片想い
(あの男嫌いで気弱なフロリーナがねぇ……)
素早い身のこなし、鋭い一撃、天馬との絆、仲間達との連携───、どれをとっても一流と言える腕前に見えた。
私なんかよりもずっと強い。姉さんと比べても遜色ない……いや、もっとすごいかもしれない。
良い縁があったんだろうな。私みたいにフラフラと傭兵をするのではなく、きちんとした軍に身を置いて、仲間が出来て。別に、羨ましいってワケじゃ無いけど。私には私のやり方があるんだし。
成長した彼女をイリアの騎士として誇りに思う。けれど同時に、羨望とも嫉妬ともつかないもやもやした気持ちがあったのは確かだった。
◇
厩舎へ向かう途中、フロリーナがヘクトル様に話しかけている所を見かけ、咄嗟に隠れる。
「何やってんの、私……!」
別にやましい事なんて何も無いのに、思わず身を隠してしまった。
彼女があんなに必死に話しかけている所を初めて見たのだ。しかも男に。
二人が何を話すのか気になって、その場から動けなかった。
盗み聞きの為にここに来たんじゃ無いんだと、誰に言うでもなく心の中で言い訳をしながら、しっかりと聞き耳を立てていた。
◇(支援B)
短い悲鳴と共に足音が遠ざかり、ヘクトル様が「なんなんだよ…」と呆れている。
特に会話なく解散してしまい、拍子抜けした。それと同時にふぅ、とため息をつく。
いつの間にか握り締めた手に、汗をかいていた。
どうしてこんなに緊張していたのか、分からないフリをして、盗み聞きを気取られる前にさっさとこの場を離れる事にした。
鼓動が激しい。