世界の温度 /トリップ
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暖かな陽だまりの中
考えていたのは
お互いのことでした
世界の温度
09:苦悩
「や…やっと到着しましたぁあ~!」
「随分長い道程だったな…。」
石田村を離れて数日、youと三成は活気ある町へと辿り着いた。
勿論、その旅の間に立ち寄る場所が全く無かったわけではないが、
宿も無いくらいの小さな村がいくつかあるくらいで、一日世話になってすぐに出発という具合。
ゆっくり寛ぐなどということは出来なかった。
そんな苦難を何とか乗り切り(と言っても疲れているのはyouだけに見えるのだが)、
2人はこの町嬉々とした表情で歩いて回る…。
「まずは宿探しですね!」
「そうだな…。」
youの提案でいくつか宿を回り、一番安い宿に泊まることにした。
受付で宿帳に名前を書き込み、youは顔を上げる。
「はい、どうもね。えーっと、お部屋は1つでいいかい?」
「え、あ、そっか…(今は三成さんもいるのか)」
「別の方がいいのかい?」
「あっ、えっと…1つでいいです!」
「はい、じゃぁ2階の奥の部屋だ。」
「は、はい。」
宿の女将はご丁寧に部屋に案内することはせず、
そのままyouは三成と二階に上がることにしたのだが…。
ちょうど階段を上りきり、二階の廊下に出たところで三成に呼び止められた。
「おい、you。」
「は…はひ…。」
「部屋が一つとはどういうことだ。」
「えっと…や、やっぱり2人は狭いですか?あわわ、別がいいなら今から言いに行きます!」
「そうじゃない。」
「う…。」
「お前こそ、別でなくていいのか?」
「だって……。」
「私はいなくならない。youを傍で守ると決めた。」
「っ……//」
無自覚で女性へ殺し文句を放つ三成はとても性質が悪いとyouは思う。
しかしながら、三成が傍にいてくれるということをyouはもう疑ってなどいなかった。
ただ、今回一番重要だったことは…。
思いの外言い辛かっただけの話。
「お…お金のこともあるし…//」
「・・・。」
「ごっ、ごめんなさい!あの!い、今のは最たる理由ではなくてですね!やっぱりその!//」
「・・・。」
「みっ、三成さんが傍にいてくれると安心だなーって…あ、あはは…。」
「気休めはいい…金銭も立派な理由だ。言い淀むことはない。」
「うう…。」
「しかし…貴様はやはり…。」
「?」
「疑うことをしないというか…。」
「疑う?って…?」
「・・・汚されても知らんぞ…ということだ。」
「・・・?」
「分からないなら、いい。だが、多少の危機感は持った方が得策だぞ。」
「危機感、ですか?」
「貴様の貧弱な身体に興味は無いが…私も一応「雄」だという意味だ。」
「んなっ?!//」
三成が言わんとしていることがハッキリ分かり、顔を赤くするも、
それ以上に馬鹿にされたことの方が重要で、youはプンスカと怒り出す。
「ちょっと!貧弱ってどういう意味ですかー!」
「率直な感想だが。」
「みっ、見た事も無いくせに!!//」
「ならば見て判断してやるぞ?遠慮なく脱げ。」
「誰が脱ぐかーーッツ!!//」
本気の怒りほどでは無いものの、今までの三成との遣り取りの中では
#youにとって恐らく初めての態度。
一方の三成はそんな彼女の態度を見て、無意識に分析を行っていた。
こんな言葉で怒るのかと…。
こんな顔を見せるのかと…。
自分の言葉で笑ったり、怒ったり、泣いたりするyou。
他の誰でもない、三成自身がそうさせているという…それは何故だかとても心地好く思えた。
気付けばふっと笑みを浮かべていたようで、youが驚きの表情を浮かべる。
「み、みつなりさんがわらった!」
「・・・笑っていない。」
「でも、今…。」
「笑っていないと言っている。」
「・・・そうかなぁ。」
「そうだ。」
「・・・綺麗だったよ。」
