Children in Time
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見渡す限りの、青。溶け合うほどに近い空と海が、この上なく純粋な色彩を放っている。その中で唯一存在を許された白色が、形を変えながらふわふわと流れ、消えていく。平穏と言う言葉を形にしたら、こんな風景になるのではないだろうか。ニカは柔らかな潮風を頬に受けながら、感嘆の息を漏らした。
ゼルのお気に入りだというこの岬は、バラムの街の外れにある。見晴らしは最高だが、一歩間違えれば切り立った崖が待ち受けている危険な場所だ。道中モンスターが出没するということもあり、地元の人間でもむやみに近寄ることはないという。
もっとも、特殊な訓練を受けているゼルやニカにとっては、ささいな問題に過ぎないのだけれど。
隣を見やると、どこか自慢気なゼルの笑顔が返ってきた。今この景色を眺めているのは、世界中でたった二人だけだ。その事実が誇らしくもあり、なんだか勿体無いような気もする。
この素晴らしい景色を差し置いても嬉しいことがあった。今この瞬間、ニカの手に例のカメラが握られていることだ。
いつも身軽なゼルにしては、確かに多すぎる荷物ではあった。久々の帰省ともあれば色々準備もあるのだろうと、その時は気に留めなかったのだが、自宅を後にしても鞄の中身はさして減らない。
いよいよおかしいなと思い始めた矢先、「ジャーン!」という効果音と共に見慣れたセミハードのケースが飛び出したのだから本当に驚いた。
「えっ、これ……ひょっとしてもう直ったの!?」
「ふっふっふ……オレにかかればチョチョイのチョイだぜ!」
「でも、どうやって?」
ゼル曰く、自分で型を取ってパーツを作り上げたらしい。ずいぶんと簡単なことのように言ってのけるが、技術はもちろん相当な手間も掛かったことだろう。元あるものの複製ではなく、一から作るのだから尚更だ。
「すごい……! 大変だったでしょう。試験が終わってからでも良かったのに……」
「一緒にバラム行くって決まって、ソッコーで仕上げたんだよ。だってよ、写真が好きなら、ここもきっと撮りたくなるだろうなって……」
全くこの人は、どうしてこうも可愛いところがあるんだろう。自分で言っておいて照れ臭いのか、ゼルは頭をぽりぽりと掻きながら俯いている。
「ありがとう、ゼル。すっごく嬉しい……!」
喜びにまかせて、半ば取り縋るような形になってしまった。ゼルは耳をほんのりと染めて、おう、と小さく頷いた。
「それよか、写真、オレにも焼き増ししてくれよな」
「もちろん! そうとなったら綺麗に撮らなくちゃね」
早速ファインダーを覗き込む。本体を縦にしたり横にしたり屈み込んでみたり、色々な角度から撮影を試みる。どんな構図にしたところで、この場所の美しさをそのまま写しとることなど出来ないかもしれないけれど。
「ゼル。写って」
「へ、オレ?」
「ほらほら!」
オレじゃ画にならねぇよ、などとぼやきながらも、ゼルは海に近い方へと進み出た。
「……こうか?」
振り返った無防備な姿を写真に収める。一面の青色の中に、日射しをたっぷりと浴びた金色の髪がきらめく。頬の精悍な模様も少し日に焼けたうなじも、まるでこの景色のためにあるのではと錯覚するほどだ。
しかし、ゼルが大人しくモデルなどなっていられるはずもなく。
「……つーか、これじゃニカが写れないだろ」
「え、いいよ私は! 撮られるの苦手なの!」
「いーからいーから!」
「わ、」
走ってきたゼルに肩を抱かれ、強引に引き寄せられる。彼はニカの手からカメラをもぎ取ると、レンズをこちらに向け、腕をめいっぱい伸ばしてシャッターを切った。
「もっ……ゼル!」
腕の中でニカが喚いた。背中にぴったりと寄り添っていた温もりが、おもむろに離れていく。非難めいた視線を投げかけると、ゼルはいたずらが成功した子供のように口の端を上げていた。
「ひどいよ! 今の、絶対ピント合ってない!」
「なっ、そこかよ!?」
「だって……ふふっ」
「なに笑ってんだよ!……っく、あはは!」
何がおかしいのかよく分からないけれど、お腹を抱えて笑う。ひときわ強く吹いた風が、二人分の笑い声をさらっていった。
いよいよ日も傾き始めた。先ほどよりも優しい色に変わった日の光を受けてきらめく水面は、まるで無数の金の鱗のようだ。
二人は大きめの岩を見繕って、そこに肩を並べて座っていた。暫くは黙って海を見ていたが、やがてゼルが口を開いた。
