世界の温度 /トリップ
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怒と哀の感情の他に
感情は在ったのだ
私の中に、今も、昔も
世界の温度
10:笑顔
宿に到着し、すぐに休息を取った三成とyou。
しかしながら、予想以上に疲れていたようで、2人して深く寝入ってしまった。
目覚めた時にはもう夕刻で、例え町へ出ても店が閉まっていく時間帯…。
結局その日は買い物を諦め、今日、今、旅の準備を整えるべく町へ遣って来ている。
そんな状況。
「食料はこんなものでいいでしょうか。」
「ああ。」
「後は四国に向かうための次の町の情報を聞かないと…。」
「どこぞで馬を借りて一気に四国に向かえばいい。」
「えぇっ!その発想は無かった!でもお金無いし、わたし馬に乗れません!」
「私が乗れる。」
「お金は。」
「無い。」
「じゃぁダメです、他の方法を考えましょう。」
ほんの少し期待を抱いたものの、すぐに水泡を消えyouは軽く溜息を吐いた。
三成はというと、彼女の反応は気にせずにぼんやりと町の様子を見渡している…。
「三成さん…?」
「ここは…本当に平和そうだな。」
「そうですね…ここは、戦地からは免れた明るい町だって、さっきのお店の方が言ってましたし。」
「皆、笑っている。」
「うん…。」
「「戦が終わったから」だと、言っていた。」
「・・・。」
先程買い物をした店で、店主が言っていた言葉を思い出す…。
「この町は賑やかですね」と言ったyouの言葉に対して「戦地からは免れた明るい町だから」と答えた後、
店主は嬉しそうに「戦が終わったから、もっと活気付くはずだ」と満面の笑みを浮かべた。
それは、戦の第一人者である三成にとっては冷たく重い言葉。
曇った顔色で三成は誰にとも無く問うた。
「私のしたことは…間違っていたのだろうか。」
「三成さん…?」
「…私はただ、家康を殺せればよかった。ただ、それだけでよかったのだ。」
「・・・。」
「私一人で立ち向かって構わなかった。」
「・・・・。」
「しかし、私の立場は…軍を率い秀吉様のご遺志を継ぐ使命を蔑ろにすることを許さなかった。」
「三成さんの、立場…。」
「私は…計り知れないほど沢山のものを私の、家康への憎悪に巻き込んでいたのだな…。」
「みつなりさん…。」
「気付きもしなかった……いや、気付こうともしなかった。」
「・・・。」
「間違って、いたのだろうな…。」
そう言って、三成は何処か遠くを見つめた後、youを見下ろす。
そこでやっと、この懺悔は自分に伝えられていたのだと気付き
youは慌てて三成と視線を合わせた。
憂いを帯びた瞳には困惑だけが見て取れた。
西軍の総大将という立場だった三成は、起こした戦が間違いだったと言ってはいけない。
しかし「石田三成」という全てを失った一人の男にとっては、今や関ヶ原は後悔の歴史そのものなのだ。
答えを求めるかのような三成の言葉に、少し戸惑いを見せた後…youは意を決して口を開いた…。
「わかりません。」
「・・・。」
「わたしには、三成さんの選択が正しかったのか、間違っていたのか…分かりません。」
「…そう…だな……。」
「だけど……三成さんは、今苦しんでます。戦で家や故郷や…大事な人を失った人々と同じように。」
「・・・。」
「例えば三成さんの選択が間違っていたとしても……そう思って後悔してるのであれば、それを悔い改めて生きることは……間違ったことじゃないと思います。絶対に。」
「悔い…改めて、生きる…?」
「はい。」
「どう、生きればいい…?」
「……見つけましょう。」
「見つける…?」
「三成さんの歩幅で、三成さんが思う生き方を、見つけましょう。」
「・・・。」
「わたしはそれに付き合いますから。」
「you…。」
「ね?」と、youは三成に笑いかける。
三成は大きく目を広げて驚きを顕にしたが、すぐに緩やかに細められ、弱々しい表情を浮かべた。
「…間違えず、生きられるだろうか。」
「あのね、三成さん…月並みかもしれないけど、間違えない人間なんていないんだよ。」
「・・・。」
「間違えたら、怒られたり、自分で気付いたりして、前に進んでくの。三成さんだってそうしてきたでしょ?」
「怒られたことなど記憶に無い。」
「あらら(…そうかぁ~、それでこんなに我儘っこに…)。」
「…何か言いたげだな…。」
「なっ、なんでもないです!」
ジロリと鋭い眼差しで睨まれ、慌てて首を横に振るyou。
三成はムスッとした顔を浮かべて、彼女の頭に手を伸ばす…。
殴られるかと思ってぎゅっと目を閉じると、驚くべきことに三成はただyouの頭にぽんと手を乗せた。
「み…三成さ…?」
「私の遣る事に間違いは無い、と……刑部に言われた。そうなのだろうか。」
「うーん、多分…違うんじゃないかな。」
「刑部が私に嘘を言っていたとでも言うのか。」
「ええっと…いや…うん、間違いではないかもしれませんね。けど、正解なんて無いんです。」
「・・・。」
