CYBernetic ORGanism 0(ジェノス)
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CYBernetic ORGanism 0
Eternally unbreakable
「ごめんなさい、本当に荷物持ちなんてお願いしてしまって…。」
「全然構いません。」
サイタマと約束したすき焼きの日、
これまた約束通りにジェノスから買い物に付き添うとの申し出があった。
前日に届いたその通知に、やはり申し訳ないとyouは申し出を遠慮をしたものの、
ジェノスは一歩も引かず、結局買い物付き添ってもらうことにしたのだ。
サイタマが来るのは夕刻になるので、
昼過ぎからジェノスと2人で買い物に出掛け、今はその帰りである。
「でも、本当に助かります……わたし一人じゃ2日に分けて買いに行ってたかも。」
「お役に立てたようで嬉しいです。」
実を言うと、youの予想より荷物が大幅に増えているのだが、
それはジェノスの密やかな策略によるものだった。
今回、サイタマと自分は量が必要になるので、ということで食材を余分に購入したため、その荷物は大きなスーパーの袋4つ分程となった。
当然、you一人では歩いて買いにいくのが至難の業。
そう思わせることで、自分がそこにいる意義を彼女にアピールしたのである。
別段彼女に気に入られたいからそうしたワケではないが、
普段、サイタマに頼られたくとも頼られず、寧ろ頼らざるを得ない状況下に置かれることが多かったジェノスにとって、
誰かに頼られ、無意識にも感謝されたいと思うことは必至だったのかもしれない。
少なくとも、この自分の申し出と行動はそれが目的で動いていたのだから。
その目論見通り、youは多大なる感謝をジェノスに向け、
今尚、すき焼きの支度を手伝うと更なる提案を持ちかけた彼に対し「何から何まですみません」と感謝を述べている。
と、その時。
今しがた2人が立ち去ったばかりの街中で大きな音と土煙が上がった。
「な…なに?!」
「あれは…。」
高いビル群の合間から見えるその煙に何らかの事件が起こったのだと見て取れた。
ジェノスはその場に荷物を置くと、youに向き直った。
「youさん、何か起こったようです……すぐに戻ってくるのでここで待っていてください。」
「ジェノスくん…!」
「すみませんが、荷物…見ていてもらってもいいですか?」
「それはいいけど…。」
「では、行ってきます。」
「あの…ジェノスくん!」
「はい?」
「気を付けて…ください。」
「ありがとうございます。」
不安そうに見上げてくるyouに、安心するようにと一度笑みを落とし、
ジェノスはあっという間に現場へと向かっていった。
それから10分程経ち、突然youの携帯が鳴り響く…。
鞄から携帯を取り出し、ディスプレイを確認すれば、予想通り、電話の発信者はジェノス。
慌てて通話ボタンを押し、受電する。
「もしもし!」
『もしもし、youさん?』
「はい!ジェノスくん、大丈夫ですか?!」
『はい、やはり懸念した通り怪人の仕業でした。』
「…っ!」
『片付きましたので、今からそちらに戻ります。』
そう言って先に切られた電話。
呆けたままで立ち尽くしていると、
電話から数分経たないうちにジェノスが高速でその場に戻ってきた。
「お待たせしました、youさん!」
「っ…!!」
声に反応し、後ろを振り返ると、そこには怪人の元へ向かった時のままのジェノスの姿があり、youはその無事な姿にホッと安堵の息を吐いた。
「お、おかえりなさい……ジェノスくん…大丈夫?」
「はい、全然問題ありません。どうやら海人族の残党だったようです。」
「えっ!?じゃぁ、まだいるのかな…。」
「いえ、恐らくは最後かと。街に潜んでいて、いい加減逃げ場が無くなって自棄になったのでしょう。」
