手当法のおかげで割と早く皮膚が再生してくれている。
「あ、ばれてました」
「当たり前です。どうせあなたの事だから”まぁいいか”で終わらせていたんでしょ?」
手の平の傷をなぞられる。その指先の動きがくすぐったく、またどこかいやらしさを含んでたので振り払おうとするも無理矢理に抑え込まれてしまう。
「ええ、まあ手当もしましたしほぼ完治もしていますから…」
「そこを咎めているのではありません。こんな美しい手に傷をつけるなんて、どういう思考してるんですか。」
私の体を案じていることはよくわかった。たかが擦り傷切り傷でここまで怒られるとは予想していなかった。小さく肩をすくめた。
「以後気をつけます。」
「次、怪我したら、傷口舐めますからね。」
「絶対に死んでも怪我しない。」
彼の唇の間から先を尖らした真っ赤な舌がちらりと見える。その様はまさに蛇とでもいえる。
「そうだ、桃太郎さん。貴方の言葉に心救われたと言っていましたよ。何か言ったのですか?」
「え…何言ったんでしょう。忘れちゃいました。」
鬼灯から離れて、自分用にお茶を汲むと啜りながら首をかしげる。
「まあ、いいです。部下のメンタルケアも上司の務め。白鷺さんもこの仕事が板についてきましたね。」
鬼灯様にさりげなく褒められて、ほんの少し照れ隠しの笑みがこぼれる。
「はい。鬼灯様に御教授賜ったので。」
小さく彼に笑いかけると、鬼灯も少しだけ頬を緩めたように見えた。
「さあ、白鷺さん。仕事を終わらせますよ。」
「はい、鬼灯様!」
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2時間ほど仕事場を離れていた鬼灯が帰ってきたので、慌てて立ち上がってお茶を入れる。
「お疲れ様です。どちらへ?」
疲れたといわんばかりに椅子に腰かけると頬杖をつく鬼灯。鬼灯はここのところ毎日のように多忙であるので彼の顔に疲れが出るのも当然だ。
「天国と不喜処です。」
私の質問に答えると手元の書類を意味もなくパラパラとめくる。そんな彼の机の上に湯呑を差し出す。
「もしかして桃太郎御一行さんですか?」
「えぇ」
ずずっとお茶をすすって目を細めた。目の下に少しだけ隈が目立ってきた。少し痩せたようにも見える。彼の背後に回ると肩に手をかけた。そして肩甲骨の周りを重点的に親指を入れていく。
「どうでした?桃太郎さん」
「桃源郷で芝刈りですが、家業だったんで天職だそうです」
「なら、よかった。」
私はふふっと笑う。芝刈り違いには黙っておく。
「シロさん、柿助さん、ルリオさんもご活躍なさっているようですよ。」
「また会いに行かなきゃ。」
そう言って彼の肩から手を離すと、
「そうでした」
彼の手が伸びて私の腕をつかみグイと強引に引き寄せた。前のめりに倒れ、鬼灯の背中に全体重がかかる。
「手、大丈夫ですか。」
「え?」
ずっと握っていた右手の平をこじ開けられる。そこには刀を砕いたときの破片の傷跡が残っていた。痛々しいその傷は下手をすれば化膿するところであったが、いつか習った傷の手当法のおかげで割と早く皮膚が再生してくれている。
「あ、ばれてました」
「当たり前です。どうせあなたの事だから”まぁいいか”で終わらせていたんでしょ?」
手の平の傷をなぞられる。その指先の動きがくすぐったく、またどこかいやらしさを含んでたので振り払おうとするも無理矢理に抑え込まれてしまう。
「ええ、まあ手当もしましたしほぼ完治もしていますから…」
「そこを咎めているのではありません。こんな美しい手に傷をつけるなんて、どういう思考してるんですか。」
私の体を案じていることはよくわかった。たかが擦り傷切り傷でここまで怒られるとは予想していなかった。小さく肩をすくめた。
「以後気をつけます。」
「次、怪我したら、傷口舐めますからね。」
「絶対に死んでも怪我しない。」
彼の唇の間から先を尖らした真っ赤な舌がちらりと見える。その様はまさに蛇とでもいえる。
「そうだ、桃太郎さん。貴方の言葉に心救われたと言っていましたよ。何か言ったのですか?」
「え…何言ったんでしょう。忘れちゃいました。」
鬼灯から離れて、自分用にお茶を汲むと啜りながら首をかしげる。
「まあ、いいです。部下のメンタルケアも上司の務め。白鷺さんもこの仕事が板についてきましたね。」
鬼灯様にさりげなく褒められて、ほんの少し照れ隠しの笑みがこぼれる。
「はい。鬼灯様に御教授賜ったので。」
小さく彼に笑いかけると、鬼灯も少しだけ頬を緩めたように見えた。
「さあ、白鷺さん。仕事を終わらせますよ。」
「はい、鬼灯様!」
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