『アカギ』 赤木しげる(青年)
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その日の私は
それはもう嬉しそうな顔をして歩いていたのだろう。
U're my Lady-Luck!
「・・・・。」
何事にも動じない屈強な精神力と忍耐力を持つ
伝説の雀士、赤木しげるはその時……
前方から歩いてくる女の顔に正直凄く驚いた。
「(いい顔してやがる……大勝負に勝った、って感じだな…。)」
まるで伝染したように、自然と笑みが零れた。
徐々に近づいてくるその距離だったが、それを認識しているのはアカギのみ。
まじまじと見られているコトにも気付かない、その女性。
何がそんなに嬉しいのか、彼女は下を向いて目をぎゅっと瞑り、口の両端を上に上げる。
そして……
ドン!!
と、見事にアカギにぶつかった。
予想通り……基、ぶつかると確信していたアカギとは相反して、とても驚いた表情をする女性。
先ほどまでの笑顔はドコへやら、あたふた慌ててアカギに謝ってきた。
「ごごご!ごめんなさいっ!!すみません!私っ、ちょ……余所見してて!」
「……別に…(ぶつかるの分かってたし)」
「ホント、すみませんでした!」
「それじゃぁ」と、再び歩みを開始しようとした時、アカギがそれを制止した。
「なぁ、アンタ。」
「はひっ!?」
「名前は?」
「(これは…よもや…ナン…)ぇ……と、youです…?」
「ふーん……なぁ、アンタ、何か良い事でもあった?」
「えぇ?!何で……えぇ、はい……まぁ…。」
「そうか……スゲーいい顔してたな。…賭け勝負にでも勝った?」
「ち、違います……。」
「そっか、そりゃ残念だ。」
「は?」
「俺は今から賭け勝負に行くんでね。だがアンタの満面の笑み、いいのが打てそうだ。」
「ど…(どんだけニヤケてたんだ、私は!)」
「ありがとな。」
「へっ??!」
アカギはyouの手に何かを握らせると、進行方向へ向かって歩き始めた。
自分の手とアカギの背中を交互に見て、掌を開くと…。
「チロルチョコ……ちょっと高いやつだぁ~!って……ちょ、あのっ!」
「さっき金を崩すのに買ったヤツだ。毒なんて入ってないから安心しろ。」
youが呼びかけると、背中越しにそう言われて手をヒラヒラと振られた。
「ナンパかと思った……ていうか、カッコイイ人だなぁ……。でも遊んでそうなのが残念!」
ふふっ、と笑ってyouも進行方向へと歩き出した。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「アカギさん、今日は何か機嫌良さそうだねぇ。」
「ん……勝利の女神が俺に微笑んでくれてたからな。」
「へぇー……そりゃ…。」
そんな会話から局が始まり、この日の会合の解散が見えてきた頃……
アカギ以外の面子の顔色は真っ青になっていた。
「ちょ、何で!アカギさんはいつも凄いんだけど、今日はちょっとツキが半端無くないか!?」
「もうやってらんねー…。」
「だから言ったろ、勝利の女神が微笑んだ…って。」
珍しく嬉しそうな顔をして微笑むアカギ。
その脳裏には勿論、昼間出会ったyouの顔。
「チョコレート1個じゃ割に合わないくらいだな…
…今度会えたらメシでも奢ってやらないと。」
会えるわけがないのに。
名前しか知らなくて、どうやって「今度会う」気だ?
自問自答し、アカギはほのかに自分の言動を自嘲した。
*。゜.*。゜.*。゜.*
勝利の女神……
youにこの場所で出会ってから1週間が経とうとしていた。
アカギはというと…、
実はあれからこの場所へ毎日足を運んでいた。
「…一週間、か。」
一度通り抜けるだけで、特にその場所で時間を潰したりはしないが、
大体同じくらいの時間帯に、同じ場所に赴く。
会える確立など殆ど0%に近いのだが、別にアカギ本人は
不毛な戦いをしている、などとは思っていなかった。
ただ何となく、ただ会えれば儲けもの。
「(…ま、そんなモンだな)」
だけど、ただ何となく
会いたい。
一瞬立ち止まって、煙草の煙をフーっと吐き出した。
その時だった。
「あぁ!ウソ!いた!!」
大きな声が後ろでしたかと思うと、不意に自分の肩を叩かれた。
振り向けば、そこにはyouがいた。
「やっぱりそうだった!」
「アンタは……。」
「あ、もしかして覚えてないですか、無いですか!
