世界の温度 /トリップ
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傍にいたい
傍にいなければならない
本心はどちらか
世界の温度
14:選択
まだ陽も昇りかけの朝方、目覚めて一番に「ところで…」と三成に告げられた言葉。
「昨日は色々あって言えなかったが……貴様、その格好は何だ、はしたない。」
「・・・。」
確かに、気付いて見てみれば自分の着用している着物は、
その膝から下をアジト逃走の際に火種として使った為に破り取られている。
しかしながら、それは致し方ない事情があるわけで。
このままだとクドクドとお説教が始まりそうな予感を感じ、
youは素早く口を挟み、その事情を説明し始めた。
「・・・と、いうワケで、こんな格好になっているのです。」
「…成程。」
「お陰様で走りやすかったですし、馬にも乗りやすかったですよ。」
「そういう理由か…。」
「はい。」
「それなら仕方が無いが、できる限り早く、町で着物を新調しろ。」
「ふぁい…。」
事情が分かると、流石の三成も納得してくれた様子。
特にそれ以上言及することもなく、馬の体調を見に行った。
それからyouがお辰を起こし、出発の準備が整うと
休息を終えた場所から、正規の道を通らずに迂回して町へと戻った…。
「案外早く着いたな……敵に出くわす前に用事を済ますぞ。」
「は、はい!」
三成の言葉に慌てて返事を返すyouだったが、
詰まるところ、此処は連れ去られた現場なわけで。
youは町に着いてからもずっとお辰の手を握り、三成の傍にピッタリくっついて歩くのだった。
そして3人はすぐにお辰の父親の友人が営んでいるという店へ向かう…。
「この辺なの?」
「うん……あっ、いた!おじちゃん!」
たたた…と、露店が立ち並ぶ通りを走り、とある店の前でお辰は止まった。
youと三成は顔を見合わせて頷き、その後を追う…。
「お辰…お辰ちゃんかいッツ!?」
「おじちゃん!」
「どうしてここに!?お前さんが盗賊に攫われたってアイツ血相変えて昨日ここに来たんだ!」
「お父ちゃんが?!」
「俺ぁ見掛けてないって言ったら、すぐどっか行っちまったけど……多分家に戻ってるはずだ!何があったか、分かんねぇが…兎に角早く家に帰ってやんな!」
「うん!それでね…あの…。」
自分の家の帰り方が分からない、とは何故か言いにくかったようで急にモジモジしだしたお辰。
何となくそれを察知し、後ろにいたyouがお辰の肩に手を添えて、店主に声を掛けた。
「盗賊団からお辰ちゃんと一緒に逃げてきた者です…あの、これからお辰ちゃんを家に送っていってあげたいんですが、彼女の村への道って…おじさん分かります?」
「え?あ、アンタも攫われたのかい?!そりゃ無事でよかったな!」
「ありがとうございます。」
「で、お辰ちゃんを送り届けてくれるのかい?そりゃ両親とも喜ぶよ!」
「はい!」
「お辰の村へはここから西の方向だ。町の正面口を出てから左の道だな。」
「近いですか?」
「そう遠くない。歩いて一刻と半(2時間半)くらいだ。割と広い1本道だから迷うこともないだろうよ!」
「本当ですか?ありがとうございます!」
歩いて2時間以上という距離は現代では中々に遠いものだったが、
この世界に遣って来てからの時間が相当に経過しているyouにとってはそれほどのものではなくなっているらしい。
特に苦い顔を浮かべる事も無く、もう一度店主に礼を告げて立ち上がった。
「行きましょう、三成さん!」
「待て。」
「?」
「その前に着物だ。」
「あ、ああそっか。」
自分の足元を見て、町行く女性陣と比べると破廉恥で(元の世界では普通なのだが…)、
確かに異質で奇異の目で見られているなと感じた。
人と違うことが当然の世界から来たyouにとっては不躾な視線だと思うものの、
このまま自分のスタイルを貫くと三成やお辰にまで迷惑が掛かると踏んで、大人しく着物を新調すべく呉服問屋へと向かった。
