you don't get it!(5D's:鬼柳)
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これ以上苦しくなる前に
言葉を飲み込んだように見えた
押さえ込んだ言葉
同じ空間に2人でいると、悶々と色んなことを考えてしまうため、
鬼柳はそれを振り切るようにyouに外へ出ようと提案した。
そして、当初の予定より少し早い段階で
シティ郊外のポッポタイムという地区にいるという鬼柳の旧友達に会うこととなった。
「送ってもらった住所が正しければここだな。」
大きなガレージ付きの家の前に立ち、鬼柳が呼び鈴を鳴らす。
「はーい!」
と、出てきたのは鬼柳の友の一人、クロウだった。
御互い、視線がかち合った瞬間にパッと目が輝く…。
「鬼柳?!鬼柳じゃねぇか!!!」
「クロウ!!」
「超久しぶりじゃん!!元気だったか?!っと、そっちの子は?」
「相変わらず忙しないな、クロウ……あ、こっちはyou。俺の秘書をやってくれてるんだ。」
「へー、秘書!ちゃんと町長やってんだな、鬼柳……あ、立ち話も何だし、中に入れよ!遊星もジャックも居間にいるぜ!」
クロウに促され、屋敷の中に入る。
入り口は少し高い位置に設けられており、すぐに広いガレージが見渡せるようになっていた。
やはり、そこはマシンを扱う所為もあり、オイルや工具などの機械的な匂いが少し漂ってる。
「ここはガレージか?」
「ああ、俺達のDホイールがいつもここにある。あと、今はもう一台、な。」
空のガレージを横目に居間へと続く階段を登る。
クロウの言うように数台のDホイールが並んで置いてあり、
保護カバーが掛けられているものもあったが、立派なマシンが並んでいる、その姿は壮観ものだった。
そして、明るい日差しの差し込む中二階の居間に出ると、そこには鬼柳にとって懐かしい顔ぶれが揃っていた。
「「鬼柳!!」」
「遊星!ジャック!!」
感動の再会…というのはこういうことを言うのだろう。
全員が男性だから涙は無く…というのもあるだろうが、
それにしてもうっかり涙腺が緩んでしまいそうなくらいの表情を皆、浮かべていた。
クロウも交えて、束の間の再会を喜んだ後、
鬼柳の後ろに控えるyouの存在に遊星とジャックが気を配った。
「鬼柳、彼女は…?」
「ああ、連絡してた俺の…。」
「ああ、連絡をもらっていたな。彼女がそうなのか。」
遊星の疑問に答えるべく、先程のクロウと同じように「秘書」と説明しようとしたのだが、
突如、ジャックがフンと鼻を鳴らして「鬼柳の女か。」と、笑った。
「なななな何言ってんだジャック!!//」
「そう動揺しなくていいだろう、別にお前にそういう存在がいても不思議ではないし、気にもしない。」
「ちっげーーし!!youは俺の秘書!!いつもしっ、仕事を手伝ってくれてんだよ!今回だって資料をシティの役所に届ける目的があったから一緒に付いてきてもらったんだよ!!//」
「そうムキになるな。」
「っ…くっそ…ジャックのくせに生意気な!!//」
ジャックの言葉通り、ムキになって否定する鬼柳。
そして当のyou本人はと言うと、2人の会話は全く聞いていなかったようだ。
今は遊星と御互いの自己紹介をしている…。
「鬼柳から聞いている。秘書のyou…さんだったか。いつも鬼柳が世話になっているな。」
「あ、youでいいです。遊星さん、ですよね、鬼柳くんからいつもお話を聞いてます、お会いしたかったです!」
がしっと握手を交わし、次いで、話に混ざってきたクロウとも再度自己紹介を行った。
「俺はクロウ、よろしくな。」
「はい!クロウさんのお話もいつも聞いています!とっても明るい方だって!」
「いや、そこ鬼柳には負けるけどな…。」
「え?鬼柳くん?」
「ああ、うるせーだろ、アイツ。」
「いいえ?うるさいなど思ったことは……寧ろお仕事が大変なのか悩まれてる姿が多いので心配しているくらいで…。」
「う、ウソだろ……あの鬼柳が?!」
「え?え??」
「おはようからおやすみまで決闘決闘で決闘の話しかしない決闘馬鹿の鬼柳が?!決闘以外で悩む?!聞いたか遊星!!??隕石降って来るぞ!!」
