第5話 いかにして彼らの確執は生まれたか
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今日はいつもよりも早く仕事が終わった。いつもとさほど量は変わらなかったが、やる気というのか根気というのかがいつもよりあっただけのことである。
しかしそのまま上がるときっと鬼灯に扱き使われるし、黙ってそこにいてもやっぱり扱き使われるので、大急ぎで飛び出してきた。特にすることもないので閻魔殿のお掃除をすることに。
門の前を箒ではく。やはり地獄であっても元は人間。未だに神や仏や、運や風水を信じてしまう。
門や出入り口を綺麗にすると神様が通りやすいと聞いて、生前は毎日のように門の前や玄関をピカピカにしていた。そう思うとまだ人間臭さが抜けてないなと痛感する。
「あ、白鷺さん」
一人で苦笑する私は声をかけられて慌てて顔を上げた。
「桃太郎さん!」
そこには天国で薬屋白澤の元で働く元英雄、桃太郎がいた。
「こんにちは。」
相変わらず人懐こい笑顔である。
「こんにちは。今日はどうなされたんですか?」
「白澤様が報告書を渡して来いと…」
「天国との外交は鬼灯様ですね。御案内します。」
箒を傍にたまたま居た獄卒に手渡すと、閻魔殿の門をくぐった。
「閻魔殿は初めてですか?」
物珍しそうに周りを見渡す桃太郎に問いかけると、少し照れたように頷いた。
「不思議なところでしょう?広くて高くて…柱の一本一本が太く丈夫で。」
やはり閻魔一人が大きいのでこれ程の造りにしないと、簡単に壊れてしまう。
「先日はうちの上司がすいませんでした。鬼灯様には何か言われましたか?」
先日とは白澤の元に行った時のことだろう。あれから一度も白澤の元には訪れていない。
「こってり説教されました。立場を理解してないとか、無防備だ、とか。」
あの後、鬼灯はなんの違和感もなくいつも通り接して来た。深くまで追求するときっと鬼灯の怒りに触れると思うので黙っておこうと思っている。
触れぬ鬼神に祟りなし、だ。
桃太郎が持ってきた決算書に判子を押した我が上司はいつも通り冷静な表情で、
「ハイどうぞ、白澤さんにお渡しください。」
と桃太郎に手渡した。そんな鬼灯を見て桃太郎はポツリと、
「鬼灯さんってやっぱり白澤様に似てますよね。目が切れ長で…」
と漏らした。すると整った鬼灯の顔がひどく歪む。
「あ、私も白澤様を初めて見たとき思いました!全体的な雰囲気というか…」
私も手を叩いて同意する。あの時の驚きは忘れられないが、それでも正反対な人間だということも忘れてはいけない。
「やめてください。ひどく屈辱です。」
これ以上ないほど嫌な顔をする。苦虫を嚙み潰したよう表情の鬼灯にこれ以上話は広げない方がいいと判断した。
「けど、白鷺さんはイイですね。こんなに素晴らしい上司がいて…。」
「白澤様も素晴らしい方じゃないですか。」
桃太郎は大きく落胆した様子で首を横に振ると、
「そんなことないですよ…。すぐに女性を連れてくるし…お客様に手を出すし」
それに…と桃太郎は言葉を続けた。彼が話をしたのは、白澤のいつものお店での様子だという。
「へぇ、天照大神の侍女なんだ。凄いね!女の子の憧れじゃない。可愛いしねー。」
「ありがとうございます。」
「この後何か用事は?ちなみに、僕は今晩暇です。」
「いや…あの…私、彼氏います。」
「えーそうなの?残念。別れたら教えてね。」
「別れません…」
「あっ、お香ちゃん、いらっしゃい❤」
と、お店に来る女の子には片っ端から声をかけているらしい。なんだかそれを聞くと、この間の一件はあそこまで揉めるようなことだったのかと不思議に思ってしまう。
「こういう歯の浮くようなこと、ペロッと言っちゃう人、いるんですねぇ」
呆れたように肩をすくめた桃太郎。確かに呆れるわ。いくら聖獣であろうと、上司であろうと、私がその場にいたら殴りかかっていただろう。
その時、
ーーガッ!!!
