春眠暁を覚えず
そして、私たちは何とか生き延びた。
あまりにぼろぼろで、勝利と呼べるのかは分からないけれど、とにかく生き残る事ができた。
◇
暫くたっても、戦争が終わっても、先生は引っ張りだこだった。
あらゆる場所を忙しなく駆け回っている姿に懐かしさを感じて、笑みがこぼれる。
ある日、会議の時間に先生が現れなかった。
大抵は「釣りをしていた」とか「犬猫に餌をやっていた」とか、そんな理由で遅刻してくるのが日常。
皆も「またか」と、慣れた様子で先生を探し始める。
私も先生を探して修道院内をうろうろする。
特に当てもなく歩きながら、ふと思い立って女神の塔に赴いた。
「ここにいたらいいのに」なんて思いながら、扉を開くと──
そこに、思い描いていた姿があった。
◇
山間の小さな村で、私達は暮らしている。
終わりの見えない闇との戦いが続く中、束の間の休息。
隣でぐうぐうと寝ている彼女の頬に、そっとキスをする。軽く身じろいだものの、起きる気配はない。
窓から入る爽やかな風が、彼女の藍色の髪をさらさらと揺らす。柔らかな春の陽射しが心地よい。
まだまだやる事が山積みの彼女と過ごす、穏やかなひと時。
このささやかな幸せがいつまでも続いて欲しいと、切に願う。
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