you don't get it!(5D's:鬼柳)
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いつか、じゃなくて今
知るんだ 貴方を
「届かなくてもいい」なんて嘘
「鬼柳は…俺たちのリーダーだったんだ。」
遊星のその言葉から、鬼柳の過去は語られることとなった。
シティ滞在の3日目、鬼柳が私用で出掛けた後、
youが昨日鬼柳と話し合い、遊星達に自分のことを語ってほしいと言っていたことを告げた。
やはり、その反応は「鬼柳の口から聞いた方が良い」というものだったが、
鬼柳の強い希望と理由あって、ということを伝えると、重くも3人は頷いてくれた。
そして、遊星達が教えてくれた鬼柳の話…。
遊星、クロウ、ジャックの3人は元々幼馴染だったが、鬼柳は違うということ。
成長し、サテライトで生きていくことに何の希望も喜びも見出せず、
ただ腐っていくだけだった彼らの前に鬼柳が現れ、光を抱かせたこと。
「どうやったって、俺達はこのサテライトから逃げる事はできない。だったらここで満足するしかねぇ!このサテライトでどデカい事やって、満足しようぜ!」
それから「サテライト統一」という目標を掲げ、鬼柳を中心として『チーム・サティスファクション』が結成、活動し始めたこと。
その期間は本当にずっと楽しいことだらけで、名の通り充実し、満足できる日々だったこと…。
「遊星の言う『絆』って、多分こういうものなんだろうなって思ったりしたなぁ。」
「何かにつけ満足満足言う鬼柳はちょっとウザかったがな。」
ジャックがそう語り、その頃の光景を思い出したのか、遊星とクロウが思わず吹き出した。
その後も、遊星たちはサティスファクション時代に起こった楽しい出来事を沢山youに教えてくれた。
中には抱腹絶倒するものや、思わずうるっと涙ぐんでしまう話もあり、
彼等の青春がいかに輝かしいものだったかを話だけで垣間見ることができた…。
そして、そんな彼らの話に翳りが差したのは、サテライトを統一してからの出来事…。
燃え尽き症候群というのだろうか…目的を消失してしまった鬼柳たち。
次第にチームでいることの意欲を失ってしまい、何とか皆の気持ちを繋ぎ留めたい一心でデェュエルギャングらの残党狩りを行うことにしたそうだ。
しかし、負けた者に追い打ちをかけるような行為は自分の本意ではない、と…。
クロウとジャックは鬼柳の元を離れていった。
遊星は鬼柳を放っておくこと、見限ることができずに傍にいたが、
「セキュリティを潰す」と、ついに鬼柳がチームの方向性を完全に見失う提案をしたことで離れてしまった。
遊星達は「鬼柳一人ではそこまでの無茶はしない」と思っていたのだが、
鬼柳としてはその無茶が新たな目標になり、離れていった仲間が再び戻ってくるのだと信じたかったようで、
ついに単身、セキュリティへのテロ行為に出た。
そうなってしまってはもうどうしようもないと分かっていたが、
それでも鬼柳を仲間だと思っていた遊星達は何とか鬼柳をセキュリティから逃すため奮闘したそうだ。
しかし、遂に鬼柳は捉えられ、その時に生じた誤解の所為で
遊星を…仲間だった彼らを恨みながら獄中で衰弱死を迎えたことをyouに伝えた。
「ちょ、ちょっと待ってください!き、鬼柳くんが死んだって…鬼柳くんは生きています!」
「ああ、でも…続きがあるんだ。」
「???」
「youは少し前…サテライトとシティで起こった怪物の出現と大地震のことを覚えているか?」
「あ、はい…確かサテライトとシティが繋がるきっかけというか……それがその大地震のせいだって風の噂で聞いたことが…。」
「ああ。」
「それと鬼柳くんと……どのような関係が…。」
遊星たちの顔色を見る限りで、嫌な予感はしていた。
そしてその予感は的中しており、怪物達を操っていた者たちの一人が『ダークシグナー』という存在として甦った鬼柳で、
街が破壊され、多くの人々が傷付いた原因であったことを知った。
「そんな…っ…!!」
「辛いだろうが…真実なんだ。鬼柳は……俺への復讐のために死者として甦り、人々の魂を怪物(自縛神)の生贄にして俺達に戦いを挑んできた。」
「鬼柳くんが…。」
「一度は鬼柳との戦いで死にかけたが、仲間のお陰で俺は助かった。」
「遊星さん…。」
「そして……もう一度鬼柳に挑み、次は勝利した。」
「き、鬼柳くんは…どうなったんですか?」
「鬼柳は…消えた。俺を憎んで甦ったが、やっぱり最後まで憎みきれなかったこと…そして…。」
「・・・。」
「叶えたかった一番の願いはチーム・サティスファクションのラストデュエルをしたかったんだ、と俺に伝えて…。」
今、鬼柳は生きているのだが、それでも泣かずにはいられなかった。
無言で涙を流すyouを見て、クロウも思わずズッ…と鼻を鳴らす。
「では……鬼柳くんはどうして生きているのでしょう…?」