……それはえーっと……ごめんなさ…!」
「い」と、踵を返す彼女の首根っこを(と言っても服の部分だが…)
アカギはグッと掴んだ。
「アンタこそ、何で覚えてたんだ。」
「え…だって、何か色々インパクトある出会いだったですし……
それに白髪…銀髪…?は、とても目立ちますよ…。」
「…それもそうだな。」
「私のこと、覚えてるんですか?」
「あぁ、勿論だ、you。あん時はありがとうな。」
「何がですか?お礼を言うならチョコを頂いた私の方かと…。」
「いや、アンタのお陰でイイ風が吹いたよ。何十円チョコレートの軽く10000倍以上は儲けさせてもらったから。」
「いっせんばい……。」
「オーイ、それくらい暗算しろ暗算。」
おもむろに指を折り曲げていくyouに軽くツッコミを入れるアカギ。
それから、フッと…微かに笑って、アカギはyouに尋ねた。
「you、お前今、時間あるか?」
「へっ?私、ですか?」
「あぁ。」
「な、何でですか?」
「勝利の微笑みの礼だ。何か奢ってやる。何がいい?」
「ちょ、意味分かりませんて!何で私に…?」
「………話すの面倒だ。後で話してやるから、とりあえず付いて来い。」
「えぇえ!拉致られるー!」
アカギに無理矢理腕を掴まれて、youは通りをズルズルと引きずられていった…。
*。゜.*。゜.*。゜.*
それからあれよあれよとアカギに連れられて、
気付けばyouは喫茶店でメニュー表を開いていた。
「(ハッ、いつの間にこんな状況に!)」
「ん?どうした?」
「いえ……あの…何がどうなって、こうなっているのか……
全く全然分からないんですが……ていうか……私は貴方の名前も知らないです、よ?」
「「・・・・。」」
暫しの沈黙の後、アカギが口を開く。
「……そうだっけ?」
「そうですよ!」
「そうか、そりゃ悪かったな。俺は赤木しげるって名前だ。」
「アカギさん。ですか…。」
「あぁ。」
「それで……アカギさんは何故私をココに?」
「言っただろ、勝利の笑顔の礼だって。」
「だから何ですか!ソレは!」
「あの日のアンタの嬉しそうな顔、見た瞬間「来る!」って思ったんだよ。
今日の勝負はツキが来る、ってね。そしたら案の定ツキまくってさ。いつにも増して良かった。
儲かった云々より、勝負を面白くしてくれたから……かな。ま、兎に角俺がアンタに礼がしたいだけ。」
「よく…わからないです。」
呟くようにyouが言うと、そのタイミングで店員が注文を取りに来た。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「あぁ、コーヒーと、あと……何にするんだ?」
少し困ったような、でも怒った顔でyouがアカギを見ると、
彼はニヤリと口の端を上げメニュー表を閉じた。
そして・・・
「あと、メニューの一番上から最後まで順番に……」
「わぁあーー!!ぱへっ!この苺のパフェ!と、あとホットティーで!!」
「かしこまりました。」
そう言って店員が下がると、即座にyouが真っ赤の顔をしてアカギをにらんだ。
「アカギさんッツ!!」
「っ……ククク…面白い百面相だな。」
「もしかして遊んでます……?」
「うん。」
全く悪気の無さそうな顔で頷きもせずに返事だけで答えるアカギ。
youは溜息を吐くと、とりあえずアカギに話しかける。
「あの……あの時は、チョコレート……ありがとうございました…。」
「食った?」
「食べました。美味しかったです。」
「ふーん。知らないヤツにもらった物とか、俺だったら食わないけどね。」
「グッ…!く、食い意地張っててスミマセンねぇ。今だって何気に注文しちゃったしッ!」
「ククク……冗談だ。からかっただけ。」
「お、怒りますよ。」
「いいぜ、本気で怒った顔も見てみたい。」
不敵に笑うアカギに一言。
「悪趣味です。」
「そう膨れるなよ、あん時の顔の方がツキを呼ぶぜ?」
「??」
「どんなイイコトがあったかは知らないが、俺はあの嬉しそうな顔が見たくてアンタを探してたんだから。」
「探してた……んですか?」
「ん、あぁ。ま、「会えたら儲けモン」程度にしか探してないけどな。」
「奇遇ですねッ!実は私もアカギさんを探してたんですよ!」
思ってもみないyouの言葉に、少し驚いた顔をするアカギ。
彼が「何故?」といった顔をしていることに気付き、youが話し出した。
「チョコレートを頂いたので、会ったらお礼を言わないと!って思ってたんです。」
「成程ね。」
「でも、まさか会えるなんて思ってなかったです。ここ一週間は忙しかったのでドコにも出られなくて。
やっと自由な時間が先週と同じ曜日に手に入ったから、同じトコに同じ時間に行ったら会えるかなーって。
そんな感じで歩いてたんです。だから、会えてよかった……チロルチョコ、ありがとうございました!」
「こちらこそ。気持ちいい勝ち勝負をありがとう。」
お互いにお礼を言い合ったところで、店員が注文の品を運んできた。
*。゜.*。゜.*。゜.*
「いただいても?」
「どうぞ?」
「わー!いただきまーす!」
