you don't get it!(5D's:鬼柳)
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ふたりきり
はじめました
これからも、よろしく
それから鬼柳と2人、ホテルまで戻って一晩を過ごした。
翌日、シティ滞在最終日は2人でDホイールに乗って出掛けようと鬼柳が提案したのだが、
youはどうしても遊星達にお礼が言いたいということで、最終日もガレージを訪れることとなった。
「本当に色々ありがとうございました……何てお礼を言ったらいいのか…。」
「いや、いいんだ。俺達がやりたくてやったことだから。」
「今度はニコちゃんとウェストくんも連れてきていいですか?2人とも遊星さんに会いたがっていました。」
「勿論だ。」
「それからDホイールのこと…!!」
「も、いいんだ。そっちも俺達がやりたくてやったことだ。」
「でも!」
「元々中古のものをカスタマイズしたもので、そんなに費用も掛かっていないし、オレもブルーノも楽しんでやってたし。」
「遊星さん…ブルーノくんも……ありがとうございます…っ!」
遊星の手を握り、何度も礼をして感謝を示すyou。
それは遊星もブルーノもそこまで感謝されて気恥ずかしいし、逆に申し訳ないと思ってしまうくらいのものだった。
流石にもういいだろう、と鬼柳が声を掛けた時だった。
コートの内ポケットに入れていた電話が鳴ったようで、鬼柳は取り出してディスプレイを確認する。
「ニコ…?」
「ニコちゃんがどうしたんですか?」
「いや、電話が…。」
「何でしょうか…?」
「とりあえず出てみる。」
と、通話にした瞬間、電話の向こう側からニコの慌てた大きな声が響いてきた。
スピーカーにしていないのに聞こえる大声は余程彼女が焦って動揺していることが分かる。
「ニコ、どうしたんだ?!」
『鬼柳さん!大変です!大変なんです!!』
「落ち着け、とりあず…!!」
『ああ、もう!何から話せば……兎に角、とにかくyouさんと一緒に早く帰ってきてください!』
「ああ、分かった!」
『お願いします!!すみません、お願いします!!』
「怪我は無いのか?!ウェストは無事なのか?!ニコもか?!」
『ええ、私達は!!』
「分かった、無事なら少し安心した。すぐ帰るから待ってろ!」
『は、はい!!』
ピッと通話を終了すると、youだけでなく遊星やクロウ、ジャックにブルーノも心配そうな顔で鬼柳を見つめていた。
「き、鬼柳くん、ニコちゃんは何て…?」
「ああ、大変なことが起こったから早く帰ってきてほしいって…。」
「っ…で、ではすぐに帰りましょう!」
「そうだな……悪いな、本当に……折角シティに来たのにお前との時間全然取れなくて…。」
「…わたしはこれからもずっと鬼柳くんと一緒にいるじゃないですか…気にしないでください。それよりニコちゃん達が心配です…!」
「お…おぅ…//」
ニコとウェストには申し訳ないのだが、
youのナチュラルに放たれた嬉しい台詞に思わず口元がニヤついてしまう鬼柳であった。
そんな彼を現実に引き戻したのは遊星。
「鬼柳、早速俺達のDホイールの出番だな。」
「遊星…ああ!」
「俺達も一緒に行こうか?」
「いや、もう十分チカラになってもらった……だから大丈夫だ。」
「そうか…。」
ふっと笑う遊星の顔は焦りや不安は一抹も含んでおらず、
ただただ鬼柳の言葉を信じ、見送るようなものだった。
気付けば、クロウやジャック…そしてDホイールの作製に参加をしてくれたブルーノも、
同じような笑みを浮かべて鬼柳を見ている。
「お前ら…。」
「とりあえず、早いトコ戻って何が起こったか確かめてこいよ!」
「クロウ…そうだな!」
「ちゃんと、何があったか後で連絡くれよ。」
「ああ。落ち着いたらまたお前らに会いにくる。」
「待ってるぜ!」
クロウがそう言って拳を突き出すと、同じように遊星、ジャックも腕を伸ばす。
チームを組んでいた時によくやっていた合図。
今度はそれにブルーノも笑みを浮かべて「僕も!」と拳をグーにして突き出す。
鬼柳は皆と視線を合わせると、少し照れ臭そうに笑って己の拳を突き合せ、小さく頷いた。
