白のお狐しげるさん!
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「まさか恩人に床で寝ろとか言わないよね?」
「(ほら、絶対言うと思った…。)」
寝る準備をして、寝室に入った際
開口一発その言葉がアカギの口から放たれた。
白のお狐しげるさん!
其の伍
「いえいえいえ、本日どうぞ、ベッドをお使いいただいて…。」
「む…。」
「来客用のお布団を買いに行くまではわたしはソファで寝ますので。」
「そのあとは?」
「あの……もしよければ、日替わりとか週替わりとか…たまにはベッドを使わせていただきたい所存…。」
自分のベッドがすぐ近くにあるのに、毎日来客用の敷布団となると、
心が辛いです…と、アカギにさめざめ伝えるyou。
そんな彼女の訴えは、もちろん却下されるのだが、
それはあらぬ方向に向かって着地を余儀なくされることとなる…。
「たとえ寝台とはいえ……霊獣のオレが人に見下されながら寝るとか無理(全然嘘だけど)。」
「あああ……やっぱりそうですよね!わたしもそこ気になりました…。」
「ウン、そだね(だって本来の姿だと実態ないから寝台自体要らないのに……絶対そのこと忘れてるな、こいつ)。」
そう、本当はベッドでも布団でも、どちらに寝ても問題ない上、
人間の姿を解除すればその寝具や寝台さえアカギには不要…。
とどのつまり、これはただの彼の我儘なのである。
しかし、純粋にただひたすらアカギの言うことを全面的に信じるyouには、
ツッコミも思いつかないほど絶対的に聞こえるようだ。
そうなると、次にアカギの思いつく考えや提案など、1つしかないわけで…。
「じゃあ、一緒に寝ようよ。」
「いや、それはちょっと流石に…。」
「なんで。」
「えぇ、またですか……何でって、2人だと狭いですし。」
「オレは構わないよ。」
「先ほど言いましたよね、しげるくんならまだしも、しげるさんの姿はダメなんですって。」
「・・・。」
そう、先ほどは意識の統括ができると思って風呂に入る際にアカギは幼い姿に変幻したのだが、
実際には力が失われている関係で意識の統括ができず、
一度変幻したら最悪、幼い姿の意識を持つ自分が良しとしなければ、
すぐには今の自分の姿と意識に戻れない可能性があることが判明したのだ。
故に今なら「じゃあ幼い自分の姿ならいいんでしょ」と変幻して共に寝ることは提案されないだろうと…youはそう予測したのである。
「ふーん、成程、そうきたか…。」
「わたしは真実を告げたまでのことですよ…?」
「でも、こっちはこっちでさっき気付いた切り札があるんでね。」
きょとんとあくまでも自然に言葉を返すyouだったが、その目論見にアカギが気付かないはずもなく。
彼は「見てな…凍り付かせてやる」と、更なる切り返しをもって彼女を丸め込む…。
「ちょっと確認したい。こっちに来てくれるか?」
「はい…?」
ちょいちょい、と手を動かしてyouに傍に来るように指示したアカギ。
すぐ正面にやってきた彼女を、アカギは何故か急に抱きしめる。
「しししししげるさんっ?!何急に!」
「あー、やっぱりそうだ。」
「何?!何がやっぱり…?!」
「密着すればするほど、繋がる。」
「そ、それはつまり…。」
「力が溜まるのが早まるかもね(嘘)。」
「ほ、ほんとうですか?」
「多分(嘘)。」
それは全くの嘘である。
彼女の命が途切れないようにパスを繋げなければならず、
距離が離れるほどパスが繋がりにくくなるため、余分に力を使わなくてはならない…
そのために近くにいるので、近ければ近いほどパスを繋ぐのがラクになる…というのは確かではある。
ただ、それはあくまでもアカギが彼女とのパスが繋がることに於いて、単純に傍にいてラクになるか、
離れた場合には余計な力を使わざるをえなくなる……というだけの話なので、
傍にいて距離が近い程アカギに溜まる力が増えるわけでは断じてないのである。
それをこの男…彼女がそのことを知り得ないのをいいことに、いけしゃあしゃあと極々自然に嘘を吐いているのである。
「ちなみに、アンタの言う「しげるくん」は変幻で力を使ってる状態だから、従来のオレの姿でいることが前提ね。」
「ぐぬぬ…。」
