君子殉凶キミに恋する / トリップ
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「ヌシの、成りたいものは何か?」
と 唐突に
大谷さんに尋ねられました
なりたいものは何ですかか?
「・・・なりたいもの…ですか?」
「ああ、そうだ。」
「そうですねぇ…この世界に来る前は色々夢はあったんですけど…。」
うーん、と困ったような顔を浮かべて暫し悩むのは
幸か不幸か、現代世界からこの世界にやって来てしまった女…名をyouと言う。
(これまた幸か不幸か、初めてこの世界で出会った人物である凶王、石田三成から好かれるという
天地がひっくり返るくらいの驚きを周囲にもたらした人物でもある…。)
朝から、ばったり出会った大谷にふいにそういう質問を投げ掛けられ、素直に答えを考える…。
「大谷さんも知っての通り、環境がガラリと変わってしまったので、今は将来の夢が潰えちゃってますねぇ。」
そう言って、ハハ、と…苦笑を浮かべた。
この世界の生活に大分慣れてきたこともあってか、
具体的な夢というものが思い出せないくらいだ。
しかしながら、その具体的な夢以外になら…と…。
ふと、苦い笑いを止めて、ピンと思いついたものがあったと口を開く。
「あー、でも最終的にはやっぱり『幸せな家庭を~』ってやつですかね!」
「ヒヒ、左様か、ぬしらしい答えよの。」
「えへへ。」
・
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・
・
「…アイツが…そのような事を…。」
そう呟いたのは石田三成。
稽古が終わって部屋に戻るところを大谷に呼び止められ、
今しがたyouと交わした会話の内容の話をされた。
「それは本当なのか、刑部?」
「やれ、全て真実よ。」
「・・・。」
「どうした、三成よ。」
「それはつまり、その……。」
俯いて、少し頬を赤らめた三成。
彼がそんな表情をすることは極めて珍しく、普段滅多に目にすることのないようなその表情には
流石の大谷も大きく目を見開いた。
さて、そんな無防備な顔で一体どんなことを考えているのかと
続く三成の言葉をワクワクしながら待つこと1分程…。
真剣な眼差しで大谷を見つめ、三成はとんでもない事を言い出した。
「つまり、私の子を孕みたいという事だろうか。」
「?!!」
「刑部ッツ!」
今話したyouの言葉にそんなフレーズは1つも含まれてはいなかったはず。
いや、入っていないと断言できる。
この男は一体何をトチ狂ったことを言っているのかと…。
普段慌てる姿を見せない大谷もまた、珍しく動揺した表情を浮かべた。
とりあえず、三成の顔は真剣そのもので、
大谷は言い淀みながらもそれをフォローする言葉を紡ぐことにする…。
「ま…まぁ……それも含めての『幸せな家庭』であろうな……たぶん…。」
最後の「たぶん」は最早聞こえない程小さな声だった…。
そして、大谷のその言葉をその気にした三成は更に考えを馳せる…。
「し、しかし……アイツはそんな事一度も…。」
「ヒヒッ……やはり本人に確かめるのが一番よ。」
「…そうだな。」
揺ぎ無い瞳で頷き、三成は大谷に背を向けて歩き出す…。
廊下に残った大谷は思惑以上の反応を見せた三成に対して
「面白い!」と…一人、酸欠になるくらい笑い転げるのだった…。
・
・
・
・
「おいっ!」
「?」
大谷の話を聞いた三成は自室へは戻らず、
話の真偽を確かめるべく、youの部屋へと向かっていた。
スパーン!と勢い良く襖を開けば、畳で茶を啜っていたyouが驚きの表情を向ける。
「あ、みつなりさ…」
「貴様は私の子を孕みたいのか?」
「?!!」
言わずもがな、youは先ほどの大谷と同じ顔を浮かべた。
しかしながら、彼女はすぐに顔を真っ赤にして反論に出る。
「いっ、いきなり何を言ってるんですか!!//」
「刑部に聞いたのだ。」
「大谷さんに?いつですか?!わっ、わたしそんな話してないですっ!!してない!!」
「刑部が嘘を言うはずがない。だから貴様が嘘を吐いている。」
「何その信頼と俺様!!」
自分の言う事が絶対と言わんばかりの三成の言葉に
ビシッ!とツッコミの合いの手を入れて、ほんの少しではあるが怒りを顕にするyou。
三成はやはり、その怒りはまったく気にしてもいない…寧ろ、気付いてもいないようで、
ナチュラルにyouの正面に足を組んで座り、フンと鼻を鳴らした。
「『将来なりたいものは』と聞かれて、幸せな家庭を持つ妻だと…そう言ったのだろう?」
