白のお狐しげるさん!
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「you!遅かったじゃねェか!待ちくたびれちまったよ。」
「・・・どちら様でしょうか。」
仕事を終えて職場の外に出るや否や
見知らぬおじさんに声を掛けられた日
白のお狐しげるさん!
其の拾
「あ?何だよ冷てェな……旦那の顔をド忘れか?」
「すみませんあの……どなたかと勘違いされていらっしゃるのでは…。」
「おめーだよ、you。俺が待ってたのはお前さん。」
「間違いではない、と…?」
「何で分からんかね……俺から溢れ出る神域のオーラ的なヤツとかでピンとこんのかね、この子は…。」
「神域のオーラ……的な…。」
「っだぁあ!もう!俺だよ、俺!赤木!赤木しげるだっつの!」
「????!」
自分で自分を指差して「赤木しげる」と名乗る壮年の男性。
言われてみれば確かに、いつも見慣れた白髪はそのままに、
目つきや顔立ちは普段のアカギにいくつかの皺が刻まれたような顔であるが…。
それにしても、白い縦ストライプのスーツにド派手な虎柄のシャツとはこれ如何に…。
間違っても自分の知っている「赤木しげる」はそのような服を好んで着るような男ではないはず…。
おまけに、いつもクールであまり抑揚の無い喋り方をするアカギとは違い、
こちらの自称赤木しげるの彼は感情が分かりやすいくらいに伝わってくる表情と声…。
youは半信半疑、恐る恐る目の前の男性に首を傾げながら問いかける…。
「しげる…さん?」
「おう。」
「わたしのこと、神社で助けてくれた…しげるさん?」
「だから、そうだっつの。」
「・・・ええと…霊獣、白狐…さま?」
「イエス。」
「もしかして……今の姿も変幻…なんですか?」
「ようやくかよ!そうそう、そうだよ!」
言われてみれば、少年の姿にも変幻できるので、それ以外の姿になることも不可能ではない…。
ようやくその事実に至り、安堵と納得をしたものの、今度は壮年の姿になっている理由が分からない。
「しかし何故、しげるさんはその姿に…?」
「さぁな……俺にもよう分からん。」
「もしかして…わたしに何か連絡を入れている可能性あるかも…?お昼過ぎから全然携帯見てなかった…。」
そう言うとyouは徐に鞄から携帯を取り出し、ディスプレイを確認する。
電話の着信履歴こそ無かったものの、確かに小一時間ほど前にアカギからメッセージツールのアプリで連絡が入っていた。
中身を確認してみるとそこには「色々あって、変幻した姿でそっち行くと思う。元の姿に戻らないで、オレと家帰って。」とだけ記載されていた。
「いや、我々が知りたいのはその「色々」の部分なんですけど…。」
「だなぁ。」
一緒にディスプレイを覗き込んでいた壮年の姿のアカギもyouの呟きにコクコクと賛同して頷く。
「とりあえずこのまま帰ればいいのかね。」
「そのようですね…。」
「フム……。」
「しげるさん?」
「よし!決めた!」
「?」
ポム!と手を叩き、壮年のアカギは至極楽しそうな顔をしてyouに手を差し伸べた。
「折角の自由だ、ちょっくら寄り道して帰ろうぜ、you!」
「えぇっ?!」
「何だよ…若い俺とは外歩けて、オッサンの俺とはデートできねェってか?っかー!冷たいねェ…。」
「そっ、そんなんじゃないですけど!い、いいんですか?そんな勝手に…。」
「勝手も何も……兎に角俺の姿で家にさえ帰りゃいんんだろ?別に寄り道すんなとも言われてねェしな。」
「それはそうかもですけど…。」
「それに俺も若ェのも、チビ助も、全部俺だ。」
「確かに…。」
そこを言われると、確かに別に青年のアカギが主人格というわけでもなく、
本来であれば意識の共有が取れる同一人物なので、誰かを特別優遇するような対応は必要ないわけで…。
「じゃぁ、夕飯でも食べて帰りましょうか。」
「そう来なくちゃ!ありがとな、you!さっすが俺の嫁!」
「嫁じゃないです。」
「・・・女房?」
「言い方変えてもダメ!ほら、もう行きますよ!」
「ハイハイ。」
それから歩いて何が食べたいか、どんな店や場所がいいかなどを色々と話しながら市街地へと赴き、