「ああ、ダークシグナー…まぁ、怪物達の親玉との戦いに決着が着いた後、怪物の生贄にされた人々だけでなく、怪物の依代にされていた鬼柳達ダークシグナーの魂も解放され、戻ってくることができたんだ。」
「そんなことが…。」
「信じられないだろうが、本当のことなんだ。」
「いえ、信じます。」
それから今の鬼柳と自分が出会うことになったのか?とyouが問うと、遊星はゆるゆると首を横に振った。
少しの沈黙の後、後に続く鬼柳の話の理由付けとして、ジャックが口を開く。
「俺の好きになった女も、鬼柳と同じダークシグナーとなって俺の前に立ちはだかった。」
「えっ!」
「どれだけ辛い戦いだったか……その最中、自我を取り戻した時のアイツの悲痛な顔……。」
「ジャックさん…。」
「甦った後、彼女はダークシグナーだった時の記憶を忘れて今を過ごしているが……思い出した鬼柳はどれほどの自責の念に駆られたのだろうな…。」
「・・・。」
「図々しく生き抜くことはできなかった…のだと思う。遊星が救いに行かなければ、あの町で鬼柳は今度こそ本当に死んでいただろう。」
「あ…あの町って…。」
「サティスファクションタウンだ」と、ジャックではなく遊星が答える。
youは町が今の名になってからの姿しか知らないが、
少し前まで…鬼柳が町長を務めるようになる前は治安も悪く、住んでいる人間の柄も大変悪かったとニコに教えてもらったことがあった。
遊星の話では、過去の行いを悔いた鬼柳が生きる気力を失い、
辿り着いた町が旧名「クラッシュタウン」だったと説明してくれた。
死ぬまで炭鉱で働くための人員を奪い合うという決闘に身を置き、連戦連勝を重ねていた鬼柳。
勝ってはいるが「いつ死んでもいい」と、ギリギリのところで命を繋ぐ行為をしていたらしい。
youの顔が蒼白になったのは言うまでもない。
だが、そこに遊星が訪れ、彼だけでなくニコやウェストの鬼柳を想う心が彼を動かしたことで、
ようやく生きる気力を取り戻し、どうしようもなく理不尽な秩序に支配されていた町を救うに至った…。
彼等は、そういう経緯を全て、包み隠さず鬼柳京介の過去として教えてくれた。
「で、最後に俺とジャックも参上し、めでたしめでたし!ってカンジ?」
「まぁ、事態を収拾したのは牛尾…セキュリティだがな。」
「んー、まぁ、それで鬼柳のセキュリティへの蟠(わだかま)りも少しは解けたしな。」
「とりあえず、全員揃ったことに満足できたってことだよな!」
ジャックとクロウがそう語り、お互いの拳をトンと突き合せてニヤリと笑う。
そんな彼らを横目に、遊星はyouに一番伝えたかったことを告げた。
「ラストデュエルが叶ったと、言っていた。」
「っ…!」
「鬼柳は……本当に強い男だと思う。皆を導いてくれる覚悟と優しさも持っていた。」
「はい。」
「けど、改めて一人の寂しさ、孤独を知った時、心が折れてしまった。」
「・・・。」
「だが今は違う。鬼柳は弱さを知って、今まで以上の強さを手に入れた。」
「遊星さん…。」
「どんな関係でもいい……ただ……you、君は…鬼柳の傍で、鬼柳の絆になってやってほしい。」
「…はい。」
「勿論、俺達だって絆はある。離れていても、いつも鬼柳を思っている。」
「こんな……素敵なお友達がいらっしゃって、鬼柳くんは本当に…幸せ者なんですね。」
「ふふ、そうかもな。」
遊星の言葉に「だよな!」とクロウが賛同し、ジャックも無言で頷く。
それから、鬼柳と話して彼にどんな決断をしたとしても、
真摯にお互いに受け入れるようにしてほしい、と告げて遊星の話は完了することとなった。
ふと窓の外に目をやれば、窓は夕焼け空を映し出している。
クロウが食事の支度をすべく、今日のメニューは何にするかと呟いたところで、
youがその場に立ち上がり、全員に向かって深々と一礼した。
「ありがとうございました……鬼柳くんのこと…全部話してくださって。」
「気にするな。話すことが義務だと思ったし、鬼柳自信が望んだことだ。」
「わたし……一度ホテルへ戻ります…一人で色々考えたいので。」
「ああ、そうするといい。鬼柳がここへ帰ってきたらそう伝えておく。」
「はい。」
それからyouはホテルへ戻り、ベッドの上でぼんやりと鬼柳のことを考えた。
楽しかった話、感動した話、辛かった話、それら全てが今の鬼柳を作り上げ、
自分と出会ってくれたのだと考えると胸が苦しく、思わず涙が零れた。
「いつか話してくれればいい」「今は届かなくていい」なんて嘘だだったのだと知った。
もっともっと早く尋ねていれば良かった、そうすれば彼をもっと早くに理解してあげることができたのかもしれないのに…と。
そうして、改めて理解する…自分の気持ち。
「(…ああ、わたし…やっぱり鬼柳くんのこと…。)」
目を閉じて、その名前を呟いた刹那。
部屋のドアがノックされた。
だからもう迷わないよ
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