白のお狐しげるさん!
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昨夜の大事件から数時間後…
その日が休みであったyouは白狐に言われた通り
日が昇っているうちに神社へ向かったのだが…
白のお狐しげるさん!
其の弐
「遅い。」
「す、すみ……も、申し訳ございません…。」
言われた通り神社へは来たのだが、再会するなり冷ややかな温度を含んだ言葉で叱責されてしまった…。
彼女としては、早すぎても遅すぎても失礼にあたるかと思い、朝の10時頃を目安にしていたのだが、
昨日帰宅後にドッと体力と精神的に疲れてしまったこともあり、
その時は風呂にも入らず血塗れの服だけ着替えて、泥のように眠ってしまったのだ。
そんな状態でも、起きるのはそこそこ早かったはずなのだが、
朝からシャワーを浴びれば腹部の刺された傷跡を見てまた情緒不安定になるわ、
血塗れの服をご近所に怪しまれないように一度手洗いして密閉して捨てる準備をしたり…と…。
普段より倍、準備に手間取ってしまい、自分で考えた予定より1時間ほど遅れてしまうことになった。
それでもまだ11時…。
お昼にもなっていないのだから問題は無いはず…と、境内に入ったところ、
鳥居を前にした時点で、何やら不機嫌そうなオーラを纏った、ケモ耳のイケメンが腕を組んで仁王立ちしている姿が目に入ってきた。
慌てて鳥居を抜け、彼の前で「おはようございます」と挨拶をしたところ、冒頭の叱責…という流れだ。
「色々あるんですが、言い訳はしません……遅くなってしまい、申し訳ありませんでした…。」
「ハァ……やっぱアンタは素直過ぎて調子狂うな…いいよ、別に…アンタに対して怒ってるワケじゃないしね。」
「?」
「自分で思ったより、事態がマズそうだったから、ちょっとイラついてた。当たってごめん。」
「い、いえ…。」
常人であれば、根源は別にあったとしても、それに関わった相手に対しいつまでも憤りをぶつけてしまうものだが、
彼は「貴方の方が素直なのでは…?」と思うほど、見切りの早い判断と返答でyouに謝罪する。
「それで、昨日の経緯、最初にこの神社へ来た時から覚えてるか?」
「ええと……わたし、散歩の途中で一度ここへ来てお参りをしました。」
「何を願った?」
「うう…『わたしを取り巻く周囲のみんなが、笑顔でいて、幸せでありますように』です。」
「そう、自分を含めなかった。次、またここを訪れた時のことは?」
「散歩の帰り道、怪しい人達が神社の境内に入って行くのが見えたので…追ってきました。」
「何で。」
「本当は……無視して帰ろうと思ったんです……でも…。」
「好奇心が勝ったのか。」
「好奇心も無かったかと言われると、嘘になります……けど、それよりも…見掛けたのが「神社には相応しくない」人のような気がしたんです。」
「なら、嫌な予感がしたのに、何で尚の事追いかけた?」
「追いかけてその相手を注意したり、どうこうしようとは思いませんでしたよ、勿論。…ただ、嫌な感じがしたので、もし、そうであれば怪しい人達が立ち去った後に、微力ながら無心にただ参って帰ろうと思ったんです…。」
「・・・は…っ?」
「わ、わたしなんて、神さまの御霊を鎮める程の力なんては無いのは勿論、重々承知の上ですよ?……それでも、初めてこの神社を訪れた時に、とても気持ちの良い神聖な空気を味わわせてもらったのだから…せめて、それくらい……祈ったり、謝ったりするくらいのことだけでも、したかったんです……。」
しょんぼりと俯いて、2度目に神社を訪れた理由を伝えたyou。
白狐はそれを聞いて、盛大な溜息を吐くと「参ったな」を体現するように頭に片手を添えて項垂れた。
「あの……その所為であんな目に遭って、結果的に貴方様の手を煩わせることになってしまったんですよね……何かその……大変申し訳ございません。」
「全く以てその通りなんだが……その通りなんだが……今のでオレがアンタを見殺しにできなかった理由が何となく分かったわ……諦めて陥った現状を享受することにする。」
「?」
「とりあえず、こっち。」
「あ、はい!」
