君子殉凶キミに恋する / トリップ
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世間の人々は彼を『凶王』と呼ぶ
縁起の悪い名前だなと思う
全然イメージじゃないのに
子どもみたいなキミ
「…う、わぁっ!」
朝、目覚めると一面の雪景色。
それが嬉しくてyouは思わずはしゃいで外へ出た。
寝間着のままで庭に出て、誰も歩いていない白に足跡を残す。
少しだけ積もった粉雪を掬い取って空に散らせば、朝日に反射してキラキラと雪が輝く…。
「寒ーーーい!でもきれーーーいっ!」
「何をやっている、気でも狂ったか。」
「その酷い言い草は…三成さん…。」
「極自然な感想を述べたまでだ。この季節にそんな薄着で外へ出る奴など、普通はおらん。」
「寒いですけど…でも、あんまり綺麗だったから!」
「綺麗なら寒さも感じんと?貴様は本当に御目出度い奴だな。」
「またそんな事を言う!ちゃんと寒いです!」
ぷくっと頬を膨らませて、部屋に戻るyou。
三成の横を通り過ぎようとしたところで、ふいに手を取られた。
「?」
「冷たい。」
「うん、まぁ…雪、触ったから。」
「すぐに暖めろ、霜焼を起こすぞ。」
「…う、うん…。」
「朝餉が出来ている。早く着替えて来い。」
「はーい。」
そう言ってyouの部屋から去っていく三成。
とどのつまり、彼は朝食を知らせに来てくれたのだと理解できた。
いつもは自力で起きるか、もしくは女中たちが起こしにくるので、
珍しいこともあるものだと…三成の背中を遠目に眺めながらyouは思う。
そして、結論として…恐らく自分が雪ではしゃいで外に出、
その後に風邪を引くことを見越してのことだと気付けば、年甲斐無くはしゃいでしまった自分が急に恥ずかしくなるのだった…。
「しょーがないじゃない、本当に綺麗だったんだもん…。」
誰に言い訳するでもなく呟き、少しだけ不貞腐れながら着替えて三成の元へと向かった。
朝食を摂り、女中と一緒に片づけを手伝った後、
まだ綺麗に残っている雪で遊ぼうと思い、youは庭へ向かう。
「おーい、you!何処へ行くんだ?」
「あ、家康さん!ちょっと庭に出ようと思って!」
「寒くないのか?」
「寒いです!でも雪だるま作ってみたくて!」
「ハハハッ!面白そうだな!ワシにも手伝わせてくれ!」
「よいよよいよ~!一緒に作りましょう!」
家康に声を掛けられ、そのまま2人で庭へ出る。
最初は小さな雪玉だったものが、次第に大きさを増していき、
最終的に雪だるまになった頃、庭に面する廊下を三成が通りかかる…。
「(家康と…you…?)」
気付けば歩みを止めて2人の遣り取りを見入っていた。
「できたー!」
「うむ、ナカナカ立派なものが出来上がったじゃないか!」
「でも何で雪だるまに角が生えてるの?」
「この枝は角ではない、忠勝の兜だ。」
「あれ?これ雪忠勝なの?」
「雪だるまな忠勝ってことでどうだ?」
「じゃぁそれで。」
「よーし、決まりだな!」
「家康さん、乙ー!」
「おつー?」
「お疲れ様!」
「ん、ああ!おつ!」
顔を見合わせ、互いにニコリと微笑む。
三成はというと何とも面白くなさそうな顔で2人の観察を続けていた。
「それにしても冷たかった…布を巻いたけどやっぱ手袋程の耐寒性は無かったなぁ。」
「大丈夫か?」
「うん、家康さんが近くにいたし。」
「ワシ?」
「うん、だって家康さんって何か暖かいよ。心地よくて、太陽みたいな。」
「そうかそうか(属性のせいか?)」
「だから身体もそんなに冷えてない気がする。」
「うーん、それは多分気のせいだと思うがなぁ。」
「そう?……ちょっと失敬。」