「オレさ、嫌なことあったり、悲しくなったりしたら、いつもここへ来るんだ。そうすっと、誰かに『大丈夫』だって、言って貰えてるような気がしてさ。……変、かもしれねえけど」
「ううん。なんとなく、分かるかもしれない」
この広大な景色を見ていたら、誰だって穏やかな気持ちになるだろう。この場所に思い入れがある者ならば、尚更。
ゼルは少し微笑むと、ポケットの中から何かを取り出した。二つに折りたたまれた紙切れだった。広げるとちょうどL判くらいのサイズで、全面に何か絵のようなものが描いてある。
「これ、この場所に似てると思わねえ?」
「うーん、言われてみればそんな気もするけど……」
よく見ると、それは写真だった。随分古いものなのか、くしゃくしゃで印刷面もひどく傷ついている。全体的に青い色調で、海らしき風景が写っているのは分かるが、それがこの場所かと言われると判断しかねる。
「昔、ポケットに入れといたのを母さんが間違って洗っちまったらしい。どこで手に入れたかも全然覚えてねえんだけど、なんだか捨てられなくてよ」
刻まれた皺を伸ばすように、写真の表面を撫でる。色褪せた海を見つめる瞳は、ただただ優しい。
「ゼルは、本当にこの場所が好きなんだね」
「そうだなあ、なんか引き寄せられるものがあるんだよな。あれじゃね、パワースポットってやつ?」
からからと笑う表情はいつもの快活なものに戻っていた。
「折角だし、願掛けでもしとくか? 一緒にSeeD試験、受かりますよーに、って!」
「ふふ、この場所なら、本当にご利益ありそうだね」
ニカも肩を揺らして笑ったが、ふと浮かんだ問いに真面目な表情をつくる。
「ねえ、ゼルはどうしてSeeDを目指してるの?」
「オレか? そうだなぁ……強くなりたいから、かな? なんか、ありがちだけどよ」
ゼルは僅かに沈黙を落とす。顎に手を当て、自らの言わんとすることを整理しているようだった。
「腕っ節の強さだけが取り柄って自覚は、昔からあった。でもある時思ったんだよ。このままじゃ、どんなに強くなったってそれを活かせる道がない、良くてそこらのモンスター退治くらいだって。で、気付いたらソッコーで親に頼み込んで入学の手続き済ませて……ま、年齢的にギリギリだったってのもあったんだけどな」
「ゼルって、いつガーデンに来たんだっけ? なんだかずっと前からいたような気がしてた」
「あれは、確か13歳だったかな……」
ガーデンの規定には15歳までとあるが、ほとんどの生徒が10歳から12歳くらいまでに入学を済ませる。例外もあるが、その場合SeeDを目指すのはほぼ絶望的と言えるだろう。改めてゼルの能力の高さを思い知る。天性の才能と血の滲むような努力……もあるにはあるだろうが、彼の場合、好きこそ物の上手なれという言葉が一番しっくりくるように思う。
「バラムは弱い。それは今が平和だからだ。けど、この先もずっとそうだとは限らねぇ。ガーデンもあるけど、結局のところは中立の立場だしな。イザって時、家族や、友達……この景色も。自分の手で守れるような力が欲しい。軍人だったじいちゃんみたいに」
語る横顔はいつになく真剣で、見ているだけでゼルの故郷に対する想いが伝わってくる。そんな彼に感銘を受けると同時に、自分の意識の低さを嫌でも感じて、ちくりと胸が痛んだ。
「ニカはどうなんだ?」
「私は……正直、よく分からない。小さい頃からガーデンにいたから、SeeDを目指すのが当たり前だったの。それが自立するための、一番の近道だから。でも、それでいいのかなっていう疑問は、ずっとあった。碌に信念もないのに、って」
祖父が亡くなって以来、ニカにとっての目標は戦う力を身につけること、ひいてはガーデンからの自立だった。純粋に自分のためだけにあるこの理由は、ゼルのような人間からすると些か程度が低いと感じるかもしれない。
「……でも、やってみたいんだ。一生懸命取り組んできたことって、他にないから」
俯きながら呟いたニカの肩に、ぽふ、とゼルの手が降ってくる。驚いて顔を上げると、彼は穏やかに微笑んでいた。
「理由なんて、関係ねえよ。そんなの、必死でやってりゃ後から必ずついてくる。大事なのは行動だ。オレはニカが頑張ってること、ちゃんと知ってるぜ。それこそ、こうやって親しくなる前からさ」
な? と首を傾げるゼルを見て、本当にこの人には敵わないと思う。戦う力だけじゃない。ひたすらに前を向く強さも、手を差し伸べる優しさも。
(願掛け……か)
叶うかどうかは、最終的には自分次第なのだろう。けれどこの場所ならば、せめて誓い立ての証人くらいにはなってくれるかもしれない。