パフェを一口、口に頬張ると、途端に幸せそうな表情になったyou。
「アイスみたいな顔だな。」
「へ?何でアイス??」
「笑った顔が溶けそうだ、って言ってるんだ。」
「う、嘘……今までどんだけ表情豊かだったの!私!」
「アンタ、本当に面白いな。」
暖かいコーヒーを啜りながら、鼻息混じりに笑うアカギ。
youは顔を赤らめながら、パフェを黙々と食べ続けた……。
ふと、気付いたようにyouが問う。
「そういえば、賭け事って……何に勝ったんですか?」」
「……麻雀。」
「・・・・。」
「なに?」
「いや、本当に賭け事だなーと思いまして。」
「ギャンブルする男は嫌いか?」
「はい。あと、煙草吸う人も苦手です。」
youの強調されたその台詞に、アカギは今しがた口に咥えた煙草を
「まいったな」という顔で元の箱にしまった。
「肺ガンで死んじゃいますよ。」
「保護者みたいな言い方だな。」
「こんな意地の悪い息子は欲しくないでーす!」
「ハイハイ。」
「あぁ、そうだ!あと、これをどうぞ!」
「?」
そう言ってyouは鞄からラッピングされた箱を取り出し、アカギに手渡した。
不思議そうな顔をして、受け取った箱を眺める。
「これは?」
「チョコレートのお礼です!会えなきゃ自分で食べようと思ってたんですけど。会えたので渡せますねっ!」
「なに?」
「お菓子です。一応……手作ってみたんですけども……お菓子作りとかなかなかやらないもので……。」
「マズイかもしれない、って?」
「いえ……その…生じゃなければいいかなぁ、と…。」
「オイ、それ最低限の話じゃねぇのか?」
軽くツッコミを返しながらも、アカギは手渡された紙袋を受け取った。
*。゜.*。゜.*。゜.*
奇跡的な邂逅から数時間。
「ありがとうございましたー。」という、店員の声をバックに喫茶店を後にしたアカギとyou。
店先で立ち止まってアカギがyouに尋ねる。
「you、アンタこれから何か用事あるか?」
「特にはないですけど…。」
「そぉ…じゃぁもう一件付き合ってよ。」
「え、はい…別にいいですけども…。」
それ、会社帰りに飲みに行ったサラリーマンの台詞じゃないのか?と、
ツッコミを入れたいyouだったが、そんなことはお構いなしに
アカギは彼女の手を引いてズンズンと歩き始める。
「あ、あの!アカギさん、何処へ行くんですか?!」
「何処って…youん家。」
「なんで?!」
「アンタの家が知りたい。」
「なんという堂々としたストーカー発言。」
「任意なら公認だろ。」
「まだ認めてない!」
「じゃ、認めてよ。」
「う"。」
固まって立ち止まったyouをじっと見下ろしてくるアカギ。
掴まれていた手は止まった時に放されていたが、
そこで逃げてもきっとこの男はどこまでも追いかけてくるだろう。
結局教える羽目になるのであれば、せめてその理由だけでもと思い、
youは意を決して尋ねた。
「どうして、知りたいんですか?」
「どうしてって言われるとなぁ……。」
「理由も無くですかぁ?!」
「いや、いつでもアンタに会えるように、知っておきたい。かな。」
「な……なんで?!///」
告白とも取れる思いがけない理由に、思わず赤くなるyouの顔。
そんなyouの正面から、彼女の肩前に流れた髪を一房指に絡め、
アカギはしゃがんで視線を合わせた。
「大勝負の前には、勝利の女神様の微笑を見たいからね。」
「女神様ってだれ?!」
「アンタもかなりニブいね…youのことだよ。」
「だから、そんな大それたものでは…しかも毎日家にいるわけでは…。」
「オレは、何処にいたってアンタを探し出してみせるさ。」
「うわ…///」
ふっと、不敵な笑みを浮かべたアカギには逆らい難い魅力があり、
気付けば髪を操っていたはずの長い指は、いつの間にかyouの指に絡められていた。
顔だけでなく耳まで真っ赤になっているのだろうと確信できるyouは、
ついに逆らうのを諦め、アカギに告げた。
「私の家は、反対ですよ。」
と。
*。゜.*。゜.*。゜.*
オマケ→
微笑みの真実。
アカギ
「ところで、あの時何であんな満面の笑みだったのか、まだ思い出せないのか?」
you
「チョコレートもらった日でしょ……ううーーん……。」
アカギ
「・・・・。」
you
「いいこと………あ。」
アカギ
「お、何か思い出した?」
you
「あの日、友達と美味しいって評判のケーキ屋さんに行ったんですよぉ~!そのスポンジケーキがすっごく美味しくって……あ。」
アカギ
「ブプッ……!まさか、それだけであの…///」
you
「…っ~!///」
アカギ
「ああああ、も…腹いた…おま…you、アンタ最高…っ、ククク///」
you
「うるさーーーい!///」
10円チョコレートは
どんな顔して食ったんだ?
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*
オワリ
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