「えええ?!」
冗談にしてはクロウと遊星の顔色が本気過ぎた…。
チームサティスファクション時代の鬼柳がどのような人物だったのか、
語られずとも何となく察したyouであった…。
そんな会話を繰り広げていると、youは突如、後ろから急に耳を塞がれた。
「おいお前ら、youに何吹き込んでんだよ!昔の話はすんじゃねェよ!」
「鬼柳…立派になって…。」
「お前はオカンか!!遊星!!//」
よく分からないがyouの視界に入る遊星が俯いてプルプル震えている。
クロウもジャックも震えているが、2人は吹き出しそうな顔、遊星は感涙しそうな顔…といった様子だ。
そんなこんなで一通りの自己紹介が終わり、
ひとしきり騒いだりした後、鬼柳がこれから2、3日の時間の使い方に関して3人に伝えた。
「・・・で、youに決闘を覚えてもらおうと思ってるんだ。」
「なるほどな。」
「俺よりお前達の方がオールラウンドのカード持ってるだろ?俺のインフェルニティは一般向けじゃないから、教えにくくてな…よかったらお前達が教えてやってほしいんだ。」
「ああ、構わない。」
「デッキに使えそうなカードは今日ある程度見繕ってきたから、見てやってくれ。勿論、町に戻ってからは俺が教えるが…。」
遊星と鬼柳の会話を聞き、当事者のyouは首を傾げる。
今の鬼柳の話ぶりからすると、シティにいる間は鬼柳は教えることをしないのか?と…。
突然の「皆に預けます」発言に戸惑い「何故?」を問おうとした。
そもそも、シティでの宿泊が連泊になったのは、仕事の後は休暇を兼ねており、
その期間でyouの決闘知識を高めることが目的と鬼柳自身が意気込んでいたハズなのに、と。
「鬼柳くん…えっと…。」
「あー悪ィ、you…実はさ……もう1つシティに来た目的があってな。」
「目的…ですか?」
「ああ。前もって遊星には伝えていたんだけどな。youには黙ってた。」
「??」
「まだ、確定じゃないから伝え辛いんだ……全部終わったら全部話す。それでもいいか?」
「……分かりました。気にはなりますけど、我慢しますね。」
「サンキュ。」
「あ、でも……あまり無茶なことはなさらないでくださいね…。」
「ん、分かってる。」
ぽんぽんとyouの頭に手を乗せ、心配してくれたことに感謝する鬼柳。
その表情はとても柔らかく、暖かいもので、
例えば家族やあるいは恋人に向ける眼差しそのものだった。
色々あった彼がこんなにも角が取れて丸くなったのだと…。
かつてからの鬼柳京介を知る仲間たちは目を丸くしてその遣り取りを見ていた。
「じゃ、早速だけど俺は出掛けてくる。」
「え?い、今からですか!?」
「ああ、今からだ。夕方には戻ってくるから…それまで遊星たちに決闘のノウハウ叩きこんでもらえよー?」
「ちょ、き、鬼柳くん?!」
「じゃ!」
「鬼柳くーーーーーん?!!」
驚きで声を張り上げたyouだったが、
被さる様に別の、大きな明るい声がその場に響いた。
「みんなー、ただいまー!」
「おう、お帰りブルーノ!」
「あれ?お客さん?」
「ああ、ちょうどよかった。鬼柳が出てく前で。」
「キリュウ?もしかして今日来るって言ってた皆の友達の鬼柳京介君?」
「ああ!」
鬼柳が「行ってくる」と宣言したと同時にドアを開けて現れた長身の男。
クロウがブルーノと呼んだ彼はにこにこと優しい笑みを浮かべ、鬼柳とyouに挨拶をし始めた。
「こんにちは、僕ブルーノって言います。今はこのガレージで皆と暮らしてるんです。よろしく!」
「遊星達の旧友、鬼柳京介だ。」
「鬼柳くんのお仕事を手伝ってます、youです。」
一人ずつ握手を交わし、これから色々話をしようとブルーノが楽しそうに話し掛けるも、
鬼柳は今から用事があるから出なければと軽く謝罪を入れるに至った。
「じゃぁ、行ってくる!」
と、颯爽と出ていく鬼柳を皆で見送り、改めてyouがブルーノに声を掛ける。
「ブルーノさんも決闘者なんですか?」
「あはは、まぁね。でも、今はどちらかと言うとカニック寄りかも。あ、あと「さん」は要らないよ。」
「ブルーノ…くん?」
