世界の温度 /トリップ
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戦をすることだけが
危険な目に遭う事ではないと
知った日…
世界の温度
11:事件
「行くぞ、you。」
「はい……あ、そうだ!」
「何だ?」
「すみません、もう一枚風呂敷を買うのを忘れていました…予備の分なんですが…。」
「ハァ…町の入り口で待っていてやる……すぐに済ませてこい。」
「すみません、ちょっと行ってきます。あ、色は藤色にしときますね!三成さんのイメージカラー!」
「何でもいいからさっさと成せ。」
「はぁ~い。」
出発の日、これから町が活気付いていくという様子の朝方…。
youは買い忘れた風呂敷を求めて出店の連なる方へと駆け足で向かう…。
巾着や反物、手拭や風呂敷を扱っている店は数多くあったが
色々見て回る時間は無いので、昨日行った店でいいだろうと、youはふくよかな女性が店主を務める店へ足を運んだ。
「何だいお嬢ちゃん、昨日の買い忘れかい?」
「え、覚えてるんですか?!」
「そりゃ、大事なお客さんだしねぇ…昨日は桜色の風呂敷を買ってくれた子だろ?」
「正解です!」
「それに何より…旅をしてるって言ってたし…この辺りじゃ見掛けないような可愛らしい娘さんだからさぁ。」
「何か照れます……あ、それで、風呂敷を1枚買い忘れちゃって…。」
「そうかい、そりゃまたご贔屓にしてもらって……割り引きしとくよ、どれがいいんだい?」
「それじゃぁ、この藤色ので!」
「まいどあり!」
昨日より安く購入できたことにyouが嬉しそうな笑みを浮かべていると、
それを見た女店主が「そういえば」と、彼女に警告をひとつ。
「あんた、旅してるんだろう?道中、賊に気を付けな。」
「賊…ですか?」
「ああ、ここが活気ある町だからこそだろうけど……町から離れると、仕入れた品や買い物をして帰る旅人を襲う賊が沢山いるからね。」
「怖いですね…気を付けないと。」
「そうだよ、アンタは綺麗なナリしてるし、気を付けないと身ぐるみ剥がされるだけじゃ済まないかもしれないんだから。」
「・・・。」
「戦が終わったばかりで、何もかもが混乱しているからだろうね…ホント、嫌んなるよまったく…。」
「…早く…平和な世の中に変わっていくといいですね…。」
「そうだねぇ…。」
「それじゃぁ、もう行かなきゃ……三成さんが待ってる。」
「何だい、旦那がいるんかい…それなら少しは安心できるねぇ。」
「だ、旦那…!?み、三成さんは別にそ、そういうんじゃ…//」
「はっはっは!照れちゃって、可愛いねェ…それじゃ、気を付けて行っといで!」
「あ、ありがとうございました…//」
「ん!」
豪快にお別れの挨拶をされ、youは恥ずかしそうに店を後にする…。
しかし…
照れて下を向いて歩いていたのが災いしたらしい…。
急に強い力で腕を引かれたかと思えば、youはあっという間に人気の無い路地裏へと何者かに引きこまれてしまった。
「い、痛い痛い!!」
「おい、誰か口塞げ!」
「え!?ちょっと何すぅ…ふがっ?!!」
数人の男達に囲まれ、羽交い絞めにされたかと思えば
間髪入れずに口に猿轡代わりの布が結ばれてしまう。
そんな中、一人の男がyouの正面で軽く説明を施す。
「町中で日も明るいうちからこんな目に遭うなんて予想外だろうなぁ、お嬢さん?」
「んーーー!!!?」
「ヘヘッ…たまたま町に物色に来てみれば偶然アンタを見掛けてなぁ……。」
「!!」
「あの侍の兄ちゃんはちぃとばかし厄介そうだから、アンアが一人になるトコをずぅっと待ってたんだ。」
「(三成さん!!)」
「成程、やっぱりナカナカの上玉じゃねぇか……さっ、お前ぇら!気付かれない内にズラかるぞ!!」
恐らくは誘拐実行犯の中で指揮をとっているのだろう…。
その男の言葉に一同は無言で頷くと、youの腹に重い拳を入れて気絶させ、俵担ぎでその場から逃げ去った。
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「遅い!たかが風呂敷一枚買うのにどれだけ手間取っているのだ、あの馬鹿者!斬滅する!」
そう怒れる声色で叫ぶと、三成は我慢できずに町へと戻った。
youが忘れもの…と、風呂敷を買いに戻ってから十数分。
元々が短気な性格の三成は三十分待つことすらできないらしい。
「…ん?」
道の途中、路地裏へ続く民家と民家の間辺りに何かが落ちている。
近づいて拾い上げてみれば、未使用品なのか、それは綺麗に折りたたまれた藤色の風呂敷だった。