鬼灯が側の柱目掛けて拳を振り上げたと思うと、そのまま砕けるほどの強さで殴りつけた。粉パラパラと破片が床に散らばる。
鬼灯が顔を上げるといつも通りだったが、額の青筋は隠せていない。鬼灯は放心状態の桃太郎に手の甲を反対の手で撫でながら、
「…申し訳ございません。気にしないでください。」
と軽く頭を下げた。ストレスの捌け口が極端すぎると、こちらもこちらで呆れてしまう。それほど白澤とは反りが合わないのだろう。
「白鷺さん。お掃除おねがいしてもよろしいですか?」
「わかりました。ついでに、救急箱持って来ますね。」
手の甲を痛そうにスリスリとさする鬼灯に言われて、部屋を出ると箒を探しに私は廊下を足早に進んだ。
→
しかしそのまま上がるときっと鬼灯に扱き使われるし、黙ってそこにいてもやっぱり扱き使われるので、大急ぎで飛び出してきた。特にすることもないので閻魔殿のお掃除をすることに。
門の前を箒ではく。やはり地獄であっても元は人間。未だに神や仏や、運や風水を信じてしまう。
門や出入り口を綺麗にすると神様が通りやすいと聞いて、生前は毎日のように門の前や玄関をピカピカにしていた。そう思うとまだ人間臭さが抜けてないなと痛感する。
「あ、白鷺さん」
一人で苦笑する私は声をかけられて慌てて顔を上げた。
「桃太郎さん!」
そこには天国で薬屋白澤の元で働く元英雄、桃太郎がいた。
「こんにちは。」
相変わらず人懐こい笑顔である。
「こんにちは。今日はどうなされたんですか?」
「白澤様が報告書を渡して来いと…」
「天国との外交は鬼灯様ですね。御案内します。」
箒を傍にたまたま居た獄卒に手渡すと、閻魔殿の門をくぐった。
「閻魔殿は初めてですか?」
物珍しそうに周りを見渡す桃太郎に問いかけると、少し照れたように頷いた。
「不思議なところでしょう?広くて高くて…柱の一本一本が太く丈夫で。」
やはり閻魔一人が大きいのでこれ程の造りにしないと、簡単に壊れてしまう。
「先日はうちの上司がすいませんでした。鬼灯様には何か言われましたか?」
先日とは白澤の元に行った時のことだろう。あれから一度も白澤の元には訪れていない。
「こってり説教されました。立場を理解してないとか、無防備だ、とか。」
あの後、鬼灯はなんの違和感もなくいつも通り接して来た。深くまで追求するときっと鬼灯の怒りに触れると思うので黙っておこうと思っている。
触れぬ鬼神に祟りなし、だ。
桃太郎が持ってきた決算書に判子を押した我が上司はいつも通り冷静な表情で、
「ハイどうぞ、白澤さんにお渡しください。」
と桃太郎に手渡した。そんな鬼灯を見て桃太郎はポツリと、
「鬼灯さんってやっぱり白澤様に似てますよね。目が切れ長で…」
と漏らした。すると整った鬼灯の顔がひどく歪む。
「あ、私も白澤様を初めて見たとき思いました!全体的な雰囲気というか…」
私も手を叩いて同意する。あの時の驚きは忘れられないが、それでも正反対な人間だということも忘れてはいけない。
「やめてください。ひどく屈辱です。」
これ以上ないほど嫌な顔をする。苦虫を嚙み潰したよう表情の鬼灯にこれ以上話は広げない方がいいと判断した。
「けど、白鷺さんはイイですね。こんなに素晴らしい上司がいて…。」
「白澤様も素晴らしい方じゃないですか。」
桃太郎は大きく落胆した様子で首を横に振ると、
「そんなことないですよ…。すぐに女性を連れてくるし…お客様に手を出すし」
それに…と桃太郎は言葉を続けた。彼が話をしたのは、白澤のいつものお店での様子だという。
「へぇ、天照大神の侍女なんだ。凄いね!女の子の憧れじゃない。可愛いしねー。」
「ありがとうございます。」
「この後何か用事は?ちなみに、僕は今晩暇です。」
「いや…あの…私、彼氏います。」
「えーそうなの?残念。別れたら教えてね。」
「別れません…」
「あっ、お香ちゃん、いらっしゃい❤」
と、お店に来る女の子には片っ端から声をかけているらしい。なんだかそれを聞くと、この間の一件はあそこまで揉めるようなことだったのかと不思議に思ってしまう。
「こういう歯の浮くようなこと、ペロッと言っちゃう人、いるんですねぇ」
呆れたように肩をすくめた桃太郎。確かに呆れるわ。いくら聖獣であろうと、上司であろうと、私がその場にいたら殴りかかっていただろう。
その時、
ーーガッ!!!
鬼灯が側の柱目掛けて拳を振り上げたと思うと、そのまま砕けるほどの強さで殴りつけた。粉パラパラと破片が床に散らばる。
鬼灯が顔を上げるといつも通りだったが、額の青筋は隠せていない。鬼灯は放心状態の桃太郎に手の甲を反対の手で撫でながら、
「…申し訳ございません。気にしないでください。」
と軽く頭を下げた。ストレスの捌け口が極端すぎると、こちらもこちらで呆れてしまう。それほど白澤とは反りが合わないのだろう。
「白鷺さん。お掃除おねがいしてもよろしいですか?」
「わかりました。ついでに、救急箱持って来ますね。」
手の甲を痛そうにスリスリとさする鬼灯に言われて、部屋を出ると箒を探しに私は廊下を足早に進んだ。
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