you don't get it!(5D's:鬼柳)
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自分の気持ちを確信した瞬間
躊躇いの原因を取り去りたいと思った
躊躇いの日々に手を振って
「鬼柳くんは……今頃昔の話を沢山しているんでしょうか…。」
「どうだろう、でも、昔話に花は咲きそうだよね。」
「羨ましいです…。」
「ん?それは……どういう意味?昔話ができること?それとも……遊星たちのこと?」
「んー、昔話3割、遊星さん達7割…かな。」
「だいぶ……妬いてるねぇー。」
そう言って柔らかな照明の下、向かい合って座るブルーノが暖かなコーヒーに口付けた。
youはその言葉に「だって…」と苦笑しながらも話し出した。
「鬼柳くん、昔の話を何にも教えてくれないの。」
「うーん、でも、知られたくない過去って、人によっては、どうしてもあるからね…。」
「それでも、わたしは話してほしいです……あんな…苦しそうな顔をするくらいなら、全て吐露してしまってほしい。」
「辛そうな顔、するんだ?」
「思い出したくない、知られたくない……時折そんな瞬間を垣間見ることがあります。」
「よっぽどyouちゃんに隠しておきたい過去なんだろうね。」
「どんな……鬼柳くんにどんな過去があったとしても、わたしは鬼柳くんを見限るなんてことは…しないのに…。」
「・・・。」
意味もなくティースプーンをぐるぐると混ぜ、ソーサーの上に置くだけの行為をする。
渦を巻くコーヒーを見つめ、揺らいだ自分の顔に向かってyouは呟く。
「そんなこと……もう、できないのに…。」
伏目がちに下を向く睫が少し揺れた気がした。
泣いているのかと思ったが、そうではないようで密かにブルーノは安堵する。
もう一口、ズッとコーヒーを啜り、優しい眼差しで彼女に問うた。
「家族だから?」
「そうですよ…!家族……だって、言ってくれたのに…。」
「・・・。」
「一緒に暮らしてるニコちゃんとウェストくんと……同じ、家族だって……。」
「でも、鬼柳くんはニコちゃんにもウェストくんにも自分の過去は話していないんだよね?」
「それはそうなんですけど…。」
「じゃぁ、youちゃんだけが秘密にされているワケじゃないんだし……そこまで落胆しなくていいんじゃないかな?」
「でも家族だって、言ってくれたのに……この有様です。」
「あ…。」
しまった、墓穴を掘った…と、ブルーノは言葉を詰まらせた。
つまり、そういうことだ。
彼女がガレージで鬼柳に伝えたかったこと。
「家族なのにどうして一緒にいられないのか」という言葉。
だがしかし、ブルーノは男なので、すぐさま鬼柳寄りの考えに至った。
男として彼女を一人の「女」として見てしまう自分がいるから、
たとえ家族であっても一緒の部屋にはいられない。
傷付けたくないから。
関係性を壊したくないから。
「ぬるま湯に浸かっていたいからかな……幸せな、時間に。youちゃんもそうだよね?」
「ぬるま湯…。」
「うん、だから鬼柳くんにはっきり問いただせなかった。家族じゃないと言われるのが怖くて。家族と言われるのが怖くて。」
「うん??ちょっと待って、家族と言われるのが怖いって??」
「あ、間違った…いや、あながち間違ってないと思うんだけどなぁ?」
「・・・・。」
出会った時と変わらない、今日何度目かのニコニコの笑みを浮かべるブルーノ。
しかし、その裏側に今はどうしても多少の悪意を感じてならない。
コーヒーを一口飲み、youは意を決したように口を開いた。
顔が熱いのは店内の温度と、冷めないコーヒーの所為だ、と言い聞かせながら。
「多分……間違ってない、です//」
「うん?」
「わたし多分……鬼柳くんのこと……好きだから…。」
「…そっか。」
「鬼柳くんが、同じ部屋でもし過ごしてくれることになったとして…家族と思われて嬉しいわたしと、一人の女として魅力がないのかなと絶望してしまうわたしがいます、多分。」
「うんうん。」
「矛盾……してるんです。だから、鬼柳くんのこと、問い詰められなかった。」
「聞いたとしても、答えを聞きたくなかった。」
「はい…。」
「それは確かに矛盾だね。」
「はい…。」
言葉無く俯き、ブルーノの反応を待つも、
彼も何か思慮しているのか、沈黙を保ったままでいる。
そのうち、自分の発言を省みて、急に恥ずかしくなったyou。
