誘惑しないでアカギさん!
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…ということで、貴方にはペナルティが課せられています。」
「…それ何の冗談…全然笑えないんだけど。」
「貴方元々そんな笑うタイプじゃないでしょうに。」
「・・・。」
目の前で微妙な会話のキャッチボールを行う美青年2名と…
深夜…その2名にお茶を振る舞う家主のyou…
誘惑しないでアカギさん!
temptation:04
先程、襲う襲えないの問答を自宅トイレの前で行っていたのは未だ名も知らぬ白髪の青年とyou…。
その最中、急に現れたのはミディアムヘア程の黒髪を後ろに束ねた、さっぱりした印象の好青年。
まるでサラリーマンか何処かのエージェントのようにスーツとジュラルミンケースを持ち、
白髪の青年と知り合いであろう様子で、軽く手を上げて彼に声を掛けた
「あーっ、いたいた!AKGSGRさん!!」
「アンタは……確か銀王サンのトコの…。」
「そう、その銀さん…ええと、銀王からの伝言を伝える為に来ましたよ。」
「…嫌な予感しかしないんだけど…。」
「んー……まぁ、そうっすね。」
あからさまに嫌そうな顔をして「嫌な予感がする」という白髪の青年に、
黒髪の青年が苦笑しながらそれを肯定する…。
その理由をその場で話し出すのかと思いきや、彼は何故かyouにも声を掛けて来た。
「もしかして、彼女がそうなのかな?」
「え?」
何も分からない…という様子のyouから視線を外し、黒髪の彼は再び白髪の青年へと話し掛ける。
「彼女が、最初の相手でした?」
「は…?」
「だから、外界に出てきて…初めての相手でした?」
「…そうだけど…。」
「ああ、じゃあ……彼女にも話をしないと。」
「何の…?」
「ちょっと長くなりますけど……ここでいいですか?」
と、開け放たれたトイレと、寒々しい廊下を見回しながら黒髪の青年がニコリと笑う。
つまるところ、もう少し話をしやすい場所を提供してほしい…という意味合いだと察し、
youは少し嫌々ながらも彼らをリビングへと案内することとなった…。
リビングにある低いテーブルを前にし、綺麗に正座をする黒髪の青年と、
胡坐を掻いてどっかりと1スペース一人で使用する白髪の青年…。
素行と性格の差がありありと出ているな…と、お茶を差し出しながら人知れず思うyou…。
「あ、わざわざどうも。ご挨拶が遅れました、自分は森田鉄雄と申します。」
「え、お名前があるんですか…?」
「名前はありますよ、ただ人には個体名は認識と発音はできないかと思います。この名前は外界で仕事をする上で都合が良いので使っている名前です。」
「そ、そうなんですか…ていうかお茶とかお食事できるんですか…貴方がたは…。」
「できます、味覚や嗅覚も分かりますけどそれだけで、養分にはならないですね。」
「そうなんですか…。」
「あ、お茶いただきます。」
「あ、はい…粗茶ですが…どうぞ…。」
「貴方がた」と尋ねて、自分たちの生態の説明をしてくれたということは森田も、
白髪の青年と同じ夢魔なのだろうと推測するyou。
ただ、見た目も性格もかなり個体差があるのは確かなようで、その辺りは人間社会と通ずるところもある様子…。
そんな中、youからのお茶を軽く飲んだ後、森田がいよいよ本題を切り出すと言うので、
固唾を飲んで見守れば、彼は徐にスーツの内ポケットから見覚えのある電子機器を取り出した。
「え、スマ……携帯?普通の?市販の?」
「便利ですよね、これ。外界で仕事する時は必須アイテムと化してます。あ、後で連絡先交換しましょう。」
「は、はぁ…。」
「えーっと、じゃあ、まずは銀王からの伝言です。」
トン…と、データフォルダの中の1件をタップすると、その小さな画面に一人の壮年の白髪男性の姿が現れる…。
髪型や髪色に既視感があったのは、恐らく先日夢の中で出会った(腹パンを食らわされていた)美青年に似ているからだろう。
そんな壮年の男性が「あ、もうこれ話していいのか?」と声を出した為、これが動画であるとyouは判断する。
『あー…お前さんがこれを見てるってことはMRTTTOがお前のところにやって来たってことだ、AKGSGR。』
