第1話 地獄大一番
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「我々は鬼ヶ島のゴロツキとは違い身を粉にして働いています。倒される筋合いはありません。それより貴方は定職に就かずにフラフラと…」
「チ…チクショウ、お母さん(お婆さん)かおのれは!」
地団太を踏んで桃太郎は怒りを露わにしている。正論をぶつけられて、自分の過ちを気付かれたくなくて怒る人間なんてこの世にはたくさんいる。
「もうホント…あな、この怒りぞはらさばやと思ひ候ふ!」
ただこんな怒り方をする人物は、今の現代にはこの人ただ一人だろう。とぼんやりしながら考える。
「怒り方がふるいよう」
「室町時代の人間だからなぁ」
相棒からの酷い言われようから、三匹が桃太郎にどのような感情を持っているのか一目でわかってしまう。
「殴る蹴るのタイマンはったろかァ!?」
「あッ殴る蹴るでいいならすぐに解消するのでありがたいです。」
「あ…イヤ…待って暴力はよくないよねッ…」
「地獄なので暴力で解決しましょうよ。」
怯えた表情の桃太郎を見て私はついに声を上げて笑ってしまった。端の方で作戦会議を開く様はどうにも英雄には見えない。
「白鷺さん」
「す…すいませっ…でも、おかしくて、おかしくて…」
何か必死になっている様がどうも私のツボであった。可愛らしさすら感じ始めてしまう。
この人はこの人で必死に今を生きている(死んでいるけど)のだと思うと無性に愛らしい気持ちになる。
作戦会議が終了した様子で犬が渋々と前に出てきた。
「ウ~~~自信ないなぁ…。えー…ん~と」
覚悟と決めたように顔を上げると犬は声を張り上げた。
「かっ…亀みたいなツリ目ッ!」
「ソフトバ○クのお父さん!」
鬼灯は一刀両断。
「それだけは言われたくなかった…。でも上戸彩なら娘に欲しい。」
「お嫁にかれましたよ。」
ガーーーン!
撃沈した犬。
「け…けど、真似したのはアッチですもんね!大丈夫、シロさん本家だよ!」
「はッ!敵に慰められたぁ!」
すかさずフォローした私もどうやら相手の傷口をえぐってしまったようだ。すいません、フォローが本職なもんで。
「クッ…クッソー、今のはヒドイッ」
「負け犬シロの仇ッ!我らが!」
負け犬、間違っちゃいないけれど、更に傷口をえぐったのはどうやら仲間のようだ。
「チームのブレーン、猿の柿助」
「ロケットランチャー、雉のルリオ」
飛び出してきたお供たち。
「白鷺さん」
「はい。柿助さん、貴方確か600年前カニの御一家から侵害罪で訴えられてますね。」
「謝りましたか?
雉は、思ったよりデカい鳥だなー以外は特にありません」
と次々に間を置かず言葉と言う武器で伐採していく。
「過去の…過去の過ちは許してくれ…」
「雉って…」
横たわる神獣たち。いや、これ本当に神獣なのか疑う。心折れるの早すぎるだろ。
「やっぱ鬼は強ぇよ…」
「無駄な喧嘩は売るもんじゃないね…」
「おのれ鬼めッ…所詮は血も涙もない奴よッ…桃太郎の剣術受けてみよ!」
同士を一匹残さず倒された桃太郎は、刀を取り出すと刃を鬼灯に向けた。
向かい合う鬼と桃。
それは蛇と蛙が睨み合うようなものだった。
つまり差がありすぎると言う事。
「あッ、」
鬼灯の金棒の一振りにより、桃太郎の刀は真っ二つ。
誰しもなんとなく予想はしていた落ちに見事に落ち着いたので一層のこと拍手を送りたい。
「イヤアアアァアァアア、おのれ鬼めぇええ!」
笑いがこらえられない私に桃太郎が割れた刃を向けた。
「なんか、こっちだったら勝てそうだ。」
勢いを込めて向ってくる桃太郎。
女だからという理由であろうか。長さもなく、折れた刀で何ができるというのか。
「あ、その人止めておいた方が良いですよ。」
鬼灯が忠告するが、桃太郎がその勢いを止めることなく突進してくる。やめとけと鬼灯は忠告したというのに、と無謀な彼にため息をつく。
まともに彼の刀を受けたとしても怪我をするだけだが、痛いのは嫌だ。
仕方がないというように向かってくる男をサラリと避ける。そして男の刀を峰の方から掴み、力を込める。そのまま根っこから、
――バキッ
手の中から刀の破片がパラパラと崩れ落ちる。
「見た目より馬鹿力ですよって遅かったですね。」
「ギャァアアアアアアアアアア」
すでに使い道のなくなった刀を手に悲鳴を上げる桃太郎。
「馬鹿力とは酷い言われようですね。というより、貴方に言われたくない。」
折れた刃をぽいっと地面に放ると手をパンパンっと打った。
力は馬鹿力であっても、皮膚は凡庸。流石に血が滲んだ。