「何度も言わせるな。」
「むぅ。」
頬を膨らませ、話題をはぐらかされたと拗ねるyou。
一方の三成は全く気にも留めず、荷を解きはじめていた。
結局…色々と買い物にも行かなければならないが、歩き通しの旅だったので、
その疲れを取る為に暫し2人は部屋で寛ぐことにした。
「ふぁあ…。」
「眠いのか?」
「んー…無事に宿に着けて安心したら、ドッと疲れが…。」
「では、寝るといい。私はここに居る。」
「…三成さんは疲れてないんですかぁ?」
「別に…普通だ。」
「でも、意識してないだけで疲れてると思いますよ…一緒にちょっとお昼寝でもしませんか?」
「・・・。」
「折角の宿屋ですし…寛いでおかないと勿体無いですし。」
「それはまぁ、一理あるが…。」
「でしょう?じゃぁ、決まり決まり!」
「お、おい!何を!触るな!」
唐突に彼の腕の装甲具を外し始めたyouと、その行為に驚く三成。
今まで、ずっと安心して休まる場所が無く、三成はいつも甲冑を身に付けたままで仮眠を取っていただけ。
youにはちゃんと寝ていると言うものの、実際のところは分からない…。
だからこそ、嫌がっても、拒否されても、無理矢理にでも無防備な姿にしてやりたかったのだ。
彼女のその意思に気付いたのか、三成ははぁ、と…溜息混じりに俯く。
しかしながら、反抗することは無く、ただずっとyouが自分の装甲を外していく姿を終始眺めていた。
全てを外し終えて出てきた三成の言葉は「軽いな」というもの。
youはといえば「鎧の下はこうなっていたのか~!」と関心を示している。
本当は其れが知りたかっただけなのでは?と、一瞬思ってしまう三成だった…。
「この上着みたいなの、凄いですね!細かい鎖がびっしり!鎖帷子ですか?RPGのミスリルベストみたいなのものかな?」
「ミス…?これは満智羅という。」
「何でこんなに短いんですか?肩と腕だけ守ってるみたいな。」
「形は色々ある。鎧に合わせて作られているだけだ。」
「そっか……ふふ…。」
「何が可笑しい。」
「ん、いや、鎧を着ていないと、武将さまには見えないなぁと思って。」
「・・・。」
「にしても…羨ましいくらい細いなぁ。」
「黙れ。」
「だけどしっかり筋肉付いてて、いいなぁ。」
「・・・。」
「三成さんを見てるとゴリマッチョより細マッチョがいいような気がしてきました!いや、でも三成さんは別にマッチョってわけじゃないよなぁ…ああ、でも腹筋イイなぁ…//」
「(まっちょとは何だ…?)」
「うん、とりあえず三成さんは素敵と言う事で!」
「一人で完結するな馬鹿者。」
べしっと軽く三成に頭を叩かれたyou。
とりあえず苦笑を浮かべて「ごめんなさーい」と言葉を返した。
そして、youは押入れから掛け布団だけを取り出して戻ってくると、
三成の傍に座り、その布団を広げる。
「じゃぁ、お昼寝しましょうか!」
「勝手にしろ。」
「三成さんも寝るのですー!」
「腕を引っ張るな!」
「じゃぁ大人しく横になるのですー!」
「分かった!分かったから腕を離せ!」
「はい。」
はぁ…と、大きな溜息を吐いて、三成は渋々横になる。
youもそれに続いて畳の上に横になったのだが、ふと気付いたように三成の方を向いた。
「あっ、三成さん、枕要りますか?」
「要らん。」
「そですか…。」
「……要るのか?」
「えっ、いや…折角だから使える物は使っておこうかなーとか。」
「取りに行くのが面倒だろうが。」
「でもすぐそこですし。」
「煩い…一々動いてくれるな…。」
「わ…っ?!//」
「…眠たくなってきた。」
やはり身体は睡眠や休息を欲していたらしい。
横になって、寝る体勢を整えたのが幸か不幸か、三成を眠気が襲ったようだ。
とても久しぶりに睡眠の欲が芽生え、逆らうことができなかった三成は
youを諌めると、彼女に己が腕を差し出した。
驚きの表情を浮かべて、youは慌てて彼の名を呼ぶ。
「み、みつなりさ…//」