「そっか……にしても本当に凄いね、ジェノスくんは…あっという間に怪人倒して戻ってきちゃうんだもん…またJ市を救ってくれてありがと……っ!?」
「え?」
労いと感謝の言葉の途中で急にyouは言葉を止め、
ジェノスの腕をぐい、と引っ張った。
急にどうしたのだと、彼女を見下ろせば
困惑し、動揺した声色で呼びかけられる…。
「ジっ、ジェノスくん、腕!腕怪我してる!!」
「ああ…。」
動揺の原因は自分の腕の一部にできた刃物のような傷だった。
それは先程戦った怪人から受けた攻撃で、
避けずに腕で塞いだために傷ができてしまったのだ。
しかし、自分にとっては全く気にすることは無い傷で、
寧ろこの程度の攻撃を受けてしまった事に対して憤る程だ。
「避ければ街の人々に被害が出るだろうと考え、攻撃を受け止めたんです。」
「痛くないですか?動かないとか、痺れたりとか…!」
「俺はサイボーグですから、このくらい問題ありません。腕もこの程度の攻撃では破壊どころか、故障さえしませんよ。」
「ジェノスくん…。」
「もしも壊れてしまったとしても、より強力に作り変えてもらっていますし…。」
「ジェノスくん、そうじゃない。」
「え…?」
動揺と不安げな表情はいつの間にか、悲しげなものへと変わっていた。
憂うようなyouのその視線を受け、
それこそジェノスの方が動揺を見せる。
一体どうしたのかと、らしくなく焦りと困惑が全身を駆け巡った。
「youさ、ん?」
「もっと自分のこと、大事にしないとダメですよ。」
「・・・。」
「壊れても大丈夫、なんて…言わないでほしいです。」
「何故です…?故障した原因を追究し、より強くなることに繋がるんです……勿論、俺だって壊れた方がいいとは思いませんが、それ程強い相手なら、それを超越するための足掛かりになることを恐れてはいけないと、俺は思いますが。」
「ジェノスさんは平気かもしれませんけど……皆、心配します。」
「・・・。」
「あの子も、サイタマさんも、博士さんも、町の皆も……わたしだって…。」
「あ…。」
残影のように脳内で再生された、深海王との戦い…。
油断して壁に叩き付けられた時の人々の…。
溶解液で溶かされた自分の体を見た時の少女の恐怖と絶望の表情を思い出す。
自分だけの戦いだと思っていた。
だが、彼女たちにとっては自分はヒーローで、
負ければ失望され、勝てば賞賛してくれ、そして傷付けば心配してくれる…。
「(俺一人の戦いではない場合もあるんだな…)」
彼女の言葉で、初めて、ヒーローではない一般人からの自分の立ち位置を理解した。
だからといって、自分の考えや戦い方を変えることもしないのだが、
彼女からの言葉は一つの意見として素直に受け止めることにした。
「そうですね……性能に頼らず技術を磨き、極力故障を避けるよう努めたいと思います。」
「う…うん?」
「youさんの意見…尤もでした…。」
「そういう深い意味はなかったんですけど…ジェノスくんが自分のこと大事にしてくれるなら嬉しいです。」
「すみません、余計な心配をさせてしまって。」
「だって、寂しいじゃないですか…。」
「寂しい……何がですか?」
「ジェノスくんのその手は、わたしと初めて握手してくださった手です。お友達になってくださった時の手です。」
「!!」
「だから壊れちゃって交換することになったら……何だろう…思い出まで無くなっちゃう気がして、ちょっと寂しいなって…。」
「なっ…無くなったりしません!ちゃんと記憶されています……youさんと出会った時の事も、友達になったことも…握手をした時のことも。」
「ジェノスくん…。」
「何と言えばいいのか…つまり、その……安心してください…もしもこれから俺のパーツが変わっても、こうやって色んな出来事を忘れたりはしません。」
「・・・うん。」
「それと……なるべく破壊され…いや故障……えっと怪我をしないように強くなります!」
ぐっと力強く拳を握り、気合十分にそう宣言したジェノス。
