第7話 三匹が逝く!
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「うるさいですね、全く…。目が冴えてきた…」
誰の所為だと思ってるんだと思うも、原因は合唱し始めた三匹だったので、鬼灯と背中合わせに無理矢理に崩された着物を着直しながら、三匹をキッと睨んだ。おかげで、貞操の危機だった。それも、真昼間から。別に深夜ではいいと言うわけではないけれど。
「何か用ですか?」
改めて寝起きで不機嫌な鬼灯が問う。
「い…いえ…大事な用は特に…」
シロが鬼灯の厳しい瞳から逃れるように、ベッドの向こう側でビクビクとしている。
「非番だったから、仕事のアドバイス等頂けたらと…」
「徹夜明けの爆睡は無理に起こされると結構辛いんですよ…勘弁してください。」
かがちのような目が更に細くなって、必死に瞼をあげようとぴくぴくと痙攣している。しぱしぱと何度も瞬きをしており、目の下の隈も隠せない。鬼灯は洗面台に行くと、丁寧に顔を洗って、歯を磨いて、身支度をし始めた。
その後ろに私と三匹は並んでその様子を眺めた。男性の身支度を見ることは滅多にないので、何故か妙に見入ってしまう。
「…あのね」
「はい?」
「人の身支度ってなんか見ちゃうよね。ちなみに桃太郎の寝起きの顔は凄かった。」
「別にその情報いいです。」
女性の身支度はめんどくさい。支度に時間が掛かる。化粧とか、髪の毛とか、様々な準備があるから大変である。意外とわからないと言われるけれど、私だっていつも薄く化粧はしている。
「まぁ、私は元々髭も濃くはないんですが…身嗜みはちゃんとしてますよ」
確かに鬼灯の髭は長い間一緒にいるが見たことがない。ちゃんと手入れをしているのだと閻魔と比べて思っていたが、元々あまり目立たないタイプなのだ。
「というか、それ床屋さんのカミソリじゃないかッッッ!素人が持ってて良いのそれ!?」
「貴方も剃って上げましょうか?プードルみたいに。」
「ヤダーッ」
シロの腹部の毛が剃り落とされて、無駄に毛がモフモフしている様子を思い浮かべて、ブフッと吹き出してしまった。
「案外似合うかもしれませんよ。やって頂いたらどうですか?」
「ヤメテーッ」
身支度の終わった鬼灯は最後に手櫛で髪をセットし始めた。
「あぁ、もう…そこだけ適当なんだから…」
それまでは丁寧に身支度していたというのに、髪の毛は手櫛とは。私は手元から携帯している櫛を持ち出すとそばにあった椅子に鬼灯を無理矢理座らせた。
「良いんですよ、男は別に」
「男でも髪の毛をセットしない人はモテませんよ。」
「私には貴方がいるじゃないですか。」
「良い加減その減らない無駄口を閉じてください。」
座った彼の後ろに立つと、髪に櫛を通す。絡まった髪が解け、スッと簡単に髪に通った。髪の毛が元々綺麗だから、とてもときやすい。
「サラサラですね。何かしてます?」
「いえ、全く。」
「羨ましいです。この髪の綺麗さ。」
跳ねた髪に専用のスプレーを振りかけると鬼灯が軽く身震いして、クスリと笑ってしまった。
「白鷺さんの髪も綺麗ですよ。毛先までしっかりとケアが行き届いていて。艶もあって。」
彼が前から私の髪の一束をするりと楽し気に指に巻きつけた。
「放っておけば、ガシガシで大変なんです。」
「……この髪も、貴方の全てが美しい。」
「はいはい、寝言は寝てるときだけで良いですからね。」
寝癖がとれ、いつも通りの鬼灯の髪型になると、出来たと肩を叩いた。
「ありがとうございます。」
「いえいえ」
鬼灯が自分の髪に指を通しながらお礼を言う。そんな私たちの様子を見てシロがポツリともらした。
「なんだか、本当のカップルみたい…」
続いて柿助もルリオも。
「どちらかと言うと夫婦?」
「母子にも見えないこともない」
と口々に感想を述べていく。それは褒められているのか。
「ありがとうございます。」
「それってお礼を言うことなんですかね?」
「私は嬉しいですよ。貴方とカップルだとか夫婦だとか。」
「複雑」
私は鬼灯から少し遠くに立つと、彼の全身を遠目で見て、その身なりに満足した。
「そうだ、鬼灯様、今日は丸一日お休み?」
「そうです」
「本当?じゃ遊ぼ」
「…ボール投げでもしますか」
「やったぁ、俺、ボール大好き!」
シロと鬼灯の会話を聞きながら、私はその微笑ましい会話に自然とニヤついてしまった顔を無理矢理引き締める。仕事外の鬼灯の優しさというか動物好きなところが、本当に微笑ましい。
「…というか。貴方方どうして、私の部屋を知ってるんですか?」
鬼灯が眠そうな目を開いて首を傾げた。
「閻魔様に教えてもらった。入る許可ももらったよ。」
三匹の可愛いお尻を見ながら後ろをついて行く。閻魔の法廷にまでくると鬼灯はボールを手にした。
「ではシロさん」
そこで一度彼は言葉を切ると、野球選手もビックリの華麗なフォームで球を投げた。目に見えない速さに、髪の毛が少々たなびく。
そのボールは真っ直ぐに法廷に向かう閻魔の顔面に…。全ての責任とストレスを、閻魔にぶつけて満足気な鬼灯の後ろ姿に私は小さく呟いた。
