you don't get it!(5D's:鬼柳)
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図りかねる
君との距離。
俺と彼女の一定距離
「you、こないだの…あの資料ドコだ?」
「最近の資料はデスク上のラックにクリアファイルごとに仕分けてますよ。ファイルにインデックスシール貼ってあるからすぐ分かるようになってるハズです。そこに無かったら言ってください。探します。」
「えーと…店舗リスト店舗…あった。さんきゅ!」
「よかったです。」
youが鬼柳の家に越してきて約1ツキ。
今や立派な町長秘書のポジションになっていた。
元来、合理的かつ理に適った行動を起こせるリーダー気質のある鬼柳は
町の運営を類稀なる「責任感」と「行動力」でこなしていた。
勿論、資料を作ったり、まとめたりすることもできないワケではないのだが、
どうしても先に行動を起こしてしまい、事前、事後処理が後手に回りがちだった。
それがyouが手伝ってくれることになったことで、
周囲にも事前に町の改革を伝える事ができ、
鬼柳自身は心おきなく実際に町を動かす方に力を入れる事ができるようになっていた。
「うん……今の店舗数がこの件数なら、枠はもっと増やすべきだな…それはシティに通達を出すとして…。」
「鬼柳くん、こっちの住民データはパーソナルデータですよね?」
「ああ、そうそう、こういうのって普通どうするんだ?メールで送っていいのか?」
「そうですね…良い場合もありますが、推奨ではないですね。」
「うーん…育った環境のせいもあって、そういうのよく分からねぇからなぁ…。」
「元データは鍵付けて、別媒体に保存しましょう。」
「シティに送る分は?」
「うーん…面倒ですが、この町の印象を良くするためにもシティに直接提出しに行った方が良いかもしれません…ほんのちょっとですけど…其の方が好印象かな、と。」
「そっか……じゃぁ、今度シティに持って行く。」
「うん、じゃぁ空きの予定を確認しておくね。」
「ああ、頼む。」
「では……鬼柳くん、店舗の資料まで終わったら、お昼にしませんか?」
「ん、ああ、そうだな。」
「忙しくて、つい時間を忘れてしまいますねぇ。」
「んー、でも、youが手伝ってくれるようになってからは大分楽になったよ、マジで。」
「本当ですか?」
「ほんと、本当に。」
「…嬉しいです、お役に立てているんですね!」
「ああ、ありがとうな。」
「いいえ、こちらこそ!」
寧ろ、自分を過小評価し過ぎているのではないかと思うほどだ。
手伝うことになった当初は「きっと何もできない」と自分を卑下していたのだが、
いざ仕事を任せてみると、今まで散らかっていたデスクは綺麗に整頓され、資料も見やすく纏め上げられた。
スケジュールも目に入るところの方が良いだろうと、分かりやすくカレンダーに書き込んでくれるし、
本当に痒いところに手が届くというような仕事をやってくれる…そんなポテンシャルを秘めていた。
(いや、隠していたのかもしれないとも鬼柳は思う)
もちろん、それだけでなく、ちゃんと朝と夕方にはニコと2人で台所に立ってくれるし、
ニコ達が学舎に行っている間、昼食は殆どyouが作ってくれる。
「you、今日は昼飯俺が作るよ。」
「鬼柳くんが?!」
「そう驚くなよ、伊達に一人が長かったワケじゃない。俺の料理スキルを舐めてもらっちゃ困るぜ?」
「そ、そうですか。」
「ああ、絶対youを満足させてやるぜ!」
「わぁ、それは楽しみです!」
いつもは鬼柳の仕事がひと段落つく少し前に準備に取り掛かり、
ちょうど終わるくらいの時間に食事ができあがる…とい流れになっていたが、
今日は鬼柳が食事を担当するということで、彼の午前の仕事が終わってからの調理となった。
普段は台所に立つ姿をあまり見掛けないので、今回のこの光景がとても新鮮に思えるyou。
「お手伝いしますよ、鬼柳くん。」
「こういう時くらい座ってろよ…いつも頑張ってくれてんだから。」
「でも、それは鬼柳くんも同じです。だから、手伝いたいの。」
「……なら、とりあえず湯を沸かしてもらっていいか?」
「はい!」
鬼柳は「やれやれ」と優しく苦笑しながら、youに手伝いの指示を出す。
折角これまでの労を労い、座って寛げる時間を作ってやろうと思ったのに、
