世界の温度 /トリップ
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独りを怖がる理由
彼女が私より…
誰よりも孤独だと知った
世界の温度
06:真意
石田村を逃げるように出た後、誰も通らないような山道の途中で三成が急に立ち止まる。
そして彼、三成は彼女、youに何故命を懸けてまで自分を庇ったのか…その真意を尋ねた。
「そろそろ落ち着いたはずだ…聞かせてもらおうか、理由を。」
「……。」
「私は自分を偽っていた。それは流石の貴様も途中で気付いたはずだ。」
「・・・そう、ですね。」
「では、何故…庇った。」
「それは愚問です。言ったはずですよ『大事な友達だから』だって。」
「だがそれは本心ではないはずだ。」
「本心ですよ?だってもう、わたしたち他人じゃないです。」
「だが、本当の理由は『独りが嫌だから』だろう?
何故、生きることより死を選ぶ?
其れほどまでに孤独を嫌う理由は何だ?
そもそも、貴様は何故女一人でこんな荒れた世を旅する?」
三成の怒涛の質問攻めにyouは一瞬目を丸くさせたが、
その問いの一つ一つを飲み込み、ゆっくりと目を伏せた。
三成の位置から、俯いたyouの長い睫毛が見える。
それがゆっくりと上向きになり、彼女は三成を見上げて悲しそうに微笑った。
「絶対、信じてくれるって約束してくれるなら、話す。」
「・・・・。」
前回、同じ質問をした時「信じるか否かは後で考える」と答えた三成。
しかし、それはyouには通用せずNOの言葉を食らった。
あれからほんの少ししか時は経過していないが、
今、この時までに時間の割には随分深く互いのことを知ったのだ。
当然の如く、三成の答えは決まっていた。
「…今更疑うものか。私はお前を信じる。」
「・・・三成さん…。」
虚偽で他人に自分の命は懸けられない。
それを思い、三成はyouの目を真っ直ぐ見つめ返す。
それは元来曲がったことが大嫌いで、純粋な三成から出た当然とも言える答えだった…。
三成の返事を聞いて、youは覚悟を決めたように話し始める…。
「わたしがね、ここじゃないトコから遣って来たって言っても……わたしのこと、信じてくれますか?」
「どういう、意味だ?」
「そのまま、日の本でなく、南蛮でもなく、全く異なる世界から、ってことです。」
「…妖の類、ということか?」
「うーーん、だいぶ違います。わたし、ちゃんと人間です。」
「そうか…。」
「でも、住んでいた世界が違うっていうのはそういう意味合いかもしれないです。」
「人の世、妖の世ということか?」
「ええ、この世界とは「別の」世界、「別の」日の本に住んでいました。」
「そんな場所があるのか?!」
「あります。そしてわたしの世界にも今、この世界のような戦国の時代があって、わたしはその更に数百年先の未来に生きていたんです。」
「・・・それだけ聞くと信じ難い話だな…だが、本当なんだな?」
youはただ、ゆっくりと頷く。
それから彼女は例えば服装や髪型、髪色、歴史上の人物の年齢誤差、
言葉遣いなど…どういう風に自分の世界と異なっているのかを簡潔に、ただし分かりやすく的確に話して聞かせた…。
その話は興味の沸くものでもあり、また、賢い三成には作り話にしては彼女の話しぶりに偽りが見当たらないとも思えた。
それと同じように三成がyouにこの世界の日の本の歴史を軽く伝え、
2人で歴史の答えあわせをするような形となった。
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「色々聞いたが考えも及ばない……不思議な世界なんだな。」
「でも、この世界の未来にも通じているのかもしれませんよ。」
「だとすれば……お前にはこの先、何が起こるか分かるという事ではないのか?」
「それは……歴史を専攻しているわけじゃないから、あまり詳しくは…だけど、わたしの世界の未来とこの世界の未来が同じとはどうしても思えなくて。」
「それは何故だ?」
「さっき、三成さんに教えてもらった歴史と、わたしの世界の歴史は違うと思う……ううん、違う。」
「…成程。」
例えば「石田三成」の尊敬する「豊臣秀吉」が「徳川家康」に討たれたことだったり、
「石田三成」自身が西軍の総大将として関ヶ原を起こしたことだったり、
その「石田三成」が関ヶ原で「徳川家康」に辿り着くことなく「伊達政宗」に敗北したことだったり、
敗北した後は打ち首になる事無く、無気力に世を彷徨い、行倒れたことだったり…。
youのいた所謂「現代」のそれとは似て非なる歴史が紡がれている。
だから、この先の未来がどう進むのか全く以って分からないのだ、と…。
youはその相違点を三成に伝えた。
「秀吉さんは病で倒れるし、西軍の総大将は毛利家の人だったし、三成さんが関ヶ原で伊達政宗に負けるっていう記録も無かったはずです…。」
「・・・そうなのか。」
「それに、少なくとも三成さんがわたしと出会うなんて歴史は、何処にも無いはずですしね。」
「確かにそうだな。」
「だからこそ……出会えて、嬉しかったんですよ。」
「・・・。」
youはそう言って静かに微笑む。
「こっちの世界にきて数ヶ月、わたしはずっと独りでした。」
「・・・。」
「服を変えるまでは好奇の目で見られて、この世界のことを尋ねればまるで頭のオカシイ人のように言われるし…もう、散々。」
「・・・危ない目には?」
「遭いましたよぉー、一回だけですけど。野宿した時に夜盗に。その時はダッシュで朝まで逃げ切りました!まだこっちに来たばかりで手ぶらで身軽でしたしね。」
「・・・。」
「それ以降は何が何でも野宿は避けて…何とかここまでって感じです。」
「そうか…。」
「会話をするたびに「妙な奴」だって言われて……当たり前ですけど、誰もわたしの話を信じてくれませんし、分かってもらえないから……凄く、辛かった。」
「・・・。」
「わたしはこの世界で……たった…独りだった、から。」
声は段々と萎み、顔は段々と俯き、youの瞳から涙が零れる。
彼女の真意を理解し、三成は彼女の孤独を知った…。
物語が本当であれ嘘であれ、今はただ、思わず抱きしめてしまいそうな衝動に駆られたが、
敢えてそうはせず、三成はただ彼女の頭を強く撫でてやることにする。
まるで「今までよく頑張った」と言うかのように。
嗚呼、まるで
私自身を
見ているようだ
words from:yu-a
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