自分に付いてくるようにと、youに告げて白狐は拝殿の方へと歩き出す。
そして、ゆっくりとした歩幅で歩きながらも話を続ける…。
「アンタも思っただろうけど、この神社……建立は他の神社と比べると割と新しい方だけど、管理甘くて寂れてるし、狭いし、雑木林に囲まれて見えないし、まぁ兎に角参拝客がいないもんでね。」
「えっと…確か鳥居に昭和20年とありましたね……終戦の年なので印象的でした。」
「・・・近所のじーさんが決まった時間に早朝の散歩来るぐらいで、それ以外にちゃんと参拝に来る人間がほぼいなかったから、アンタは久しぶりのまともな参拝者だった。」
「ま、まともって。」
「マトモだよ。アンタが昨日会ったような奴……邪気とまでは言わないけど、最近ああいう害心や賊心に塗れたクズみたいな輩が夜な夜なやってきて煩いし、それで空気が淀んでイライラしてたんだ。」
「クズって……(神様の御使いなのに口が悪いなぁ…。)」
「けど、昨日はアンタが素直な願いと、神への畏敬を抱いて参拝してくれたから、気分が良かったんだよね。だからアンタのこと、いいと思ったってのは、そういうこと。」
「あの…少しお尋ねしてもいいでしょうか?」
「いいよ、なに?」
「貴方様はその……この神社の神様の眷属で…霊獣の白狐様、なんですよね?」
「そうだよ。」
「物凄く……素朴に不思議なんですが………普通、見たり喋ったりできるものなのでしょうか…。」
「できるわけないじゃん。」
「デスヨネー!」
「知ってた」とばかりに生暖かい笑みを浮かべるyou。
白狐は怪訝な目で「何その目、ムカつくんだけど」と指摘はしたが、彼女の疑問にもきちんと律儀に説明をする。
「オレの姿が見えているのは、アンタが死にかけたからっていうのと、オレの力が常にアンタに注がれているからだよ。普通は見えない。」
「うう、思い出したくない臨死体験…。」
「あの時、アンタがまだギリ死んでないから大丈夫だろって軽い気持ちで助けたら、結構ごっそり力持ってかれた。」
「う…う…申し訳ございません。」
「過ぎた事はもう仕方がないんだし、オレが気紛れでしたことだから、アンタが謝る必要はないけど……ま、元通りになるまでかなり時間を要しそうなのは確か。」
「何かわたしにできることがあればいいんですが…。」
「いいね、その言葉を待ってた。」
「え?」
どうせそんな打診をしてみたとて、何の助けにもならないよと断られるか、気持ちだけ有難く受け取っておくとでも言われると思っていたため、
白狐の予想外の言葉とニヤリと口の端を釣り上げた表情に、とんでもなく嫌な予感を覚えるyou。
彼は拝殿の前でピタリと脚を止めると、彼女に自分の隣に来るように促す。
すぐ横に立った後、何をするのだろうと思いきや、彼は自然と参拝の作法を伝えてきた。
「拝殿の裏に本殿がある。そのことを念頭に置いて、そこへ向けて二拝して。」
「え、は、はい!」
彼女は言われた通りに、目には見えていないが、本殿へ気持ちが届くようにと、丁寧に二拝する。
「次、祝詞ね。」
「の、祝詞……すみません、流石に分かりません…。」
「まぁ、どのみち人が決めて作った言葉だから、気持ちをしっかり伝えればそれでもいいんだけど……その言葉ってのがあった方が、伝わるみたいなんだよね。」
「どうしたらよいでしょう…。」
「夫神は 唯一にして御形なし 虚にして霊有」
「!」
youの問いかけの後、白狐が祝詞を奏上し始めたことで、
それに続けることが、その問いかけの答えだと悟り、彼女は追いかけて復唱することにした。
・
・
・
「私を親しむ 家を守護し 年月日時 災無く」
「わたくしをしたしむ いえをしゅごし ねんげつじつじ わざわいなく」
「夜の守 日の守 大成哉 賢成哉」
「よのまもり ひのまもり おおいなるかな けんなるかな」
「稲荷秘文 慎み白す」
「いなりひもん つつしみもうす」
ゆっくりと、はっきりと、長い奏上を終え、白狐に倣って再び深く二拝し、二拍手。
最後に今一度美しい所作で一拝し、顔を上げた…。
「・・・祝詞、教えていただいてありがとうございます。お祈りと、感謝が神さまに少しでも伝わると嬉しいです。」
「うん、そうだね。」
