世界の温度 /トリップ
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
優しくても
怖くても
貴方はわたしの大事な人
世界の温度
15:御伽噺
「youお姉ちゃん、佐吉お兄ちゃん……ありがとう!」
深々と頭を下げる両親と、娘のお辰の明るい声に見送られ、村を発つこととなった2人。
youは心から嬉しそうな笑顔でブンブンと手を振り返す。
「よかった…本当に。」
「ああ。」
一家3人の姿が見えなくなるまで、手を振り続けるyou。
ついに、米粒ほどの小ささになり、まるでフェードアウトするように視界からその姿は消えていった。
ゆるゆると腕を下ろし、youは「見えなくなっちゃった」と呟く。
「寂しいのか?」
「うーん……それもありますけど…。」
「けど?」
「どちらかというと……何だろう、羨ましいのかな。」
「羨む?お辰を…?」
「うん。」
自分の妹か娘のように盗賊から守り抜き、正義の味方のように親元に帰してあげた行為は
武士である三成から見ても褒め使わす程の功績なのだろう…。
その栄光を手放す事…それ以前に大分懐いていたお辰と離れ難く思うのは分かるが、お辰を羨む理由など何処にも無いはず…。
何故だ、意味が分からないという三成の顔を見て、youはその理由を話し出す。
「自分の居場所に…帰れたから。」
「・・・。」
「わたしの家は……遠いです。」
それはそれは遠いところ。二度と帰れないだろう、場所。
そう言って目を霞ませれば、唐突に腕を引かれ、youは三成に抱きしめられた。
「みみみ、三成さん?!//」
「今はまだ……私の傍が、貴様の居場所だ。」
「・・・っ…!」
「私がお前の……帰る場所だ。」
「みつ…なり…さ…。」
「分かったな。」
「う……はい…。」
ぎこちなく頷けば、ゆっくりとした動作で身体を解放される…。
頬を赤く染めるyouと相反し、しれっとした様子でさっと馬に跨る三成…。
自分だけが動揺しているようで恥ずかしいと、
youはそれを振り切るように両頬をパチンと叩いて気合を入れなおす。
すると、馬上の三成が言葉を漏らした。
「次の町まで距離は分からんと言っていたな…。」
「ですね。だからこの村の人は皆向こうの町へ買い物へ出ていたようですし…。」(※youが攫われた町)
「野宿かもしれんな…。」
「うん、でも焦らず、休憩を挟みつつ行きましょう。」
「ああ……だが、いいのか?馬が手に入った今、駆け抜ければほんの数日で中国、四国まで行けるが…。」
ふるふると首を振り、youは三成に笑みを向ける。
「いいの、ゆっくり…三成さんと旅したい。」
「・・・そうか…。」
「沢山の人に出会って、色んな町や村に行って…すてきな景色を見たい。」
「・・・。」
「三成さんが……迷惑じゃないなら、だけど…。」
「・・・構わん。お前の好きに成せ。」
「えへへ…ありがとうございます。」
「・・・乗れ。」
「はいっ!」
嬉しそうに三成に手を伸ばせば、力強くその手を捕まれ、勢いよく引き上げられた。
引き上げられたのだが…。
「あの…。」
「何だ。」
「ま……前ですか?」
「馬を駆けさせるのであれば後方が好ましいが、そうでなければ後ろは辛いだけだ。」
「そうなんですか?」
「支えがないからな…上手く重心を保たねば落馬するかもしれん。」
「こ…怖ッツ!」
「余所見もできん。」
「なら……前がいいかな…。」
「行くぞ。」
「わわっ、ちょちょ…ちょっと待って!ストップ!怖い!」
馬を数歩歩かせた時点でyouからギブアップの叫び声が上がった。
というのも、いざ前に座ってみたものの、
バランスを取るために必要なものが何も無いからである。
傍でギャァギャァと騒がれるのが不快なようで、三成は眉を顰めて馬を一時停止させた。
「何だ、騒々しい…。」
「前の方が支えが無いじゃないですか…馬さんのタテガミ握るワケにもいきませんし…。」
「・・・。」
「後ろは三成さんにしがみ付けましたけど…。」
「手綱を持て。その上で私が支える。」
「え……っひぁ!//」
「馬も歩かせる。速度は出さん。」
「は…う…//」
三成が手に握っている手綱を共に持つよう言われ、恐る恐る手を伸ばしたのがいいが