「あはっ、何か新鮮!よろしくね、youちゃん!」
「はい、よろしくお願いします。」
温和で物腰の柔らかいブルーノの雰囲気はyouのフィーリングとぴったり合うようだ。
だがしかし、改めて我に返ってみると、
いくら信頼が厚いとはいえ、鬼柳は自分のお守りをかつての仲間に押し付けたのだと取ったyou。
申し訳なさそうに4人を振り返り、90度の角度で謝罪を入れた。
「すみませんっ!皆さんにもご予定があるというのに!!」
「あー、いや俺達は別に大丈夫。特にジャックは。」
「??」
「こっちのハナシ。鬼柳から色々聞いてるから、大丈夫だって。」
「鬼柳くんから…ですか?」
「ああ、こっちに来る目的とか、色々な。」
「役所の資料ですか?」
「それだけじゃなくて。」
「???」
「まぁ、それは…鬼柳が後で言うっていってたし、youはそれを待つしかないけどな!」
「うう…気になります。」
「悪い話じゃないから、心配すんな。」
クロウがニッと歯を見せて笑う…。
それはまるで不安そうな子どもをあやすような笑顔で、何だか無意識に安心感を抱いてしまうものだった。
そして結局、鬼柳の目的は分からぬまま、彼が戻ってくるまでの間ほとんど、
youは3人に決闘に関して勉強させられることになってしまった。
鬼柳もそうなのだが、遊星、ジャック、クロウの3人も負けず劣らず決闘好きだと理解するに至った。
それまであまり喋らなかった遊星やジャックも決闘のことになると途端に饒舌になり、
同時にそれは仲を深める事にもなったので、ある意味で良かったのだと言えるだろう。
仮で作ってもらったデッキを使い、練習試合をしてみたり、
誰も手持ち無沙汰にならないよう、2対2でタッグバトルを行ったりして全員で楽しむ事ができた。
他には、ブルーノに手を引かれガレージにあるDホイールを見せてもらったり、
エンジンを掛けずにシートに座らせてもらったりもして、まぁ、結果的には大満足の一日となった。
そして気付けば夕暮れになっており、
まだ鬼柳が戻る気配が無いため、夕飯も食べていくよう誘われる。
何もしないのは気が引けるので、とyouはクロウと共に台所に立った。
「いつも男ばっかに振舞うことになるから残念極まりなかったんだけど…今日はyouに感謝だな。」
「そんな、わたしの方こそ皆さんに感謝です。」
「はは、どうだ、決闘は楽しかったか??」
「はい!皆さん教えるのがお上手ですね!」
「youも割と覚えは良かったぜ。」
「本当ですか!?うれしい!」
「あ、そこのジャガイモ剥いてもらっていいか?」
「はーい。」
「サンキュ。あ、そういえば聞いてみようと思ってたんだ。」
「何でしょう?」
「今の鬼柳ってどんな感じなんだ?」
「どんな…とは少し表現が難しいですが……とっても優しいですよ。」
「マジで?」
「マジです。町の人たちからも信頼されてて、一緒に暮らしてるウェストくんからは本当の兄や父のように尊敬されてるみたいですし…。」
「へぇーあの鬼柳がねぇ…。」
「あ、でも最近ニコちゃんに叱られてたような…ふふ、しょんぼりしててちょっと可愛かったです。」
「あはは、あの女の子だよな?」
「ええ。」
「ふーん……人から文句言われたり注意されるのを嫌悪してたあの鬼柳がねぇ…。」
「そうなんですか?!」
「ああ、結構自己中で大変だったんだぜー?」
あはは、とかつての状況を思い出して苦笑するクロウ。
今、自分が知っている鬼柳とかけ離れたイメージに不思議そうな表情を浮かべていると、
クロウが「でもなぁ…」と、しみじみと後に続く言葉を放った。
「その自己中に何かキラキラ輝くモンがあってよー…こう、言葉に出来ないんだけど…。」
「え…。」
「ただ、我儘言って、自分のことしか考えてない自己中じゃなくって、手を引いてってくれるっつーか…。」
「!」
「ああ、この背中に付いてったらすげー楽しいコトが待ってんだろうなーって思うような…。だからオレも遊星も…あの滅多に人に心を開かないジャックでさえも、鬼柳のことを慕ったんだと思う。」
「わ…わかります…それ、すごく分かります!!」
「え、まじ?」