「どうせ寝ちゃえば羞恥心なんて分かんないでしょ、気にせず一緒にいればいい。」
「うう…でも…でも…。」
「オレだって家主であるyouのベッドを独り占めなんてしたくないしさ。」
「だめ、やっぱりダメ…っ!」
「チッ…。」
「え、今舌打ち…。」
「してないよ。」
「・・・。」
「早く力が満たされた方が、生きてる状態に早く戻れるのに、いいの?」
「ううっ!そ、それは……!」
最終的に引き合いに出すのは矢張り彼女の命…。
確かに一番天秤が傾きやすい取引材料である…。
youはもぞもぞと体を動かして、アカギの腕から離れると、少しだけ距離を取って首を傾げながら問いかける。
「ど、どのくらい……違うんですか?ただ、同じ空間にいるのと……こんな感じで結構な至近距離にいるのって…。」
「あー……浄水器で飲料水出すのと原水の勢いで皿洗いするくらいの水量かな…。」
「何だその比喩表現!!」
「でも分かるでしょ。」
「わ、分かりましたけど…。」
確かにそれは嘘ではなく、至近距離にいればいる程強固な縄で繋がり、離れれば離れる程それが紐になり、糸になるようなイメージである。
(ただ、そこに力の回復は載らないだけで…。)
「どうしても…絶対…しげるさんじゃなきゃだめ?しげるくんじゃなくて…?」
「アンタもしつこいな……さっき事情は話したろ、極力変幻は避けたい。」
「うう…。」
「何がそんなにイヤなの?」
「い、イヤというか……。」
「だってyou、特定の雄……番もいないでしょ?」
「特定の雄?!」
「いたらオレここにいないかもだし……そもそもそういうニオイがしない。」
「何かめっちゃ酷いこと言われてる!分かる、分かりますよ?!いませんよ確かにそういう人!恋人とか!彼氏…っ!!」
「あらら……そんなに涙と鼻水垂らしそうな悲壮な顔しなくていいじゃない。」
「誰のせいじゃ!」
「オレの所為なの?」
「そうでしょうよ。」
「ふーん、何に傷付いたのか分からないけど…とりあえずオレとしてはその方が都合が良かったからさ。」
「わたしの家を自由満喫の拠点にする上で…くっ。」
「それもあるけど……アンタのこと気に入ってるから、他の雄のニオイがするのはオレがイヤ。」
「???」
「気に入ってなきゃ規則に反して命助けない。」
「し…しげるさん…。」
「だからずっと、アンタのこと「嫁」って言ってるんだよ。」
「そそそ、そんなこと……何で急に…サラッと…言う…の、です?!」
「オレはただ、思った事を言ったまで。逆にyouがさっきからオレの言葉で顔を青くしたり赤くしたりしてる意味が分からない…。」
「・・・。」
ただ単に、抱いている感想を伝えただけ、と彼は言う。
だが、それは何となくだが「感情」というものはそこにあまり含まれておらず、どちらかと言うと「感想」なのではないかとyouは思う…。
好ましいか、好ましくないか…ただそれだけ。
「好ましい」という感想だけを抱かれているのであれば、そこに私募や恋愛感情が含まれない限りは
特に性的な意味合いで男女の関係にしょうと思っているわけではない、とも。
それであれば、同じベッドで寝ることに於いて一番懸念していた心配事が解消されたに等しいため、
youは若干複雑に思いながらも、アカギの提案を受け入れることにした。
「なる、ほど……うん、そっか……何となく分かった、分かりました。」
「何が…?」
「(無害かもって思ったので)一緒に寝てみましょう、とりあえず試しに。」
「お。」
「あんまり狭くて翌日身体に支障が出るようであれば2人では厳しいということで断念かもですが…。」
「うんうん、大丈夫ダイジョーブ。」
「何が大丈夫か全然分かりませんが…とりあえず、お試しですからね?!」
「うん。」
自分の思う通りに事が運んで嬉しいといった様子のアカギ…。
雰囲気を見る限りでも、そこに厭らしい意味は皆無のようで、youは少しだけ安心したような…
僅かに、ほんのちょっとだけ悔しいような気持ちを抱きながらも、アカギに手を引かれベッドへと上がるのだった…。
兎に角色々
我儘ばっかり!!
words from:yu-a
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