Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
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「メローネ、アンタ私と結婚しない?」
「はぁ?」
などという言葉が事務所のリビングフロアに響いた
Lei e un fiore.
Il legame(絆)
「あ、しまった…ハンドソープの詰め替え買い忘れちゃった…。」
「まぁ、緊急性が高いものでもないし、次回の買い出しの時でも問題ないだろ。」
「そうだね。」
などというありふれた会話をしながらいつものように買い出しを終えて事務所へ戻ってきたyouとメローネ。
購入した備品を所定の場所に保管したり…そんな作業を終えて一息ついてカッフェでも淹れようかとしたところで、事務所のインターフォンが鳴った。
「何だろう、宅急便かな…。」
ポツリと呟きながらyouが玄関の扉を開くと、目の前に立っていたのは郵便屋でも宅配ドライバーでもなく…。
「あら、住所ココじゃなかったっけ?」
「え、と……どちら様でしょう?」
綺麗なブロンドの巻き髪に、黒をベースとした少し奇抜なファッション。
最後に足元の真っ赤なヒールまで観察し終えたyouが、小首を傾げて尋ねれば、
目の前の女性は気怠そうな表情で今しがたの「貴女は誰?」という質問に対し、質問で返した…。
「今って、ホルマジオとかギアッチョとか、ココにいる?いない?」
「えっ、あ!お2人のご友人の方なんですね?失礼しました……今お2人はここにはいなくて…出勤ではあるんですが。」
「あっ、そうなんだ?やっぱ住所は変わってないワケね。じゃ、ここには誰もいないの?メローネとかイルーゾォはいるんじゃない?」
「あっ……イルーゾォは今日お休みで、メローネは…。」
「あ、いた!メローネ!!!」
youの肩越しに覗き込むようにして、彼女の後ろに現れたメローネの名を大きな声で呼ぶ女性…。
「え?」
「チャオ~!久しぶり!!偶々通りかかったから来てみた!!」
「キミ……ルイーザ…?」
「そうよ、久しぶり過ぎて顔忘れちゃった?」
「そうだな、確かに……2年ぶりくらいか?久しぶりだな。」
「ホルマジオに頼まれてた資料持って来たんだけど、今いないんだってね。あ、上がっていい?」
「ああ。」
「失礼~~~!」
イタリアは基本的に土足の文化であるため、正に「ズカズカ」という表現そのままに、
彼女は特殊任務依頼チームの事務所の中へと入っていった。
その場に残されたyouが困惑した顔をするのを見て、
メローネは「まぁ、中で話すよ」と彼女の背中に手を添えてリビングへ戻る事を促す…。
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「you、彼女はルイーザ。パッショーネ傘下の別のギャング……まぁ、平たく言えば子会社みたいな感じの小さなギャングチームに所属している女性だ。だが、そこに所属してるのは隠れ蓑みたいなもので……本職はほぼ、パッショーネの情報管理チームで捌けない案件の時に依頼する、モグリの情報屋みたいなものだな……今は頻度は少なくなったが、旧パッショーネの時代は彼女の情報に結構世話になってたんだ。」
リビングのソファに3人で座った後、メローネがまず来客の紹介をyouに行う…。
「そうなんですね、わたしはSPW財団から派遣されて一緒に此処でお仕事をしております、youです。ルイーザさん、どうぞよろしくお願いします。」
「ふーん、そうなんだ、よろしく!情報が欲しい時は言ってね、今もホルマジオとかプロシュートからはたまに依頼来るからさ、同じチームのよしみで安く受けたげる。」
「ふふ、ありがとうございます。」
「あ、これ、ホルマジオに渡しといてくれる?たまたま久しぶりにこの近く通ったから直接渡そうと思ってきたんだ。頼まれてた資料入ってる。」
「分かりました。預かっておきますね。」
「ん。」
「あ、お茶用意しないと……ルイーザさんカッフェかティー、どちらがいいですか?それともオルヅォとか……何か他のものがいいですか?」
「は、カッフェに決まってんじゃん、ここイタリアだよ?」
「そうですね、すみません……じゃあメローネもカッフェでいいかな?2人ともちょっとお待ちください。」
「グラッツェ~。」
少し気まずそうに謝ると、立ち上がってキッチンへと向かったyou。
ルイーザの向かいに座るメローネが僅かだけ眉を寄せ、小さく溜息を吐いた。
「youはめちゃくちゃイタリア語が上手いが、日本から最近こちらに来たんだよ、まぁ、結構こっちの生活にも慣れてきたとは思うが…。」
「ふーん?」
「だから、此処がイタリアだからってイタリアの常識を押し付けるのはディ・モールト良くないと思うぞ。」
「いや別に押し付けてないじゃん。思ったから言っただけ。」