「何で鬼ヶ島で勝てたんでしょう、この人。」
誰もが思っていたことを口に出す鬼灯。
「イヤァ、正直あの時鬼ベロッベロに酔ってて…」
「バラすな――」
「若さと勢いとビギナーズラックだよな……」
「そりゃ村のみんなは喜んでくれたし俺たちも誇らしかったけど、」
「その後自惚れちゃったよなぁ」
これがヒーローも末路なのかと、少し呆れてしまった。
そんな私の想いを知ってか、鬼灯は一歩前に出ると、なんのためらいもなくその下ぶくれの頬に一発張り手を食らわした。吹っ飛ぶ桃太郎の体。ほら、馬鹿力は貴方の方だ。
「貴方せっかく英雄として生きたのに死後こんなことをしてて……情けなくないですか?」
頬の痛みと正論を言われて桃太郎は瞳に涙を溜めた。
鬼灯の目は相変わらず亀のような釣り目であったが、その中にも優しさが混じっているような気がした。
「……そうだよ、桃太郎…」
犬がクウン…と鼻を鳴らした。
「もうやめようよ…プライド守るのに必死だったんでしょ?」
続いて雉がくちばしを動かす。
「俺も色々言ったけど本当はアンタが好きだから一緒に居るんだ。」
猿も隣で首を上下に動かす。そう、好きでなければ死後も一緒に居れるはずがない。なんだかんだと文句を言いながらも、彼の過去の姿は彼らの目にはとても美しく映っていたはずだ。
「過去の栄光にさぁ…いつまでもすがってちゃダメなんだよ…【桃太郎だから鬼に固執する】なんて間違ってる。」
じーんと目頭が熱くなる。これぞ友情。
桃太郎も顔を歪め涙を頬を伝わせた。
「あのよければ犬猿雉さんは不喜処地獄へ就職しませんか?」
「え、いいんですか!」
やはりそんな感動のシーンの余韻に浸るというツボは鬼灯にはないようだ。お供たちも彼らで余韻に浸るという感性がないようだ。
あまりにもあっさりとした幕引きに折角涙を流していた桃太郎もがっくりと肩を落とした。
そんな彼に私歩み寄ると、そっと彼に語りかけた。
「鬼と戦うことにアイデンティティを求めるなんて、間違ってはいませんか?貴方本来の自己存在意義が存在するはずですよ。それをこれからは探してみてはいかがでしょう。」
そう囁いて立ち上がると、それと行き違いになるように鬼灯はいつもの声色でこう告げる。
「貴方にもぜひ転職していただきたい就職口があります」
→後日談
「チ…チクショウ、お母さん(お婆さん)かおのれは!」
地団太を踏んで桃太郎は怒りを露わにしている。正論をぶつけられて、自分の過ちを気付かれたくなくて怒る人間なんてこの世にはたくさんいる。
「もうホント…あな、この怒りぞはらさばやと思ひ候ふ!」
ただこんな怒り方をする人物は、今の現代にはこの人ただ一人だろう。とぼんやりしながら考える。
「怒り方がふるいよう」
「室町時代の人間だからなぁ」
相棒からの酷い言われようから、三匹が桃太郎にどのような感情を持っているのか一目でわかってしまう。
「殴る蹴るのタイマンはったろかァ!?」
「あッ殴る蹴るでいいならすぐに解消するのでありがたいです。」
「あ…イヤ…待って暴力はよくないよねッ…」
「地獄なので暴力で解決しましょうよ。」
怯えた表情の桃太郎を見て私はついに声を上げて笑ってしまった。端の方で作戦会議を開く様はどうにも英雄には見えない。
「白鷺さん」
「す…すいませっ…でも、おかしくて、おかしくて…」
何か必死になっている様がどうも私のツボであった。可愛らしさすら感じ始めてしまう。
この人はこの人で必死に今を生きている(死んでいるけど)のだと思うと無性に愛らしい気持ちになる。
作戦会議が終了した様子で犬が渋々と前に出てきた。
「ウ~~~自信ないなぁ…。えー…ん~と」
覚悟と決めたように顔を上げると犬は声を張り上げた。
「かっ…亀みたいなツリ目ッ!」
「ソフトバ○クのお父さん!」
鬼灯は一刀両断。
「それだけは言われたくなかった…。でも上戸彩なら娘に欲しい。」
「お嫁にかれましたよ。」
ガーーーン!
撃沈した犬。
「け…けど、真似したのはアッチですもんね!大丈夫、シロさん本家だよ!」
「はッ!敵に慰められたぁ!」
すかさずフォローした私もどうやら相手の傷口をえぐってしまったようだ。すいません、フォローが本職なもんで。
「クッ…クッソー、今のはヒドイッ」
「負け犬シロの仇ッ!我らが!」
負け犬、間違っちゃいないけれど、更に傷口をえぐったのはどうやら仲間のようだ。
「チームのブレーン、猿の柿助」
「ロケットランチャー、雉のルリオ」
飛び出してきたお供たち。
「白鷺さん」
「はい。柿助さん、貴方確か600年前カニの御一家から侵害罪で訴えられてますね。」
「謝りましたか?