次いで三成の腕が腹の前に回され、抱き寄せられる感覚が脳を支配する…。
緊張も然ることながら、自分の置かれたこの状況を冷静に判断するならば…。
「リアル白馬の王子様やでぇ…。」
「何をブツブツ言っている。」
「いえ…何も…//」
以降、言葉も無いまま暫く進んでいたが、徐々にyouの緊張の糸は解けていった。
そんな中、唐突に三成が口を開いた。
「you…。」
「は、はい…?//」
「少し尋ねたい。」
「何でしょう?」
改めてそんな風に問われるのは初めてで、少し驚く。
馬の歩く速度は遅く、揺れはそれなりにあるものの、
既に支えさえあれば辺りを見回すことにも慣れていたyou。
ゆるりと首だけを動かし、微かに三成の端正な顔を視界に入れた。
そして、その質問とは…。
「…旅の資金をどうやって稼いでたか…ですか?」
「ああ。不自由しているようには見えないが、お前は元々この日の本の者ではないのだろう?」
「そうですね……でも、だからこそといいますか…。」
「何・・・?」
「こちらではまだ流行っていない歌を歌ったり、皆が知らない物語を話したりして、稼いでいました。」
「成程…異なる世界と時代を逆手に取った…ということか。」
「ですね。」
「皆、物珍しくて奮発してくれたりするんですよ、意外にも。」
「そうか…。」
「ちょうどいいですし、次の町で資金調達しましょうか。」
「ああ。」
と、いうことで…。
次の町では宿を取る前に資金稼ぎをすることが決定した。
・
・
・
・
そんなこんなで、馬で約1日。
youは辿り着いた町で三成に資金稼ぎを披露することとなった。
「まぁ、稼ぐというほどのことじゃないんですけど…。」
「自由に成せ。私は近くで見ている。」
「はいはい。」
まずは数人の子ども達に声を掛け、空いているスペースに着席してもらう。
次いで、暇そうに広場を歩いている大人達におずおずと声を掛けていくyou。
大人は大人でも「年配の」が形容に使われる類の…である。
そんな、正に老若男女たちの眼前にyouは腰掛け、笑みを向けた。
「忙しい最中に集まってもらってすみません……えっと…わたし、youという旅の者なんですけど…(*)近江、山城を経て、この摂津の国へと入りました…それで…。」
(*…現在の滋賀、京都、兵庫辺り)
と、自己紹介から始まり、何故集まってもらったかということには
一同に「日の本の誰も知らないお伽話を聞かせる」と告げた。
そして…
「昔々、あるところに白雪という姫がおりました……彼女はその名の通り、真雪のように白い肌に黒檀のように黒い髪。まるで血潮のように赤い唇で…まさに、冬に望まれ産まれた娘でした。」
物語の冒頭はそんなくだりから始まった。
話の内容は子ども向けに作られたもののようだと、三成は解釈する…。
白雪姫
~石田三成解釈~
要約すると、こうだ。
白雪という美しい姫に嫉妬した継母が南蛮から持ち込まれた奇異なる鏡のお告げに従い、
お目付け役を使い姫を暗殺しようと試みるが、その男の姫への同情心により暗殺は失敗。
(君主の命には絶対服従すべきだ。何故躊躇う必要がある?私には甚だ疑問だ。)
お目付け役から継母の暗殺の意図を聞かされた姫は城を抜け出し、その先の森で七人の忍に匿われる。
(七人それぞれに特徴があり……その特徴は…忘れた。さしても重要ではないだろう、割愛する。)
忍の里で姫が生き残っていることを鏡に教えられた継母は怒り、御自ら姫の首を獲りに行く事を決意。
商人の変装をして里に入り込み、毒入りの菓子や果物を姫に食べさせようとするが失敗する。
(商人が忍の里を訪れて、誰も疑問に思わんのだろうか…分からん。)
しかし、ある日とうとう毒入りの果物を口にして姫は倒れてしまう、と。
任務から帰還した忍達が家で倒れている姫を発見した時には既に息は無く…。
その死に姿があまりに美しいので、土に還さず、里に飾ることにしたらしい。
(いくら死に姿が綺麗かろうと、所詮は人……腐敗してしまっては目も当てられんぞ。馬鹿な連中だ。)
里で姫の死を悼んでいると、そこへ一国一城の殿がやって来たのだそうな。
(だから何故!忍の隠れ里に…!!)
