第6話 鬼のパンツとカニ
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鬼灯に任されていた仕事が早めに終わり、今のところやっておかねばならない仕事もない。手持ち無沙汰になってしまった丁度その時に、三途の川の河原で茄子らが掃除をしていると聞いて、急いでそこへ向かった。
三途の川を渡る際に亡者が六文銭と衣服を置いていく橋のたもとで奪衣婆と鬼灯が言い争いをしているが、そこに加わると酷い目に合うことはわかっているので、知らんぷりをして私は長い三途の川の河原を掃除する二人の元へ駆け寄った。
「お疲れ様です。茄子さん、唐瓜さん。」
「あっ!シラ様!」
持っていた箒を放り投げて、私の胸に飛びついた茄子はそのまま子どものように顔をすりつけた。身長が小柄な私でも、子鬼という種族は丁度顔が胸元に埋まってしまう。
天真爛漫で少し抜けたところがある茄子は、白髪にふわふわの毛が特徴的である。底抜けの明るさと落ち着きのなさ、少しドジなところが愛らしく、鬼灯も珍しく目にかけている鬼である。
「こら、この阿呆茄子!白鷺様が困ってるだろ⁉離れろ!」
そんな茄子の袖をつかんで引き離すのは茄子のお世話係兼保護者である唐瓜。茄子と何から何まで正反対な子鬼だ。まるで松の葉の様に黒く硬い毛が特徴的で、茄子の世話役ともあってしっかりせざるを得ず、いつも何かと困りごとが舞い込んでしまう少し不憫な子である。二人は地獄のチップとデールの愛称を持っている可愛い部下たちである。
「私も手伝いますよ。」
「ホント?やったー。」
「やった、じゃない!良いんですか?白鷺様。」
正反対の反応をする二人を観察しながら、酸と塩基が中和するように、磁石のN極とS極が引っ付き合うように、こうやって友というのは全く異なる性格でも上手くやっていくのだと感慨深く感じる。
「三人なら早く終わりますから、さっさと終わらせてしまいましょう。」
私が声をかけると、二人は声を合わせて「はい」と返事をするので、また愛らしい部下たちに頬が緩んでしまう。茄子が先ほど放り投げた箒を再び拾い、辺りを掃いていく。唐瓜はゴミ拾い用火ばさみを使ってゴミを拾い集めている。唐瓜と同じように閻魔殿から持ってきた火ばさみを使ってゴミを拾い集め始めた。
「んん~♪」
茄子はいつもよりも上機嫌で鼻歌混じりに歌い始める。
「おに~のパンツはい~いパ~ン~ツ~、つよ~いぞ~、つよ~いぞ~。」
可愛いお尻をふりふり振りながら、踊るように掃く姿がなんとも子どもっぽい。
「ほんとッ、単純なやつ」
ゴミ拾い用火ばさみをカチカチならしながら唐瓜が肩をすくめる。「あいつ白鷺様がいるから上機嫌なんですよ」なんて唐瓜が言うものだから、少し照れくさくなって曖昧にほほ笑んだ。
「なぁ、唐瓜。」
今まで歌っていた茄子が手を止めて向き直った。
「モラルって、大事だなぁ。」
いきなりの謎の質問に沈黙する場。
「モラル…うん、そうだよ、大事だよ。…え、何?」
「何ってパンツの事だよ。パンツを履くことはモラルの基本だろ?だから俺はパンツをモラルと呼んでいる。」
相変わらず他の人とは少し違う感性を持っている。唐瓜と顔を見合わせて、話についていけないことに首を傾げた。
「鬼のパンツって言えばさァ、お前のパンツは従来(トラガワ)派?先端(ポリエステル)派?」
「俺は綿100%。敏感肌なんだ。」
「へぇー。どこのやつ?ピー◯・ジョン?チュチュア◯ナ?」
「いや…普通のだけど…なんでお前は現世の女性用下着ブランドに、詳しいわけ?」
年頃の中学生男子ってこういう話をするんだろうな、と横から優しい目で眺める。とその時、背後から聞きなれた重低音が響き、がっしりとした重みのある手が私の肩に置かれた。