よくよく考えてみると、今日始めて出会った友人の友人の友人に
自分の考えの全てを明け透けに曝け出し…そう、いわば恋愛相談をしているのだ。
恥ずかしくならないわけが無かった。
そのことに関しては後で謝るとしても、
それでも、話した手前、最後まで彼の意見も聞くのが筋かと思い、おずおずと尋ねる。
「ひ…引いた?ブルーノくん、引いた?やっぱり厄介なのかな、こういうの…き、鬼柳くんも、そうなのかな…?//」
「い、いや……全然、寧ろ……可愛い、よ…うん…//」
「えぇ?!」
「いいなぁ……何か鬼柳くんが羨ましいんだけど…。」
「そ、そんな…//」
「あぁー、どこかにいないかなぁ、youちゃんみたいに可愛い思考のDホイールみたいな女の子ー!」
「(Dホイール?!!)」
はぁーっと盛大に溜息を吐いてテーブルに突っ伏すブルーノ。
自分のような人間は沢山いるかもしれないが、Dホイールのような女…いや、寧ろそんな人間はいないだろうと…。
フォローを入れようにも入れることができず、ただただ苦笑を浮かべるyouであった。
「うん、でもやっぱり…そういうこと思われて、迷惑なんて思う男っていないよ。」
「…そう、なの…かな…?」
「うん。寧ろ有り難いっていうか……嬉しい。」
「嬉しいんだ…?」
「うん。その子が好きかどうかに関わらず、やっぱり純粋に向けられる好意として、嬉しく思うよ、普通。」
「そういうものかな…?」
「うん、僕だったらちょっと、いやかなり、ときめいちゃうよ~。」
だから大丈夫、自信を持ってよ…と、意味の込められたブルーノの笑顔に、
youはぎゅっと胸が苦しくなる。
大らかで優しく、人の気持ちを自然に察してくれる彼はとても大人なのだろう。
ブルーノのような男性を好きになれたら、こんなに苦悩することもないのではないか…と。
そう考えてしまった。
「ブルーノくんは凄いね、人の心が読めるみたい。」
「そんなことないよ、自分のことには鈍感だってよく言われるし…。」
「ふふ、それはありそう。」
「えぇ~!ひどい。」
「鬼柳くんも自分のことには鈍いんだけどね。」
「彼は…今日話した限りじゃ少し天然な気が…。」
「うーん、少しかなぁ……だってこの間ね、酒場でいざこざがあった時にね…。」
と、話し始めた鬼柳の話はブルーノが確認した限り、
注文したコーヒーが空になってからも20分程続いた。
それだけいつも彼女は鬼柳のことを気付かずに意識しているのだと、
ブルーノは察するに至ったが、当の本人は全くのようだ。
あまりに続く彼の話に途中でブルーノが「まだあるの?」と吹き出しそうにまでなってしまったのはここだけの話だ。
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「あの…ごめんね、ブルーノくん……今日始めて会ったのに、長々とわたしの話を聞いてもらっちゃって…。」
「ううん、僕もDホイールの話できたし、楽しかったよ!」
「そう言ってもらえると救われます…。」
深夜のカフェトークを終えて、今度こそちゃんとホテルへ戻ってきた2人。
ホテル前の通りで最後に少しだけ会話をする。
「うんうん、とりあえず今日一日でyouちゃんがすごく鬼柳くんを色んな意味で好きだということが分かったよ。」
「うう…。」
「気にしないでもっと好きになっていいと思う。もっと悩んでいいと思う。」
「ブルーノくん…。」
「納得するまで、彼を知って、そうして答えを出していいと思う。」
「うん……。」
それは、youがずっと気にしていた鬼柳の過去のことだと、言わずも察した。
最後に深く頷き、youは顔を引き締めた。
「ブルーノくんのおかげで、自分の気持ちには、気付けたから……。」
「そっか。」
「少しだけ我儘になって、聞いて、みる…。」
「うん、いいと思うよ。」
「…ブルーノくん、本当にどうもありがとう。」
「どういたしまして。じゃぁ、そろそろ僕は皆のトコに戻るね。」
「うん、ありがとう。おやすみなさいブルーノくん。」
「おやすみ、youちゃん。」
にこりと、最後まで綺麗で可愛らしい笑みを浮かべると、
ブルーノはひらひらと手を振りながら遊星のDホイールへと跨った。
youも手を振り返し、走り出したブルーノの背を見送った後、ホテルへと戻るのだった。
君の全てが知りたい、と。
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