「わっ!!//」
何を思ったか、youは正面から家康に抱きついた。
厚い胸板に頬をぴたりとくっつけ、その体温を吸収する。
「むむ、やっぱり結構あったかい…」
「いえやすぅうううッツ!!!」
刹那に現れた三成に驚く暇も無く、youと家康は強制的に離された。
「三成!」
「あ、三成さん。」
「どうしたんだ?」
「残念だったね三成さん…もう雪だるまは2人で完成させてしまったよ~。」
「え?!三成も一緒に作りたかったのか?!そりゃ悪いことしたなぁ…。」
本気で申し訳なさそうな表情を浮かべた家康に(当然だが)キレる三成…。
「誰がそんな物作りたいと言ったんだ!」
「違うのか?」
「違うッツ!」
「じゃぁ何でそんなに怒ってるんだ?」
「何でだと?!何で…なん…で…とは…それは貴様…。」
「?」
「それは…その…。」
「?」と、頭に疑問符を浮かべたまま三成の顔を覗き込む家康とyou。
その視線に居た堪れなくなった三成は何を思ったか、唐突にyouの腕を引いて屋敷へと上がった。
「え?あれ?え?み、三成さん?」
「・・・。」
「何かよく分かんないけど、何かお説教かもしれない!とりあえず家康さん、ありがとう!」
廊下を引き摺られながらyouは家康に手を振った。
家康は「素直じゃないなぁ」と、自己表現が不器用な友人に苦笑するのだった…。
・
・
・
強制的に三成の部屋の前まで連れてこられ、ふいに掴まれていた腕が放された。
お叱りがあるのではないかと思い、恐る恐る三成の顔を見上げれば
彼は何とも言えない表情で自分を見下ろしていた。
「あの…み、三成さん?」
「馬鹿め。」
「え?!何ですか急に失礼な!?」
「手が冷たいと言っているんだ!」
「(言ってないよ!)えっと…はい…雪で遊んでました…。」
「霜焼は放っておくと罅割れて化膿する。」
「そんなに酷くなるんですか!?」
「知らなかったのか。」
「そんなになったことがないので…。」
youのいた現代世界では使い捨てのカイロや手袋等、
すぐに暖められるものや防寒できる便利な代物が沢山ある。
そう説明すると、三成は「でもそれは此処には無い」とザックリ斬り捨てた。
「湯で温めにいくぞ。」
「んー…。」
「何を渋っている?」
「人肌がいいな。家康さん、とっても暖かかったんだもん。」
「あ"ぁ?」
「い…いや…あの……。」
ドスの効いた声で睨み付けられ、萎縮するものの
負けじとyouも三成の目を見つめ返した。
「だから、三成さんが手を握ってて。」
「はぁ?!何故私がそんなことを…!」
「だって、ヒトの体温がいいんだもん…。」
「・・・人間なら誰でもいいのか。」
「んー……三成さんがいい。二番が家康さん。」
「(二番は余計…。)」
にこっと微笑み、youは三成を見た。
平静を装うものの、内心は少し心臓が跳ねている三成。
それでも威厳は捨てられなくて、誤魔化すように彼女の頭を撫でた。
「私の手は…冷たいぞ。」
「握っていれば2人ともあたたかくなるから…一石二鳥ですよ。」
「・・・好きにしろ。」
「うん!お言葉に甘えます!」
嬉しそうに笑い、youは三成の手を取る。
予想通りに冷たい三成の手…。
それでも今の自分よりは幾分温かいため、youは遠慮なく自分の指を絡めた。
「暫く離さないでいていいですか?」
「離せば湯で温めに行くのか、貴様。」
「行かない。」
「・・・ならば一々聞く意味も無いだろうが。」
「ふふー…やった、三成さんの時間げっと。」
「・・・。」
「あー…・・・しりとりでもします?」
「するか阿呆。」
「むぅ…。」
沈黙は気まずいだろうと思い提案したしりとりをものの見事に却下され不貞腐れるyou。
