第7話 三匹が逝く!
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「鬼灯様、ゆっくり寝てね」
熟睡する鬼灯の頬に前足を乗せて、小さな小さな声で小さなその犬は囁いた。
「そうですね…いつも頑張ってらっしゃるのですから、こう言う時くらいは、しっかり休んで頂きましょう。」
寝返りでめくれた布団を掛け直すと、彼は小さくくぐもった声で「…ん」と漏らした。すっかり成人した男性の低い声なのにどこかそれがどうも返事をしたように思えて、笑みがこぼれてしまった。
先日、鬼灯に「180cm以上もある大男に母性本能を抱けというのは無理がある」と言ったが、こう寝顔を見ていると自然とそんな気持ちにもなってしまう。無防備で、無垢で、優しい寝顔。なんとなく胸いっぱいに広がるこの甘い気持ちは、間違いなく愛おしさと慈しみである。
「白鷺様、なんだか彼女というかお母さんって感じがする」
「…そうですか?」
ふふっと声を漏らして笑う。私の冷たい掌に眠る鬼灯は頬ずりをする。
「子守唄でも歌ってあげよう」
私たちの様子を見ながらシロはそういうと尻尾でリズムを刻みながら、
「ちっちゃな頃から悪ガキでぇ~」
と大きな声で歌い始めた。
「シロッシロッ。子守唄でギザギザハートのボケはもはや定番だろ」
「えっ、そう」
ルリオとシロの二匹で大きな声で揉め始める。ネタの定番が云々の以前に静かにしろと私も声を荒げそうになってグッと口をつぐむ。確かにギザギザハートにもツッコミたいけど。
「ここは、俺に任せろ」
そう言ってルリオは肺一杯に息を吹いこむと、
「くまのこみていたかくれんぼ」
ものすごく低い良い声で歌い始めた。
それはエンディングだ。「ぼうや、良い子だ、ねんねしな」から始まる子守唄はオープニングだ。結局やっていることはシロのギザギザハートネタと似たり寄ったりである。
夕焼けこやけでまたあした
「チッ…チクショウ、鳥の歌声は魅力のチキルームだ」
ま~たあ~し~た~
「つられてしまうっ!」
い~いない~いな
に~んげんって
い~い~な
動物三匹の合唱が始まった。いや、静かにしろ。さっき自分たちで言ってたでしょ、と声を荒げようとしたその時だった。
ーーガシッ
熱いものが私の腕を掴んだ。私の腕を覆うかのようにがっしりと掴むその物は熱いのに、私の全身の血は瞬時に凍った。
「…え…」
布団の隙間から猛獣のような目がキラリと光る。気がついた時には遅かった。
「うわっ!」
ものすごい力で腕を引かれると、いとも簡単に布団に引き摺り込まれてしまった。その様子はまさに西洋のB級ホラー映画のよう。
「白鷺様⁉」
「ちょっ…まっ!どこさわっ!」
真っ暗な布団の中で熱い手が身体中を弄る。着物の裾に手が伸び、肌の柔らかさを堪能するように、脚を何度も何度も触る。
「ちょっと!鬼灯様!」
「……さっきから、うるさいんですけど…」
「だからって、セクハラはいけないと思います!」
鬼灯は苦虫を嚙み潰したような顔をして「うるさい」と一言言うと、そのまま私に覆いかぶさり、着物の合わせを割って顔を埋めた。
「きゃあああぁあぁあぁあ。ちょっと、シロさん逃がしませんよ!貴様も道連れだ!」
鬼灯に襲われる私を見て、逃げ出そうとするシロの尻尾をふんぎと掴む。
「やだ、俺まだ死にたくない!」
そういったシロは更に逃げようとする柿助の腕を前足で掴んだ。
「離せぇ…シロ!」
そう言う柿助も飛び去るルリオの尾っぽを掴んだ。
「離せ、柿助!」
「離せシロ!」
「離して白鷺様!」
「離して鬼灯様!」
まさにこの様子は、地獄絵図であるであろう。布団の中で鬼灯の怒りのセクハラを受け、必死に尻尾を振って私の手をふり切ろうとするシロを抑えつけながら、私は三匹の動物たちを放っておけず、ついてきてしまった自分の甘さを後悔するのであった。