壮年のアカギがお酒を沢山飲みたいなどと希望したため、賑やかな居酒屋での食事となった。
結局、この姿になっている理由は分からないままのため、
自然とお互いとその状況を確認するような話にあるのは致し方無い事であった。
「久々にこの俺の姿に変幻してみて、力がアンタに流れてんのはすぐ分かったけど、そうなった事情云々がうまくこっちまで伝わってないくてよ……成程……それであの神社で死んで生き返ったってワケか。」
「…です。死んだり生き返ったという実感は湧かないんですけど、痛かったのと怖かったのだけは消えなくて…。」
「・・・。」
「あっ、すみません!何か重い話に!!えっと、何か面白い話…。」
関わる事になった経緯のため聞かれるのは当然の事であるが、酒の席で話す話題にしては超ド級に重たい話であった。
しかし、伝わっていないのであれば、ちゃんと伝えねばならない話でもあるので、
ここできちんと変幻後の赤木しげるにも事情を伝えることができて良かったとも思うyou。
そうなると、少年の方の赤木しげるはそれを知り得ているのか、
一度も確認していなかったことに気付き、次回再会した際に改めて聞いてみようとも思った。
そんなことを考えていると、ふいにポン…と赤木の大きな手が自分の頭に置かれ、優しく何度か撫でられる。
「あ、し、しげるさん…??」
「悪かったなァ……怖いこと思い出させちまって。」
「・・・。」
本心から心配をしてくれている様子の壮年のアカギ…。
一瞬、目を丸くしたものの、youは撫でてくれるその大きな手に嬉しい気持ちと同時に、
申し訳ない気持ちが改めて襲い掛かってくるので、彼女は目を細めながら、小さく呟くように尋ねる。
「今のしげるさん、は……貴方は迷惑じゃないんですか…神社を離れる事になったり、力がごっそり無くなって、しかもわたしなんかの傍にいなきゃいけないなんて…急に言われたりして…。」
「いや別に?」
「(軽ぅい!!)」
シュンと顔を伏せて申し訳なさそうに尋ねるyouを意に介さず、
それはもうサラッと、間髪入れずに否定するアカギ…。
思った以上に速攻の反応だったため、口ではなくyouのツッコミが脳内で思うだけで終わってしまった程…。
「こうやって自由満喫させてもらってるし、飯も酒も美味ェし、嫁は年下で素直で優しくて丁寧で可愛いしな。」
「はぁ…。」
「分かるよ、今は意識の統合ができてなくてもな。」
「え?」
「"アイツ"が無条件で力使っちまって助けちまうくらい庇護欲掻き立てられたっての……何となくだけどな。」
「??」
手元にあった日本酒をクイッと傾け、大変美味しそうに飲み干すアカギ…。
空になったそれをコトリとテーブルに置くと、フッと小さく息を吐いてyouをチラッと一瞥した後、聞こえるか聞こえないかくらいの声で小さく言葉を呟く…。
「いや、しかしアレだな……手は出しにくいな。」
「はい?」
「俺としちゃぁもうちょっとだけエ……うん…いや、何でもねェ。」
「さっきから全然分からないんですけど……伝わる話をしてくださいよ…。」
「悪ィ、悪ィ!そうさな……分かる話か…そういえば何だろうな、やっぱ洋酒や芋より米酒が合うな…体質か?」
「まぁ、確かにお稲荷様像はよく稲穂を咥えていらっしゃいますけど…単純にしげるさんの好みなのでは?」
「そうかね…?」
「どれも好きじゃなかったより、好みのお酒があって良かったって思いましょうよ!」
「…ま、それもそうだな。」
他にも、神社で用いられるような御神酒とはまた違い、人と他愛の無い話をしながら味わう酒は面白い…などと、
何とも反応に困る感想にコメントを求められ、それにyouが困惑するのをからかったり…。
口数の少ない少年や青年の姿のアカギとはまた違い、スムーズな会話のキャッチボールと、
話題や反応の面白さに次第にyouも今の姿のアカギと話すことを楽しいと感じるのだった。
そんな様子で2人は居酒屋での食事を終えて、彼女の家へと辿り着く…。
「あぁ…我が家が見えてきちまったなぁ…。」
「何で残念そうなんですか…。」
「そりゃお前……交代してやんなきゃだろ、若ェのと。」
