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▷ Ver. Auron
「アーロンとキルヒェは大丈夫だろうか」
「あー、やっぱギスギスしてたよな? オレらが異界に行ってる間に何があったのやら……アーロンの野郎はアタマ固えし、キルヒェはキルヒェで何考えてるか分からねえしよ」
「彼女にも事情がありそうだ。ひとまず、私たちは暖かく見守ろう」
「ハア……若いってのも大変だねぇ」
⌘ ⌘ ⌘ ⌘
「…………」
「…………」
「……………」
「…………………」
「……あのさ、ベッド使ったら? どう考えても私がソファの方がいいでしょ」
「いい。俺はここで寝る」
アーロンは目を閉じたまま素っ気なく答える。体格的にキルヒェがソファを使うべきなのは明白だが、彼は頑として譲ろうとしない。
「(変に気を遣われると気まずいっていうか……私が男だったらこうはならないんだろうな)」
「(そういえば、三人の中でこの人が一番歳近いんだっけ。普通はこんな風に気を遣うものなのかな。そういうの、全然分からない)」
「(普通って何だろう。恋愛だとか、男女のあれこれだとか、自分には関係のないものだと思ってた。これからだってそう)」
ふと、脳裏に幼いシーモアの顔が思い浮かぶ。
「(もしかして、あれが初恋ってやつだったのかな。でも、あの時はそれどころじゃなかったし、どちらかというと兄妹みたいな感じだったな。一緒に居られたら、それだけで良かった……)」
ソファに横たわるアーロンに意識を戻す。相変わらず微動だにしないが、もう寝てしまったのだろうか?
「(こっちが悪いような気がしてくるから、せめて掛け布団くらいは使って欲しいけど……)」
ベッドの上の肌掛けを手に取った。わずかな逡巡の末、アーロンに近付く。その瞬間、世界がぐるりと回った。
「……っ!」
背中に受けた衝撃に小さく呻く。何が起こったのか、瞬時に理解出来なかった。吐息を感じそうなほど間近に迫る男の顔。どうやらアーロンがキルヒェに跨り、その両手をがっちりと押さえつけているらしい。
「……! す、すまない、お前だったのか」
慌てて離れるアーロン。しかしキルヒェは唖然としたまま動けない。
「その……悪かった。次からは……次があるなら、だが……用があるときは、声を掛けてくれ」
アーロンはぎこちない動作で肌掛けを受け取り、ふたたび背を向けてソファに沈む。
迂闊だった。眠っている元僧兵に近付くのがどれだけ危険か、少し考えれば分かったはずだ。獲物はすぐ手が届く所に立て掛けてある。抜刀されなかっただけ運が良い。
やっと立ち上がり、キルヒェもベッドに横たわる。
今更死ぬのが怖いとは言わない。けれど、確実に心拍数は上がっている。
「(大人の男の人って、私とはこんなに骨格が違うんだ……)」
手首に残る強い力、その熱さ。なぜだか、眠れぬ夜になりそうだった。
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