第8話 龍虎の二重奏
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「白鷺さん。白鷺さん。」
何度か鬼灯に声をかけられてやっとハッと我に返った。
白澤、桃太郎、牛頭馬頭と別れた私たちは閻魔殿に向けての帰路についていた。
「白鷺様、大丈夫?」
シロが心配そうに見上げるので、私はしゃがみ込むとシロの頭を撫でた。
「大丈夫です。お腹が空いただけです。早く帰ってお昼、食べましょう。」
「もうお昼って時間じゃないけどね。」
確かにお昼の時間はとうの昔に過ぎている。
「ではお昼の代わりに甘味処にでもいきますか。」
鬼灯が同じようにしゃがみ込むとシロの顎を撫でた。手慣れているその手にシロが目を細める。
「賛成です。シロさんは?」
「俺も行…いや、俺はルリオと柿助が待ってるから向こうの食堂で食べるよ。」
思っていた返事とは違った返事が返ってきた。「俺も行くー」って言うと思ってたんだけどなぁ。
「そうなんですか?私が連絡入れますけど…」
懐に手を入れると中の携帯電話に触れる。この間無理やりに鬼灯に持たされたものだ。
「いいよー。じゃ、俺もう行くから」
どこか怯えた印象を残しながら見慣れた道を走り去って行くシロの後姿に首を傾げる。
「どうしたんでしょう…ね、鬼灯さ…」
彼は鬼の形相でシロの後ろ姿を見つめていた。
「まぁ、良いでしょう」
私が見ていることに気がついたのか彼はころりと表情を変えた。 瞬時に鬼灯が私と二人きりになるためにシロを鬼の形相で見ていたことを悟る。災難なシロ。私は小さくなるシロの可愛らしいお尻を見ながら、後でお土産を買っていってあげようと心の底から思った。
「…鬼灯様」
「なんですか?」
無表情で答える鬼灯の横顔にはぁとため息をついた。この人は何を言っても聞かないことは私が一番よく知っている。
「行きましょう、何を食べたいですか?」
「そうですね…鬼灯様は?」
歩き出す彼の後ろを一歩二歩後ろを歩く。規則的に揺れる襟足にかかった後ろ髪を無意識に目でおった。
「私は、貴方が行きたいところなら何処でも着いて行きますよ。」
そう言って彼は振り返ると少し歩幅を縮めた。
「私も貴方が行きたいところなら。」
何処へでも。
そう言いかけて、自分が今まさにこの男にときめいていたことに気がついて慌てて口を閉じた。不思議そうに顔を覗き込む彼に引きつった笑顔で応えた。
「なんだか…こうして二人で歩くのは初めてではありませんか?」
「え…?」
「仕事で並んで歩くことは毎日あっても、こうして勤務外で肩を並べるのは初めてではありませんか?」
言われてみればそうかもしれない。あの鬼灯でさえ多忙ゆえ、私を勤務外・閻魔庁外で食事の一つや二つに誘ったことがない。
「そうですね…なんだか新鮮ですね。」
「…たまには羽目を外しても良いですかね。」
「仕事は?」
「後でします。」
「上司にあるまじき言葉だ。」
喉の奥でククッと笑う。たまには鬼灯も可愛らしい発言をするのだなと思い、妙に隣に並ぶ男が愛らしく見える。
「珍しく怒らないのですね。」
「今日だけは特別です。」
「…今日だけ…ですか。ならこれも今日だけ許して下さいますよね。」
そう言って歩く度に揺れる右手と左手がぶつかった瞬間、彼の右手が私の左手を強引に掴んだ。
「……ちょっ」
「怒られます?」
無表情の中に悪戯心が垣間見える彼に私は僅かに唇を噛み締めて目を伏せた。
「今日だけですよ…」
「…はい。」
繋がれた左手が規則的に前後に揺れる様子に私は薄く笑みがこぼれた。
「何にしますか?」
「そう言えば、近くに新しい甘味処が出来たらしいですよ。いってみませんか?」
他愛もない話をして、肩を並べて。
ちっとも悪い気がしないのは、きっと牛頭馬頭と会ったことに浮かれているからだろうか。