「嫌なんですか?」
「当然。もっと俺自身がお前さんと一緒にいたいんでね。」
「ま、またそんなことを…。」
「言っとくけど、軽口じゃねェぞ?」
「え…。」
玄関前に来たところで、鞄からカギを取り出したyouがアカギの言葉に固まる…。
「今日…っつてもさっきだけどな、アンタと実際対面して、話をしてみて、分かった。」
「分かった…何がでしょう?」
「さっきも言った気がするが……アンタの人となりとか、持ってる雰囲気とか…考え方や言葉なんか、か?……強いて言うなら……そういうのがよ…アイツ等も俺も、こう…何つーか……ツボっつーか…。」
「ツボ…。」
「そう!空気みてーで、心地良いんだ!」
「えー、それって褒めてなくないですかぁ?空気みたいって……気配薄い感じっていうか…。」
「そういう意味じゃねぇ……一般的なそういうんじゃなくて、ただ「俺たち」にはアンタの纏う空気っちゅーか、雰囲気が良い、好ましい、好き、そんな意味合いだ。」
「対『赤木しげる』ってことですか…?」
「おう、俺は俺の話してんだ、他のヤツの事なんか知るかい。」
「は、はぁ…?」
とどのつまり今のところ邂逅している「赤木しげる」年齢別3世代の総括意見としては、
youの纏う空気感や雰囲気がとても好ましいので、自分の力をごっそり削られたものの、
彼女の命を救った事に対して全員が納得する、もしくはしただろうという事。
何となくだがそういう意味であろうことは分かったため、
youも目の前の壮年の姿のアカギに受け入れられたことに関しては一安心…と思うことにした。
と同時に、嫌悪感を抱かれたりしていた場合、力を使ったことに対しての憤りや命のパスを切ってしまえ!などと
少年のアカギや、目の前のアカギに言われる可能性があった事に改めて気付き、ゾッとする…。
どの世代の姿の彼も、霊獣と人間の垣根を気にせずに、ちゃんと対話もしてくれる事に関しても有難い、助かったと感じてしまうのだった…。
「兎に角…嫌悪されなくて良かったです。」
「ああ、そこは……いや、これ言っていいモンかね…。」
「何でしょう?」
「ん?んー………いや、アンタと会った時は、どうせ助けるんならもう少し熟れた感じのエロい女だったら良かったなァ…とか思ってたんだけど……全然イけるなって。」
「・・・ん?」
聞き間違いかと思い、youは何度も瞬きをしてアカギを見上げる。
「あの、今なんて…。」
「助けたのがアンタで良かったって。」
「いや、何か違いますよね?!何かさっきと違いますよね?!結論じゃなくて、過程の心境が何か凄い不純だったっていうか…!!」
「youを嫁にできて良かった!これからよろしくな、うん、アッチの方とか色々とな!」
「よろしくない!よろしくないです、しげるさん!」
「年若ェ方の俺がアンタとどう接してるか分からんが……俺は性的な対象としてもアンタが嫁で良かったと思ったし、そう接することにする!」
「どういう開き直り方!?」
「俺の考えも纏まったし、折角家に就いたから、お前さんと本当にこれから色々シたい気持ちなんだが……今回はとりあえず事情も確認せんとだろうし…変幻を解くとするか。」
「ちょ、しげ…!」
「じゃあまたな、you。」
「げほっ!げほっ!!!」
そうして、壮年のアカギから青年のアカギに戻ったことにより、
youと壮年のアカギいよる玄関の前でツッコミどころ満載の問答が終了した…。
いつもの白い煙がすぐに収まり、目の前にはいつもの姿の赤木しげる…。
「し、しげるさ…。」
「ただいま…と、おかえり、you。」
「おかえりなさい……と、ただいま…です。」
携帯に残されていたアカギの、壮年の姿のアカギのままで家に帰らなければならなかった理由も勿論なのだが…。
今日出会って、色々と話して、大変困惑極まる発言を残して消えて行ったその壮年のアカギに関して、
どこまでどう話せばいいのか、頭を抱えるyouであった…。
赤木しげる
3世代
出揃う!
words from:yu-a
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