第4話 白澤
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そこには音速を超えるかのような鉄槌を下した拳を掲げる上司、鬼灯がいた。その姿にホッとする一方、煙が上がるほどのパンチを繰り出した馬鹿力にゾッとする。
「閻魔大王から聞いて、もしやと思って駆けつけてみたら、案の定絡まれているなんて。」
「断ったのですが、少し強引だったので。」
逃げられませんでした、と付け加えて誤魔化すように笑うと鬼灯があからさまに大きなため息をついた。
「さぁ、帰りますよ。」
鬼灯が私の手を引いた途端、私を押し除けるように白澤が鬼灯に勢いよく迫る。
「酷い挨拶をしたら、もうサヨウナラか、オイ!こんの、冷徹野郎!」
「それが売りの漫画ですから。」
白い肌に真っ赤な鼻血を垂らして、怒りを露わにする白澤。あの鉄拳を喰らってもなおピンピンしているところを見ると流石聖獣とも言えよう。白澤に押しやられて、よろめいた私を桃太郎が背後から支えると肩を竦めた。
「何故かこの二人、仲が悪いんです…。」
「そうらしいですね…。」
桃太郎がこっそり教えてくれるので、私の返事にもため息が混じる。シロと柿助を見ていて、犬猿の仲、という言葉を忘れかけていたがこの二人を見ると嫌でも思い出してしまう。
「第一、なんでお前がここにいるんだよ!用がないならとっとと帰れ!」
「だから、さっきから帰ると言っているでしょう」
鼻の頭が当たるほどの至近距離で怒鳴り散らす聖獣と鬼神に、私はなす術なく茫然とやりとりを眺めるしかない。
「私は大切な部下を迎えに来たのです。貴方と遊ぶ暇など私達にはありません。」
「部下ぁ!?」
しばらく誰のことかと悩んでいる様子であったが、急にハッと思い立ったように白澤の目が私を捕らえる。私は慌ててお辞儀をする。
「申し遅れました。私、閻魔大王第二補佐官、白鷺でございます。」
白澤の顔が青ざめていく。
「彼女は私の直属の部下ですから、口説かないで頂きたい。」
ワナワナと口元を震えさせて、言葉を失う白澤に向かって、これ以上ないほどの鬼の形相で睨みつける鬼灯は、形の歪んだ白澤の頬を力一杯捻りあげる。
「おい、この野郎。その角へし折ってやってもいいんだぞ?」
そう言う白澤も反撃して無防備な鬼灯の頬をつねりあげる。腹に拳を叩き込むことも出来るというのに。
「子供ですね。」
「男ってみんな、こんなものですよ。」
桃太郎と二人で肩を竦めて、ため息をこぼした。しばらく二人の睨み合い、言い合いが続いたがこちらが退屈してきた。そろそろいい加減にしてほしい。
「鬼灯様も白澤様もやめましょう?」
間に入ってなだめるとやっと二人はそっぽを向いた。まだ茄子と唐瓜の喧嘩の方が聞きわけがある。更に子供のような二人だ。
「なんだい、君。もしかして白鷺ちゃんが僕にとられるのが怖いんじゃないの?」
再び白澤が挑発する。放っておけばいいものを鬼灯もそれに言葉を返す。
「白鷺さんが貴方を選ぶと思ってるのですか?」
「あぁ、思ってるね。僕は狙った女の子は逃がさないから。」
「手に入れても保管はできてませんけどね。」
「五月蠅い!」
白澤の手が伸びて私の肩を抱いた。薬屋なのにふわりと甘い香りがした。白衣に顔が埋まるとその奥から感じる男の匂いにどきりとする。
「こんな冷徹な上司より、僕の所においでよ。昼夜問わず幸せにしてあげるよ。」
”主に夜の方はね”と付け加える。
「結構です」
「つれないなぁ」
そっと頭に口元を寄せてちゅっと音を立てて吸い付いた。柔らかい唇に少しいやらしいリップ音。無意識に顔に熱が集まる。初対面の女性に口づけをするなんて、なんて神経をしているんだ。
「また、奈落の底に落ちたいですか?」
そんな白澤の手を鬼灯がきりきりと締め上げる。またって、一度落ちてるのか、とこの二人の関係が心配になってきた。
「いいよ、落ちたって。でもこの子は僕がもらう」
クスリと耳元で艶っぽく笑う。肩に回された腕に力が入って、ぎゅっと引き寄せられ顔が再び白澤の胸に押し付けられた。
「勝手に言ってなさい」
鬼灯は強引に私を白澤の腕から引き寄せると、
「帰ります」
そういって踵を返して去って行ってしまった。その背中にしばらくおろおろした後、
「あ、白澤様ありがとうございました。またプライベートで来ますので、是非処方してください。」
と私は急いで頭を下げ、すたすたと早足で去って行く鬼灯の後を追った。
「ねぇ、桃タロー君。」
「はい?」
「あいつが持っていないものを僕が持っていたら、あいつはどんな顔をするだろうか」
「……はぁ、また痛い目見ますよ。」
