君子殉凶キミに恋する / トリップ
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『某、団子が食べたいでござる』
と…どこぞかの紅い若虎のような言葉遣いで殴り書かれた紙を手に取り
三成はそれをビリリッと真っ二つに破り捨てた
君がすきなんです
置手紙で団子が食べたいというのは、つまり団子を食べに行ってくるという意味合でまず間違いはないだろう。
では何故、書置きをした人物は素直に「団子を食べに行ってくる」と書かなかったのか…?
答えは簡単なことである。
『逃げた』のだ。
「youーーーッツ!!」
三成は帯刀している刀に手を掛け、瞬くうちに抜刀する。
その先には誰も人などいないのだが、怒りの矛先はその場に居ない誰かへ向けられているのだろう。
刀は抜き身のまま、ズンズンと廊下を突き進み
逃亡者を追うべく城下へと向かった。
一方、こちらは逃亡者。
「おいしい…!もう一本食べたい。」
「あら、嬉しいねぇ!団子はアレだけど、お茶をオマケしとくよ!」
「わ、ぁ!ありがとうございますっ!」
「それにしても、アンタ、この辺じゃ見掛けないくらい別嬪さんだねぇ!」
「え、普通ですふつう!でも…嬉しいです、えへへ。」
「変わった格好してるし…都の流行か何かかい?」
「え…えっと、まぁ…そんな感じです。」
「まぁいいさ、ハイ、お茶はココに置いとくね。」
「ありがとうございます!」
町外れの茶屋で手厚い持成しを受けて、女は笑みを浮かべた。
ひょんなことから、この世界にやってきた女こと「you」。
彼女がこの世界は自分の生きる世界よりおよそ400年も昔の地だと理解したのは以外に早かった。
なぜなら、ここにやって来て面倒を観てくれているのは歴史上の有名人達だったから。
「youじゃないか!こんなところで何をしてるんだ!?」
「あ、い…家康さん…。」
「ハハ、そんなに怯えてくれるな、ワシは別にお前を連れ帰るよう言われたワケではないぞ。」
「そ、そう!」
ホッと安堵の溜息を吐いたyouを見て、家康は軽く笑う。
彼はその名の通り「徳川家康」。
後に徳川幕府を開く誰もが知っている歴史上の有名人物の一人。
そしてもう一人は…。
「youーーーッツ!!」
「ギャー出た!!」
土煙を巻き上げながら、猛スピードで自分の方へと走ってくる黒い何か。
覇気とも邪気とも取れるドス黒いオーラを纏い遣って来たソレは三成だった。
三成は「石田三成」。
こちらもやはり有名な歴史の戦国武将で、関ヶ原の戦いの重要人物その人。
youがこの世界にタイムスリップしてきて最初に出会った人物でもある。
そんな禍々しい雰囲気の三成に微塵も臆することなく笑いかける家康。
「おー、三成!今日も元気そうだな!」
「黙れ、家康!というか何で貴様がここにいる!」
「ワシは天気が良かったから散歩がてらに城下の様子を見ていたんだ。」
「執務でも軍議でも何でもあるだろう!遊び呆けず秀吉様の為に日々尽力しろ!」
「しかし、人々の様子で政治の影響が一番に分かるだろう?決して無駄ではないはずだ。」
「屁理屈を…!」
「お前のほうこそ、どうしたんだ?こんなに息せき切って…。」
「私は…youを連れ戻しに……って、どうして家康なんかの後ろに隠れているんだ貴様は!」
「アッハッハ。」
「お前は笑うな!」
体格のいい家康の背後に重なって隠れているyouを見つけ、
三成は引き剥がそうと手を伸ばしたのだが…。
「帰るぞ!」
「いやー!」
「勝手に出歩くなと言っただろう!何故いつも城から逃げる!?」
「に、逃げてないです!ちゃんと書置きしてるじゃないですか!」
「未来の字だか何だか知らんが、貴様の字は汚くて解読し難い!そして書置きをすればいいというものではないっ!」
「何で外に出ちゃいけないんですか!秀吉さんだっていいって言ってくれてます!」
「『秀吉さ・ま』だ!探しに行くのが面倒だろうが!私の時間を割かねばいかんのだぞ!」
「自分でちゃんと帰ってきますから安心して自分の時間を過ごしてください!」
「秀吉様にお前の監視を仰せ付かっている手前、そういうワケにはいかんのだ!帰るぞ!拒否は認めない!」
「嫌~!」
「嫌ではない!私の手を煩わせるな!いいから帰るぞっ!!」
「いーやーーですー!」
「ぐっ?!」
三成がyouの腕を掴み、youは家康の上着のフードを掴んで、
家康は苦しそうに「ぐえっ」と呻き声をあげた。
「you!く、苦しい!」
「あっ!ごめんなさい…っわ!」
「ぬおっ?!!」
家康のギブアップコールに反応してyouが咄嗟に手を離したため、
強い力でyouの腕を引いていた三成がバランスを崩して彼女と共に倒れる。
「い…いったぁ…!」
「一体何なんだ!重たい!邪魔だ!今すぐ退け!」
「ひ、酷い…。」
2人して尻餅を付いた故の腰を庇いながらの起き上がり。
そして頭上から降り注ぐ眩しい笑顔と笑い声。
「ッハハハ!面白い奴らだな、お前たちは。」
「煩いッ!斬滅されたいのか!」
「それは遠慮しておくかな!さーて…忠勝が迎えにきたみたいだから、ワシはこの辺で帰るとするか!」
「さっさと帰れ!」