「つまり、徹夜はダメだってことね。」
→
誰の所為だと思ってるんだと思うも、原因は合唱し始めた三匹だったので、鬼灯と背中合わせに無理矢理に崩された着物を着直しながら、三匹をキッと睨んだ。おかげで、貞操の危機だった。それも、真昼間から。別に深夜ではいいと言うわけではないけれど。
「何か用ですか?」
改めて寝起きで不機嫌な鬼灯が問う。
「い…いえ…大事な用は特に…」
シロが鬼灯の厳しい瞳から逃れるように、ベッドの向こう側でビクビクとしている。
「非番だったから、仕事のアドバイス等頂けたらと…」
「徹夜明けの爆睡は無理に起こされると結構辛いんですよ…勘弁してください。」
かがちのような目が更に細くなって、必死に瞼をあげようとぴくぴくと痙攣している。しぱしぱと何度も瞬きをしており、目の下の隈も隠せない。鬼灯は洗面台に行くと、丁寧に顔を洗って、歯を磨いて、身支度をし始めた。
その後ろに私と三匹は並んでその様子を眺めた。男性の身支度を見ることは滅多にないので、何故か妙に見入ってしまう。
「…あのね」
「はい?」
「人の身支度ってなんか見ちゃうよね。ちなみに桃太郎の寝起きの顔は凄かった。」
「別にその情報いいです。」
女性の身支度はめんどくさい。支度に時間が掛かる。化粧とか、髪の毛とか、様々な準備があるから大変である。意外とわからないと言われるけれど、私だっていつも薄く化粧はしている。
「まぁ、私は元々髭も濃くはないんですが…身嗜みはちゃんとしてますよ」
確かに鬼灯の髭は長い間一緒にいるが見たことがない。ちゃんと手入れをしているのだと閻魔と比べて思っていたが、元々あまり目立たないタイプなのだ。
「というか、それ床屋さんのカミソリじゃないかッッッ!素人が持ってて良いのそれ!?」
「貴方も剃って上げましょうか?プードルみたいに。」
「ヤダーッ」
シロの腹部の毛が剃り落とされて、無駄に毛がモフモフしている様子を思い浮かべて、ブフッと吹き出してしまった。
「案外似合うかもしれませんよ。やって頂いたらどうですか?」
「ヤメテーッ」
身支度の終わった鬼灯は最後に手櫛で髪をセットし始めた。
「あぁ、もう…そこだけ適当なんだから…」
それまでは丁寧に身支度していたというのに、髪の毛は手櫛とは。私は手元から携帯している櫛を持ち出すとそばにあった椅子に鬼灯を無理矢理座らせた。
「良いんですよ、男は別に」
「男でも髪の毛をセットしない人はモテませんよ。」
「私には貴方がいるじゃないですか。」
「良い加減その減らない無駄口を閉じてください。」
座った彼の後ろに立つと、髪に櫛を通す。絡まった髪が解け、スッと簡単に髪に通った。髪の毛が元々綺麗だから、とてもときやすい。
「サラサラですね。何かしてます?」
「いえ、全く。」
「羨ましいです。この髪の綺麗さ。」
跳ねた髪に専用のスプレーを振りかけると鬼灯が軽く身震いして、クスリと笑ってしまった。
「白鷺さんの髪も綺麗ですよ。毛先までしっかりとケアが行き届いていて。艶もあって。」
彼が前から私の髪の一束をするりと楽し気に指に巻きつけた。
「放っておけば、ガシガシで大変なんです。」
「……この髪も、貴方の全てが美しい。」
「はいはい、寝言は寝てるときだけで良いですからね。」
寝癖がとれ、いつも通りの鬼灯の髪型になると、出来たと肩を叩いた。
「ありがとうございます。」
「いえいえ」
鬼灯が自分の髪に指を通しながらお礼を言う。そんな私たちの様子を見てシロがポツリともらした。
「なんだか、本当のカップルみたい…」
続いて柿助もルリオも。
「どちらかと言うと夫婦?」
「母子にも見えないこともない」
と口々に感想を述べていく。それは褒められているのか。
「ありがとうございます。」
「それってお礼を言うことなんですかね?」
「私は嬉しいですよ。貴方とカップルだとか夫婦だとか。」
「複雑」
私は鬼灯から少し遠くに立つと、彼の全身を遠目で見て、その身なりに満足した。
「そうだ、鬼灯様、今日は丸一日お休み?」
「そうです」
「本当?じゃ遊ぼ」
「…ボール投げでもしますか」
「やったぁ、俺、ボール大好き!」
シロと鬼灯の会話を聞きながら、私はその微笑ましい会話に自然とニヤついてしまった顔を無理矢理引き締める。仕事外の鬼灯の優しさというか動物好きなところが、本当に微笑ましい。
「…というか。貴方方どうして、私の部屋を知ってるんですか?」
鬼灯が眠そうな目を開いて首を傾げた。
「閻魔様に教えてもらった。入る許可ももらったよ。」
三匹の可愛いお尻を見ながら後ろをついて行く。閻魔の法廷にまでくると鬼灯はボールを手にした。
「ではシロさん」
そこで一度彼は言葉を切ると、野球選手もビックリの華麗なフォームで球を投げた。目に見えない速さに、髪の毛が少々たなびく。
そのボールは真っ直ぐに法廷に向かう閻魔の顔面に…。全ての責任とストレスを、閻魔にぶつけて満足気な鬼灯の後ろ姿に私は小さく呟いた。
「つまり、徹夜はダメだってことね。」
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