「何当たり前の事言ってんだこのオッサン…。」
『まぁ、そんな当然のことはどうでもいい。それより本題だ。』
「・・・。」
『もう食事はしたか?そんでもって困ってるか?困ってるよな、その理由はお前に罰則が科せられたから。だ。」
「は……っ…?」
『今までよくこのオレを謀ってくれたな…まさか今の今まで下界に出ず成績や寿命維持の糧を博奕で稼いでチートしてたとはな……まぁそれで生き抜けてたっつーなら構わねェ……が、残念ながら悲報がある。』
「!!」
『お前、罰則に引っ掛かってるぞAKGSGR。夢魔はな、生れ落ちてからすぐに外界に降りて、通常は自力で寿命維持の糧を得るものだが、お前に至っては今まで魔界でかなりの時間それを得ていたから……外界に降り立った瞬間「初めての相手で相性が固定され、相手が死ぬまで正常に戻らない」罰則(という名の拒否反応)が科せられてるぞ。』
「なん……だと…?」
『じゃぁ、そういうワケだから、最初の女が死ぬまではオレを欺いてた分、激くそマズイ食事でせいぜい悶絶するように、以上。』
最後に壮年の男性が片手をサッと上げたところで、動画は終了…。
森田が携帯を回収し、目の前の苦虫を噛み潰したような表情をしている白髪の青年に呼びかける。
「…だそうです。」
「クソジジイ…。」
「銀さん…銀王の所為じゃないでしょ…貴方がズルするから…。」
「あー…クソ!」
「…ということで、貴方にはペナルティが課せられています。」
「…それ何の冗談…全然笑えないんだけど。」
「貴方元々そんな笑うタイプじゃないでしょうに。」
「・・・。」
今しがたの動画を共に視聴し、何となくだが事の経緯を理解したyou…。
初めて外界に出てきて、初めて適当に味わった料理以外が一切美味しく食べることができなくなった…とはこれ如何に…。
どんだけツいてなんだ…この人(人じゃないけど)…とちょっとだけ同情してしまう…。
いやいや、そもそもこの夢魔という生き物は文字通り強姦魔で、人間でいうところの犯罪者。
絶対この男は「悪」なので絆されちゃダメと人知れず首を振る。
そうして自分の世界に浸っていると、急に森田が自分に声を掛けてきたもので、
彼女は思わずビクリと肩を跳ねさせた。
「そうそう、それで今度は貴女にお話しがあるんです。」
「はいっ?!わ、わたしですか…?」
「僕の上司の銀王…あ、さっきのおじさんね。とりあえず貴女宛のメッセージも預かってますんで。」
「は、はぁ…?」
そう言って手に持った携帯を今度はyouの方へ向け、動画を再生させた…。
『あー…やぁ、お嬢さん……いや、多様性の時代だから男ってこともあるのか……まぁいいか。何はなくとも、うちの部下がお世話になっております。』
「(全くだよ…。)」
『今頃は事の全容を把握して、恐らくは同席している男に憤って、恐怖している最中だろうと思う。』
「(いや本当に、全くだよ!)」
『こちらの世界でも、レアケース中のレアケースだから、罰則も随分昔のままずっと改訂が無いままだったみてぇでな…申し訳ない限りなんだが…流石にこのご時世「相手が死ぬまで正常に戻らない」なんて案件、滅茶苦茶人権侵害に引っかかる問題という話になった。』
「・・・。」
『一般的なインキュバスであれば、そんな状況に置かれれば即時、もしくは生気を搾り取るだけ搾り取って、相手を死へと誘うから……流石にこのままではいかんと…。』
「とんでもねェな、おい!最早人権侵害とかの問題じゃないじゃん!わたしこの男に殺されちゃうじゃん!!」
『いくつかの会議を経て、ある物(ブツ)を渡すということで対策が決まったので、直属の部下にそれ持たせた。それを受け取ってくれ。』
「ぶ…ブツって…。」
『えー、この度は私の部下が大変ご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ありませんでした。我々にできる限りでお詫びをさせていただくので、今後、何かありましたら今そこにいる森田に連絡をいただければと思います。』
「何で急に失態を犯した部下を庇って関係他社に謝罪する上司みたいに言うの?!めちゃくちゃ怖いんだけど!!!」
携帯の小さな画面に向かって、盛大なツッコミを入れたところで動画は停止…。