「…まさかな。」
そういい終え、微かな靄を抱いたところで、三成は出店の連なる大通りへと辿り着く。
どの店に風呂敷を買いに行き、どれだけ迷っているのか、はたまた別の品物に目移りしているのか…。
後者であればただではおかないと、三成は般若の形相で町中を歩き出した…。
数分経たないうちにメイン通りにやってきた三成。
最初に見かけた反物を扱う出店の女性に声を掛ける。
「おい、少し尋ねたいのだが。」
「いらっしゃい!んまーたまげた!アンタ…とんでもなくイイ男だね!何が欲しいんだい?安くしとくよ!」
「特に何も要らん……それよりここに…。」
「ん?その風呂敷…ウチんトコのかい?」
「これ…か?」
「何だい、ウチの店を贔屓にしてくれてんのかい!でも、アンタみたいなキレイな男…私が忘れるハズないんだけどねェ…?」
「常連ではない。これはさっきそこで…。」
「そうそう!さっきもそれと同じ藤色の風呂敷が売れてね!その色、若い人に人気って謳い文句で多めに仕入れようかね!ハハッ!」
「さっき売れた?若い……娘か?」
「そうだよ、この辺じゃ見かけない感じの可愛らしい娘さんでね、ありゃきっと京か尾張の出じゃないかねェ…。」
「その女、何処へ行った!?」
「何処へって……いい人が待ってるからって、それを買ったらすぐこの通りを町の出口の方へ引き返して行ったさ…?」
「ッ……you!!」
お喋りな店主の話は少し長引いたものの、その結論として
風呂敷を拾った時に抱いた三成の不安はどうやらグンと的中に近づいてしまった。
恐らく、youはこの店で、この藤色の風呂敷を購入して
三成の元へ戻るべく、すぐにまっすぐ引き返したのだ。
しかし、この風呂敷が落ちていた場所で何か彼女に異変が起こった。
「人攫いか…ッツ!!」
店主が何か更に何か話題を振ってきていたが、そんなことに構っている暇はない。
三成は踵を返して元来た道を逆走し、風呂敷が落ちていた箇所へ舞い戻ってきた。
風呂敷が落ちていた道の足元をよく見て見ると、何人かの足跡がわんさか残っている。
反対側の道にはそれは無いため、十中八九youはここから裏路地に引きずり込まれ、攫われたのだろう。
連れ去られてから約二十分程…。
足跡を全速力で走りながら辿ったところ、町を外れて野道に出てしまった。
通常、舗装されていない道では足跡が分かり辛いため、慎重に探し歩かなければならない場合が多いのだが、
今回は少しばかりイレギュラーなようだ。
幸か不幸か、敵は馬を使って逃げたらしく、重量のある蹄の跡がなかなかくっきりと野道に残っている。
しかし馬で駆けたとなれば、もう既にyouは大分離れたところまで連れて行かれてしまっているだろう…。
「(町で馬を借りる金は無い…奪って逃げてもいいが……それよりも…今は…。)」
「こちらの方が都合が良いようだ」と、一言呟くと、三成を取り巻く気配の質が激変した。
じわり、じわりと漆黒のオーラが身体じゅうから滲み出て、とてつもなく肥大した殺気が放たれる…。
当然、木々に止まっていた鳥たちは一斉に飛び立ち、
風でそよいでいた草木はざわざわと大きく波打った。
「何人も……私から……もう何も…奪うな………殺す、コロスコロス…殺してやる…殺してやるぞォオオ!!」
手に持った刀さえ邪魔なのか、三成は刀の鞘を口に加えると
常人ではありえない程のスピードで走り出した。
youの生きていた世界とは似て非なるこの平行世界では、
三成のように並外れた力を持つ者が存在するらしい。
勿論、彼女…youはこれまでの一人旅で出会ったことも無ければ、
三成がそんな力を持っていることさえ知らないのだが…。
兎に角、youは知り得ない特殊な力で以って、
三成は賊から彼女を救うべく全速力で野道を駆け抜ける…。
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一方、こちらはyou。
床に落とされた衝撃でハッと目を覚ました場所は、
どうにも薄暗くて視界が慣れるまでに暫く時間を要するようなところであった。
「ほらよ、口は自由にしてやるが…騒ぐなよ…斬られたくないならな。」
「…っ。」
あが、と声を出せば、猿轡代わりの布の縛りが解かれる…。
「口は」と念を押すだけあって、手足はしっかりと逃げられないように縛られていた。
はぁ…と、深い溜息と吐けば、
youを担いできた男がそれを嘲笑うかのように「大人しくしとけ」と吐き捨て、部屋を出て行く…。
「最悪……どうしよう、三成さん…。」
