白のお狐しげるさん!
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「ああ、明日仕事かー…。」
「付いてっていい?」
布団に横になり
ふいに思った言葉を口に出したところ
そのような返事…
白のお狐しげるさん!
其の陸
「えっ、どうやってですか?無理ですよ、だって仕事ですよ?」
「仕事場までこのまま付いてく。仕事してる時は見えないように霊獣に戻っておく。」
「でもわたしには見えるんですよね、あの白狐様の姿で…。」
「そうだね。」
「絶対話し掛けちゃうんでダメです…。」
「youがちゃんとサボらず仕事してるか監視しないと…。」
「しなくていいです……ああ、それなら職場の周りを色々見て回っては?」
「は、成程・・・それもいいな…そうしよう。」
「(ホッ…)」
まるで子守りするように四六時中ついて回るというアカギの行為を、何とか事前に阻止できたyou…。
周囲を一人で見て回る事で、今後は自由に行動してもらい、
自分への興味を少しでも削げることができればいいな…と考えるのであった…。
「ふぁ…(しげるさんがすぐ隣にいるとはいえ…)横になったら急に疲れが押し寄せて眠くなってきた…。」
「おやすみ、you。」
「んん……おやすみなさぃ……寝てる間に変な事しないでくださいね…。」
「??」
変な事って何?と、尋ねようとしたものの、自分の方を向いて心地良さそうに目を閉じている彼女の様子を見ると、
意識を戻させるのは可哀想に思えて、アカギはそのまま疑問を飲み込むことにした。
暫くすると、すぅすぅと規則的な呼吸と、それに合わせて肩が動き始めたので、
彼女が寝入ったことが言わずとも理解できたアカギ…。
「また随分と幸せそうに眠る……睡眠ってやっぱヒトには大事なんだな。」
「・・・。」
「アンタを見てるとオレまで眠くなってくる……別に睡眠なんて取らなくたって平気なのに……変なの…あ、もしかして力を失ってるからかもしれないな……成程。」
それならこの睡魔も頷ける…。
そうして目を閉じようとしたところで、ふいにアカギの胸にそっと細い指が触れた。
「you…?」
「・・・。」
寝ている最中のことなので、明らかに無意識で動かされた手であることは分かっていたし、
名前を呼ぼうと目を開けて返事が返ってくるわけでもないとも理解していた。
そのため、ふっと笑みを浮かべてそのまま寝ることを享受しようとしたのだが…。
どうやら少し様子がおかしい…。
先程まで安眠した様子だったのに、今は眉間に皺を寄せ、何かに怯えるような表情で…。
アカギに添えた手はいつの間にか固く拳を握っている。
「おい……you…。」
「っ……!!」
「どうした…?」
「ぃ、ゃ……イヤ、お願い、誰か…!」
「!!!」
「イヤ……った…たすけ……ッツ!!!」
明らかにその後は絶叫…その一歩手前で彼女は布団を薙ぎ払うようにして飛び起きた。
先程までの静かな呼吸とは真逆に…大きく肩で息をして酸素が不足しているのかと思う程大きく呼吸をする…。
時間もそんなに経過していないはずなのに、もう数時間も魘されていたように大量の汗を掻いており、正に悪夢を見ていたといった様子…。
「っ……。」
恐る恐る自分の腹部に触れ、さす…と微かに撫でて痛みを確認するが、
勿論傷は塞がっているため、痛みも無く、血も出ていない…。
ただ、すぐには安心できないようで、ドッドッと大きく跳ねる心臓を鎮めるように両手を胸に当てて、ただ一点を見つめて押し黙る…。
「you…。」
「はっ!あ、し……しげるさ、ん…。」
「どうしたの、大丈夫?」
「…大丈夫みたいです…。」
「そんな震えててどこが大丈夫なの……電気点けるよ。」
「あああ、ちょっと待って…ください……お願い、凄い顔だから……電気点けないで…。」
「・・・分かった。」
「大丈夫、大丈夫……たぶん、だって……怪我はほら…しげるさんが…あの時治してくれた、の、で…っ。」
「…もしかして、昨日もこんなだったの?」
「昨日は……当日だったので…もう色々慌ただしくて何も考えられず、疲れ果ててそのまま泥のように眠った感じでした、から…。」
まぁ、そうだろうとは思っていたが、彼女は自分があの日刺し殺された日の悪夢を見ていたよう…。
辺りが暗いので、彼女の表情はハッキリは見えないが、声色の限りでは怯えて、恐らくもう既に泣いている様子。
アカギはまだ大きく呼吸をする彼女の身体を抱き寄せ、背中をぽんぽんと優しく叩き始める。
「大丈夫、この先アンタには何も怖いことは起こらない……だってオレが傍にいるんだから。だから安心していい。」
「しげるさ…ん…。」
「アンタはオレの嫁……誰にも傷付けさせないよ。」
「また…それですか…。」
「そうだよ。」
「っ……っく。」
「なんでまた泣くの?」
言われてみればその通りである。