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何度か鬼灯に声をかけられてやっとハッと我に返った。
白澤、桃太郎、牛頭馬頭と別れた私たちは閻魔殿に向けての帰路についていた。
「白鷺様、大丈夫?」
シロが心配そうに見上げるので、私はしゃがみ込むとシロの頭を撫でた。
「大丈夫です。お腹が空いただけです。早く帰ってお昼、食べましょう。」
「もうお昼って時間じゃないけどね。」
確かにお昼の時間はとうの昔に過ぎている。
「ではお昼の代わりに甘味処にでもいきますか。」
鬼灯が同じようにしゃがみ込むとシロの顎を撫でた。手慣れているその手にシロが目を細める。
「賛成です。シロさんは?」
「俺も行…いや、俺はルリオと柿助が待ってるから向こうの食堂で食べるよ。」
思っていた返事とは違った返事が返ってきた。「俺も行くー」って言うと思ってたんだけどなぁ。
「そうなんですか?私が連絡入れますけど…」
懐に手を入れると中の携帯電話に触れる。この間無理やりに鬼灯に持たされたものだ。
「いいよー。じゃ、俺もう行くから」
どこか怯えた印象を残しながら見慣れた道を走り去って行くシロの後姿に首を傾げる。
「どうしたんでしょう…ね、鬼灯さ…」
彼は鬼の形相でシロの後ろ姿を見つめていた。
「まぁ、良いでしょう」
私が見ていることに気がついたのか彼はころりと表情を変えた。 瞬時に鬼灯が私と二人きりになるためにシロを鬼の形相で見ていたことを悟る。災難なシロ。私は小さくなるシロの可愛らしいお尻を見ながら、後でお土産を買っていってあげようと心の底から思った。
「…鬼灯様」
「なんですか?」
無表情で答える鬼灯の横顔にはぁとため息をついた。この人は何を言っても聞かないことは私が一番よく知っている。
「行きましょう、何を食べたいですか?」
「そうですね…鬼灯様は?」
歩き出す彼の後ろを一歩二歩後ろを歩く。規則的に揺れる襟足にかかった後ろ髪を無意識に目でおった。
「私は、貴方が行きたいところなら何処でも着いて行きますよ。」
そう言って彼は振り返ると少し歩幅を縮めた。
「私も貴方が行きたいところなら。」
何処へでも。
そう言いかけて、自分が今まさにこの男にときめいていたことに気がついて慌てて口を閉じた。不思議そうに顔を覗き込む彼に引きつった笑顔で応えた。
「なんだか…こうして二人で歩くのは初めてではありませんか?」
「え…?」
「仕事で並んで歩くことは毎日あっても、こうして勤務外で肩を並べるのは初めてではありませんか?」
言われてみればそうかもしれない。あの鬼灯でさえ多忙ゆえ、私を勤務外・閻魔庁外で食事の一つや二つに誘ったことがない。
「そうですね…なんだか新鮮ですね。」
「…たまには羽目を外しても良いですかね。」
「仕事は?」
「後でします。」
「上司にあるまじき言葉だ。」
喉の奥でククッと笑う。たまには鬼灯も可愛らしい発言をするのだなと思い、妙に隣に並ぶ男が愛らしく見える。
「珍しく怒らないのですね。」
「今日だけは特別です。」
「…今日だけ…ですか。ならこれも今日だけ許して下さいますよね。」
そう言って歩く度に揺れる右手と左手がぶつかった瞬間、彼の右手が私の左手を強引に掴んだ。
「……ちょっ」
「怒られます?」
無表情の中に悪戯心が垣間見える彼に私は僅かに唇を噛み締めて目を伏せた。
「今日だけですよ…」
「…はい。」
繋がれた左手が規則的に前後に揺れる様子に私は薄く笑みがこぼれた。
「何にしますか?」
「そう言えば、近くに新しい甘味処が出来たらしいですよ。いってみませんか?」
他愛もない話をして、肩を並べて。
ちっとも悪い気がしないのは、きっと牛頭馬頭と会ったことに浮かれているからだろうか。
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