「ありがとう、ゼル。私、頑張るよ」
今はその背を追うので精一杯だけれど、いつか胸を張って肩を並べられるように。そんな思いを込めてゼルを見ると、彼は口元に笑みをたたえたまま力強く頷いた。
波は今も、静かに寄せている。
ゼルのお気に入りだというこの岬は、バラムの街の外れにある。見晴らしは最高だが、一歩間違えれば切り立った崖が待ち受けている危険な場所だ。道中モンスターが出没するということもあり、地元の人間でもむやみに近寄ることはないという。
もっとも、特殊な訓練を受けているゼルやニカにとっては、ささいな問題に過ぎないのだけれど。
隣を見やると、どこか自慢気なゼルの笑顔が返ってきた。今この景色を眺めているのは、世界中でたった二人だけだ。その事実が誇らしくもあり、なんだか勿体無いような気もする。
この素晴らしい景色を差し置いても嬉しいことがあった。今この瞬間、ニカの手に例のカメラが握られていることだ。
いつも身軽なゼルにしては、確かに多すぎる荷物ではあった。久々の帰省ともあれば色々準備もあるのだろうと、その時は気に留めなかったのだが、自宅を後にしても鞄の中身はさして減らない。
いよいよおかしいなと思い始めた矢先、「ジャーン!」という効果音と共に見慣れたセミハードのケースが飛び出したのだから本当に驚いた。
「えっ、これ……ひょっとしてもう直ったの!?」
「ふっふっふ……オレにかかればチョチョイのチョイだぜ!」
「でも、どうやって?」
ゼル曰く、自分で型を取ってパーツを作り上げたらしい。ずいぶんと簡単なことのように言ってのけるが、技術はもちろん相当な手間も掛かったことだろう。元あるものの複製ではなく、一から作るのだから尚更だ。
「すごい……! 大変だったでしょう。試験が終わってからでも良かったのに……」
「一緒にバラム行くって決まって、ソッコーで仕上げたんだよ。だってよ、写真が好きなら、ここもきっと撮りたくなるだろうなって……」
全くこの人は、どうしてこうも可愛いところがあるんだろう。自分で言っておいて照れ臭いのか、ゼルは頭をぽりぽりと掻きながら俯いている。
「ありがとう、ゼル。すっごく嬉しい……!」
喜びにまかせて、半ば取り縋るような形になってしまった。ゼルは耳をほんのりと染めて、おう、と小さく頷いた。
「それよか、写真、オレにも焼き増ししてくれよな」
「もちろん! そうとなったら綺麗に撮らなくちゃね」
早速ファインダーを覗き込む。本体を縦にしたり横にしたり屈み込んでみたり、色々な角度から撮影を試みる。どんな構図にしたところで、この場所の美しさをそのまま写しとることなど出来ないかもしれないけれど。
「ゼル。写って」
「へ、オレ?」
「ほらほら!」
オレじゃ画にならねぇよ、などとぼやきながらも、ゼルは海に近い方へと進み出た。
「……こうか?」
振り返った無防備な姿を写真に収める。一面の青色の中に、日射しをたっぷりと浴びた金色の髪がきらめく。頬の精悍な模様も少し日に焼けたうなじも、まるでこの景色のためにあるのではと錯覚するほどだ。
しかし、ゼルが大人しくモデルなどなっていられるはずもなく。
「……つーか、これじゃニカが写れないだろ」
「え、いいよ私は! 撮られるの苦手なの!」
「いーからいーから!」
「わ、」
走ってきたゼルに肩を抱かれ、強引に引き寄せられる。彼はニカの手からカメラをもぎ取ると、レンズをこちらに向け、腕をめいっぱい伸ばしてシャッターを切った。
「もっ……ゼル!」
腕の中でニカが喚いた。背中にぴったりと寄り添っていた温もりが、おもむろに離れていく。非難めいた視線を投げかけると、ゼルはいたずらが成功した子供のように口の端を上げていた。
「ひどいよ! 今の、絶対ピント合ってない!」
「なっ、そこかよ!?」
「だって……ふふっ」
「なに笑ってんだよ!……っく、あはは!」
何がおかしいのかよく分からないけれど、お腹を抱えて笑う。ひときわ強く吹いた風が、二人分の笑い声をさらっていった。
いよいよ日も傾き始めた。先ほどよりも優しい色に変わった日の光を受けてきらめく水面は、まるで無数の金の鱗のようだ。
二人は大きめの岩を見繕って、そこに肩を並べて座っていた。暫くは黙って海を見ていたが、やがてゼルが口を開いた。
「オレさ、嫌なことあったり、悲しくなったりしたら、いつもここへ来るんだ。そうすっと、誰かに『大丈夫』だって、言って貰えてるような気がしてさ。……変、かもしれねえけど」
「ううん。なんとなく、分かるかもしれない」