今ちゃんと息をしているとはいえ、一度はほぼ殺された身…。
痛みと恐怖は無意識のうちに彼女の記憶にしっかりと刻まれてしまっている。
仮令アカギが傷を治して命を守り、ここに生きているとしても、
そのトラウマはもうどうしようもなく、一朝一夕でどうこうできるものではない。
「すみません、ちょっと……凄い情緒不安定で……気付いてなかったけど、思ってたより…メンタルぼろぼろ…みたいで…っ。」
「you…。」
「しげるさんには迷惑だと思うし…凄くすごく……っく…凄い不敬とは分かってるんですが、理解しているんですけども……。」
「なに?」
「しげるさんが、優しいから……っ。」
「ん?」
「甘えてしまいたくなります…っ…!ダメなのに…。」
「何でダメなの??」
「ひっく……だって、しげるさんは……恩人だけど、霊獣ですし……っ、畏れ敬うべき存在で…っ…!」
「そう、それでもってアンタの番(つがい)で、家族で、恋人ね。」
「は…っ…?」
「命を助けたのだって、守るって言ったのだって、アンタが気に入ったから。深く考えずに甘えたらいいじゃん、オレ、そんなに包容力無いように見えるか?」
「・・・見えない…です。」
「じゃあ、いいじゃない。」
「しげるさん…。」
薄暗い部屋の中だが、目が少し慣れてきたことと、すぐ傍に顔があることもあり、
お互いの表情はなんとなくだが判断ができる状態…。
大きく零れた涙の粒を片手で拭ってやり、アカギが「うん」と大きく頷く。
「しげるさん……怖い夢見ないように、守って。」
「うん。」
「ずっと…傍にいてください…。」
「うん。」
「・・・。」
「…他には?」
「…他には…ないですけど…。」
「嘘、あるでしょ、ホラ。」
「わっ?!」
言うや否や、勢い良くyouを抱きしめたまま後ろへ倒れこんだアカギ。
バフ!と、音を立てて枕が頭を受け止める…。
「このまま抱きしめて眠らなくていい?」
「っ…!」
「要らない?」
「要り…ます…。」
「うん、youは正直なのがいいよ。」
片手を彼女の枕にして、空いている方の手で彼女の前髪を横に少し流しながら僅かに微笑むアカギ。
「おやすみ、you。」
「しげるさん………おやすみなさい……。」
「しばらく抱きしめておくから。そしたら少しは安心だろ。」
「うう、何か、すみません…お恥ずかしい……でも、ありがとうございます…。」
「うん。」
人間ではないとはいえ、正式な恋人でも夫婦でもない相手と密着して就寝するのは正直如何なものかとは思うものの、
イレギュラーがわんさか重なった状況と、メンタルがボロボロということで、冷静に物事を考えることができなくなっているのかもしれない…。
そうして一度目を閉じると、今の精神的な疲労がドッと押し寄せてきたようで、
youは10分と経たずに深い眠りの中に落ちて行ってしまった。
小さく声を掛けても返事が無かく、彼女がしっかり寝入ったことが分かったところで、
アカギも少し安堵したように自分の状況を顧みることができるようになったのだが…。
「(・・・ん…?)」
彼女を慰めて話している時には気付かなかったが、抱き込んでいる身体が自分の変幻している成人男性のそれと比べて大変柔らかいことに気が付く…。
「(柔らかくてふにふにしてるな……。)」
抱きしめて眠ったり、至る所を触るのがクセになりそう…などと考えていると、今回は安心して眠れているらしい彼女が自分の胸に手を添えて、甘えるようにすり寄ってくる。
「(手……小せェな……手首なんて細すぎて、ちょっと力込めたら折れちまいそうだ…。)」
思わず目を細めて思う事…。
こんなにひ弱い存在の彼女が背負うには、あの傷と恐怖は余りにも大き過ぎるという事…。
世の中には同じように理不尽な痛みを受ける者もいることは知り得ているが、
偶々とはいえ、その理不尽から救済したことは間違っていなかったのだろうと…今更ながら思ってしまう。
「(そもそも参拝客も少なかった中、人間と関わるなんて機会も無かったから……随分と絆されちまったな。)」
それでも微塵も後悔していないのは、自身の性格と、助けた彼女の性格あってのこと。
更には、神社を離れて外界の生活をしてみるという好奇心…。
そして…。
「(ん?何かこいつ良い匂いする…。)」
身体はふにふにして気もちいいし、抱き枕代わりにちょうどいいし、いい匂いするし、
すり寄ってきた様子が可愛いし、なんとも言えないもどかしい気持ちになるアカギ…。
これは大いに助けた価値があるというものではないか?と…。
その存在と相反し、煩悩を全面に押し出した考えを抱きながら、外界初めての眠りに就くのであった…。
嫁さん相手なんだから
煩悩くらい抱いて構わないでしょ
words from:yu-a
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