白澤はポケットの中に入っていたハンカチに気が付くと、そっとそれを口元に寄せた。シャボンの中に腕に抱いたときの女の香りが混じっている。それを肺いっぱいに吸い込む。
そして、不敵に笑うのだった。
→その頃二人は
「閻魔大王から聞いて、もしやと思って駆けつけてみたら、案の定絡まれているなんて。」
「断ったのですが、少し強引だったので。」
逃げられませんでした、と付け加えて誤魔化すように笑うと鬼灯があからさまに大きなため息をついた。
「さぁ、帰りますよ。」
鬼灯が私の手を引いた途端、私を押し除けるように白澤が鬼灯に勢いよく迫る。
「酷い挨拶をしたら、もうサヨウナラか、オイ!こんの、冷徹野郎!」
「それが売りの漫画ですから。」
白い肌に真っ赤な鼻血を垂らして、怒りを露わにする白澤。あの鉄拳を喰らってもなおピンピンしているところを見ると流石聖獣とも言えよう。白澤に押しやられて、よろめいた私を桃太郎が背後から支えると肩を竦めた。
「何故かこの二人、仲が悪いんです…。」
「そうらしいですね…。」
桃太郎がこっそり教えてくれるので、私の返事にもため息が混じる。シロと柿助を見ていて、犬猿の仲、という言葉を忘れかけていたがこの二人を見ると嫌でも思い出してしまう。
「第一、なんでお前がここにいるんだよ!用がないならとっとと帰れ!」
「だから、さっきから帰ると言っているでしょう」
鼻の頭が当たるほどの至近距離で怒鳴り散らす聖獣と鬼神に、私はなす術なく茫然とやりとりを眺めるしかない。
「私は大切な部下を迎えに来たのです。貴方と遊ぶ暇など私達にはありません。」
「部下ぁ!?」
しばらく誰のことかと悩んでいる様子であったが、急にハッと思い立ったように白澤の目が私を捕らえる。私は慌ててお辞儀をする。
「申し遅れました。私、閻魔大王第二補佐官、白鷺でございます。」
白澤の顔が青ざめていく。
「彼女は私の直属の部下ですから、口説かないで頂きたい。」
ワナワナと口元を震えさせて、言葉を失う白澤に向かって、これ以上ないほどの鬼の形相で睨みつける鬼灯は、形の歪んだ白澤の頬を力一杯捻りあげる。
「おい、この野郎。その角へし折ってやってもいいんだぞ?」
そう言う白澤も反撃して無防備な鬼灯の頬をつねりあげる。腹に拳を叩き込むことも出来るというのに。
「子供ですね。」
「男ってみんな、こんなものですよ。」
桃太郎と二人で肩を竦めて、ため息をこぼした。しばらく二人の睨み合い、言い合いが続いたがこちらが退屈してきた。そろそろいい加減にしてほしい。
「鬼灯様も白澤様もやめましょう?」
間に入ってなだめるとやっと二人はそっぽを向いた。まだ茄子と唐瓜の喧嘩の方が聞きわけがある。更に子供のような二人だ。
「なんだい、君。もしかして白鷺ちゃんが僕にとられるのが怖いんじゃないの?」
再び白澤が挑発する。放っておけばいいものを鬼灯もそれに言葉を返す。
「白鷺さんが貴方を選ぶと思ってるのですか?」
「あぁ、思ってるね。僕は狙った女の子は逃がさないから。」
「手に入れても保管はできてませんけどね。」
「五月蠅い!」
白澤の手が伸びて私の肩を抱いた。薬屋なのにふわりと甘い香りがした。白衣に顔が埋まるとその奥から感じる男の匂いにどきりとする。
「こんな冷徹な上司より、僕の所においでよ。昼夜問わず幸せにしてあげるよ。」
”主に夜の方はね”と付け加える。
「結構です」
「つれないなぁ」
そっと頭に口元を寄せてちゅっと音を立てて吸い付いた。柔らかい唇に少しいやらしいリップ音。無意識に顔に熱が集まる。初対面の女性に口づけをするなんて、なんて神経をしているんだ。
「また、奈落の底に落ちたいですか?」
そんな白澤の手を鬼灯がきりきりと締め上げる。またって、一度落ちてるのか、とこの二人の関係が心配になってきた。
「いいよ、落ちたって。でもこの子は僕がもらう」
クスリと耳元で艶っぽく笑う。肩に回された腕に力が入って、ぎゅっと引き寄せられ顔が再び白澤の胸に押し付けられた。
「勝手に言ってなさい」
鬼灯は強引に私を白澤の腕から引き寄せると、
「帰ります」
そういって踵を返して去って行ってしまった。その背中にしばらくおろおろした後、
「あ、白澤様ありがとうございました。またプライベートで来ますので、是非処方してください。」
と私は急いで頭を下げ、すたすたと早足で去って行く鬼灯の後を追った。
「ねぇ、桃タロー君。」
「はい?」
「あいつが持っていないものを僕が持っていたら、あいつはどんな顔をするだろうか」
「……はぁ、また痛い目見ますよ。」
白澤はポケットの中に入っていたハンカチに気が付くと、そっとそれを口元に寄せた。シャボンの中に腕に抱いたときの女の香りが混じっている。それを肺いっぱいに吸い込む。
そして、不敵に笑うのだった。
→その頃二人は