一方のyouはポカン…と呆けてそれを見ており、
ジェノスは彼女の反応に少し焦りながら問い掛ける…。
「えっと、youさん……お、俺は何かオカシな事を言ったでしょうか??」
「う…ううん……全然。」
「そうですか…?」
「いや、ただ………その、うれしい。」
「え?」
「ジェノスくんって……凄く優しいんだね。」
「俺が……優しい?」
全く思いもしなかった言葉を受けて、
あまり自分ではそうは思わないという自覚もあるため、ジェノスは思わず眉を顰める。
すると、彼女はそう思った理由を一言だけ告げた。
「わたしへの言葉を、探して、選んでくれた。」
「あ。」
「凄く嬉しかったです。ありがとう。」
「い…いえ……//」
確かに、それは無意識に、彼女へ伝えるべき正しい言葉を模索した。
破壊されないように、故障しないようにと言えば彼女は「貴方は機械じゃない」と言うだろう。
そこまでストレートにではないにしろ、暗にそう示唆するような綺麗な言葉で、言うだろう。
そうやって彼女に注意されないために、というよりは寧ろ、
彼女を安心させるためにはどんな言葉を用いればいいか、柄にもなく思わず悩んだ。
「(おかしい。変だ。)」
サイタマと博士には敬語を使う。これは彼女も同じ。そうジェノスは思う。
だが、今まで相手の顔色を伺って言葉を選んだことがあっただろうか?いや、無い。
しかも、言葉を選んでいる最中は焦った。
今までどんな強敵…それこそ、自分では勝てないと思った相手と対峙した時にだって早々感じなかった焦りを、だ。
自分の怪我の心配をしてくれた時もそうだ。
怪我とは考えておらず、自分の身体は「代わりがきくもの」だと思っていたジェノスに、
交換可能か交換不可能かで捉えていた機械の身体も、代わりのきかないその時の思い出が宿っていると言ってくれた。
不思議な考え方をする人だと思う反面、それがとても温かく思えた。
そして今、ジェノスが言葉を模索したことに彼自身より先に気付いたyouの…。
その感謝を伝える行為と言葉と、贈られた笑顔が何故か嬉しくて有難くてたまらない。
いつからか失われていった喜怒哀楽などの人間らしさそのものに触れているかのようだと、感じた。
先日、約束した通りにクセーノ博士にコアに異常が無いかどうか見てもらったが、
それにも関わらず、また、コアがチクリと痛みを覚えた。
最初の時よりもハッキリと、しかし嫌な痛みではなく、
むず痒いような、刺さっただけで胸焼けを誘発しそうになるような奇妙な痛み。
「(だが、言えばまた心配を掛けてしまう…。)」
この優しくて心配性な彼女を困らせたくない。
ここは言わぬが吉だろう、と…。
ジェノスは胸の痛みには触れず、一度軽く深呼吸をして彼女に向き直った。
「youさん、貴女こそ優しい人だと、俺は思います。」
「えっ?!」
「俺は見ての通り、サイボーグです。身体の殆どが機械でできています。」
「はい…。」
「脳が生きている限り、パーツを交換し続ける限り、俺は永久に壊れない。」
「・・・。」
「勿論、ジェノスとしての感情や意識はありますが、お分かりでしょうが、戦闘で受けうるような大きなダメージはほぼ痛覚をカットできるんです。」
「そうなんだ…。」
「でも、それでもyouさんは俺を心配してくれる。」
「当たり前ですよ、そんなの。」
「はい、その当たり前が嬉しいんです。youさんの気遣いや、優しさが。」
「わたしでよければいつでも…というか、これからもちゃんと…ジェノスくんやサイタマさんを心配させてください。」
「はい、改めて、どうかよろしくお願いします。」
そう言って、ジェノスはyouに手を差し出す。
あの時とは違い、傷の付いた腕を見つめ、
しかし、あの時と同じジェノスの手をyouは笑顔でそっと握り返した。
*。゜.*。゜.*。゜.*
貴女が安心するのなら
この先もこの腕が
永久に壊れないように
強くなります
*。゜.*。゜.*。゜.*