「三成さんの心が揺らぐということは、西軍が揺らぐということ……だから、ブレちゃいけない。」
「心…。」
「刑部さんは三成さんの背中を支えてくれていたんじゃないでしょうか……わたしは刑部さんを知らないけど、何となく……そう思っちゃいました。」
「刑部は…私の柱のような存在だったのだな。」
「素敵な人なんですね、ますます会ってみたくなりました!」
「刑部にか?」
「はい!」
「・・・。」
「どうしました?」
「いや…っフッ…。」
「む?」
「クク…。」
突然込み上げた笑いを押し殺すように、三成は俯く。
youが不思議そうな顔をしてじっとそれを覗き込めば、
「見るな」と、頭をワシワシ撫でられ、髪を乱された。
「わぁ!も、ちょっと三成さん!何がおかしんですかー!」
「いや、違う……ただ、ッフ…クク…驚きそうだと思って。お互いに。」
「刑部さん?と、わたし?」
「ああ。同じ顔をして驚きそうだ。」
「む?」
youは「この人が刑部さん?!」と言い、大谷は「三成よ、これは何事か」と問う。
大きく目を広げて、お互いの存在に驚いた光景が想像できて、それが三成の笑いを誘う。
笑いが収まらず、肩を揺らしているとyouが膨れっ面で三成の背中をポカポカと叩いてきた。
「ちょっと、三成さん!何なんですかー!」
「知らん、貴様等が勝手に私の中で面白い光景を作り出しているんだろうが。」
「ちょっと何ですかその理不尽な考えは!」
「ふっ…くく…。」
「もうっ!………ま、いいか。」
「ふぅ…。」
「ねぇ、三成さん。」
「あ、何だ?」
やっと笑いが収まったらしい三成。
目尻に溜まった涙を軽く指で拭いながら、youに顔を向ける…。
目線を合わせれば思いのほかじっと見つめられたので、思わず身じろぐ三成。
すると、いつかのように、youは両の手を三成の頬へと伸ばした。
「な…何だ急に!」
「三成さん。」
「な、なんだ。」
「今、楽しい?」
「は?」
尋ねた後、youはこてん、と首を横に傾ける。
その仕草が少し可愛く思えて、三成は微かに頬が赤く染まる感覚を覚えた。
「どう、思ってますか?」
「どう…とは…。」
「わたしはね、凄く嬉しいです。三成さんと一緒にいられて…お話できて…笑ったり怒ったりできて。」
「・・・・。」
「だから、三成さんも同じ気持ちだったらいいなぁって、思ったの。」
「私は…。」
「うんうん。」
「・・・というか…。」
「ん?」
「い…いい加減手を離せッツ!//」
「わぁ!」
youの手首をがしっと掴み、左右に離し、開放する。
三成の頬から離れた手はふわりとyouの元へ戻っていった。
すぐさま、「それで?」と再び尋ねるyouに対し、
三成は消え入りそうなくらい小さな声で答える。
「…ぃ…。」
「え?」
「悪くは、ない…。」
「それは…。」
「…っ、い、行くぞ!」
「あのっ!//」
「何だ!早くしろ!」
踵を返して歩き出した三成。
youがその背に向かって叫ぶと、不機嫌そうな顔で…。
でも頬は相変わらず照れたように、微かに赤い三成が振り返る…。
ぱたぱたと、youは駆け寄って三成の陣羽織の後ろ裾を小さく摘んだ。
「わたし、三成さんの…。」
「・・?」
「笑った顔、すごく好きです。」
「なっ…!?//」
「これから、たくさん……三成さんと笑いたいです。」
「・・・。」
「今まで笑えなかった分、沢山笑って、沢山お話して……喧嘩…は負けそうなのでしたくないけど…。」
「・・・・・。」
「一緒にいたい、です。」
「……馬鹿が…。」
「…すみません、こんなことばっかり。」
「・・・。」
youの言いたいことは三成には何となく分かっていた。
つまり彼女は、悟っていたのだ。
三成の中の喜怒哀楽の感情が偏っている…否、怒りと哀しみしかない事を。
だから一緒にいたいという言葉に託けて喜びと楽しみを取り戻してほしいと願っているのだと。
何となくだが、察していた。
三成自身、彼女と一緒にいることでその事実に改めて気付いたと言っても過言ではないだろう。
そしてそれを、あたかも自分が今まで一人だったから笑えなかったと、言葉を置き換える。
オブラートに包んで三成の自尊心を傷付けないように伝えたのだ。
「(秀吉様がご存命の時には確かに在ったはずなのに……いつの間にか笑い方を忘れていた。)」
「三成さん…?」
「それでもお前は…。」
「ん?」
「…いや、何でもない。」
「うん…。」
「言ったはずだ、ずっと共にいて守ってやると。」
「は、はいっ!」
「私は嘘は好かん。」
「はい、わたしは三成さんを信じてます。」
愁いを帯びて俯いていた顔が、三成の一言でパッと嬉々とした表情に変わる…。
三成はそれを満足気に見て、できうる限り優しい笑みを浮かべてみることにした。
笑い方を忘れた醜い笑みだ
それでもお前は柔らかく笑って
私の全てを受け入れてくれるのか
words from:yu-a
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