森田がテーブルの上にドン!と、持ってきたジュラルミンケースを置き、カチャリとそのロックを外した…。
「これは、銀王から貴女へ渡すよう持たされたものです。受け取ってください。」
「その…わたしの人権…じゃなくて人命問題に関する会議で決まったという…?」
「そうです、ご確認願います。」
そう言って森田が開けたジュラルミンケースの中に入っていたのは、大量の札束…。
所謂、現金……。
「いや慰謝料で何とかなる問題とちゃうからなぁあああ!!!」
「わぁ!」
体よく言ってしまえば、正に慰謝料…手切れ金…。
所詮、人間一人の命など、悪魔にとっては取るに足らないものなのだろう、と。
現金というところがまた生々しさを引き立てる要因となり、湧き出す怒りが止まらないyouであった…。
「た、足りなければ銀王にまたお伺いをたてるので…!」
「お金の問題じゃないでしょう!!わたしの今後の貞操と人権と何より生命の問題なんだから!!」
「え、えーっと……じゃあどうしましょうか…。」
「お金以外の選択肢無いんかい!こう……何かこう、この男をわたしに近付けさせないアイテムとか!そういうの無いんですか?!」
「アイテムって…ファンタジーじゃないんですから…。」
「ファンタジーの存在がファンタジー否定すなや、特大ブーメランやぞ。」
youのツッコミを聞いているのかいないのか…。
目の前の森田は「どうしよう」「断られると思ってなかった」などとブツブツ呟き始めた…。
そんな中、今まで沈黙を保ってきた白髪の青年が急に「ククク…」と含んだ笑いを浮かべると、
テーブルに肩肘をつきながら、youに声を掛けてきた…。
「あらら、可哀そうに……結局見放されたも同然だったね。」
「アンタが言うな諸悪の根源!!」
「まぁ、そうカリカリしないでよ……折角いい方法を打診しようと思ったんだから…。」
「いい…方法…?」
「そう、お互い譲歩し合えば、折り合いがつくんじゃないかと思ってさ。」
「何を…。」
「オレはアンタを殺そうと思えば殺せるけど、それを我慢する。その代わり、オレをここに置いてよ。」
「はっ?」
「アンタのところを素寒貧負債者探索拠点にしたい。」
「・・・。」
債権回収のための拠点にさせてほしい…と、それだけ聞けば居候の打診ということになるのだが、
そこで問題になってくるのは、矢張り、彼の食事の問題である…。
じーっと、怪訝な目で白髪の青年を見据え、youは問う…。
「家に置くだけ……じゃないですよね……貴方が望む事って…。」
「クク……ご明察。アンタは死にたくない。オレは美味い食事がしたい。そういうことだろ?」
「・・・。」
「オレって基本的に忙しなく行動するタイプでじゃなくてさ、アンタを早死にさせて色んな相手を毎回蟻や蜂みたいに探して生きるのも面倒っていうか……相性も固定されてるなら、どの女食らうよりアンタが一番美味いってことデショ?」
「なっ……!」
「実際、最高に美味かったし。」
「ひっ…!」
先日の行為での味を思い出しているのか、youを見て舌なめずりする白髪の青年…。
youは顔を蒼くして、彼の傍から若干の距離を取る…。
そんな中で、はた…と、ある1つの考えが脳内を過ぎったため、youはそれを彼に提案する。
「あ、あの!1つ考えたんですけど、貴方が……魔界?に帰ればいいんじゃないでしょうか?」
「あ、それは無理。」
「何で!!いい案だと思ったのに!!!」
秒で否定され、ショックを受けた顔になるyou…。
「そもそもオレが外界に降りなきゃいけなくなった理由が生命維持とノルマのストックが切れたからだし。博奕の勝ち分は結構あったけど、回収できなきゃ意味がないしな……アイツだけじゃないけどさ、普段からあんなにツケを許すんじゃなかったよ、本当に……。」
「で、では自分から誰かに勝負を持ち掛けて…という方法は…。」
「種銭無ければ勝負もできないでしょ…。」
「ぐぅっ……。」
「そもそも今回の件でオッサンにチートがバレたから、しばらく博奕で稼いだ分は使えない…。」
とどのつまり、自分の手で生命維持とノルマを達成しなければならない…と状況が判明する…。
「でもやだ!恋人でもない相手と、そんなことしたくない!!絶対いや!」