「白鷺さんは、チュチュア◯ナ派ですよね。」
「なんで知ってるのか、訳を聞かせていただきましょうか、鬼灯様。」
何処からか現れた鬼灯の手をペシンッと叩く。
「私が貴女の下着の趣味を知らないとでも?」
「何さも当たり前のように言ってるんですか。知ってる方が怖いですよ。」
今日の下着の色についても把握していそうで怖い。なんなら女の子の日の周期もそのうち把握しそうでもっと怖い。
「あれ?シラ様って現世に行ったことなかったんじゃなかったっけ?」
茄子が首を傾げる。
「そうですよ。あの世に来てからは一度も。」
タイミングがなかったわけではないが、まだ死後一度も現世には戻っていない。生前の知人に会うのも気が引けるというのが一番の理由かもしれない。社会人になって、街中で中学校時代のクラスメイトに会う感覚かもしれない。少し気まずい。
「じゃぁさ、どうやって買ってるの?」
興味深そうにこちらを見る茄子に微笑んだ。人の下着事情をあまり聞くものではないですよ、と注意をしながらも、茄子の質問に答える。
「通販とか…友達が現世に行ったときに、買ってきてもらってますよ。」
「へぇー。」
私の下着事情を聞いて何が楽しいんだろうか。今はありがたいことに地獄でも様々な手段を用いれば、現世のものを調達できる。それに現世の商品は非常に質がいいので出来れば、現世のものも多く手に入れたい。便利な世の中になったと感じれば感じる程、自分の歳を改めて感じてしまって少し嫌になる。
「今度、おっしゃって頂いたら私も現世に行ったときに買ってきますよ、下着。」
「全力でお断りします。というか嫌でしょ、180㎝の大男が女性のランジェリーショップにいて、下着買っていくとか。」
絶対私の下着の趣味とか色とかを把握するためだろ、と犯罪じみた彼の発言にげんなりするのだった。
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三途の川を渡る際に亡者が六文銭と衣服を置いていく橋のたもとで奪衣婆と鬼灯が言い争いをしているが、そこに加わると酷い目に合うことはわかっているので、知らんぷりをして私は長い三途の川の河原を掃除する二人の元へ駆け寄った。
「お疲れ様です。茄子さん、唐瓜さん。」
「あっ!シラ様!」
持っていた箒を放り投げて、私の胸に飛びついた茄子はそのまま子どものように顔をすりつけた。身長が小柄な私でも、子鬼という種族は丁度顔が胸元に埋まってしまう。
天真爛漫で少し抜けたところがある茄子は、白髪にふわふわの毛が特徴的である。底抜けの明るさと落ち着きのなさ、少しドジなところが愛らしく、鬼灯も珍しく目にかけている鬼である。
「こら、この阿呆茄子!白鷺様が困ってるだろ⁉離れろ!」
そんな茄子の袖をつかんで引き離すのは茄子のお世話係兼保護者である唐瓜。茄子と何から何まで正反対な子鬼だ。まるで松の葉の様に黒く硬い毛が特徴的で、茄子の世話役ともあってしっかりせざるを得ず、いつも何かと困りごとが舞い込んでしまう少し不憫な子である。二人は地獄のチップとデールの愛称を持っている可愛い部下たちである。
「私も手伝いますよ。」
「ホント?やったー。」
「やった、じゃない!良いんですか?白鷺様。」
正反対の反応をする二人を観察しながら、酸と塩基が中和するように、磁石のN極とS極が引っ付き合うように、こうやって友というのは全く異なる性格でも上手くやっていくのだと感慨深く感じる。
「三人なら早く終わりますから、さっさと終わらせてしまいましょう。」
