第5話 いかにして彼らの確執は生まれたか
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あれは休憩時間のことだった、と閻魔が思い出すように目を閉じた。
閻魔によると鬼灯と白澤はすることもなく、ただただ休み処で肩を並べていたという。
お互い話すこともなければ、目配せをすることもなく、ただ座っているだけであった。ちょうどそこに厠から戻った閻魔が通りかかり、その一部始終を見ていたのだ。閻魔は二人に気が付くと声を掛けようと歩み寄ったが、先に沈黙に耐えられず白澤が遮るように鬼灯に語りかけた。
「ねぇ…賭けようか?」
なるべく笑みを絶やさず話しかける白澤に鬼灯は冷たく聞き返す。
「何をですか?」
そんな冷たい言葉に白澤の右頬が引き攣る。白澤は中国服の袖口から指を出すと厠を指差した。
「次そこから出てくる婦人の乳まわりが二尺八寸以上か以下か。勝ったほうが夕餉を奢る。」
「くだらないこと考えますね、貴方は……まぁいいですよ。」
鬼灯もそこそこ乗り気であった。
「僕は以上に賭ける」
それはただの願望だろと話を聞きながら思ったが、話の腰を折りそうだったので声にはしなかった。
「では私は以下で」
鬼灯はあまった以下を選択した。
それはただ単に暇つぶしであった。そう、「ただ」の。二人がそんな遊びをしているとも知らず、すぐ後に厠の出入り口に影が見えた。
「おっ」
「いや…まず女人かどうか…」
厠は中で男女に分かれている。固唾をのんで二人は見守ったが、そこから顔を出したのは汗だくの巨漢だった。
のっしのっしと効果音が付きそうな滑稽な歩き方であったが、しかし今の彼らにはその姿を笑う余裕はない。
「「どっちだ!⁉」」
「おば…いや、おじさんでしょうか…」
前を歩く巨漢を目で追いながら鬼灯がぼそりとこぼす。
「…い…いや、でもとりあえずアレは「以上」だろっ⁉僕の勝ち!」
確かに出てるお腹に乗った肉の塊は三尺八寸以上だ。しかし、負けず嫌いな鬼灯は周りをキョロキョロと見渡すと再び厠の方を指差した。
「待ってください。今出てきたお嬢さんはおそらく「以下」ですよ?さっきの方が男なら私の勝ちです」
後から出てきた女子は細身で美しいが胸は以下である。
「あやふやな可能性は除外して明らかな方を基準とするのも大事です。貴方も審判でしょう?」
「な…何だよ。腹立つ言い方だな」
図星を付かれた白澤の額に青筋が浮かぶ。
「ぐちゃぐちゃ言い訳しやがって……この倭人」
「ゴリ押しする人ですね、この漢人」
鼻の先がぶつかる程近づいて睨み合う二人に一部始終をみていた閻魔が間に入る。
「ちょっとちょっと、親善大会で喧嘩しないでよ。」
二人を引き剥がす。
「似てるんだし、良い顔して!ハイ笑って!」
その言葉が命取りだと言うことも知らずに閻魔が微笑む。
ープチッ
二人の何かが切れる音がした。
「これがその時受けた傷です。」
閻魔が胸元を開けると、中から良い塩梅に北斗七星の形についた傷が顔を出した。狙ってただろこれ。
「もともと合わなくてピリピリしてて…あの賭けで一気に爆発したみたいで…」
「くだらない…」
私は思わず口に出していた。
「いや…私もあの時は私もどうにかしていたんです。あんな賭け…」
私の右隣で頭を抱える鬼灯。反省をしている様子が伺える。
「でも譲りません。アレは私の勝ちです。」
頑なな彼に何を言っても意味はないと、諦めて私は肩をすくめた。そんな時桃太郎が怖々と手を上げた。
「あの…思いきって確かめてみては?スタッフ腕章をつけた日本の鬼だったんですよね?」
「そうか、そうだよね。あの時の名簿くらいあるよ。」
閻魔が納得したように手をぽんっと打った。
「あ、なら私とって来ます。」
これで鬼灯と白澤が仲直りするのだったら労働も惜しまない。私は急いで資料庫へと走った。
「あたし?ニューハーフだけど手術はしてないわよ。」
簡単に仲直りできたら苦労しない。
「体が男性なら胸囲は男性とみなします!」
【イーヤ、心が女性なら僕は女性だと思うね!】
