CYBernetic ORGanism 0(ジェノス)
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CYBernetic ORGanism 0
On your side
「いえ、あの…デートじゃないです。わたしとジェノスくんは恋人じゃないですよ。」
言わせたくなかった。
「ジェノスくんが優しい人だから、好きなんですよ。」
一人の男として見てほしかった。
「博士、本当に異常は見られないんですか?」
全身をメンテナンスし終わった後、
クセーノ博士に寝たままの状態で問いかけたジェノス。
目の前の資料とモニターを交互にじっくり見ながら、
クセーノ博士はそれに答える…。
「ううむ……パーツにも、システムにも何の故障も見受けられなんだ。コアの動作も全くもって問題ない。」
「そんなハズは……あの時確かにコアがバチッと…。」
「それはどんな時だったんだジェノス……前に感じたコアの痛みの時もそうだが、痛みの理由を聞いていなかった。てっきり戦いによるものだと思っていたが……原因を追究してみなくては。」
「それは…。」
「強敵との戦闘か?それともと例の師匠とやらと手合わせか何かしたのかい?」
「いえ……コアに感じた痛みも、オーバーワークも、全身の熱量上昇も、一人の女性の前で起こりました。」
「何と…。」
余程驚いたのか、クセーノ博士はつぶらな瞳を大きく見開き、ジェノスをまじまじと見つめた。
あれだけ故障故障と豪語した手前、サイタマとの手合わせどころか、強敵との戦闘によるものでもなく、
か弱い女性が原因になるのは何となくバツが悪いワケで…。
ジェノスは慌てた様子でクセーノ博士に弁解をし始める…。
「い、いえ、違うんです博士!youさんが直接的な原因ではないハズです!きっと何か原因が他にあるのだと思います!」
「・・・。」
「そう、そうです、youさんが原因では無いです!その証拠に現在進行形でコアが痛みを感じていますから!」
「今も…?」
「はい!もうyouさんには暫く会わないと伝えました。あ、勿論心配するので身体に異常が出るからという理由は言っていませんが…。」
「ジェノス…。」
「原因でないかと疑った彼女に会わなくなったことに安心しているのに、コアが痛むんです。だから、これはyouさんが原因ではありません。」
満面の笑みを浮かべ、ぐっと拳を握って、
「その仮説は正しいでしょう?」とクセーノ博士を見るジェノスだったが、
クセーノ博士の自分を見つめてくるその表情を目にして、その笑顔は砕けた。
辛そうで、悲しそうで、でも暖かい目で博士はジェノスを見つめ、
そっと、その機械の手を包み込んで、こう言った。
「ジェノス…それは「彼女に会わなくなったことに安心」したんじゃない…「彼女に会えなくなって寂しい」からコアが痛むんじゃ。」
「え…。」
「コアのオーバーワークはどんな時に起きたんだい?」
「……彼女に…youさんに「優しいジェノスくんが好き」と言われた時です。」
「そうか……。」
「でも、それは正当に友人として俺を評価してくれた言葉です。感謝すべきところです。それなのに何故故障を来たすんですか?」
「それが嬉しくもあり、悲しくもあるからじゃよ。」
「悲しい…?どうして悲しいんですか、理解できません…。」
「友人として好きだということは、それ以上の存在ではないと思い知るからだよ、ジェノス。」
「・・・。」
「まぁ、こればかりは相手に確認を取らないと真実は分からないがね。」
クセーノ博士はゆっくりと諭すように1つずつジェノスの質問に答えていき、
とあるところで、逆にジェノスに質問を投げかけてきた。
「ところでジェノス、そのyouさんという女性はどんな人なんだ?メモリーはプライバシーを尊重して見ていないから、よかったら教えてくれんか?」
「そうですね…youさんはJ市にお住まいで、深海王との戦いの時にシェルターに居合わせていて、俺とサイタマ先生の活躍を見ていたそうです。あ、俺は活躍と言っても少女を庇ってスクラップになりましたが…でも、実はその時庇った少女の習い事の先生がyouさんで、態々Z市まで俺と先生に町と少女を救ってくれた御礼を言いに来てくださったんですよ。それがきっかけで俺とyouさんは番号を交換することになって、サイタマ先生のお祝いをしたりしたんですが…。」
「うん、ジェノス……言い方が悪かったね、どういう人なのか、彼女の性格や人となりを教えてくれんか?」
「youさんの性格は素直で、優しい方だと思います。俺の主観ですが。」
「どういったところが?」
「とても率直に言葉をぶつけて来られるのですが、そのどれもがとても素直で……心地良い、というんでしょうか…あたたかい気がします。」