威嚇する三成を見て苦笑し、家康はyouの頭をくしゃりと撫でた。
「三成はyouが心配なだけなんだ、そう頑なに嫌がってくれるな…な?」
「ふえっ?!」
「三成が誰かを自主的に探すなんてこと、今まで一度も無かったんだから。」
「そ、そうなんですか?」
「そうだぞー……っ、危ないじゃないか三成!」
いつの間にか抜刀し、切っ先を家康へと向けている三成。
あはは、と…乾いた笑いを浮かべて家康は言う…。
「お、落ち着け三成。」
「黙れ、懺悔しろ、そして今すぐ死ね!」
「お、怒るなって、三成!とりあえず……百聞一見、逃げるに如かず!帰るぞ忠勝ーーーッツ!」
「いえやすぅうううッツ!!」
ザッと後ろに飛び退き、峠の方へと走り出した家康。
すぐさま後ろからガンダ……戦国最強と名高い武将…
なぜかこの世界では空まで飛べる本多忠勝が現れ、家康を背に乗せて空へ飛び立つ。
「じゃぁなーyou!ワシは先に城へ戻っておくー!」
「うーん!また後でねー!!」
「邪魔者は退散だ、忠勝!痴話喧嘩は犬も食わぬと言うからなーー!」
「ぬな?!//」
「ハハハ!」
そう笑い声を残して、爽やかに空へと消えていった家康。
取り残されたyouは地面に座ったまま気まずそうに三成を見上げた。
「…何だその目は。」
「いや…何も…あの…。」
「言いたい事があるならさっさと言え。」
「えと!あの…ごめんなさい。」
「は?」
「心配掛けて。」
「心配などしていない!掛けられたのは手間だ!」
そう強く言い切った三成。
天邪鬼にも程がある、と…第三者は見て思うだろう。
しかしながら、言われた本人はそういう言い方をされればやはり凹んでしまうものだ。
俯いて、ボソリと呟くようにyouは言葉を紡ぎ始める…。
「手間なら……やっぱり迎えに来なくていい、です。」
「だから私は貴様の世話を秀吉様に…!」
「明るい時間だけ。城下町の外へは出ないって約束しますから。」
「・・・。」
「それなら安心ですよね、ちゃんと夕刻までには戻ってきますから手間は掛けなくてよくなります!」
ぐっと拳を握って三成を見上げるが、
意外にも三成の反応は淡々としたものだった。
「大体…何故貴様はそんなに外へ出たがる?」
「だって…お城も好きですけど…やっぱり外に出てみたいっていうか…。」
「・・・。」
「電線の無い空が綺麗だなーって…お城から見てていつもそう思ってたから。」
ふっと空を見上げる。
youにつられ、三成も。
自分の見知った空の色より、何となく深い青色な気がした空。
徐に手を伸ばせば、その広さと高さに感極まってしまった。
「きれーい。」
「・・・変な奴だ、貴様は。」
「うん。きれい。まだ、綺麗な世界。」
「…その綺麗な世界でも、明るくても何でも…何かあったらどうするんだ…。」
「ふ?」
「この世界のことを知らんお前が…一人で賊から逃れられるとでもいうのか。」
「賊…とか、出るんですか。」
「知らん。」
「知らんのかい。」
「出るかもしれん。」
「かもですか。」
「出たらどうするんだ。」
「出たら……三成さんが助けに来てくれると信じます。」
「面倒臭い。」
「えぇー…そこを何とか…。」
しょぼーんと顔を萎ませるyou。
三成は呆れたような顔で大きく溜息を吐き、
一呼吸置いた後にyouの鼻をムギュと、摘んだ。
「オイ、明日から私の執務を手伝え。」
「はんれきゅうに?(何で急に?)」
「…早く終われば、団子くらい外で食わせてやる。」
「フェ?!(え?!)」
「書置きで気を揉むより、共に出歩く方が幾分マシだと言ってるんだ。」
「ひつはひはん!(三成さん!)」
「何…だっ?!//」
勢いよく立ち上がり、三成に抱きついたyou。
突然の行動に少しだけよろけたものの、三成はしっかりと彼女の身体を受け止めた。
「な、何してるんだ!離せ!鬱陶しい!//」
「優しい!三成さん、大好き!このツンデレめ!」
「何だそれは。」
「お団子、楽しみにしてます。」
「(流したな)・・・もういい、帰るぞ。」
「はいっ!」
幸せそうに微笑んで、youは城への道を歩き出す。
自分より前を浮き足立って歩くその姿に再び呆れ顔と軽い溜息が漏れたが、
それでも置手紙と杞憂が無くなることは喜ばしいと思う。
それ以上に重要なのは、急激に縮まった彼女との距離感であり、
考えれば思わず緩んでしまう顔を三成は一度強く抓った。
じつは君のこと
好きなんです
三成
(喉が渇いた。)
you
(はい、お茶ですー。)
三成
(この資料を半兵衛様の元へ持って行け。)
you
(はいー。)
三成
(硯を変えておけ。)
you
(はーい。ねぇ、三成さんあとどれくらいですかー?)
三成
(あとはこれと軍議の資料と秀吉様への書と…)
you
(まだそんなに?!)
三成
(ああ、そうだ。)
you
(もう日が暮れちゃうー。)
三成
(仕方ないだろう、恐らく明後日には暇ができる。)
you
(それ一昨日も聞きましたよ…。)
三成
(そうだったか?まぁ、これも秀吉様の御為だ!)
you
(・・・。)
『某、ストライキを起こすでござる』
三成
(youーーーッツ!!」)
*。゜.*。゜.*。゜.*