「…む…。」
「お、重くないですか?腕、痺れちゃうんじゃ…。」
「要らん心配をするな……貴様も寝ろ。」
「ね…(寝れんわ!//)」
寝る気満々だったはずなのに、急遽三成の至近距離(しかも腕枕付き)で添い寝することとなり、
動揺で眠気が吹っ飛んでしまったyou。
顔を赤くしたままそっと横を向くと、すぐ近くに三成の顔があった。
長い睫に高い鼻立ち…少しだけ開かれた薄い唇。
白い肌は一見不健康そうだが、それが逆に儚く美しいという三成の形容になっている。
どれを見て吟味してもyouの頭の中には「イケメン」という単語しか出てこない。
「(寝顔は天使みたいだ。)」
すぅすぅと呼吸を繰り返す三成をじっと見つめ、youはそんな事を考える。
よっぽど疲れていたのだろう…今まで自分を守る為にも常に気を張っていてくれたのだと分かり、youは申し訳なくも思った。
「(ありがとう…。)」
ふんわりと笑みを浮かべ、youは三成に心の中で礼を述べる。
いつも眉間に皺を寄せて、絶対零度並みの言葉しか言わない三成が
何の憂いも無く、子どものように無防備な寝顔をさらけ出している。
(本人にとっては不本意だろうが…)
いつまでも眺めていたいと思うくらい幸せそうなものだったが、
人の眠りは人を更に誘うもののようで、ついさっきまで寝れるわけがないと思っていたはずなのに
気付かないうちに、youの目蓋も落ちてきてしまうのだった。
・
・
・
・
何時間程経過しただろうか…分からないくらいの時間を寝て過ごしたようだった。
ちょっとした昼寝のつもりが、余程疲れが溜まっていたのか、2人して爆睡していた。
オレンジ色に染まった窓が、それを物語っている。
ぼんやりした視界の中、三成が最初に捕らえたのはyouの髪…。
それから気付く、胸板から伝わる暖かな温度…。
見れば、自分の胸板に擦り寄るようにして眠っているyouの姿…。
「(未だ独りが怖いのか…。)」
枕になっている腕を少し動かし、youの頭を抱き寄せる。
その震動でyouの目蓋が震え、うっすらと彼女の瞳が開いた…。
「ん…みつなりさ…。」
「貴様は未だ…。」
『孤独が怖いのか?』と、先ほど疑問に思ったことを尋ねようとしたのがだ、
それは寝惚け途中のyouに遮られる。
「ひとりじゃないからね、みつなりさんは…。」
「は…?」
「わたしが、傍にいるからね。」
「・・・それは貴様が…!」
「ぎょうぶさん…見つける、まで……ずっと…いる、から…。」
「・・・!!」
改めて生身の肌にyouの柔らかな頬が寄せられ、同じくらいの位置にぴたりと両手も添えられた。
唐突に返された言葉は誰よりも三成を想う言葉で、逆に気付かされる…。
自分も彼女と同じ孤独を抱えているのだと。
必要とされているだけでなく、心のどこかで彼女を必要としていたのだと。
「(だから、私は…「守る」という言葉に託けた。)」
自分の方が強いと思っていた。
彼女の方が弱いと思っていた。
彼女の孤独の方が自分の孤独より深いと決め付けていた。
孤独な事に変わりなどないのに。
「(傷を舐め合うなど御免被る…私は…私は其処まで墜ちてはいない…ッツ!)」
それでも彼女を突き放すことをしないのは、何故だろうか。
「(ああ、成程…同道巡りか…。)」
「・・・。」
「だから…今はお前を守る事が…私の生きる意味なのだったな…。」
「ん……ん…。」
「貴様の思う事など知るか…貴様は貴様で…勝手に想い、勝手に成せ。」
「・・・。」
「私は私で、好きにやる。」
「・・・。」
「だから……you、お前は只…私に守られろ……拒否は認めない。」
「…。」
「私にはお前が…必要だ…。」
最後にぽつりとそう呟き、三成はぎゅう、と…youを大事そうに抱きしめた…。
理由が無いと
生きる事すら
許されないの?
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*