「往生際の悪い……死んでもいいワケ?」
「そ、それは…死にたくないですけど…。」
「じゃあ、取るべき手段って1つじゃない?」
「うぅ……やだぁ…。」
「それに、オレが傍にいるっていうのは、本当にアンタの為でもあるんだぜ、you。」
「な、なんでよ…。」
「オレを傍に置いとかないと、無数の悪魔が寄ってくるよ?」
「は…っ…?!」
急にとんでもない話が浮上したぞ、と…。
youは驚きで目をギョッと見開く…。
サラリと吐き捨てたその台詞は本当は半分ほど嘘なのであるが、
そう思わせない程自然な様子で白髪の青年はコクリと頷き、視線だけで目の前の森田に目配せをする。
「(丸く収めるためにも、口裏合わせてよねMRTTTO。)」
「(えぇ~…!!)」
「(納得しませんでした、AKGSGRが対象者の人間を死に追いやりました、人権侵害ですよねこれ、銀王さんどうなってるんですか、きちんと対策取ったんですか、お答えください銀王。って会議の流れになるけど、いい?)」
「よくないッツ!!」
ダンっ!と、急に大声を出してテーブルを拳で叩いた森田…。
急に何事かと肩を跳ねさせるyouに、彼は「あ、すみません…」と小さく謝った後、白髪の青年の言葉を肯定する…。
「えっと……それは可能性としては有り得るかもしれません…。」
「えぇっ!!」
「力を使って夢の中に入ったりすると…そういうの同種には分かるんですけど…。」
「あ…だからこの間はオールバックの男性の後すぐにこの男が来たのね…!!」
そういえば思い当たる節がある!と、youが叫ぶと、白髪の青年がコクリと頷く…。
「そう、夢の中への入り方を真似るために、探知した。」
「・・・。」
「性格にもよるけどさ、下手なヤツとか、オレみたいに面倒臭がりなヤツは、割と頻度高くこの探知を使ってる。何故だか分かるか?」
「いいえ、全く。」
「夢に潜行できるってことは、食える確率が高いってことだ。だから目星に使われるってこと。」
「少なくともオレがいなきゃ、この間食いそこなったから、またあの男がアンタを食いに戻って来るだろうね。」
「そ……そんな…!」
白髪の青年の言葉に、サーっと顔面蒼白になり、恐怖に駆られた様子のyou…。
「だからさ、オレが傍にいるメリットもちゃんとあると思うんだけど?」
「っ……。」
「なぁ、you……お互い歩み寄ろうぜ…な?」
「・・・ります…。」
「え?」
「じっ……条件があります…。」
「・・・なに。」
それは、ただでは転ばないという絶対的な意思を感じる…と、森田も白髪の青年も思う程の彼女の低い声だった…。
「1つ、わたしのこと、操ろうとしないでください!!」
「む……。」
「2つ目、あと性行為はしません、させません!」
「いやなにそれ、オレに死ねって言ってるの?」
「死ねとは言ってませんし、マズイの我慢すれば生気は自力で集められるワケでしょう?」
「おまっ……どんだけエグい味と匂いがすると思ってんだテメェ…。」
「3つ目!貴方以外の悪魔から守ってください!それを守ってくれたら……3食代わりにキスはします…!」
「は……キス………3時のおやつ程度の生気で3食で生きろと…?」
「条件飲んでくれないなら、わたしは聖職者に転職する……住み込みでシスターにでもなってやる…。」
「目がマジじゃねェか…。」
「純銀の十字架で効果があるんなら、教会なんて地雷原そのものなんじゃないかと思って。」
「大正解だよクソ。」
「条件を飲んでいただけますか…?」
「いいだろう……ただし、こっちも条件出させてもらう…。」
「な、何ですか…。」
「3食代わりのキスの回数に制限は設けないこと。最後まで致さない代わり、ある程度身体に触るのは許可してもらう。」
「えぇ……。」
「それが飲めないなら、今だ。今すぐに身体ひん剥いて精魂尽きるまで抱き潰す。教会行かせる暇もなく。」
「あ、悪魔!!」
「悪魔だよ。」
そんなの、許可するしかないではないか…と…。
youは最終的に半泣きになりながらも、条件を飲むのであった…。
どうあがいても、絶望。
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*