第10話 ニャパラッチ
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「頼んますって。そのご面相なら巻頭もイケますって。」
「貴方、いささかおべっかが過ぎますね。そもそも、ゴシップ誌はいかがわしい。信用できません。」
「そんニャ誤解っすよぉ~。我が「三途之川」はオシャレ青年誌!可愛いニャンコもニャンニャン満載!いかがわしくニャいです!」
「いかがわしく聞こえるのは私だけですか?」
いつものように多忙極めるある日の午後。閻魔庁ではなかなか見ない顔の人物…いや、動物が鬼灯の後を追っていた。
「鬼灯様」
ちょこまかと背後を追い回され、困り果てている様子の鬼灯を見かねて、思わず私は声をかけてしまった。
「あぁ、白鷺さん。この猫、なんとかしてください。」
心底嫌そうな顔をして足元に擦り寄るその猫を指差した。
「えっと…どなたですか?」
「人の名前聞く前に自分の名前を名乗るものじゃニャいんすか?」
上から目線の発言に思わず、ぶっ飛ばしてやりたいという悪い感情を抱く。しかし、そこは自分を落ち着け、お客様をもてなす淑女としてあることを自分に言い聞かせて、今にも飛び出しそうな右腕を抑えながら私はニコリと笑みを浮かべた。
「それは申し訳ありません。私、閻魔第二補佐官兼鬼灯第一補佐官の白鷺と申します。」
「ニャに?お偉さんだったか。」
その猫は私の正体が閻魔庁のNo.3にあたる人物だとわかると、今までの冷たい視線を一変させて、ゴマを擦るように猫なで声で私にすり寄り、懐から名刺を出して私に手渡した。
「小判。猫又社、三途之川…?」
見たこともない言葉が並ぶ。
「青年向けの雑誌ニャ。」
「雑誌か・・・すみません、あまり読まないもので。」
一応頂いておきます、と名刺を懐に収めると、心底不機嫌な鬼灯に向き直った。
「で、その記者さんがどうしたんですか?」
「なんでも私を取材したいんだと」
鬼灯が迷惑そうにため息をつく。
「あー、まぁ確かに彩りには持ってこいな御尊顔をしてらっしゃいますからね。」
「アンタもそう思うかい?実は俺もそう思ったんでさぁ。」
まるで自分の匂いをつけるようにすりすりと足に擦り寄る猫に、私は少しだけ身を引いた。
「なんでぃ。猫はお嫌いかい?」
「いや…好きなんですけど。」
この猫はなんだか性に合わないとは素直に言えるわけもなく、静かに微笑むだけ。己の利害だけを考えているような言動が感じられて、まるで私たちを食い物にしてやろうという下心が見えてしまい、どうも生理的に受け付けない。そのような私の意思をなんとなく察したのか小判は顔を歪めると、私から視線を外して再び鬼灯に注目した。
「ねー、お姿だけでも撮らせてくださいな!」
ゴロゴロと猫なで声を上げる。珍しく鬼灯も困り果てているようで、「何度言ったらわかるんだ」と肩をすくめ、ため息をもらしている。
「ダメです。」
「あ、なら奪衣婆のヌード写真集なんてどうですか?自費出版してますよ?」
「お前もか。」
この提案はどうも鬼灯が先にしていたようだ。惜しい。私に色仕掛けで男に売りさばいて来いと迫ってくる奪衣婆から逃げられると思ったのに。
「とにかく、ダメです。取材はお断り…あ、失礼。」
鬼灯の話を遮るように、懐で鬼灯の携帯がなった。ニャンニャン騒ぎ続ける小判に一言告げると鬼灯は電話をとった。どうも声のトーン的に相手は白澤だとうかがえる。
「お邪魔はしませんから!ねっねっねっ⁉」
携帯で話をする鬼灯を邪魔するように、何度も何度もニャンニャンと声を上げる馬鹿猫に苛立ちを抑えられないのか、鬼灯は人差し指を口元に当ててキッと小判をにらんだ。
「わかりましたよ。ちょっと静かにしてください。」
「やった!オッケーってことでいーですね?」
流石にあまりのしつこさに呆れてしまう。鬼灯も苛立ちを隠しきれずに、つま先が何度も地面を蹴っている。鬼灯をここまで怒らせるのは案外才能かもしれない。
「勿論、鬼灯様が良いニャら、白鷺さんもいーでしょ?」
「はい?そんなこと一言もいってないんですけど。」
「わっちが今決めやした。」
小判は私に擦り寄るといやらしい顔つきでニヤついた。
「で、どうなんですかい?鬼灯様とはやっぱり何かご関係が?」
「ない。以上、私の取材終わり。失礼します。」
「ニャニャニャ⁉待ってくだせぇよ!取材の"しゅ"の文字もやってませんよ⁉」
「"し"だけで充分ですよね。それから広げて行くのが本物の記者でしょうが。出直して来なさい。」
「…はい、すいません…って丸く収めるの上手いニャ、お前⁉」
小判と鼻先が付くくらいまで睨み合っていた私たちの間に、いつの間にか電話を終えた鬼灯が割って入った。背中に私を隠すようにして、立ちはだかる。
「貴方の目的は私でしょう?勝手に部下に許可なく取材をするのであれば、訴えますよ。」
背中の鬼灯のプリントしか見えないが、密着した鬼灯の背中を伝って聞こえてくる声色から相当怒っていることがつかめる。
「わぁりましたよ。白鷺さんの取材はまた今度にします。」
「迷惑です。」
「じゃ、よろしくお願ぇします、鬼灯様。」
この猫と話をすると、暖簾に腕押し、逆に疲れてしまう。私は黙って息を吐くと、殺気がやや漏れる鬼灯の背を見て肩をすくめた。