携帯越しに怒鳴りあいを続ける二人に私たちは呆れて何も言えない。
「あの、俺帰りますね」
「あ、うん。お疲れ様」
→その後
閻魔によると鬼灯と白澤はすることもなく、ただただ休み処で肩を並べていたという。
お互い話すこともなければ、目配せをすることもなく、ただ座っているだけであった。ちょうどそこに厠から戻った閻魔が通りかかり、その一部始終を見ていたのだ。閻魔は二人に気が付くと声を掛けようと歩み寄ったが、先に沈黙に耐えられず白澤が遮るように鬼灯に語りかけた。
「ねぇ…賭けようか?」
なるべく笑みを絶やさず話しかける白澤に鬼灯は冷たく聞き返す。
「何をですか?」
そんな冷たい言葉に白澤の右頬が引き攣る。白澤は中国服の袖口から指を出すと厠を指差した。
「次そこから出てくる婦人の乳まわりが二尺八寸以上か以下か。勝ったほうが夕餉を奢る。」
「くだらないこと考えますね、貴方は……まぁいいですよ。」
鬼灯もそこそこ乗り気であった。
「僕は以上に賭ける」
それはただの願望だろと話を聞きながら思ったが、話の腰を折りそうだったので声にはしなかった。
「では私は以下で」
鬼灯はあまった以下を選択した。
それはただ単に暇つぶしであった。そう、「ただ」の。二人がそんな遊びをしているとも知らず、すぐ後に厠の出入り口に影が見えた。
「おっ」
「いや…まず女人かどうか…」
厠は中で男女に分かれている。固唾をのんで二人は見守ったが、そこから顔を出したのは汗だくの巨漢だった。
のっしのっしと効果音が付きそうな滑稽な歩き方であったが、しかし今の彼らにはその姿を笑う余裕はない。
「「どっちだ!⁉」」
「おば…いや、おじさんでしょうか…」
前を歩く巨漢を目で追いながら鬼灯がぼそりとこぼす。
「…い…いや、でもとりあえずアレは「以上」だろっ⁉僕の勝ち!」
確かに出てるお腹に乗った肉の塊は三尺八寸以上だ。しかし、負けず嫌いな鬼灯は周りをキョロキョロと見渡すと再び厠の方を指差した。
「待ってください。今出てきたお嬢さんはおそらく「以下」ですよ?さっきの方が男なら私の勝ちです」
後から出てきた女子は細身で美しいが胸は以下である。
「あやふやな可能性は除外して明らかな方を基準とするのも大事です。貴方も審判でしょう?」
「な…何だよ。腹立つ言い方だな」
図星を付かれた白澤の額に青筋が浮かぶ。
「ぐちゃぐちゃ言い訳しやがって……この倭人」
「ゴリ押しする人ですね、この漢人」
鼻の先がぶつかる程近づいて睨み合う二人に一部始終をみていた閻魔が間に入る。
「ちょっとちょっと、親善大会で喧嘩しないでよ。」
二人を引き剥がす。
「似てるんだし、良い顔して!ハイ笑って!」
その言葉が命取りだと言うことも知らずに閻魔が微笑む。
ープチッ
二人の何かが切れる音がした。
「これがその時受けた傷です。」
閻魔が胸元を開けると、中から良い塩梅に北斗七星の形についた傷が顔を出した。狙ってただろこれ。
「もともと合わなくてピリピリしてて…あの賭けで一気に爆発したみたいで…」
「くだらない…」
私は思わず口に出していた。
「いや…私もあの時は私もどうにかしていたんです。あんな賭け…」
私の右隣で頭を抱える鬼灯。反省をしている様子が伺える。
「でも譲りません。アレは私の勝ちです。」
頑なな彼に何を言っても意味はないと、諦めて私は肩をすくめた。そんな時桃太郎が怖々と手を上げた。
「あの…思いきって確かめてみては?スタッフ腕章をつけた日本の鬼だったんですよね?」
「そうか、そうだよね。あの時の名簿くらいあるよ。」
閻魔が納得したように手をぽんっと打った。
「あ、なら私とって来ます。」
これで鬼灯と白澤が仲直りするのだったら労働も惜しまない。私は急いで資料庫へと走った。
「あたし?ニューハーフだけど手術はしてないわよ。」
簡単に仲直りできたら苦労しない。
「体が男性なら胸囲は男性とみなします!」
【イーヤ、心が女性なら僕は女性だと思うね!】
携帯越しに怒鳴りあいを続ける二人に私たちは呆れて何も言えない。
「あの、俺帰りますね」
「あ、うん。お疲れ様」
→その後