眉を寄せて一人呟けば、部屋の隅から「大丈夫かい?」と女性の声…。
自分一人かと思っていた部屋には、どうやら何人か同じ穴のムジナがいるらしい。
youが身体を起こして、この場所に関して尋ねると、
まぁ…予想通りの答えが返って来た。
「ここは盗賊団のアジトだよ……アンタも含め、ここにいるのは人攫いに遭った女。」
「やっぱりか……もう、どうしよう……これから、どうなるんだろう…。」
「このままだと売られちまう運命だね。」
「いや、それは困る。わたし、四国へ行く途中なんだもん。」
「四国ぅ?何でこのご時勢に西へ行こうとするんだいアンタ?」
「うーん、ちょっと……ワケありで。」
「まぁ、深く尋ねはしないけど……ていうか、尋ねたところでこの状況が変わらないことには意味の無い質問だ。」
「ですよね……誰か小刀とか…鋏とか…。」
「持ってたらとっくの昔に使ってるし、例え持っててもここは中も外も盗賊だらけだ。捕まるのがオチさ。」
「ですよね…。」
会話の後、youだけでなく、部屋にいた全員でハァ~っと大きな溜息を吐く。
壁の一ヵ所に小さな窓があり、そこから射し込む光からまだ陽が暮れていないことが伺えた。
恐らく売られるとしても今日のうちではないだろうと踏んだyou。
もしも逃げ出すなら、それこそ丑三つ時を少しだけ過ぎた頃がベストだろう。
ぼんやりとそんな事を考えて、次いで縄を解くことを試みることにした。
「(手は器用な方だから…足の縄は解けるはず…。)」
案の定、固結びされていただけの足の縄は後ろ手に縛られている指先を駆使して、驚くほど早くに解く事ができた。
バレては面倒なので、暗い環境を利用してyouは誰にもその事実を告げることなく、手枷を外すために壁側を向いて座りなおす…。
足を潜らせる際に少しもぞもぞと動いたが、別段誰も気にしてはいない様子。
それでも辺りをチラチラと伺いながら、縄を噛み切る作業に移った。
どうせ逃げないと思っていたのか、手も少し強めに固結びされているだけ。
結び目を緩める作業は正直歯が痛かったものの、youは意外にも両方の縄を解いてしまった。
「(よっしゃ…現代人のカルシウムパワーをナメんなよ…安土桃山時代人め…。)」
くっく、と心の中でほくそ笑んだものの、気付けば陽は翳り、夜の帳が降りる寸前。
結構な時間を費やしていららしい事実に驚くyouだった…。
しかし、まだ行動は起こせない。
更に言えば、どんな行動を起こせばいいのか、策も思いついていない。
「(とりあえず深夜までに考えないと。)」
うーんと悩むyouの耳に、小さくすすり泣く声が聞こえてきた。
泣きたくなる気持ちも分かるが、何故このタイミングなのだろうかと…。
顔を上げて、泣き声の方を見れば…そこには年端もいかない小さな少女が一人いるようだった。
皆一様に同じくらいの年齢なのだろうと思っていたので、これにはyouの目も大きく見開いた…。
「あ、なた……も、攫われちゃったの?」
「ん…。」
「名前、何ていうの?」
「ひっく…お辰だよ……おなか…すいたよう…帰りたい。」
「・・・お辰ちゃん…。」
「お母ちゃん…。」
「(ダメだ…一人で逃げちゃ…こんな小さな子……助けてあげないと……!)」
ぼんやりと考え付いていた案は、一人でなら逃げれる確率もそこそこだったが、ここにきてその確率は一気に下がる…。
それでも少女を見捨てていけず、youは一同に協力してもらうことにした…。
「あの、皆さん…わたしはyouと言います…皆さんの名前、教えていただけませんか?」
暗がりでよく見えない状況下なので、名前を聞いて人数を把握する。
彼女達は一瞬戸惑ったものの、名前を教えるだけなのだから、そう不思議も無いわけで…。
お辰も含め、すぐに全員分の名前が集まった。
「わたしとお辰ちゃんを含めて5人……これなら…いけるかもしれない…!」
「いけるかも…って、まさかアンタ…。」
「ココを出ましょう!」
「馬鹿言わないで!無理よそんなの!縄すら解けていないのよ?!」
「お菊さん、ほら。」
「アンタ…何時の間に、縄…!」
「だから、ね?このまま売られちゃうのは本当に解せぬ!なんです、わたし!」
「そりゃ…私だって…。」
「でしょう?!」
「だけどここは…!」
「分かってます、だから…ひとまず私の話を聞いてください。」
そう言ってyouは脱走のシナリオをを彼女達に伝え始めた…。
お願い
どうか
諦めないで
words from:yu-a
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