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「今から作ってもらうような時間は無いんです…あの、既製品のお着物とか、あります?」
「ああ、種類はそう無いけど……こっちだね。ほら。」
「わ、思ったよりも沢山ありますよ!どれにしようかな…。」
呉服屋の主人に案内された場所にあった着物のラインナップを見て、
その種類の多さに嬉しそうな反応を示すyou…。
しかしながら、バリエーションが豊か過ぎるが故に中々決められない。
うーん…と、唸りながら三成に助言を請う…。
「ね、三成さんはどれがいいと思いますか?」
「知らん。」
「つ、冷たッ!せ、せめて色くらいアドバイス…助言を下さいよ…。」
「・・・・。」
拗ねたように口を尖らせれば、暫しの沈黙ののち、三成はその薄い唇を開いた。
「黄…か桜…か………あまり暗い色は止めておけ。お前には合わん気がする。」
「暗い色も良くないかな?こう…クールビューティー!みたいな!」
「くーる…?」
「んー……強かな女性!みたいな。」
「・・・ハッ。」
「(鼻で笑ったよ…この男…。)」
文句の一つでも言ってやりたかったが、そんなことをすれば数倍返しで貶されることは明白なワケで…。
諦めて、暖色系の着物を漁ることにした。
それから数分後…。
「ん、ではこの桜色のにしときます。」
「・・・いいのか?」
「はい!でも帯か帯紐は他の色買っちゃいます。」
着付けに必要な最低限の代物が全て揃ったところで、
店の奥を使わせてもらい、youは早速着替えて三成とお辰の元へと戻ってきた。
「お姉ちゃん、その着物凄く似合う!」
「ありがとう、お辰ちゃん!」
「ね、佐吉お兄ちゃん!」
くるりとお辰が三成を振り向く…。
どうせ「知らん」の一言で済まされるのだろうというyouの予想は意外にもハズレで、
三成は彼女の新しい着物姿を上から下までしっかり見て、コクリと小さく頷いた。
「・・・ああ。」
「ほ、ほんと?み…佐吉さん?」
「私は好きだ。」
「っ……あ、ありがとうございます…//」
続いた思わぬサプライズの言葉に、彼の言う色を選んでよかったと…。
本気でそう思ってしまうyouであった。
着物も新調し、後はお辰の故郷の村へと向かうだけとなり…。
町には昨日の盗賊も今は遣って来ていない様子だったため、
何の心配もなく情報も仕入れ、町を出る事ができた。
それから暫く馬を走らせ、気付けば一同は長閑なお辰の村へと辿り着いていた…。
「私の村!!」
馬から降ろされ、すぐに駆け出したお辰…。
とある家の玄関を勢いよく開き、大きな声で家の者を呼ぶ。
「お父ちゃん!お母ちゃん!!」
「お…たつ…?お辰!!?」
「お母ちゃん!!」
攫われ、もう二度と帰ってこないと思っていた娘の無事な姿を見て、母親は駆け寄り、その小さな身体を思いっきり抱きしめた。
続いて父親も騒がしい玄関先の出来事に気付き、抱擁に加わった…。
「お辰!でも、アンタどうして…一体…!」
「うん!あのね!youお姉ちゃんがお辰を助けて、佐吉お兄ちゃんと一緒に村まで送ってくれたの!」
「youと…佐吉?」
「えっと…あ!お姉ちゃん、こっち!」
ひとしきり、家族の再会の遣り取りを得て、母親がお辰に事の真相を尋ねたところで
youと三成がちょうどお辰の家の玄関前にやってきた。
「どうもこんにちは…お辰ちゃんのお母さん、お父さん。」
「アンタがお辰を助けてくれたのかい?」
「いえ!わたしの方こそ…何というか…お辰ちゃんがいたから…盗賊から逃げようって…思ったんで…だからその…。」
「ありがとう!本当にありがとうね!!」
「い、いえ!」
母親はyouに駆け寄り、その両手を握るとボロボロと泣きながら感謝の言葉を述べた…。
「俺からも礼を言うよ、お嬢ちゃん、それにそこのお侍さん!ありがとな…本ッ当に、ありがとうな!」
