世界の温度 /トリップ
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贖いは
いつか旅の
終りを告げる
その日にと
彼女は微笑うのだ
世界の温度
04:故郷
宿…というより、滞在していた村を離れた林の中。
今までが一人で寂しかったのだろう、彼女は三成に沢山話をしてきた。
元々人付き合いが得意でない彼にとっては、普段ならそれは苦痛なのだろう。
しかし、自分でも驚くほど彼女との会話は弾んでいた。
それは「背負うものが無くなった」という意味だと…。
三成は無意識でありながらも、そう気付いていた…。
「そういえば、次の村は「石田郷」…まぁ、石田村?っていうんですよ、佐吉さんの苗字と同じですね!」
「石田郷…だと…。」
「ええ、確か。」
「…っ…おい、避けて通るぞ。」
「えぇ?!いや、そういうわけには…もう到着しますし、ご飯とかお水とか欲しいですし…。」
「あの村は…駄目だッツ!」
「どうしてですか?」
「あそこは私の……。」
「もしかして、故郷…なんですか?」
「・・・。」
「じゃぁ、里帰りに尚の事向かいましょうよ!」
「…帰る家など無い…。」
「そう…でしたか…。」
三成の反応が想像以上に暗いもので、思わずそれ以上はしゃぐことが出来なくなった。
しかしながら、到着間近な上に旅に必要なものを補給するためにも
村を素通りしていくことはできない…。
結局、村へ向かうが本当に補給と休憩だけの目的で立ち寄り、
一泊せずになるべく早く村を去るという条件で何とか三成を頷かせた。
お昼を過ぎたくらいで、2人は村へと辿り着く…。
辺りの懐かしい風景に心を震わせたのも束の間…。
どことなく活気の失せた村が視界全体に入ってきた…。
「どうしたんでしょうか…何だか皆さん元気が無いです…。」
「・・・。」
「ひとまず、休憩できそうなお店を探しましょうか。」
「おい…やはり…。」
三成の言葉の続きは恐らく「村を出よう」というものだったのだろうが、
それは第三者によって遮られた…。
否…第三者「たち」によって。
三成達の前に影が差したかと思えば、前方に数人の男達が現れて道を塞ぐ。
不思議そうな顔をする彼女に対し、三成の表情は何とも言えない歪なものとなった…。
「アンタ、その髪色……正継んトコの倅じゃないか?」
「…ッ…!」
「やっぱりそうかい……アンタ…よくここに戻ってこれたな…。」
村人の言葉によって三成の顔色が変わる…。
元々白磁のように蒼白い顔から更に血の気が引いていく…。
彼女が驚いた目で三成を見れば、彼は悲痛な表情を浮かべて村人たちを見ていた。
「アンタが…戦を起こして負けた所為で…この村は!」
「そうだ…何が豊臣だ!刀狩だ!何が西軍だ!関ヶ原だ!ふざけるな!」
「見ての通りだよ!アンタがここへ逃げ戻るんじゃないかって東軍の輩が荒らして回った!」
「一度や二度じゃねぇぞ!この間だって…!」
「この村にアンタの帰る場所なんてねぇ!とっとと出ていけ!」
三成は反論せず村人達の罵声を黙って全て受け入れる…。
自尊心の高い彼にとって、それは耐え難い屈辱であっただろうが
それら全て自分の罪だと…無言を貫く。
その騒ぎを聞きつけたのか、村人達が次々と2人の前に現れ
一人、また一人と三成を罵倒する声が増えていく…。
そして、一人…血気盛んな村の若者が吐いた言葉で事態は思わぬ方向へ向かう。
「おい、コイツの…石田三成の首を徳川に持っていったらどうだ?」
「そうだ…そうだ!何てったって西軍の総大将様だったんだからな!」
「もう、アンタの居場所なんてこの世界の何処にも無いんだ……ここで大人しく殺されたらどうだ?」
後に続いて、皆一様に「そうだ、そうだ」と賛同の声を上げる…。
戸惑うばかりの彼女とは裏腹に、三成はただ静かに彼等を見て、言った。
「死ねばいいのだな。」
「なっ…?!」
「私が死ねば、それでいいのだな?」
「そっ…そうだ!アンタがいなけりゃ…アンタが死ねばいいんだ!!」
「そうか…なら、好きにしろ。」
「!!」
初めに三成を殺そうと提案した若者に向かって、三成は自身の刀を投げ渡す。
ずしりと重い、本物の刀の感触に若者は思わず固唾を飲んだ…。
思いがけない三成の反応と答えに、村人達は皆驚いていたが
お互い、ここまで来て引き下がることはできないと感じているのだろう…刀を手にした若者が意を決したように抜刀した。
「だっ…ダメですっ!やめてください!」
三成が膝を付き、俯いて後ろ頸を晒したところで大きなストップの声がかかる。
見上げれば、眼前に自分を庇うように両手を広げる女の姿があった。
何故 助ける?
何故 庇う?
何故 生かす?
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