しかしながら、それは思いもよらない三成の反応で帳消しとなる。
「態々喧しくする必要など無い。」
「はい…。」
「……たまには、こんな風に四季を楽しむのも悪くないだろう。」
「うん!綺麗ですしね。」
「・・・雪景色は…嫌いじゃない。」
「あ、そういえば雪って、真っ白で…何か三成さんみたい。」
「は?」
「真っ直ぐで、何にも染まってなくって、とっても綺麗。子どもみたいに透明っていうか。」
「餓鬼扱いするのか…この私を・・・。」
「あーお、怒らないで!凄くいい意味なんですから。」
「何処がだ!しかも雪はつまるところ冷たいという意味ではないか!」
「(一応自覚はあったのか)あー、そこは気にしない方向で。」
「何だと…!?」
youのフォローが納得いかないらしい三成。
そんな彼を押し切るように、youは言った。
「大丈夫です!冬の次は春が来ますから!」
「は。」
「あったかいですよ、きっと。」
「(それはつまり私が冷たいという肯定では…)」
「みつなりさん?」
「はぁ…もういい。」
深い溜息を吐き、三成は庭に目を向けた。
止め処なくふわふわりと舞い落ちてくる雪が冬の美しい景色を一層引き立たせている。
「寒い。部屋の中で眺めろ。」
「ん。」
「…貴様は…。」
「?」
「冬より春が好きそうだな。」
「どうしてです?」
「…私が冬なら、youは春を髣髴とさせた。それだけだ。」
「あ、何かそれ嬉しいかも。」
「・・・。」
「でも、春はもうちょっと後でもいいかも。」
「?」
部屋の中に入り、庭が見えるくらいの場所に座した三成を追ってyouはその膝の間に腰を下ろす。
至近距離に身体を寄せてきたことに三成は少しだけ驚きの表情を見せた。
「だって、冬だからこんなに三成さんにくっついていられる。」
「…たわけ、今日だけだ。」
「えぇ~!」
「当然だ。」
「じゃぁ春、すぐに来てくれていいや。」
「そうしろ。お前も行きたいだろう、花見には。」
「い、行きたい!凄く!」
「秀吉様と!」
「う…うん、秀吉さんと…半兵衛さんと、皆でね…。」
「ああ!」
「でもでも、ふ…。」
「不?」
「折角だから、二人でも…行きたい、です…。」
「・・・。」
ぽつりと呟いて、youはチラ、と顔だけ後ろを振り返る。
「・・・ならば遠出でもするか。」
「え?」
「何度か見たことがあるが、京と小田原の桜は見事だった。」
「え、え?」
「「この時代の色んな場所を見てみたい」と言っていたのは貴様だろう。」
「い、いいんですか?」
「時間が許せばだがな。」
「つ、作って、時間作って!」
「だから、煩い。暫く大人しく私の懐炉になっていれば、考えてやる。」
「っ…・・・はひ・・//」
寒気を感じたのか、後ろからぎゅうっと抱きつかれ、背中に暖かな重みが掛かる。
いつもクールで冷たい三成が見せた可愛い行動に対し、全く免疫がなかったyou…。
先ほどまであんなに冷たかった身体が急激に熱くなるのを感じた。
雪みたいに真っ白で
子供みたいなキミ
you
(大分あったかくなってきました!)
三成
(そうだな。)
you
(でも今は反対側が寒いのです。)
三成
(はんたい?)
you
(背中はぽかぽかしているので、今度は正面から抱っこしてもらってもいいですか?)
三成
(たわけ。)
you
(何で!三成さんのけち。)
三成
(何ででもだ!)
you
(どうしてー!)
三成
(駄目なものは駄目だ!喧嘩売っとるのか貴様。)
you
(売ってないです!)
三成
(兎に角、却下だ。)
#you
(でも…!)
三成
(花見…。)
you
(・・・。)
三成
(やればできるじゃないか、貴様。)
*。゜.*。゜.*。゜.*