結局彼女の温情の在り方がそうさせないのなら、精一杯腕を振るってやる…と人知れず気合を入れる鬼柳なのであった。
「鬼柳くんって……。」
「ん?」
「お料理してても素敵だね。」
「ブッ…!!//」
「やだ、きたない。」
「おま…っ、you…いきなり何…いって…!//」
「でも、本当にそう思ったから、素直な感想。出会った時も言った気がするけど…。」
「も、もういい…から…//」
「うん?」
女性からの賛美の言葉にあまり慣れていないのか、顔を赤らめながら包丁を動かす鬼柳。
やはり座って待ってもらうべきだったと少しだけ後悔をした。
気を取り直し、沸騰した湯にパスタを投入すると、既定の時間きっちりと茹で上げる。
その間にソースを作るのだが、これがまた大変食欲をそそる香りで、
youはくんくんと子犬のように辺りに漂う匂いをかぐ。
「とっても美味しそうで、良い香りです…!」
「まぁな!俺が作ったんだから、絶対美味いぜ?」
「はい!すっごく楽しみです!!//」
「じゃぁー、ちょっとだけな。」
「?」
そう言って、パスタソースを絡めた具材のベーコンを箸で摘み、youの口元へと向ける。
「あーん。」
「わ、あーーん……っ…!!」
「……どうだ?」
「!!」
「う、美味いか…?い、いや自信はあるんだぜ?!ただその…ちょーっとブランクがあるから心配でよ、い、いや、別に不味いならマズいってハッキリ言ってくれてい…」
「美味しいですっ!とっても、おいしいです!!//」
「そ、そうか?」
「はい!」
「マジか?」
「マジです!」
「そ、そいつは良かった…。」
「はい!鬼柳くん、早く!早く食べたいです!//」
「お、おう…!!//」
相当美味しかったのだろう。目をキラキラさせて詰め寄ってくるyouに少し気圧され気味な鬼柳。
ただ、美味しいと言われて安堵したことと、褒められて嬉しいという気持ちも大きく、すぐにその顔は綻んだ。
youに急かされつつも、きちんと段取り通りに調理をこなし、完成したパスタ。
サラダとスープと一緒にテーブルに並べられ、一層食欲をそそってくる。
「じゃーん、鬼柳京介特製パスタ!名付けて……考えてなかったな、ま、いっか。とりあえず『サティスファクションスパゲティ!!』」
「さ…さてぃすふぁくしょん…す…!!」
「あ…やっぱちょっとダサ…アレだったか?」
「満足できますか?!」
「はは、できますよ、腹ぺこお嬢様。」
「う…良いです、もうお嬢様でもお姫様でも!」
「そこかよ。」
「ね、美味しそう、いただいてもよいですか?」
「どうぞ。」
「いただきまーす!!//」
フォークに巻きつけた麺をぱくりと頬張る。
もぐもぐと食べる姿がリスのようで、思わず鬼柳の口元が緩んだ。
「・・・。」
「ど、どうだ…美味いか?」
「ん………おいしいです!!」
噛み砕いて飲み込んだ後、ぱぁあっと明るい顔でyouが感嘆の意を示した。
キラキラと羨望の眼差しが鬼柳に向けられ、ありったけの賛辞が贈られた。
「すっごくおいしいです!鬼柳くんは天才です!」
「そ、そうか?!」
「はいっ!このクリームソース絶品です!ああ、幸せ…!鬼柳くん、今度作り方を教えてください!!」
「お、おう…。」
「流石、サティスファクションスパゲティなだけありますね!!」
「やめろ。」
ふいに嫌な思い出がフラッシュバックして思わず言葉を遮断する鬼柳だった…。
「でも、俺はyouとニコがいつも作ってくれる飯も美味いと思ってるぞ。」
「はい、ありがとうございます!」
「ま、俺には敵わんかもしれんがな!!」
「ふふ、そうですね!本当に美味しいです。」
「だろ?」
「はっ、鬼柳くん!」
「ん?」
「ちょっと失礼します!!」
「!?」
徐(おもむろ)に伸ばされたyouの手が、鬼柳の口元を軽く撫ぜる。
どうやらソースが跳ねていたようだ。
そして、彼女は自分の指に付いたソースをぺろっと舐めてしまった。
「っ…!//」
「ん!もったいないです…!」
「そ、そうか……さんきゅ。//」
今のような、まるで恋人同士のようなやり取りなどがそれに当たるのだが、
彼女が恐らく無意識で行う行為に対し、何度か男女として意識してしまうことがある。
「何故」を問えば、家族へ接するものと同じ感情で…と言われることは明白だろう。
それを確かめないのは、鬼柳が内心そうしたくないと思っていることに他ならないのだが、