「行ってくる。」
そうやって遊星ら一同に見送られ、ガレージを後にした鬼柳とyou。
しかし、行きの公共交通機関での移動と違い、Dホイール一本での帰還は早いものだった。
数時間マシンを飛ばし、遠目から町が見えてきた頃、youが「あと数分で着く」と、ニコへ連絡を入れた。
そして、町の入り口に差しかかると連絡を受けたニコたちがブンブンと大きく手を振っている姿が飛び込んでくる。
「ニコ!!」
「鬼柳さん!youさん!!」
広い大通りで、車も普段通ることもないため、
遠慮なしにその場にDホイールを駐車させ、ニコたちに駆け寄る…。
が、近づくと改めて気付くニコとウェスト以外の人間の姿。
ウェストの傍に立ち、彼等と同じように鬼柳に手を振っている…。
「まさか……そんな…!!」
「あの方は…。」
「親父さんッツ?!!」
「!!」
「あれはニコとウェストの親父さんだ!!」
「えっ!!」
驚いているうちに彼等の前まで辿り着き、
色々と混乱した頭で鬼柳がニコ達の父に詰問する。
「親父さん!生きていたのか!?無事…ていうか怪我とか!」
「鬼柳さん!」
「あ!つーか生きてたんならどうして知らせてくれなかった?!いやそもそも…!!」
「お、落ち着いてください、鬼柳さん!!」
「けど!!」
ぐるぐると目が回るように動揺している鬼柳を、youとニコが落ち着かせ、
苦笑しながらニコ達の父であるセルジオが「大丈夫ですか?」と尋ねる。
大きく息を吸って、吐いて…。
何度か深呼吸をした後、尋ねるのではなく、教えてもらうスタンスに切り替える鬼柳。
「鬼柳さん、驚かれるのも無理はないですが……何とか生きていました。」
「そう、みたいだな……驚いた。本当に。」
「ええ、自分でも。ただ、あの時、炭鉱の底に落ちていき、落下の際に頭を強く打ってしまったようで、暫く記憶を失っていたようなんです。」
「な、何だって!?」
「分けの分からないまま炭鉱をずっと彷徨って…その時に小波君…あ、私を助けてくれた恩人なんですが、出会ったんですよ。」
「そいつは、まだこの町にいるのか?」
「いいえ、色んな場所へ赴いて決闘の武者修行をしている方だったようで…もうこの町を出られています。」
「そうか……残念だ…できれば挨拶をしておきたかった。」
「私も引き止めたんですが…。」
「でも、親父さんが生きていてくれて本当によかった……!!」
「ご心配をお掛けしました……それに、ニコと…ウェストのことも。私がいない間、鬼柳さんが面倒を見てくれていたとお聞きしました。」
「ああ、いや、寧ろこっちが助けられてばかりだった。ニコの優しさとウェストの明るさに。」
「そう言っていただけると有難いです。」
そう言うと、セルジオはニコとウェストを引き寄せ、2人の肩に手を置いた。
その姿は子どもを慈しみ、誇らしげに「自慢の子どもたちです」と表現しているかのようで…。
それは父親であるセルジオだからこそ、できる表情と、抱ける感情なのだと。
言われずとも感じた鬼柳とyouだった。
それからセルジオにyouの紹介を済ませ、
Dホイールを家の裏手に停車させた後、全員で鬼柳の家に集まった。
「鬼柳さん、私とウェストは元の家に戻ろうと思います。」
ニコが放ったその言葉に驚いた顔をしたものの、
鬼柳はニコとウェストが、その結論に至るだろうと何となく予想はしていた。
否、彼等がそう申し出なくても、自分からそうしろと言うつもりだった。
少し寂しそうな表情を浮かべるyouをチラリと視界に入れて、
思わず困ったような笑みを浮かべてしまったものの、鬼柳はニコの提案に深く頷いた。
「そうだな。俺もそうするべきだと思う。」
「はい。」
「同じ町にいるんだ。いつでも会えるしな!」
「本当は鬼柳さんも一緒に…って、思っていたんですけど…もう、鬼柳さんは一人ではないですからね。」
「・・・えっと…。」
「離れても、私達は皆家族。ですよね…?」
「ああ、勿論だ!」
ニコの暖かい言葉に大きく返事をすると同時に、ウェストが鬼柳の腰に抱きついてきた。
「鬼柳兄ちゃん!この家にまた来ていい?」
「ああ、ここもお前の家だ。」