お辰を抱きしめたまま、視線だけを2人に向けて父親もそう叫ぶ…。
「お辰の命の恩人を立たせたままなんて失礼だね、2人とも中に入ってちょうだい。」
「狭い家ですが、遠慮なさらずどうぞ!」
両親に促され、家に上がることとなったyouと三成。
いいタイミングだと、この村の宿の有無を問えば答えは「無し」とのこと。
馬が手に入った今、次の町まで駆け抜けてもいいと思っていた2人だったが、
お辰の両親が何とかして感謝を伝えたいとのことで提案した、夕飯と一夜の宿として泊まっていってほしいという言葉に甘えることにした。
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「まだ、眠らないのか?」
「三成さん……うーん、もう少ししたら寝ますよ。」
「そうか…。」
「・・・。」
月の見える縁側に腰掛けているyou。
三成はそっとその横に腰掛けた。
「無事、お辰ちゃんを家に帰してあげれてよかった…。」
「ああ。」
「・・・三成さんのお陰ですね。」
「いや、これは紛れも無くお前の功績だ。」
「・・でも、こんなに早く村へ着けたのは…」
「謙遜はいい。着眼点は其処ではないはずだ……お前の策が、お辰を救った。」
「…っ…夢中でした。」
「お辰と逃げることに、か…。」
三成がそう呟くように問えば、youは顔をブンブン横に振った…。
否定の意を示した事に「何故だ」と尋ねれば、そこには眉を寄せて泣きそうな顔を三成へと向けるyouがいた。
「捕まったらどうしようって…やっぱり殺されちゃうかなって……。」
「・・・。」
「逃げられても…っ、もう……二度と…み…三成さんとは会えない、って…。」
「・・you。」
「思っ…そう考えちゃう、から…兎に角で走って…っ…だから…。」
「泣くな…。」
「っ、く……三成さんのことを考えないようにすることに夢中、でした。」
「・・・。」
「でも、できなかった。」
走っている最中、不意に口を突いて出た三成の名前…。
走る事だけに意識を集中させているつもりだった。
しかし、無意識に三成の事を考えていたのだろう…と、彼女は言った。
それから言葉は消えたものの、涙は止め処なく頬を流れて行く。
歪む視界ではマトモに前も見れないが、触れる手の感触は分かる…。
はっと肩を揺らせば、youの頬に三成の手が添えられていた。
「…私は此処にいる。」
「っ…はひ…。」
「お前の傍に居る。」
「・・・うん。」
「何度も言わせるな……お前に私が必要なように…私もお前が必要だ。」
「それは……。」
「何だ。」
「一人の人として?」
「何を……。」
「それとも………新しい、使命として?」
「!」
ドクン…と三成の心臓は跳ねた。
それはまるで地獄か何処かで究極の二択を迫られる感覚のように思えるほどのものだった。
以前の自分であれば、迷わず「使命だ」と即答していただろう。
今でも、今すぐにそちらを選びたいと思っている。
しかしどうだ、心と裏腹に口は言うことを聞いてくれない。
口の中が急速に乾いていき、今まで戸惑いや迷いを映した事のない瞳には動揺の色が移り込む。
「それ、は…。」
「・・・。」
「私は…。」
「・・・な…--んて!」
「!」
「言ってみただけです。」
「・・。」
「ちゃんと分かってますよ!三成さんの事は…。」
「you。」
「わたしは…三成さんの生きる意義なんですよね。」
「…そうだ。」
「わたしを守って、四国まで!それはつまり、三成さん自身が決めた、三成さんの使命です。」
「・・・。」
「ちゃんと……分かってますよ。ね?」
「っ…。」
「…おやすみなさい。」
だから責めないでくれと、忘れてくれと、切に願うような笑みだった。
見えない壁が崩れた時
自分が自分ではなくなる
それが怖くてたまらない
words from:yu-a
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