『アカギ』 赤木しげる(青年)
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それは夏にさしかかろうとする時期。
youがオレにプレゼントをくれた。
アカギさんのシャツ。
別に誕生日というわけでもない。
ただ、自室で向かい合って話している際に、こう言って手渡された。
「アカギさんに着てほしいと思ってこのシャツ、買ってきちゃった。」
と。
とりあえず「ありがとう」と、礼を言って袋を開封すると……
そこから出てきたのは何とも珍妙な柄シャツ。
「……you………。」
「んー?」
「……これを……オレが着るのか?」
「きっ…気に入らなかった!?」
アカギの反応を見て、驚き、そしてうるうると涙目でアカギの顔色を伺うyou。
アカギはというと、youのその顔に「ウッ」と思いながらもチラリと手元のシャツに目を落とす。
薄い紫……藤色といえば聞こえはいいが、問題は柄……その絵柄なのだ。
鮮やかな緑の印字で無数に流れ星が飛んでいる……。
そんな物凄い残念感のある柄シャツ。
彼女には悪いが、流石にこのシャツは着れない。
そう思ったアカギはそれを伝えようと口を開く…。
「you……悪いが…。」
「そ……だよね…アカギさん、こんなの着ないよね……ッ…ごめんね…。」
「ぅ…。」
今にも涙が零れ落ちそうなyouの瞳…。
未だかつて感じたことのない罪悪感がアカギの全身を駆け巡った…。
「じゃ、じゃぁ、これは持って帰るから……残念だけど…。」
「いや……あの…。」
「昨日、急遽安岡さん達に雀荘に呼ばれてデートできなかったでしょ?
……だから、私…昨日拗ねちゃってアカギさんに迷惑かけたから……。
そのお詫びと思ったんだ……けど……また、空回っちゃいました、ね…。」
「・・・・。」
麻雀をしに行ってデートをお流れにし、youを拗ねさせたのは自分。
そしてyouに余計な気を使わせて今なお傷付け(ようとし)ているのも自分。
未だかつて流したことのない微妙な罪悪感による嫌な汗がアカギの額に浮かぶ…。
暫しの沈黙の後、それに耐えかねたyouが急に立ち上がった。
「っ……ごめんね!おじゃましましたっ……!」
「ッ……you!!」
咄嗟にyouの手を掴み、アカギは自分の胸に彼女の身体を引き寄せた。
バランスを崩したyouは思いっきりアカギの胸へとダイブする……。
「あか…ぎ…さん。」
「着る。」
「ぇ…?」
「着る、そのシャツ……正直、趣味じゃないけど……youが着てほしいなら。」
「アカギさん…!」
アカギ、苦渋の決断。
とりあえずyouと離れて、シャツを改めて手に取ってみた。
改めて再度見直してみても相変わらず凄いセンスである。
「(センスといえば……youはこんなにセンスが悪かっただろうか?)」
否。
アカギの記憶にある限りでは、彼女の着る服はそう悪いものではない。
むしろアカギ好みのスカートやらパンツやシャツを毎回絶妙に着こないしている。
ということは、その意図、その正解は一つ……。
「you……。」
「はい?」
「……その勝負、乗ってやる。」
「え…えっ…?!」
ギクリ…と、肩を震わすyou。
「オレはちゃんとこのシャツを着てやる、その代わりお前はオレのシャツを着ろ、上下生装備で。」
「上下生装備とな!?」
「このオレを謀ろうってんだ、それなりの覚悟あってのことだったんだろ?」
「な、何のことだか……私にはさっぱり…!」
「大方昨日のデートが流れた腹癒せ……ってトコだろ?」
「っ…どうして……なんでそういうこと言うの……?」
「おっと、そんな泣きそうな顔するなよ……鳴(泣)かせたくなるだろ。」
「!!!」
顔を赤くした時点でyouの負け、である。
アカギの推測通り、デートが流れた腹癒せにダサいシャツを着せ、
それを着たアカギを見て思いっきり笑って憂さを晴らす……。
その為の迫真の演技(らしい)!
……だったのだが。
「人を騙すにはもっと経験が必要だと思うよ。相手がオレなら猶更…。」
「くっ……!!」
まるで変装がバレて追い詰められた時の悪役のような状況のyou。
そんな彼女に対し、アカギはククク…と含み笑い。
「アンタ、たまに突拍子もない愉快犯になることあるよね。」
「ソンナコトナイデスヨ?」
「オイオイ、いつも一緒にいるんだぜ、あまりオレを甘く見るなよ?…それに、youの服のセンスくらい熟知してるさ。」
「うぅ~。」
「それに……いつもそれとなくオレ好みの服を選んでるのも知ってる。」
「……なんと!」
思いがけず自分の意図…ささやかな努力を知っていてくれた事実に驚き、
アカギの顔を見上げてyouは頬を赤く染めた。
先程までのしょうもない悪役のような表情は何処へやら…。
困ったような、それでも我慢できずに口元を緩ませて彼女はアカギの名を呼ぶ…。
「アカギさん……。」
「ん?」
「どうしよう……すごく、うれしい…。」
「アンタが思ってるよりももっと、ずっと、遥かに…抜け目が無いんだよ。オレは。」
「……ですね。」
「だから……馬鹿なコトはもうやめとけ。」
アカギがふっと微笑んだので、youも迷わず微笑み返した…。
そして、その優しい笑顔のままアカギは言った。
「沈黙は肯定と取る。」
「はい?」
「オレを罠に嵌めようとしていたことを認める。と、そういうことだな。」
「いや、あの……だから~それはその……何と言うか……悔しかったし…ちょっとした出来心っていうか…。」
「……やっと吐いたな。」
「ああぁッ!しまった!」
天使の微笑みが見る見るうちに悪魔へと変貌を遂げる……。
youの目に映るアカギの姿に悪魔の尻尾と角が見えた…。
王道のカマかけに見事ひっかかったyouにもう逃げ場はなく…。
「さて、じゃぁこの悪趣味なシャツを着てやろうかね。」
「だぁあーー!待ってまって~~!着なくていい~!」
「ククク…これを着たオレが見たいんだろ?オレだって、オレのシャツを着たお前が見たい。見事な需要と供給じゃないか。」
「いゃぁああ~~!」
スッ…と紫のシャツに袖を通し、着用完了したアカギ。
ついさっきまでは、どんな笑いが待ち受けているかワクワクしていたyouだったが……。
「「・・・・。」」
「アカギさん……その星柄……かわいい。」
「……そーかい。」
ちょっと似合っていた。
以外な結果に、何とも判断し難い雰囲気が漂っていたが、そこはやはり鬼の子悪魔の子。
自分の目的を遂行する為にはモラルもルールも相手の意思さえも厭わない。
その他諸々の事情など完全無視。
壁に掛けてあるハンガーから自分のシャツを外して、youにバサっと投げて寄越した。
「ホラ、何やってんだ……早く脱げよ。あ、間違った……早く着ろよ。」
「ワザとらしく間違うなぁあ!!」
「いいからとっとと着替えろ。それとも……手伝ってほしいのか?」
「っ……あくまーーーーッツ!!」
悪魔を騙そうとするからこうなるんだよ。
(これで懲りたか?)
(だって!元はと言えばアカギさんが勝負に行っちゃったから!)
(悪かった。今度どっか連れてってやるよ…。)
(……パフェとケーキも奢ってください…。)
(はいはい、お姫様の仰せの通りに。)
(あああ、アカギさんにお姫様って言われた…ッツ?!!)
(……そこかよ。)
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