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「貴方、いささかおべっかが過ぎますね。そもそも、ゴシップ誌はいかがわしい。信用できません。」
「そんニャ誤解っすよぉ~。我が「三途之川」はオシャレ青年誌!可愛いニャンコもニャンニャン満載!いかがわしくニャいです!」
「いかがわしく聞こえるのは私だけですか?」
いつものように多忙極めるある日の午後。閻魔庁ではなかなか見ない顔の人物…いや、動物が鬼灯の後を追っていた。
「鬼灯様」
ちょこまかと背後を追い回され、困り果てている様子の鬼灯を見かねて、思わず私は声をかけてしまった。
「あぁ、白鷺さん。この猫、なんとかしてください。」
心底嫌そうな顔をして足元に擦り寄るその猫を指差した。
「えっと…どなたですか?」
「人の名前聞く前に自分の名前を名乗るものじゃニャいんすか?」
上から目線の発言に思わず、ぶっ飛ばしてやりたいという悪い感情を抱く。しかし、そこは自分を落ち着け、お客様をもてなす淑女としてあることを自分に言い聞かせて、今にも飛び出しそうな右腕を抑えながら私はニコリと笑みを浮かべた。
「それは申し訳ありません。私、閻魔第二補佐官兼鬼灯第一補佐官の白鷺と申します。」
「ニャに?お偉さんだったか。」
その猫は私の正体が閻魔庁のNo.3にあたる人物だとわかると、今までの冷たい視線を一変させて、ゴマを擦るように猫なで声で私にすり寄り、懐から名刺を出して私に手渡した。
「小判。猫又社、三途之川…?」
見たこともない言葉が並ぶ。
「青年向けの雑誌ニャ。」
「雑誌か・・・すみません、あまり読まないもので。」
一応頂いておきます、と名刺を懐に収めると、心底不機嫌な鬼灯に向き直った。
「で、その記者さんがどうしたんですか?」
「なんでも私を取材したいんだと」
鬼灯が迷惑そうにため息をつく。
「あー、まぁ確かに彩りには持ってこいな御尊顔をしてらっしゃいますからね。」
「アンタもそう思うかい?実は俺もそう思ったんでさぁ。」
まるで自分の匂いをつけるようにすりすりと足に擦り寄る猫に、私は少しだけ身を引いた。
「なんでぃ。猫はお嫌いかい?」
「いや…好きなんですけど。」
この猫はなんだか性に合わないとは素直に言えるわけもなく、静かに微笑むだけ。己の利害だけを考えているような言動が感じられて、まるで私たちを食い物にしてやろうという下心が見えてしまい、どうも生理的に受け付けない。そのような私の意思をなんとなく察したのか小判は顔を歪めると、私から視線を外して再び鬼灯に注目した。
「ねー、お姿だけでも撮らせてくださいな!」
ゴロゴロと猫なで声を上げる。珍しく鬼灯も困り果てているようで、「何度言ったらわかるんだ」と肩をすくめ、ため息をもらしている。
「ダメです。」
「あ、なら奪衣婆のヌード写真集なんてどうですか?自費出版してますよ?」
「お前もか。」
この提案はどうも鬼灯が先にしていたようだ。惜しい。私に色仕掛けで男に売りさばいて来いと迫ってくる奪衣婆から逃げられると思ったのに。
「とにかく、ダメです。取材はお断り…あ、失礼。」
鬼灯の話を遮るように、懐で鬼灯の携帯がなった。ニャンニャン騒ぎ続ける小判に一言告げると鬼灯は電話をとった。どうも声のトーン的に相手は白澤だとうかがえる。
「お邪魔はしませんから!ねっねっねっ⁉」
携帯で話をする鬼灯を邪魔するように、何度も何度もニャンニャンと声を上げる馬鹿猫に苛立ちを抑えられないのか、鬼灯は人差し指を口元に当ててキッと小判をにらんだ。
「わかりましたよ。ちょっと静かにしてください。」
「やった!オッケーってことでいーですね?」
流石にあまりのしつこさに呆れてしまう。鬼灯も苛立ちを隠しきれずに、つま先が何度も地面を蹴っている。鬼灯をここまで怒らせるのは案外才能かもしれない。
「勿論、鬼灯様が良いニャら、白鷺さんもいーでしょ?」
「はい?そんなこと一言もいってないんですけど。」
「わっちが今決めやした。」
小判は私に擦り寄るといやらしい顔つきでニヤついた。
「で、どうなんですかい?鬼灯様とはやっぱり何かご関係が?」
「ない。以上、私の取材終わり。失礼します。」
「ニャニャニャ⁉待ってくだせぇよ!取材の"しゅ"の文字もやってませんよ⁉」
「"し"だけで充分ですよね。それから広げて行くのが本物の記者でしょうが。出直して来なさい。」
「…はい、すいません…って丸く収めるの上手いニャ、お前⁉」
小判と鼻先が付くくらいまで睨み合っていた私たちの間に、いつの間にか電話を終えた鬼灯が割って入った。背中に私を隠すようにして、立ちはだかる。
「貴方の目的は私でしょう?勝手に部下に許可なく取材をするのであれば、訴えますよ。」
背中の鬼灯のプリントしか見えないが、密着した鬼灯の背中を伝って聞こえてくる声色から相当怒っていることがつかめる。
「わぁりましたよ。白鷺さんの取材はまた今度にします。」
「迷惑です。」
「じゃ、よろしくお願ぇします、鬼灯様。」
この猫と話をすると、暖簾に腕押し、逆に疲れてしまう。私は黙って息を吐くと、殺気がやや漏れる鬼灯の背を見て肩をすくめた。
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