「勿論、感謝は貴方様にも。」
「フフ……まぁ、そこは有難く受け取っておくよ。」
「はいっ!」
「さて……ここで本題なんだが。」
「ほん、だい…?」
「ああ、オレとアンタのことだ。」
白狐の言葉に「わたし…?」と、自分を指さすyou…。
「昨日、いったんアンタと離れて分かったことがある。」
「?」
「5分の3って言ったけど、9分の7くらいごっそり持ってかれてた。」
「わ、分かりにくい……けど、若干増えている…。」
「説明すると、そのごっそり持ってかれたのは主にアンタを死の淵から助けた時に使った力、要は死に至る程の傷の治癒。」
「は、はい。」
「で、ここからが重要なんだけど……その「治した」って部分が固定されてないわけ。」
「・・・?」
「つまり、今傷が治って生きてる状態ではあるけど、その状態が固定されないと、アンタはまた死んじゃうってこと。」
「ちょっと何仰られてるか分からないんですけども!!」
生きてるのにまた死ぬ…?!と、今までの平静が嘘のように動揺し始めるyou…。
白狐は「まぁ、そういう反応になるよな」という表情をして、小さく溜息を吐いた。
「細かく言うと違うんだけど……オレのごっそり持ってかれた力は今アンタに貸してる状態って言えば分かりやすいかもしれない。」
「あ…なる、ほど、つまり……それは…。」
「そう、だから、オレの空になってる分がフル充電されると、そこで初めてアンタに貸してる力を無条件に明け渡せるから、生きてる状態を「固定」できるわけ。しかも、固定するまでの間、常にアンタに微弱ながらも力を注いどかないとパスが切れちまうという条件付き。」
「い、今も…?」
「今も繋がって、ちょっとだけど力を送ってる。まぁ、まさかオレもこんなややこしいことになるとは思ってなかった……流石に博奕好きな自分を顧みたよ。」
「そ、そんな…。」
「それで、アンタに頼みがある。」
「は、はい……それはもう、何でも仰ってください……元はわたしの所為ですし…できることは手伝います!」
「じゃ、アンタの家に居候させろ。」
「それはちょっと…。」
「寧ろ拒否権あると思ってんの?」
確かに即答で拒否したのマズかったかとは思うが、それにしても
「オレに命を救われた身でしょ」…と、とんでもないオーラで圧が飛んでくる…。
「離れてても力を送れないことはないが、今みたいに傍にいた方がラクなんだよ。」
「う・・・はっ!といいますか、貴方様はこの神社の神様の眷属なんですよね?!」
「そうだよ。」
「だったら、この神社の神様のところにいないと…!離れるなんて……叱られてしまいますよ?」
「大丈夫ダイジョーブ。昨日、力使った時点で叱られてるから、今更叱られるのなんて怖くない…。」
「し、叱られたんですね…。」
「関係ねェな、そんなこと……オレはオレのやりたいようにやるだけ…外、楽しそうだよね。」
「そ、そんな…。」
「まぁ、そういうことだから、よろしく頼むよ。」
「良いって言ってないのに…!」
「言わざるを得ないでしょ、オレ、アンタの命を握ってるも同然なんだぜ、you?」
「なっ、名前…覚えて…。」
「勿論。これから長い付き合いになるんだからさ。」
「どのくらい……なんでしょうか…?」
「クク……さぁ、どのくらいでしょうかねェ…。」
「ひぇ…そんな…なんでそんな狐の嫁入りみたいな状況に?!」
「ハハ、うまい事言うね。まぁ狐の嫁入りじゃなくて、立場的には狐「に」嫁入りって感じだけどね。」
「そこは重要じゃないです!!」
「じゃ、そろそろ行こうか、you。」
「~~!!」
ポン、と彼女の肩に手を置いて「さっき参拝も済ませたしな」と一言…。
成程、先程の祝詞や細かな参拝はもしかしなくても、自分は神社から彼を連れて行くことを…。
そして、彼は神社から離れることを申請する意味合いだったのではと…。
早速自分の手を引きながら「youの家ってどっち?」と楽しそうに尋ねてくる白狐に、
頭を抱えてしまうyouなのであった・・・。
それでもわたしに
拒否権など無いのです
words from:yu-a
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