「はぁ…ああ、確かにそんな質問されましたけど…。」
「けど何だ。」
「でも、妻になるとか、三成さんの子どもをはらっ……孕む、とか…///」
「・・・。」
「そんな恥ずかしいこと一言も言ってないですっ!!///」
ぎゅっと両の拳を胸の前で握り、youは真っ赤な顔で反論の意を示す…。
しかしながら…それはただ三成の逆鱗に触れたようで、
そっと顔を上げれば、ドス黒いオーラを纏った凶皇モードの三成が
腰に差した刀に手を掛けながら膝立ちで構えていた。
「貴様ッ…私の妻になることを嫌だと…私の子を孕むのは嫌だと言うのか…?」
「ギャァアア!怖いぁあああ!!」
逃げ出そうとするも、腰が抜けるくらいの威圧感を三成が醸し出しているので、立つ事すらままならず…。
youは必死で抜刀行為にストップをかけた。
「そっ、そういうワケではないんです!決して!断じて!!」
「では一体どういうワケなのだッ!!」
「あの、あのえっと!」
「早く言わんか!」
「そ…そうですねぇ……とりあえず…漠然とした言い方だと…。」
「・・・。」
きちんと話し始めたyouを見て、何とか心落ち着けた三成…。
刀から手を離し、もう一度綺麗に佇まいを直した…。
「そう、好きな人と幸せに暮らしたい……ということです。」
「好きな……そっ、その相手は誰なんだッ?!」
「えぇっ?!//」
予想できなかったわけではないが、よもや三成の口からその質問が来るとは思わず
youは頬を赤らめて暫し口を噤む…。
その間にもじっと三成が自分を見つめてくるものだから、とても気恥ずかしく思ったが、
最終的には、youは嬉しそうに笑った。
それは、突拍子もないことを言い出して人を困らせたり
すぐに可愛い癇癪を起こして怒ったり(相手にもよるが…)するものの、
結局最後には自分を好きでいてくれてることが分かる行動を取っているのだと気付くのだ。
「やっぱり、三成さんがいいな。」
だから、youは笑った。
微笑って、言った。
「なっ……ならいいっ…。」
「はい。」
youの言葉に触発されたのか、どことなく、三成の頬も赤い。
そんな彼の顔をじっと見て、何か思いついたらしいyou。
ずいっと近づいて、上目遣いで三成を見上げて言った。
「じゃぁ、三成さんは…わたしのこと幸せにしてくれるんですか?」
「う"っ…//」
「ん?」
ひたすらにじーっと見つめ続けると、観念した三成がチラ、とyouを見て口を開いた…。
「わっ…私を裏切らないと、秀吉様に誓えるのであれば…幸せに……してやらんこともない…っ///」
「誓います。」
「!」
「ずーっと……三成さんだけが好きです。」
「・・・。」
「大好きです。」
暖かい笑みを浮かべて、三成を見たyou。
即答した時点で大いに驚いていたのだが、紡がれた言葉が
今まで味わったこともないくらい幸せで甘ったるい言葉だったもので、
その類の免疫が全く無かった三成は真っ赤になってワナワナ震えだした。
「まっ…。」
「?」
「負けるものか…っ…//」
「…み、三成さん?」
「わっ…私は…愛しているッツ!!」
「ぇ…っ…!//」
「クソッ!いえや……いえやすぅうううッツ!!」
何故か。
恐らくは羞恥心に耐え切れず、三成は何故だかいつも気に食わない男、徳川家康の名を叫びながら走り去っていった。
部屋に一人残されたyouはというと…。
「家・康・?」
こめかみに青筋を浮かべるのだった。
嗚呼
何て
不器用な人!
三成
(刑部!刑部!!)
大谷
(どうした、三成よ。)
三成
(どうしたもこうしたもない!どういうことだ!)
大谷
(はて、何の事やら。ちゃんと言わねば分からぬ故。)
三成
(youだ!)
大谷
(youがどうした。)
三成
(今日で3日も口を利かんのだ!!)
大谷
(ああ、そのことか。)
三成
(おかしい、何故だ!)
大谷
(それはぬしが悪かろ、三成。)
三成
(何ッツ!?)
大谷
(先刻youと話したが、ぬしの想いは恐らくyouには伝わっておらぬようだ。)
三成
(何だと!)
大谷
(今一度、恥を忍んで愛を告げねばの。)
三成
(あの羞恥を…また被れと言うのか!!)
大谷
(羞恥を越えねば子作りはできなんだ、分かっておろう?)
三成
(・・・。)
大谷
(三成?)
三成
<fontsize="3">(私に越えられん壁など無いッツ!)
大谷
(ヒヒッ…ぬしに武運を。(我よ、暫し笑いを…笑いを堪えよ!!ヒ……ヒヒ…///))
words from:yu-a
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