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熟睡する鬼灯の頬に前足を乗せて、小さな小さな声で小さなその犬は囁いた。
「そうですね…いつも頑張ってらっしゃるのですから、こう言う時くらいは、しっかり休んで頂きましょう。」
寝返りでめくれた布団を掛け直すと、彼は小さくくぐもった声で「…ん」と漏らした。すっかり成人した男性の低い声なのにどこかそれがどうも返事をしたように思えて、笑みがこぼれてしまった。
先日、鬼灯に「180cm以上もある大男に母性本能を抱けというのは無理がある」と言ったが、こう寝顔を見ていると自然とそんな気持ちにもなってしまう。無防備で、無垢で、優しい寝顔。なんとなく胸いっぱいに広がるこの甘い気持ちは、間違いなく愛おしさと慈しみである。
「白鷺様、なんだか彼女というかお母さんって感じがする」
「…そうですか?」
ふふっと声を漏らして笑う。私の冷たい掌に眠る鬼灯は頬ずりをする。
「子守唄でも歌ってあげよう」
私たちの様子を見ながらシロはそういうと尻尾でリズムを刻みながら、
「ちっちゃな頃から悪ガキでぇ~」
と大きな声で歌い始めた。
「シロッシロッ。子守唄でギザギザハートのボケはもはや定番だろ」
「えっ、そう」
ルリオとシロの二匹で大きな声で揉め始める。ネタの定番が云々の以前に静かにしろと私も声を荒げそうになってグッと口をつぐむ。確かにギザギザハートにもツッコミたいけど。
「ここは、俺に任せろ」
そう言ってルリオは肺一杯に息を吹いこむと、
「くまのこみていたかくれんぼ」
ものすごく低い良い声で歌い始めた。
それはエンディングだ。「ぼうや、良い子だ、ねんねしな」から始まる子守唄はオープニングだ。結局やっていることはシロのギザギザハートネタと似たり寄ったりである。
夕焼けこやけでまたあした
「チッ…チクショウ、鳥の歌声は魅力のチキルームだ」
ま~たあ~し~た~
「つられてしまうっ!」
い~いない~いな
に~んげんって
い~い~な
動物三匹の合唱が始まった。いや、静かにしろ。さっき自分たちで言ってたでしょ、と声を荒げようとしたその時だった。
ーーガシッ
熱いものが私の腕を掴んだ。私の腕を覆うかのようにがっしりと掴むその物は熱いのに、私の全身の血は瞬時に凍った。
「…え…」
布団の隙間から猛獣のような目がキラリと光る。気がついた時には遅かった。
「うわっ!」
ものすごい力で腕を引かれると、いとも簡単に布団に引き摺り込まれてしまった。その様子はまさに西洋のB級ホラー映画のよう。
「白鷺様⁉」
「ちょっ…まっ!どこさわっ!」
真っ暗な布団の中で熱い手が身体中を弄る。着物の裾に手が伸び、肌の柔らかさを堪能するように、脚を何度も何度も触る。
「ちょっと!鬼灯様!」
「……さっきから、うるさいんですけど…」
「だからって、セクハラはいけないと思います!」
鬼灯は苦虫を嚙み潰したような顔をして「うるさい」と一言言うと、そのまま私に覆いかぶさり、着物の合わせを割って顔を埋めた。
「きゃあああぁあぁあぁあ。ちょっと、シロさん逃がしませんよ!貴様も道連れだ!」
鬼灯に襲われる私を見て、逃げ出そうとするシロの尻尾をふんぎと掴む。
「やだ、俺まだ死にたくない!」
そういったシロは更に逃げようとする柿助の腕を前足で掴んだ。
「離せぇ…シロ!」
そう言う柿助も飛び去るルリオの尾っぽを掴んだ。
「離せ、柿助!」
「離せシロ!」
「離して白鷺様!」
「離して鬼灯様!」
まさにこの様子は、地獄絵図であるであろう。布団の中で鬼灯の怒りのセクハラを受け、必死に尻尾を振って私の手をふり切ろうとするシロを抑えつけながら、私は三匹の動物たちを放っておけず、ついてきてしまった自分の甘さを後悔するのであった。
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