you don't get it!(5D's:鬼柳)
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大事なものは
その悩みや葛藤だと思うから
惑いと共存する想い
「ということで、youと一緒にシティに行ってこようと思うんだが、留守番頼んでも大丈夫か?」
「はい、勿論。元々暫くウェストと2人で過ごしていましたし、私たちのことは心配しないでください。」
「そうか……悪いな。一泊したらすぐ戻ってくるから。」
「一泊ぅうう?!」
「うおっ?!ど、どうしたニコ?!」
それまでニコニコと「大丈夫ですよ」「平気ですよ」と笑っていたニコが急に豹変した声を上げ、
鬼柳は思わずビクッと肩を震わせた。
「何無茶な事言ってるんですか鬼柳さん!鬼柳さん一人ならまだしも、youさんが一緒なんですよ!?」
「(俺だけならまだしもって…。)」
「ここからシティに行くのだってかなり時間が掛かるのに、そんなハードスケジュールじゃダメですよ!ちゃんと2,3泊休んで帰ってきてください!!」
「で、でも……俺たちはウェストとニコが心配で…。」
「私たちのことは大丈夫です。全然です。もう本当に。」
「ニ、ニコ…。」
「遊星さん達にも会いたいんでしょ?」
「そ、それは…まぁ……。」
「ほら!もう、お仕事に影響が無いなら、3泊くらいしてきてください!2人とも働きすぎです!!」
「わ、分かった、分かったから落ち着け、ニコ!」
良かれと思って提案した『素早く帰る』という選択肢が彼女の中では大いにNGだったようで、
カンカンになってニコに怒られてしまった鬼柳…。
確かに言われてみれば、自分だけでなくyouも共に行くということを改めて考えさせられた。
「確かに…少し無茶だったか…。」
「少しじゃないです!」
「すみませんっ!!」
ボソリと呟いた言葉もニコに聞こえていたらしい。
ビシッと反論され、思わず謝罪をしてしまった。
youが来てからニコが自分に冷たくなった気がする…と、少しばかりしょげる鬼柳であった…。
「なぁニコ…何か最近俺に冷たくないか…?」
「それは鬼柳さんに幸せになってもらいたいからです。」
「はぁ??ワケ分からねぇんだけど…。」
「歯がゆいっていうかもどかしいっていうか……私もウェストもやきもきしてるんですよ…。」
「・・・???」
「youさんもですけど、鬼柳さんも大概ですね…。」
「youがどうした?」
「何でもないです。ただ…。」
「ただ?」
「私達は鬼柳さんに出会えて幸せです。いくら感謝しても足りないくらい。」
「俺だってそうだ。ニコとウェストと出会えて嬉しいし、家族になれて幸せだ。勿論…親父さんへの贖罪っていうのはあるが……それ以上に感謝してる。」
「そう思ってくれてることも分かっています!けど…でも、違うんです。」
「何が違うんだよ??!」
「鬼柳さんは鬼柳さんだけを想って、大切にしてくれる人と出会っていいんです!そういう人を見つけていいんです!」
「ニコ…よく分からないが……俺は大丈夫だぞ?十分満足できてる。ほら、今はyouがいてくれるしな!」
「だから何で気付かないかなァア!!」
「ヒィ!すみませんっ!!」
またしても…しかも今度はニコらしからぬ敬語抜きの発言。
鬼柳はすくみあがった!
