ハグ




「ドロテア」

「あら先生、ご機嫌よう」

「元気がないね」

「そう見えます?」

「なんとなくだけれど」

「……演技力に自身が無くなるわね」

「?」

「何でもないの、気にしないでください」

「私、もう行きますね」
「…ドロテア」
「なんですか?部屋に戻って休みたいんですよ、私」

「あーあ、先生が抱きしめてくれるなら、疲れも吹き飛ぶかもしれないです、なんて…」
「わかった」

「えっ?」

「おいで」
「まさか本気にしちゃったんですか?冗談だったんですけど───」




「……私の負けね」

「ふふ、素直じゃないね」

「先生って本当に人たらしなんだから」

「そうかな」
「そうです!」

「かわいい生徒の為に何かしてあげたくて」

「そういうところですよ、先生」

「すまない」

「別に悪い事じゃ無いんですけどねえ」

「よしよし」

「…他の子達にもしてあげてるんですか?」
「このあいだリンハルトに──」
「リンくんに?!」

「いや、リンハルトに聞いたんだ。抱きしめることで心身の疲労が軽減するらしい、と」
(…そうよね、流石の先生でもそれはね……)

「リンハルトと試してみようと思ったんだけど、エーデルガルトに止められてね」
(よくやったわ、エーデルちゃん…!)

「それで、折角だから試してみようと思って……どうだろうか」

「まあ、確かに…暖かくて、心地良いです、とても」

「それなら良かった」

「他の子達にはやらないでくださいね」

「どうして?」

「…どうしてもです」

「…?…わかった」

「ふふ、約束ですよ」



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