私が声をかけると、二人は声を合わせて「はい」と返事をするので、また愛らしい部下たちに頬が緩んでしまう。茄子が先ほど放り投げた箒を再び拾い、辺りを掃いていく。唐瓜はゴミ拾い用火ばさみを使ってゴミを拾い集めている。唐瓜と同じように閻魔殿から持ってきた火ばさみを使ってゴミを拾い集め始めた。
「んん~♪」
茄子はいつもよりも上機嫌で鼻歌混じりに歌い始める。
「おに~のパンツはい~いパ~ン~ツ~、つよ~いぞ~、つよ~いぞ~。」
可愛いお尻をふりふり振りながら、踊るように掃く姿がなんとも子どもっぽい。
「ほんとッ、単純なやつ」
ゴミ拾い用火ばさみをカチカチならしながら唐瓜が肩をすくめる。「あいつ白鷺様がいるから上機嫌なんですよ」なんて唐瓜が言うものだから、少し照れくさくなって曖昧にほほ笑んだ。
「なぁ、唐瓜。」
今まで歌っていた茄子が手を止めて向き直った。
「モラルって、大事だなぁ。」
いきなりの謎の質問に沈黙する場。
「モラル…うん、そうだよ、大事だよ。…え、何?」
「何ってパンツの事だよ。パンツを履くことはモラルの基本だろ?だから俺はパンツをモラルと呼んでいる。」
相変わらず他の人とは少し違う感性を持っている。唐瓜と顔を見合わせて、話についていけないことに首を傾げた。
「鬼のパンツって言えばさァ、お前のパンツは従来(トラガワ)派?先端(ポリエステル)派?」
「俺は綿100%。敏感肌なんだ。」
「へぇー。どこのやつ?ピー◯・ジョン?チュチュア◯ナ?」
「いや…普通のだけど…なんでお前は現世の女性用下着ブランドに、詳しいわけ?」
年頃の中学生男子ってこういう話をするんだろうな、と横から優しい目で眺める。とその時、背後から聞きなれた重低音が響き、がっしりとした重みのある手が私の肩に置かれた。
「白鷺さんは、チュチュア◯ナ派ですよね。」
「なんで知ってるのか、訳を聞かせていただきましょうか、鬼灯様。」
何処からか現れた鬼灯の手をペシンッと叩く。
「私が貴女の下着の趣味を知らないとでも?」
「何さも当たり前のように言ってるんですか。知ってる方が怖いですよ。」
今日の下着の色についても把握していそうで怖い。なんなら女の子の日の周期もそのうち把握しそうでもっと怖い。
「あれ?シラ様って現世に行ったことなかったんじゃなかったっけ?」
茄子が首を傾げる。
「そうですよ。あの世に来てからは一度も。」
タイミングがなかったわけではないが、まだ死後一度も現世には戻っていない。生前の知人に会うのも気が引けるというのが一番の理由かもしれない。社会人になって、街中で中学校時代のクラスメイトに会う感覚かもしれない。少し気まずい。
「じゃぁさ、どうやって買ってるの?」
興味深そうにこちらを見る茄子に微笑んだ。人の下着事情をあまり聞くものではないですよ、と注意をしながらも、茄子の質問に答える。
「通販とか…友達が現世に行ったときに、買ってきてもらってますよ。」
「へぇー。」
私の下着事情を聞いて何が楽しいんだろうか。今はありがたいことに地獄でも様々な手段を用いれば、現世のものを調達できる。それに現世の商品は非常に質がいいので出来れば、現世のものも多く手に入れたい。便利な世の中になったと感じれば感じる程、自分の歳を改めて感じてしまって少し嫌になる。
「今度、おっしゃって頂いたら私も現世に行ったときに買ってきますよ、下着。」
「全力でお断りします。というか嫌でしょ、180㎝の大男が女性のランジェリーショップにいて、下着買っていくとか。」
絶対私の下着の趣味とか色とかを把握するためだろ、と犯罪じみた彼の発言にげんなりするのだった。
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