「うん!その時はデュエル教えてよね?」
「分かったわかった。」
「へへー。」
くしゃくしゃとウェストの頭を撫でる。
その時の鬼柳の表情は人間味に満ちていて、
主にクラッシュタウンで「死神」と呼ばれていた頃の彼の記憶が殆どを占めていたセルジオを大いに驚かせた。
また、その良い意味で変貌した鬼柳に感謝をするのだった。
「自分が不在だった間、子ども達を守ってくれてありがとう」と。
そういうことで、数日のうちに荷物を全て元の家に移すことを決め、
早速ニコとウェストの部屋の片付けをすることになったのだが…。
「そういえばニコ、さっきの……何で俺とyouが…って分かったんだ?」
「女の勘です。」
「すげーな、女の勘。」
「まぁ、私にも学舎に好きな人がいますから……そういうことには鋭いんです。」
「何ッ!?どこのどいつだ?!よくもうちのニコに…!!」
「はいはい。お願いだから乗り込んで決闘申し込んだりしないでくださいね、恥ずかしいんで。」
「・・・。」
「図星ですか。」
「まぁ……家族、だからな。心配なんだよ、ちゃんといい男なのかーとか。」
「そうですねぇ……優しい人ですよ、少なくとも悪い人ではないです。マーカー付きじゃないですし?」
「ニコ、俺のこと嫌いなのか…?!」
「あはっ、冗談です。マーカーがあろうと無かろうと、鬼柳さんは素敵な人です。分かってます。」
「ニコ…。」
「そんなもので人の価値は決まらないってこと……鬼柳さんが教えてくれました。」
「・・・。」
「だから、私…結構男の人を見る目は肥えていると自負してるんですよ?」
鬼柳の目を見て、にこりと笑うニコ。
畳み終わった衣類をダンボールに詰めて、新たにまとめるものをクローゼットから取り出す。
彼女の忙しなく動く背中を見つめ、鬼柳は聞こえるか聞こえないかの大きさで「ありがとう」と呟くのだった…。
・
・
・
・
それから数日後、ニコとウェストがセルジオと共に元の家で暮らし始め、
鬼柳とyou、2人の生活が始まった。
「you、今日の仕事なんだけど…。」
「今日は資料まとめと作成かな?」
「午後からでいいか?今から1時間程出掛けたいんだ。」
「ええ、じゃぁ…お昼からにしましょうか。」
「悪いな。」
「そんなに時間かかるものは無さそうですから、平気ですよ、多分。」
「なら良かった。」
「でも、何処へ行かれるんですか?」
「あー…まぁ、ちょっと。」
「???」
「帰ってきたらすぐ分かる、と…思う。」
「そうですか?」
「じゃぁ、行ってくる。」
「あ、はい。行ってらっしゃい!気を付けて。」
「ああ。」
玄関まで付き添い、ひらひらと手を振って鬼柳の外出を見送るyou。
一度、ドアに手を掛けたところで、何かを思い出したかのように「あ」と声を上げ、くるりと後ろを振り返る鬼柳。
何か忘れ物でもしたのかと、首を傾げるyouに一歩歩み寄り、
彼女の顎を僅かに上に向けると、鬼柳は軽いキスを落とした。
「行ってきます。」
「ぃ……いってら…しゃい///」
予告も無しに唇を奪われ、youは思わず真っ赤になってしまった。
鬼柳はというと、その反応に満足したのか
嬉しそうな笑みを浮かべて彼女の頭をぽんぽんと撫でると、そのまま出掛けていった。
「二人きりになって……容赦無いなぁ…//」
ずるずると、その場に崩れ落ち、重ねられた唇の感覚を思い出すかのように指を当ててしまうのだった。
それから小一時間程経ち、お昼に差しかかろうとする頃…。
昼食を作ろうとキッチンへと向かう途中で、鬼柳が帰ってきた。
パタパタと玄関へ向かい、鬼柳を出迎えたのだが…。
「ただいま。」
「鬼柳くん、おかえりなさ………いぃいい?!」
「おわっ、どうした?!!」
「きっ、き……そっ、か…?!」
「えっと、あー……うん。」
「きっ、鬼柳くん、どうしたんですかその…髪?!」
youの投げ掛けた言葉の通り、
今朝まで肩の下程まあであった鬼柳の髪が、今はバッサリとカットされて短髪になっていた。
「ちょっとな……ってかどう?似合う?」
「…っ……す…。」
「す?」
「素敵です!すっごく似合っています…!//」
「マジ?よかった!」