その武将は姫の美しい(死に)姿を見るなり、彼女を見初め、城へ連れ帰りたいと申し出た。
(どういうつもりだか心底理解し難い…死体を愛でるなど、奇人変人の域ではないか…。)
忍達ははじめは渋ったものの、武将の頼み込みに根負けし、姫の遺体を譲る事にする…。
将軍は彼等に感謝し、早速姫(の死体)を城へ連れ帰ろうとしたのだが…。
その前に何故か姫(の死体)を口吸うた。
(女童たちがキャァキャァと騒いでいたが……分かっているのか?死体だぞ?そしてこのくだりは必要なのだろうか…。)
それから武将の家臣らが姫を籠に乗せて帰ろうとしたのだが、家臣の一人が石に躓いてしまう。
籠が揺れ、一同が皆慌てていると、驚くべき事が起こった。
何故か、姫が目を覚ましたのだ。
揺れの拍子に、姫の口から果物の欠片が零れ落ちた…。
そう、つまり、毒の果物は飲み込まれたわけではなく、喉に詰まっていただけだったそうな。
つまるところ、仮死状態。
(窒息死しなかったのが本当に不思議だ。)
息を吹き返した姫は、自分を救ってくれた将軍に一目惚れし、目出度く二人は結ばれることとなった。
そして、姫の命を狙っていた継母はというと…。
原因は分からないけれど、風の噂で亡くなったという話が姫の元へ届いたそうな…。
(これはyouの表情からして、そこだけ何か隠しているようにも思える終わり方であった。)
以上。
「それから、二人は末永く幸せに暮らしましたとさ。」
最後に「おしまい」で締め括り、youは笑みを浮かべた。
いつの間にか、ギャラリーは増えており、気づけば前列で子どもが、中列にご年配の方々。
そして、その後ろには途中から集まってきた町人達により、youは囲まれていた。
「面白かった!」
「おねえちゃん、ありがとう!」
「いいなぁいいなー、私も白雪姫みたいにお殿様に会いたい!」
少女達だけでなく、少年達も嬉々とした表情で物語の感想を述べる。
「もっと話しをして!」とせがむ子ども達の間から、ふいに大人達がyouへと腕を伸ばしてくる…。
「面白い話しをありがとよ、早速帰って孫に聞かせてやるとするよ。ハイ、これはお駄賃。」
「ほんと、まるで異国の話しを聞いてるみたいだったわ…ありがとうね。」
「少ないけど、これ貰ってってくれ!機会があれば別の話しを頼むよ、娘さん!」
次々と渡される聴講料を慌てた様子で受け取るyou。
何度もなんども「ありがとうございます!」と繰り返す…。
受け渡しが終わる頃には、昼も過ぎた時間になり…。
子ども達は他の話が気になるものの、昼食の時間は外せないらしく、皆一様に家へと戻っていった。
・
・
・
・
「ってな感じで今まで稼いでいました。」
「そうか…。」
「大金ではないですけど……2、3日同じくらいいただければ結構な軍資金になるのですよ。」
「・・・すまん。」
唐突に謝罪の言葉を放った三成をyouは目を点にして見つめる…。
「ふえ?」
「私にはそれを調達する術が無い。」
「いいいいえいえいえっ!滅相も!だって!」
「?」
「本来なら…わたしの方こそ三成さんに護衛代払わないといけないくらいなのに…。」
「そんなものは要らん。」
「でも…。」
「要らん。」
「えーっと……まぁ、だから!だから……一蓮托生?持ちつ持たれつ行きましょう!ってことで。」
「微妙だな…。」
「すいません…カッコイイ言い回しが思い付きませんデシタ。」
トホホ…と、俯くyou。
しかし、そんなことは全く気にしてはいないようで、三成は全く別の話題を彼女へ振ってきた。
「ところで、今日話したのはお前の知る物語の一つなのだろう?他にもあるのか?」
「はい、そうですねー……うん、結構ありますね!」
「そうか……。」
「どうでした、白雪姫?」
「…一国一城の主が変人なのは如何なものかと思った。」
「あはは……確かに、死体愛好家みたいになっちゃってますもんね。」
「・・・。」
「でも、他にも切ないのとか、怖いものとか……あー…お話しましょうか?」
「いい……それより、そろそろ宿を取りに行った方がいいだろう。」
「そうですね。」
三成の尤もな意見に頷き、youは宿を探すべく歩き出した。
その最中、今度はyouがこの時代の話に興味を持ったようで…。
歩きながら、三成を見上げて声を掛ける。
「あ、そうだ…三成さんは…色々お話知ってますか?」
「この日の本のか?」
「はい!」
「源氏の物語や御伽草子くらいなら…いくつか文献を目にした事があるが。」
「お気に入りの話しとか、ありますか?」
「・・・。」
「え?」
「カチカチ山。」
「うわ、揺ぎ無ェ言い方……どんだけ狸に恨み抱いてるんですか…。」
「狸は私の憎悪する人間を彷彿させる……嗚呼!あのような男、泥船に乗って水底に沈めばいい!!」
「(徳川家康…ね。)」
「苛々してきたぞ……you!さっさと宿を探す、グズグズするな!」
「は、はひッ!!」
思わぬ原因で、久々に垣間見た今初期の頃の冷たい眼光の三成。
優しい三成に慣れつつあった事もあり、三割増し萎縮するyouなのであった…。
歩いてきた道程の分
わたしと貴方
知らない事が減っていく
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*