「だって、だからきっと町の皆さんが協力してくれるんだと思うんです…。」
「そうかもな…。」
「変わって……いないんですね、鬼柳くん…。」
「へへ……かもな。」
今と昔と…外見や立ち振るまいは変わってしまっても、
本質的なところは変わらず、その輝きを失っていないのだと…。
クロウはまるで自分のことのように嬉しそうに笑った。
そうこうしている間に夕飯ができあがり、
鬼柳の分も含めて、テーブルに盛り付けたところで、当の本人がようやく帰宅してきた。
「悪ィ!遅くなった!!!」
「鬼柳くん!おかえりなさい!」
「ああ、ただいま。遅くなって悪かった。」
「ん、よし!」
「どうした?」
「何処も怪我とかしてないかなって。」
「おい…どんだけ信用無いんだ俺…。」
「信用してますけど…無茶をすることも知っているのです。」
「…まいったな…。」
ご尤もです、と反論できない鬼柳を見て、遊星とブルーノが笑う。
かつての鬼柳とのギャップに驚いているジャックとクロウは
目を点にして、そのあと苦笑したり、やれやれと溜息を吐いた。
「遊星達の決闘講座はどうだった?」
「はい、皆さんに扱かれましたが沢山決闘の勉強ができて楽しかったですよ。それに、Dホイールも見せていただきましたし。」
「そうか、よかったな……遊星、クロウ、ジャック…とブルーノ…だっけ?youのこと、ありがとな。」
今日あった出来事を鼻息荒く報告しようとするyouの頭を一撫でし、
鬼柳は遊星たにち視線だけで感謝の意を示した。
コクリと遊星が頷いたところで、クロウがにっと歯を見せて笑う。
「っし、鬼柳も戻ってきたことだし、ちょっと狭いけど夕飯にしようぜ!」
「ひょっとして俺の分もあるのか?」
「はぁ?当たり前だろ?つーか、youに手伝ってもらったしな。」
「そうだったのか…。」
鬼柳はそう言ってyouを見る。
彼女は笑って「そうなのですよ」と返事を返した。
大人6人が囲むテーブルとしては少しばかり狭いため、
クロウの提案で今回は好きな物を取って立食できるようなものを多めに作っていた。
その甲斐あって、自由に取って自由な場所で色んな組み合わせで色んな会話を楽しむことができ、
初日は夕飯の時間も有意義に過ごすことができた鬼柳とyouだった。
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「悪かったな、片付けまで手伝わせちまって…。」
「とんでもないです、こちらこそ夕飯までご馳走になってしまって。クロウさんのご飯、凄くおいしかったです!今度レシピ教えてください!」
「レシピっつーほどのモンじゃねぇよ……ま、こんなんでよければいつでも食べに来てくれ。」
「はい、是非!!」
youがクロウに謝礼を述べて、これからホテルへ戻る…というところで、
今度は鬼柳が遊星に声を掛ける。
「なぁ、遊星…クロウ達も。」
「どうした、鬼柳?」
「実は相談があるんだが…。」
「構わない。俺達にできることなら何でもする。」
「ん、いや…実は……今日、俺をここに泊めてほしいんだ。」
「「え?」」
鬼柳の言葉には、遊星だけでなくその場にいた全員が同じ反応を示した。
すぐに「どういうことだ?」と尋ねる遊星に、鬼柳が答える。
「ああ、実は今日のホテルで予約の手違いがあって…滞在中部屋が一部屋しか取れていないんだ。」
「!」
「youはホテルに泊まるとして、ちゃんと送ってくから、その後こっちにまた帰ってきていいか?別に俺は屋根さえあればいいし、床でも何処でもいいんだ!この3日間だけ、頼む!」
「いやそれは……俺は…俺達は勿論構わないが…。」
「本当か!?助かる!!」
ぱぁあっと明るい顔で遊星の手を握り、次いでクロウ、ジャック、ブルーノに「ありがとな!」と感謝の言葉を放つ。
youはというと、突然の鬼柳の言葉に戸惑い「え?え?」と鬼柳と遊星らを交互に見ていた。
ひとしきり感謝し終えて、鬼柳がyouを振り向くと
其処には何とも表現し難い顔をしたyouがいた。
「え…っと、そういうことだから……you。」
「鬼柳くん…。」
「ちゃんと朝も迎えに行くから。」
「・・・。」
