Children in Time
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思い出したことがあるかい
子供の頃を
その感触
そのときの言葉
そのときの気持ち
大人になっていくにつれ
何かを残して 何かを捨てていくのだろう
時間は待ってはくれない
にぎりしめても
ひらいたと同時に離れていく
そして………
「終わった?」
ルナティックパンドラにてアデルを倒し、時空を遡って辿り着いた未来。
激闘の末、ゼルたちは悪しき魔女アルティミシアを撃ち破った。未来と過去を繋ぐ負の因果、滅亡へのループは断たれたのだ。
「帰ろ~! 僕たちの時代へ帰ろうよ~!」
アーヴァインがどこからか叫ぶ。
時間圧縮によって法則性を歪められた時空には、もはや上下も、遠近という概念すらもない。元の世界に戻るため、そんな混沌の中を互いに声を掛け合いながら走る。
「時代をまちがえないように~!」
「時間のひずみに落ちないように!」
誰かと繋がっていなければ、ちっぽけな人間など容易く渦中に呑まれ、消滅してしまうだろう。オダインから説明を受けた時は荒唐無稽に思えた話が、今まさに現実として起こっているのを感じる。
互いの存在を消さないために。そして、自身の存在を保つために。呼び声に必死に返答しながら、ゼルはふと、ここにいない少女を思い浮かべた。
(ニカ……今、どこにいるんだ?)
時間圧縮のことを彼女は知らない。けれど、少なくともゼルはニカの存在を信じている。たとえ一方的だとしても、そうして繋がっている限り、彼女が時空に呑まれて消えてしまうことはない……はずだ。
けれどこの瞬間、もし彼女が孤独だったら。
圧縮された時間に希釈され、次第に自分という存在を失っていく……そんな得体の知れない絶望を前に、膝を付いていたとしたら。
………いや。
それでもきっと、彼女は諦めない。何度でも立ち上がり、抗い続けるだろう。そんな人だからこそ、こんな時に側に居れたらと思う。たとえ、その手を握り続けることしか出来ないとしても。
恋、というのが一体どんなものなのか、鈍感で経験もない自分にはよく分からない。何にせよ、この胸にある気持ちは、そんなありふれた名をつけられるような単純なものじゃない。それは確かだ。
けれどもし……この感情が恋慕をも内包していないというのなら。そんなもの、この先一生知らなくたって構わない。今ならはっきりと、そう言い切ることが出来る。
もっと甘酸っぱくて、どきどきするものだと思っていた。そんな想像とは少し違う。ひょっとしたら、世間の定義とも違うのかもしれない。
けれど、そんなことはどうでも良かった。だって、思っていたより何倍も温かくて、優しくて、幸せな気持ちだ。……痛いくらいに。
戦う意味も、理由も、何ひとつ見出せてはいないけれど。ニカに会いたい。会って、ただ話をしたい。
彼方まで広がる塩の湖や、プレートリフターが繋ぐ近未来の街並み。時間圧縮の先に待ち受けていた巨大な居城と、未来の魔女との戦い。それらを目の当たりにして、自分が何を感じ、何を成したか。そのすべてを。
(みんな、ごめんな)
心の中で密かに詫びる。
幼少期を過ごした思い出の地、荒れ野に佇むちいさな希望の光。そこで再会しようと、仲間たちと誓い合った。けれど今、この胸に浮かぶ情景は一つしかない。
約束なんてしていないけれど。それでもきっと、あの場所で会える。
彼方まで広がる青い海。水平線と溶け合う空。その狭間で、振り返った彼女が微笑む。そんな光景を、強く……強く、思い描いた。