第6話 鬼のパンツとカニ
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三途の川の主は治療を受け見事回復し、数日後には元気に三途の川に戻っていった。そんな報道を見ながら、私は向かいで夕食をとる上司に目をやった。
「茄子さん、お手柄でしたね。」
「本当ですね。烏天狗警察から感謝状も頂いたみたいですしね。」
本当に不思議な力を持つ子である。普段ぼーっとしているのに、そんな中で見る必要のあることは逃さない。我々が気付かないことを見ている。本当に不思議な子だ。
「本当にすごいですね。私もそんな人間になりたいです。」
「そうですね。」
仕事も終えてひと段落している私達は人通りの少ない食堂でテレビを見ながらくつろいでいた。食堂の厨房で皿を洗う音だけが聞こえる。
「あ、忘れてた。鬼灯様、パンツ、返してください。」
「……」
「返事してください。」
無視を決めこむ鬼灯を睨みつける。本当に少なくて困っているのだ。現在、現世に視察にいっている友人に2、3枚買ってくるように頼んでいるが、それまでは本当に洗濯が大変である。
「嫌です。」
「こっちが嫌です。返してください。」
「…お気に入りなんです。」
「意味がわかりません。ピンクのフリルとっていきましたよね。あれ、私のお気に入りなんですけど。」
「あ、貴女もですか?私も実はあれが一番お気に入りなんですよ。趣味が合いますね。」
「全然、嬉しくないんですけど、そのお気に入りの一致。」
私ははぁ…と深くため息をつくと肩を落とした。この言い合いがいつまで続くのかと思うとゾッとする。
「私が本気で怒る前に、返してください」
「今も充分怒ってるじゃないですか。」
その言い草に私はカチンときて、彼に手を伸ばして彼の手首をギュッと掴んだ。
「怒ってますよ?そりゃ、自分の下着盗まれて怒らない女性がいないわけがない。それも犯人に罪意識がないとか考えられません。」
キッと睨みつけると、鬼灯はただ黙って私の瞳だけを見つめていた。その無反応な顔に、更にイライラが募る。
「貴方衆合地獄に落ちますよ?」
「貴方への愛によって落ちるならどこへでも喜んで落ちますよ。」
口角があがらない鬼灯の独特な口元から甘い言葉が囁かれると、その声が妙に心地よい。けれど、その罪意識のない状態が私の逆鱗に触れる。
「良い加減にしてください!もっと別の愛情表現があるでしょ⁉」
鬼灯はただ黙って私を見つめている。珍しく声を荒げてしまった。
「何かいってくださいよ!鬼灯様!」
カッとなってそう怒鳴ると、彼は静かに己の手首をつかむ私の手にそっと反対側の手を重ねた。
「怒っても愛らしい。」
ただそれだけを言うと彼はそっと私の腕を引いた。
「もっと怒っていただいて構いませんよ。愛らしい。」
もしかして彼は確信犯なのじゃないだろうか。鼻の先がぶつかるほどに近づく顔から一気に後ずさりすると、私の手首を掴む彼の手から逃れるように手を引いた。しかし彼はギュッと手を強くにぎると、離れようとする私を制した。
「さぁ、怒ってください。」
「……っ!」
腕を大きく振りほどくと、思っていたよりも簡単に彼の手はほどけた。
「ふ、ふざけてるんですか⁉」
「さぁ、どうでしょうか?」
普段くすりも笑わない癖に、今は若干口角が上がっている。いじめっ子の表情である。
「白鷺さん。」
「なんですか。」
「……なんでもないです。」
意地悪な顔を見て、しばらくこの人に近づかないでおこうと決心した私は、熱く火照った顔を隠すように、着物の袖で顔を覆った。
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「茄子さん、お手柄でしたね。」
「本当ですね。烏天狗警察から感謝状も頂いたみたいですしね。」
本当に不思議な力を持つ子である。普段ぼーっとしているのに、そんな中で見る必要のあることは逃さない。我々が気付かないことを見ている。本当に不思議な子だ。
「本当にすごいですね。私もそんな人間になりたいです。」
「そうですね。」
仕事も終えてひと段落している私達は人通りの少ない食堂でテレビを見ながらくつろいでいた。食堂の厨房で皿を洗う音だけが聞こえる。
「あ、忘れてた。鬼灯様、パンツ、返してください。」
「……」
「返事してください。」
無視を決めこむ鬼灯を睨みつける。本当に少なくて困っているのだ。現在、現世に視察にいっている友人に2、3枚買ってくるように頼んでいるが、それまでは本当に洗濯が大変である。
「嫌です。」
「こっちが嫌です。返してください。」
「…お気に入りなんです。」
「意味がわかりません。ピンクのフリルとっていきましたよね。あれ、私のお気に入りなんですけど。」
「あ、貴女もですか?私も実はあれが一番お気に入りなんですよ。趣味が合いますね。」
「全然、嬉しくないんですけど、そのお気に入りの一致。」
私ははぁ…と深くため息をつくと肩を落とした。この言い合いがいつまで続くのかと思うとゾッとする。
「私が本気で怒る前に、返してください」
「今も充分怒ってるじゃないですか。」
その言い草に私はカチンときて、彼に手を伸ばして彼の手首をギュッと掴んだ。
「怒ってますよ?そりゃ、自分の下着盗まれて怒らない女性がいないわけがない。それも犯人に罪意識がないとか考えられません。」
キッと睨みつけると、鬼灯はただ黙って私の瞳だけを見つめていた。その無反応な顔に、更にイライラが募る。
「貴方衆合地獄に落ちますよ?」
「貴方への愛によって落ちるならどこへでも喜んで落ちますよ。」
口角があがらない鬼灯の独特な口元から甘い言葉が囁かれると、その声が妙に心地よい。けれど、その罪意識のない状態が私の逆鱗に触れる。
「良い加減にしてください!もっと別の愛情表現があるでしょ⁉」
鬼灯はただ黙って私を見つめている。珍しく声を荒げてしまった。
「何かいってくださいよ!鬼灯様!」
カッとなってそう怒鳴ると、彼は静かに己の手首をつかむ私の手にそっと反対側の手を重ねた。
「怒っても愛らしい。」
ただそれだけを言うと彼はそっと私の腕を引いた。
「もっと怒っていただいて構いませんよ。愛らしい。」
もしかして彼は確信犯なのじゃないだろうか。鼻の先がぶつかるほどに近づく顔から一気に後ずさりすると、私の手首を掴む彼の手から逃れるように手を引いた。しかし彼はギュッと手を強くにぎると、離れようとする私を制した。
「さぁ、怒ってください。」
「……っ!」
腕を大きく振りほどくと、思っていたよりも簡単に彼の手はほどけた。
「ふ、ふざけてるんですか⁉」
「さぁ、どうでしょうか?」
普段くすりも笑わない癖に、今は若干口角が上がっている。いじめっ子の表情である。
「白鷺さん。」
「なんですか。」
「……なんでもないです。」
意地悪な顔を見て、しばらくこの人に近づかないでおこうと決心した私は、熱く火照った顔を隠すように、着物の袖で顔を覆った。
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