「えっと……久しぶりに昔話とかもしてぇな…とか、あるしさ。」
「!!」
それは鬼柳にとっての最大級の逃げの言い訳に等しかった。
自分の過去を語らいたいなど、微塵も思ってはいない。
また、そんな鬼柳の胸の内を言わずも悟っている遊星達は、
何か理由があって彼女を遠ざけたいのだろうと察し、黙っていた。
それは勿論、後で問い詰めるつもり満々なのだが…。
自分の知らない過去の話をしたいと言われ、
それを拒否するような狭い心の持ち主ではないため、youは一つ、歪んだ笑みを浮かべて「はい」と鬼柳の提案を受け入れた。
「あまり、夜更かししてはだめですよ…鬼柳くん、いつもあまり寝てないですし。」
「ああ……保障はできねぇが頑張るよ。」
「・・・。」
「ホテルまで送ってく。」
と、鬼柳が申し訳なさそうに呟いたところで、急にブルーノが「えーっと」と声を上げた。
「今からシティまで歩いて帰るのは結構時間掛かるし、時間も時間で帰りの交通機関も無いでしょ?鬼柳くん、僕がDホイールで彼女を送ってくよ!」
「いや、それは俺が……。」
「えーっと、僕がいない内に昔話しておいてよ、帰ってきたら僕も仲間に入れてほしいからさ!」
「だが…。」
「ちゃんと責任持って送り届けるから!ね?」
「分かった……じゃぁ、youのことを頼む。」
「任せといて!」
元チームサティスファクションらのメンバーの表情と、
youの複雑怪奇な表情を見て、ある意味で一番空気を読んでいたブルーノ。
自分が居ない方が、メンバー同士腹を割って話せるし、
今の状況で鬼柳とyouを二人きりにするのはきっと御互い酷な時間となるだろうと察してのことだった。
案の定、鬼柳はどこかホッとしたような顔ですぐにyouの見送りを任せ、
また、ブルーノの人となりを良く知る一同にとっても、
彼女を任せても問題ないだろうと判断した結果だろう。
何の否定も反対も起こさなかった。
ただ一人、あまり納得のいかないような顔つきをしていたのはyouだったが、
ブルーノが少し屈んで目線を合わせて「よろしくね」と、優しく微笑みを向けたことで、
少し落ち着いたのか、その複雑な表情を緩和させることとなった。
「じゃぁ、送ってくるね。」
「ブルーノ、俺のDホイールを使え。」
「いいの、遊星?」
「ああ。お前のはスクーターに近いし、速度もそんなに出ないだろう?二人乗りもギリギリじゃないか?」
「えへへ、実はそう思ってました。」
遊星の提案に素直に「ありがとう」と答え、ブルーノはガレージへと向かった。
残されたyouは遊星、クロウ、ジャックに今一度今日世話になったことを感謝し、深々と一礼する。
「では、お言葉に甘えてブルーノくんに送ってもらいます。」
「ああ、また明日も来るといい。」
「遊星さん、クロウさん、ジャックさん、ありがとう。あと…。」
「ん?」
「鬼柳くんのこと、お願いします。」
「ああ。」
「夜更かししないように注意してくださいね。」
「はは、分かった。」
子どもを心配する母親のような言葉に遊星たちは笑うも、
鬼柳は少し頬を赤らめながら「余計なお世話だ」と恥ずかしそうに呟いた。
そして、ブルーノを追うようにガレージへのドアに手を掛けたところで、一度鬼柳を振り返る。
「鬼柳くん……っ!」
「…ん?」
「・・・っ…!」
「どうした、you?」
「なん……で……。」
「え?」
「何でも、ありません……えっと、おやすみなさい。」
「…ああ、おやすみ。」
くしゃり、とyouの柔らかな髪をひと撫でし、優しげな笑みを浮かべる鬼柳。
彼女が何か言おうとした言葉をぎゅっと飲み込んだのには気付いていたが、
それを今ここで聞いてしまえば、御互いより一層関係が拗れる気がして、
鬼柳は何も聞けず、また、youも言葉を紡げなかった。
そして終にぱたん、とドアが閉じる。
youが出ていったドアを見つめ、鬼柳が重い溜息を吐く。
更にその背中を見つめていたかつての仲間達に質問攻めに合うことを覚悟し、ゆるりと振り向くのだった。
君は、何を言おうとしたんだ?
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