雉は、思ったよりデカい鳥だなー以外は特にありません」
と次々に間を置かず言葉と言う武器で伐採していく。
「過去の…過去の過ちは許してくれ…」
「雉って…」
横たわる神獣たち。いや、これ本当に神獣なのか疑う。心折れるの早すぎるだろ。
「やっぱ鬼は強ぇよ…」
「無駄な喧嘩は売るもんじゃないね…」
「おのれ鬼めッ…所詮は血も涙もない奴よッ…桃太郎の剣術受けてみよ!」
同士を一匹残さず倒された桃太郎は、刀を取り出すと刃を鬼灯に向けた。
向かい合う鬼と桃。
それは蛇と蛙が睨み合うようなものだった。
つまり差がありすぎると言う事。
「あッ、」
鬼灯の金棒の一振りにより、桃太郎の刀は真っ二つ。
誰しもなんとなく予想はしていた落ちに見事に落ち着いたので一層のこと拍手を送りたい。
「イヤアアアァアァアア、おのれ鬼めぇええ!」
笑いがこらえられない私に桃太郎が割れた刃を向けた。
「なんか、こっちだったら勝てそうだ。」
勢いを込めて向ってくる桃太郎。
女だからという理由であろうか。長さもなく、折れた刀で何ができるというのか。
「あ、その人止めておいた方が良いですよ。」
鬼灯が忠告するが、桃太郎がその勢いを止めることなく突進してくる。やめとけと鬼灯は忠告したというのに、と無謀な彼にため息をつく。
まともに彼の刀を受けたとしても怪我をするだけだが、痛いのは嫌だ。
仕方がないというように向かってくる男をサラリと避ける。そして男の刀を峰の方から掴み、力を込める。そのまま根っこから、
――バキッ
手の中から刀の破片がパラパラと崩れ落ちる。
「見た目より馬鹿力ですよって遅かったですね。」
「ギャァアアアアアアアアアア」
すでに使い道のなくなった刀を手に悲鳴を上げる桃太郎。
「馬鹿力とは酷い言われようですね。というより、貴方に言われたくない。」
折れた刃をぽいっと地面に放ると手をパンパンっと打った。
力は馬鹿力であっても、皮膚は凡庸。流石に血が滲んだ。
「何で鬼ヶ島で勝てたんでしょう、この人。」
誰もが思っていたことを口に出す鬼灯。
「イヤァ、正直あの時鬼ベロッベロに酔ってて…」
「バラすな――」
「若さと勢いとビギナーズラックだよな……」
「そりゃ村のみんなは喜んでくれたし俺たちも誇らしかったけど、」
「その後自惚れちゃったよなぁ」
これがヒーローも末路なのかと、少し呆れてしまった。
そんな私の想いを知ってか、鬼灯は一歩前に出ると、なんのためらいもなくその下ぶくれの頬に一発張り手を食らわした。吹っ飛ぶ桃太郎の体。ほら、馬鹿力は貴方の方だ。
「貴方せっかく英雄として生きたのに死後こんなことをしてて……情けなくないですか?」
頬の痛みと正論を言われて桃太郎は瞳に涙を溜めた。
鬼灯の目は相変わらず亀のような釣り目であったが、その中にも優しさが混じっているような気がした。
「……そうだよ、桃太郎…」
犬がクウン…と鼻を鳴らした。
「もうやめようよ…プライド守るのに必死だったんでしょ?」
続いて雉がくちばしを動かす。
「俺も色々言ったけど本当はアンタが好きだから一緒に居るんだ。」
猿も隣で首を上下に動かす。そう、好きでなければ死後も一緒に居れるはずがない。なんだかんだと文句を言いながらも、彼の過去の姿は彼らの目にはとても美しく映っていたはずだ。
「過去の栄光にさぁ…いつまでもすがってちゃダメなんだよ…【桃太郎だから鬼に固執する】なんて間違ってる。」
じーんと目頭が熱くなる。これぞ友情。
桃太郎も顔を歪め涙を頬を伝わせた。
「あのよければ犬猿雉さんは不喜処地獄へ就職しませんか?」
「え、いいんですか!」
やはりそんな感動のシーンの余韻に浸るというツボは鬼灯にはないようだ。お供たちも彼らで余韻に浸るという感性がないようだ。
あまりにもあっさりとした幕引きに折角涙を流していた桃太郎もがっくりと肩を落とした。
そんな彼に私歩み寄ると、そっと彼に語りかけた。
「鬼と戦うことにアイデンティティを求めるなんて、間違ってはいませんか?貴方本来の自己存在意義が存在するはずですよ。それをこれからは探してみてはいかがでしょう。」
そう囁いて立ち上がると、それと行き違いになるように鬼灯はいつもの声色でこう告げる。
「貴方にもぜひ転職していただきたい就職口があります」
→後日談