当の本人は全く気付く気配もなく、これまでずっと無自覚で言い噤んできた。
「ね、鬼柳くん。」
「んー?」
「今日の夕飯、鬼柳くんが作ってくれませんか?」
「あ、それ「あなたの作るご飯が美味しいから」っておだてて役割すり替えるアレだろ、旦那転がすのがうまい主婦だろ?」
「ちっ、ちがいますよ!//」
「違うのか。」
「鬼柳くんにお料理教えてほしいんです!」
「えー!面倒くせぇ!つか、俺だってそんな大してお前達と変わんねぇって!!自信があるのはパスタだけ。後は全部漢の料理だよ。」
「お、おとこのりょうり?」
「ああ、鍋とフライパンに具材適当に突っ込んで煮る、焼く。」
「わお。」
「な、だからそこまで過大評価されると…。」
「では、パスタなら自信があると?」
「まぁ…ソースだけこだわれば、間違いなく美味い飯になるだろ、パスタって。」
「そ、そうですか…。」
「ああ、そうだ!」
「では、おいしいパスタの作り方を教えてください!」
「夜もパスタにするのか?」
「ソースを変えてみては?」
「…まぁ、いいけど。ウェスト達は食べてないしな。」
「はい!!ありがとうございます!!」
「トマトソースだろー、和風だろー…オイル系だろー…you、どれがいい?」
「オイル系は少し大人向けなので、和風かトマトにしませんか?」
「ん、分かった。」
それから夕刻になり、ニコとウェストが学舎から戻ってきた。
すぐにニコに今日の夕飯は鬼柳が作ってくれると話せば、
「え、鬼柳さんが…?」という昼のyouと同じ反応が返ってきた。
youは「そうそう」と頷き、鬼柳の作ったスパゲティが絶品だったこと、
そしてその味を習いたいので共にキッチンに立ちたいと願ったことを話した。
「そろそろ作るぞー。」
「はーい!」
キッチンにいる鬼柳に呼ばれ、パタパタと駆けて行くyou。
それを見送り、ニコは折角なので宿題をこのままリビングで済ませることにした。
・
・
・
「少し大人向けの味ならここで赤ワインだな。ま、今日は控えめにしとくけど。代わりにこいつ。」
「あ、チーズ!」
「子ども向けにも思えるけど、これが種類によっては意外にコクが出て隠し味になるんだよ。」
「なるほど!!」
「今回はなるべくクセの無いヤツを使う。」
「はぁ…いい香りです…//」
「ハハ、お前は今日そればっかだなぁ。」
「鬼柳くんが一番美味しいと思う味付けで、今度作ってくださいね。」
「まーたおだてて転がす…。」
「だって……食べたいんですもん…。」
「ハイハイ、分かったわかった。作ってあげますよ。」
「やったー!嬉しいです、優しいです鬼柳くん、大好きです!」
「っ・・・//」
「あっ、よければそろそろ味見を…//」
「(これが正に色気より食い気…。)」
途中、二階の自室から降りてきたウェストが目撃したのは、
キッチンで「あーん」と味見をする鬼柳とyouの姿。
ニコはyouの表情を見て、雛鳥に餌を与える親鳥を彷彿とさせたのだが、ウェストは違ったらしい。
「あーっ!鬼柳兄ちゃんがyou姉ちゃんと夫婦になってるー!!」
「ブッ!!//」
「ねぇ、いつ結婚したのー!?ねぇねぇ!」
「しっ、してないっ!!//」
「なーんだ、してないの?」
「どうしてそうなった…っ…。」
「だって、仲良く「あーん」ってしてた。」
「どんな判断基準だ…。」
はぁーっと大きく溜息を吐き、はた…と、改めてyouを見つめたところで、予想外の事態に気付く。
全く動じないかと思われた彼女の顔が意外や意外にも赤く染まっており、
明らかに互いを意識していることが分かる有様になっていた。
「え、you…?」
「・・・//」
「・・・//」
「おいしいです…すごく//」
「お…おう…//」
「・・・。」
「・・・。」
2人して二の句が継げずにいると、リビングのニコが「ちょっとお腹空いてきました」と助け舟を出してくれたのだが、
「悪いな、もうできるから」と振り返った鬼柳に対し、それはそれは慈愛に満ちた眼差しを向けていた。
「な…なんだよニコ…。」
「いいえ、何も?」
「・・・。」
その目があからさまに「やっと鬼柳さんにも春がやってきましたね」と訴えてくるので、
家族になって初めて、羞恥心から、ニコに対して軽く怒りを抱いた鬼柳なのであった…。
距離感なんて分からねェ!!/
*。゜.*。゜.*。゜.*