「それは…確かに、ジェノスにとっては理解し難い人間かもしれんな…。」
「そうなんです。でも……故障した場所は直せばいいと思っていた俺の考えを改められた時……俺は何故かとても、嬉しかった。」
「直すことを否定されたのか?」
「いいえ。」
ゆるゆると、首を優しく横に振ってジェノスは博士に「違います」と否定の意を示す。
「彼女は故障したパーツがより強力にリメイクされることを否定はしませんでした。ただ…。」
「ただ?」
「ただ、俺と友達になった時に握手をした手が無くなってしまうのは、思い出が消えるようで寂しいと言いました。」
「ほう…。」
「勿論、パーツが変わっても思い出が消える事は無いと、伝えましたし、彼女も理解していたのですが……。どうしてだか、それがすごく……嬉しいというか、有難く思えたというか…。」
「今時分珍しい…とても綺麗な感情を持った人のようだね。」
「そうなんです!少なくとも俺はそう思います。」
「うんうん。」
「そんな優しい人を泣かせてしまってまで、俺はどうして避けたいんでしょう……申し訳なくて、とても心苦しいです…。」
「オヌシは…どうしてだと思う?不具合の原因かどうかは置いておいて、お前なりの考えを聞かせてくれ。」
「俺なりの……そうですね…。」
ジェノスは少しの沈黙の後、言葉を紡いだ。
時間が掛かるだろうと思っていた内容だったが、
思いのほか早く整頓された答えが出てきたのは、
youと別れて以降、ずっとそのことを考えていたためだった。
「一言で言うと強さを求めなくなってしまう気がするからです。」
「・・・というと?」
「youさんの隣はとても心地が良いんです。あたたかくて、優しくて、平穏なんです。」
「(やれやれ、そろそろ欲目にも思えてきたぞ…本当に自覚は無いんだろうか…。)」
「ずっとこの時間が続けばいいと願ってしまう。」
「それは……憎悪が風化する程か?」
「まさか、それはありません。でも、彼女を前にすると…そうできたらと思ってしまう自分がいます。だから苦しい。」
「ジェノス、そこまで……。」
「はい。」
「オヌシのその心痛はな、ジェノス…。」
「!!」
「ワシが言ってしまっていいことか分からんが……。」
「知りたいです。ご助言も兼ねて、是非仰ってください。」
「それは「恋」というものだよ。」
「こい……ですか。」
うむ、と博士が深く頷く。
博士の言葉を耳で受けて、認識する。
「(こい、故意、鯉、濃い、恋、恋、恋…ああ、これが…。)」
ほんのりと、思春期の頃にそういう感情を抱いたことがあったかもしれない。
だがそれは全て奪われてしまった。
あっという間に、全て、何もかも、焼き尽くされてしまった。
それ以降は全て背負い、でも全て捨てて生きてきた。
捨ててきたのは……。
「(言わずもがな、感情だ。)」
身体がサイボーグになったからといって、心まで機械になったワケではないが、
人が傷付く姿に感傷したりすることは確かに乏しくなっていたかもしれない。
それくらい大事な気持ちさえ薄れているのに、
恋などという感情に結論が行き着くワケもなかった。
『じゃぁ、これからも応援させてくださいね…ジェノスさんのこと。』
笑った顔が可愛いと思った。
『そういうんじゃなくて……ただ、ジェノスさんを心配してるんです。』
心配してくれる事が嬉しかった。
『理由もなく会いたくないって思わせるくらい酷い事、わたし…ジェノスくんにしたんですね。』
泣かせてしまった時は苦しかった。
「(あぁ、俺は…。)」
『会えなくなっても、ずっと心配してるから…応援も、しますから…っ』
「(貴女に会いたいんだ…。)」
ふっと目を閉じ、ジェノスは、ゆっくりと呼吸を整えた。
「ありがとうございます、クセーノ博士…。」
「…考えはまとまったか?」
「まだ少し…散らかっています。でも、大丈夫です。故障はもう……しないでしょう。」
「そうか、それはよかった。」
「一度先生のところへ戻って、考えをしっかりまとめたいと思います。」
それは生真面目なジェノスの性格によるものだと、博士も理解していた。
こと戦闘に於いては多少猪突猛進なところが見られるが、
自身の感情が絡んだことであるからか、
ジェノスは自分の新たな感情、気持ちに気付いても、いきなりyouに会いに行くという決断はしなかった。
「どういう結果であれ、ワシはお前の傍におるし…いつでもオヌシを応援しているよ。」
「博士……はいっ!」
命の恩人であり、ほとんど親代わりのクセーノ博士から送られた言葉…。
それはジェノスにとって、何よりの応援となった。
*。゜.*。゜.*。゜.*
心身共に心配してくれる
傍にいて、応援してくれる
それは何て有難い存在なのだろう、と。
*。゜.*。゜.*。゜.*