「はぁ…もういいです……兎に角、3泊は絶対してきてくださいね。」
「はい…。」
「ああ、あと…ダメ押しでもう1ついいですか?」
「な、何ですか…ニコさん…。」
余程ショックだったのか、思わず「さん」付けしてしまう程だった。
「もしもですけど……そのyouさんがこの家からいなくなったら、鬼柳さんどう思います?」
「何!?おい、そんな話俺は聞いてないぞ?!youが出てくってどういうことだよ、ニコ!」
「だから、もしもの話ですってば!」
「な、なんだ…もしもか…良かった。」
「それ、どういう意味での良かったなんですか…。」
「えー?だってほら、仕事も家のことも今はyouがいてくれるから……俺だけじゃなくてニコもウェストも困るだろ、いなくなったら…。」
へらりと気の抜けたような笑みを浮かべて「な?」と、同意を求めてくる鬼柳に、ニコの口元がぎゅっと結ばれる。
ぎゅっと両拳を握って、キッと悔しそうに鬼柳を見上げた。
「っ…じゃぁ、例えばyouさんに恋人ができて出ていく場合は?そういうことだって今後あるかもしれないんですよ?鬼柳さんはその時どうするんですか?笑って送り出すことができるんですか?」
「そりゃyouが幸せになるなら俺は…!!」
「・・・。」
「・・・。」
「「俺は」…どうなんです?」
「寂しい」という口の形を作ったまま固まり、そのまま鬼柳は口を噤んでしまった。
今日に限って、えらく突っかかってくると思ったが、
その真意はまさかの恋愛感情に関して通ずるものだった…。
年下の少女に指摘され、初めてその感情に困惑するに至った鬼柳。
確かに、思い返せばマトモに恋愛をしてきた記憶が無いのは確かだった。
生まれはサテライトで、学校も無く、気づけば青春は全て決闘に費やされ、
その後(一度死んでからも生まれ変わって)もずっと決闘、決闘の人生だった。
まぁ、人生というにはまだほんの少ししか生きていないのだが…。
「(だけど、あれ、俺……恋してなくね?)」
ガーンと、頭の上から金盥(カナダライ)が落ちてきたような衝撃。
今までの「決闘」が楽しくて、別段、恋をしたいと思ったこともなかったし、
昔も今も何かしら目的に向かって邁進(まいしん)できていたのでそれを顧みることもなかった。
勿論、異性に対して興味が沸いた時期もあったし、仲間内でそんな話で盛り上がったこともあった。
だがしかし、それは一人の異性を対象としたものではなく、ただ「性」というものが対象だったので、
誰か一人の女性へ明確な好意を抱き、色んな経験をしたいと思ったことは無かった。
以前、仲間の一人だったクロウが「鬼柳ってさ、顔は良いのに彼女とか作らねーの?結構モテてんのに、勿体ねぇ。」と問われたことがあった。
その時、切り替えした言葉は確か「女ぁ?興味ねぇなぁ……今は決闘(コイツ)が恋人みたいなモンだからよ!」とデュエルディスクを軽く叩いて笑ったのだ。
今思うと完全な黒歴史な上に、仲間からのアドバイスを華麗にスルーしていた自分が恥ずかしい。
ニコに詰問されるまでは全然気にもしていなかったが、
今になってクロウの話をもっと真剣に聞いていれば良かったとさえ思える。
「(しかし、だからといって…。)」
youを…彼女をそのまま、なぁなぁで好きになってしまっていいものかと考えてしまう。
確かに共にいて安心できるし、可憐な仕草や可愛い行動に時折心臓が跳ねることもある。
だがしかし、他に対象となる女性がいないからではないか?と問われれば、間違いなく、ひるんでしまうだろう。
かと言って、先程ニコが指摘したように、彼女に他に好きな男ができてこの家を去られるのは
とてつもなく悲しくて寂しいし、ずっといてほしいと思ってしまっている自分がいる。
うーん…と、自分の中で葛藤し始めた鬼柳が唸ると、
今まで鬼の形相だったニコがふっと優しい笑みを浮かべ、声を掛けてきた。
「鬼柳さん。」
「ん…。」
「結論は急がなくていいと思います。」
「…え?」
「焦ってもいいことはないですしね。ただ、大事にしてほしいと思います。」
「何を…?」
「今の自分の気持ちです。」
「??」
「沢山葛藤して、いいと思います。悩んで悩んで、答えを出していいと思います。大事なのは、今鬼柳さんの中で起こってる、その悩みや葛藤だと思うから。」
「・・・。」
「じゃぁ、私のお説教はここまで!あ、ちゃんと3泊してきてくださいね。」
今、鬼柳に間違いなく新しい人の道を切り拓いたのはニコだった。
彼女は「人を叱るのはあまり得意ではなんですよ」と苦笑しながらその場を去っていった。
「ニコ様…。」
鬼柳は、まるで悟りを拓いた僧のように、そうボソリと呟いた。
そうしてきっと答えを出すのだから
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