「長い髪も素敵でしたが、何でしょう……全く違うイメージですが……今の髪型もカッコイイです。」
「へへ……。」
「でも、どうしたんですかいきなり…。」
「んーまぁ……ちょっと。気合?みたいな。」
「気合…ですか?」
鬼柳いわく。
今の自分の髪型はチームサティスファクションの頃のものだそうで、
チームのリーダーとして遊星らをまとめていた自分を思い出すと気合が入ると思った…らしい。
「まぁ、今思うとリーダーリーダーって騒いでたのは俺だけで、多分アイツらは皆同等って思ってたんだろうけど…。実際、今は俺も同等だったって思ってる。」
「ふふ、でも、リーダーだったって、遊星さん達皆言ってましたよ。だから合ってます。」
「そうかぁ?」
「そうです。」
「ま、そういう感じ。」
「ふふ。」
「今はほら……本格的に町のリーダーにならなきゃって…思ってる、から。その気合。」
「そうですね。わたしも微力ながら支えたいと思います!」
「あと…。」
「??」
「……youのこと……。」
「わたし?」
「…満足させ……いや、幸せにしてやるっつー気合も、合わせて……かな。」
「鬼柳くん…。」
「ニコとウェストがいなくなっちまったからな……2人でも寂しくさせないように頑張るわ。」
「それはわたしも同じです。鬼柳くんが寂しくないようにって思ってます。」
つまりは御互い、想い合う考えも同じということで、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
それから手を繋いでリビングに戻ると、お昼の用意を思い出したyou。
「あ!そうだった、お昼を用意しようと思ってたんだ!」
「ああ、もうそんな時間か。」
「お昼は何にし……?!!?」
鬼柳と繋いでいた手を解き、キッチンへ向かおうとするyouだったが、
急に後ろから腕を引かれてバランスを崩してしまう。
身体が半回転し、ぐらりと歪んだ視界。
ハッと気付けば、youの身体はすっぽりと鬼柳の腕の中に収まってた。
「き…鬼柳くん?」
「4人から2人になるのは寂しいけど……2人きりじゃないと……できないこともあるかなって、思ったんだけど。」
「う、?」
「何だかんだで……ほら、その……してないだろ?//」
「な…なに…ですか?」
「な、何って……つまり……結局…し、シティで一緒のホテルに泊まった時も一緒には寝たけど、何もなかったし!ニコとウェストが親父さんと暮らすまでバタバタで何も恋人らしいこともしてなかったし!」
「そ、そんな大きな声で言わなくても…//」
「あ、悪ィ…//」
「・・・//」
「youを俺のものにしたい……けど、youが嫌なら、無理にはしない。」
「鬼柳くん…わたし……。」
「!」
「い、嫌です…!」
「お…………おお。わ、分かった。」
今、確実に鬼柳の脳内で大型戦艦が撃沈した。
youを抱き締めていた腕を解き、
立ちくらみにも似た感覚で、ふらりと足元が覚束無くなるのを必死で堪える。
と、ふと眼下に目をやると、youが未だに全身を自分に預けていた。
どうしたのか、と首を傾げると、真っ赤な顔で鬼柳を見上げ、恥ずかしそうに小さく呟く。
「・・・です。」
「え?」
「…今は、明るいから嫌です……//」
「…えっと………それ…夜なら、いいのか?」
「いい…です//」
「っ……本当に??」
「……だって、わたしも……鬼柳くんのものになりたいです…//」
「そ……そういうことは今言うなよ……理性が持たん。」
「ご、ごめんなさい…//」
「you。」
「う?」
「ありがとな。あと……これからも、よろしく頼む。」
「はい、こちらこそ……よろしくお願いします。」
「あーー、早く夜になんねーかな…。」
「まだです!だって先にお仕事が待っていますよ!」
「うげ。」
「その前にお昼ごはんですけどね。」
「あ、じゃぁ久々に何か食いにいかね?」
「それもいいですね!」
「よーし、じゃぁ早速行くか!」
「はい!」
差し伸べられた鬼柳の手をしっかりと掴んだyou。
そのまま、玄関へと向かい2人で外へと出ていく。
それはまるで、未来のドアを開けるかのようだった。
この手は離さないから
*。゜.*。゜.*。゜.*