この広大な景色を見ていたら、誰だって穏やかな気持ちになるだろう。この場所に思い入れがある者ならば、尚更。
ゼルは少し微笑むと、ポケットの中から何かを取り出した。二つに折りたたまれた紙切れだった。広げるとちょうどL判くらいのサイズで、全面に何か絵のようなものが描いてある。
「これ、この場所に似てると思わねえ?」
「うーん、言われてみればそんな気もするけど……」
よく見ると、それは写真だった。随分古いものなのか、くしゃくしゃで印刷面もひどく傷ついている。全体的に青い色調で、海らしき風景が写っているのは分かるが、それがこの場所かと言われると判断しかねる。
「昔、ポケットに入れといたのを母さんが間違って洗っちまったらしい。どこで手に入れたかも全然覚えてねえんだけど、なんだか捨てられなくてよ」
刻まれた皺を伸ばすように、写真の表面を撫でる。色褪せた海を見つめる瞳は、ただただ優しい。
「ゼルは、本当にこの場所が好きなんだね」
「そうだなあ、なんか引き寄せられるものがあるんだよな。あれじゃね、パワースポットってやつ?」
からからと笑う表情はいつもの快活なものに戻っていた。
「折角だし、願掛けでもしとくか? 一緒にSeeD試験、受かりますよーに、って!」
「ふふ、この場所なら、本当にご利益ありそうだね」
ニカも肩を揺らして笑ったが、ふと浮かんだ問いに真面目な表情をつくる。
「ねえ、ゼルはどうしてSeeDを目指してるの?」
「オレか? そうだなぁ……強くなりたいから、かな? なんか、ありがちだけどよ」
ゼルは僅かに沈黙を落とす。顎に手を当て、自らの言わんとすることを整理しているようだった。
「腕っ節の強さだけが取り柄って自覚は、昔からあった。でもある時思ったんだよ。このままじゃ、どんなに強くなったってそれを活かせる道がない、良くてそこらのモンスター退治くらいだって。で、気付いたらソッコーで親に頼み込んで入学の手続き済ませて……ま、年齢的にギリギリだったってのもあったんだけどな」
「ゼルって、いつガーデンに来たんだっけ? なんだかずっと前からいたような気がしてた」
「あれは、確か13歳だったかな……」
ガーデンの規定には15歳までとあるが、ほとんどの生徒が10歳から12歳くらいまでに入学を済ませる。例外もあるが、その場合SeeDを目指すのはほぼ絶望的と言えるだろう。改めてゼルの能力の高さを思い知る。天性の才能と血の滲むような努力……もあるにはあるだろうが、彼の場合、好きこそ物の上手なれという言葉が一番しっくりくるように思う。
「バラムは弱い。それは今が平和だからだ。けど、この先もずっとそうだとは限らねぇ。ガーデンもあるけど、結局のところは中立の立場だしな。イザって時、家族や、友達……この景色も。自分の手で守れるような力が欲しい。軍人だったじいちゃんみたいに」
語る横顔はいつになく真剣で、見ているだけでゼルの故郷に対する想いが伝わってくる。そんな彼に感銘を受けると同時に、自分の意識の低さを嫌でも感じて、ちくりと胸が痛んだ。
「ニカはどうなんだ?」
「私は……正直、よく分からない。小さい頃からガーデンにいたから、SeeDを目指すのが当たり前だったの。それが自立するための、一番の近道だから。でも、それでいいのかなっていう疑問は、ずっとあった。碌に信念もないのに、って」
祖父が亡くなって以来、ニカにとっての目標は戦う力を身につけること、ひいてはガーデンからの自立だった。純粋に自分のためだけにあるこの理由は、ゼルのような人間からすると些か程度が低いと感じるかもしれない。
「……でも、やってみたいんだ。一生懸命取り組んできたことって、他にないから」
俯きながら呟いたニカの肩に、ぽふ、とゼルの手が降ってくる。驚いて顔を上げると、彼は穏やかに微笑んでいた。
「理由なんて、関係ねえよ。そんなの、必死でやってりゃ後から必ずついてくる。大事なのは行動だ。オレはニカが頑張ってること、ちゃんと知ってるぜ。それこそ、こうやって親しくなる前からさ」
な? と首を傾げるゼルを見て、本当にこの人には敵わないと思う。戦う力だけじゃない。ひたすらに前を向く強さも、手を差し伸べる優しさも。
(願掛け……か)
叶うかどうかは、最終的には自分次第なのだろう。けれどこの場所ならば、せめて誓い立ての証人くらいにはなってくれるかもしれない。
「ありがとう、ゼル。私、頑張るよ」
今はその背を追うので精一杯だけれど、いつか胸を張って肩を並べられるように。そんな思いを込めてゼルを見ると、彼は口元に笑みをたたえたまま力強く頷いた。
波は今も、静かに寄せている。