「あと、この事務所では結構皆、紅茶を飲んだりするから、彼女はいつものように尋ねただけ。そう、普段通りに。」
「…メローネ、どうしたの?何か……変。」
「・・・。」
大いに眉間に皴を寄せて、ルイーザから怪訝な目を向けられてしまったメローネ…。
だが、彼女はすぐに話題を切り替え、朗々とした顔付きに戻ると、嬉々として近況報告をし始めた。
「そんなことよりさ!!この間久々ホルマジオと飲みに行ったんだけど、今のパッショーネすっごいじゃん!ツケ払い常習犯だったホルマジオが奢ってくれたよ!?ギアッチョも限定のスニーカー買ったって仕事の依頼ついでに自慢のメッセージ来たしさ…!」
「ああ、まぁ……そうだな……確かに、環境は様変わりしたかな……昔より金銭的にも精神的にも余裕ができた事は否定しない。」
「んだってパッショーネの人達から依頼される件数も減った上、情報収集の内容も今までと全然違う系列の感じだし……。」
「だな。そもそもオレがアンタに依頼をする頻度が少なくなった。」
「副業廃業の予感だわ…。」
「まさかだろ……パッショーネからだけでなく、アンタにはその他色々な企業からも依頼が来てるってことは分かってるんだぜ?」
「あはは、まぁね!!でも、引退してもいいかもって思った。」
「ほぉ?それはまた……キミらしからぬ発言だな。」
「うん、今思った事だから。」
「?」
新制パッショーネの各チームからの依頼件数が減ろうとも、彼女の情報収集能力を必要としている者は数多くいるだろうから、
収入面での心配など微塵もないだろう、と指摘したメローネに対し、
ルイーザは収入をこれ以上増やさずとも良いと宣言し、ニッと口角を上げた。
「メローネ、アンタ私と結婚しない?」
「はぁ?」
急に訳の分からない台詞がルイーザの口から飛び出し、メローネは思わず目を丸くして素っ頓狂な声を上げた。
「2年近く会わないうちに、凄い変わってんだもん、ビックリした。」
「変わった??オレが??」
「うん、え、無自覚?」
「…いや……本質的なところはどうか分からないが…さっきも言った通りパッショーネが変わってから金銭とメンタルで余裕ができた事で、変わった部分が多少なりとあるとは思う。」
「でしょ?何かさ、メローネは気さくに話してくれるしノリもいいけど、昔は兎に角変態的で気持ち悪かったから、ワンナイトも無いなーって思ってたんだけど。」
「アンタオレに喧嘩売りに来たのか?」
「だってしょうがなくない?アンタさ、女の事嫌いだったでしょ。多分、それは今でもなのかもんないけど。」
「今も昔も変わらず……尊敬はしているぜ?」
「尊敬「は」…ね……うん、だからよ!何か随分会わないうちに変わったって、そういうこと!」
「はぁ??」
「今のメローネなら抱かれてもいいなーって。ていうか寧ろ結婚してもいいわ、ギャングだけどそれなりに稼ぎがあれば結構自由にできるでしょ、旅行でも何でも。だから、それなら引退してもいいなーって。」
「ちょ……ちょっと待て……意味が分からない……そもそもオレは昔から別にお前を誘ったりしてないだろ……セックスだって、アンタとしたいなんて言った事一度も無いんだが?!」
そもそも何故お前が選ぶ立場で物を言っているんだ??!と、困惑気味でルイーザに伝えてみるものの、
彼女はあっけらかんとした表情で言葉を返す…。
「そうだけど、それが何?」
「今だって、オレはアンタを抱くつもりもないし、結婚だってする気も更々無い……というかそんな気起きないんだが?!」
「うん、だから起こしてみない?」
「断る。」
「何で!」
「恋人がいるからだ。」
「うっそ、メローネに?!」
「『こんな変態に恋人がいるなんてありえない!』って顔をするんじゃあない!ディ・モールト失礼だな!」
「いや、でも……そうか……私が結婚してもいいって思ったくらいなんだから、可能性は0ではないか…。」
「色々と腹が立つが、まぁ、そういう事だ。」
「本質は変態のままかもしれないんでしょ……可哀想だから別れてあげたら?」
「かっ、可哀想だって…?!」
「その点私だったらメローネの変態的なトコも知ってるし、遠慮しなくていいじゃん?その上で今のメローネとセックスしたいし結婚したいって言ってるの。」
「ルイーザ……お前…。」
話が全く噛み合わない…と、メローネが額に手を当てて大きな溜息を吐いた刹那…。
ガチャガチャっと陶器が微かにぶつかり合う音が部屋に響いた。
「ッ……you……!」
「えっと……あー…おー……お待たせしました!」
明らかに動揺した様子で2人の元へやって来ると、youは物凄い速さで
彼等の前のテーブルにカッフェをセッティングし、それらを乗せてきたトレイを戻すべく、そそくさとキッチンへ戻って行くと、
その後、何故か鞄を持って出掛ける準備をしてリビングへと顔を出した。
「メローネ、わたしちょっと買い出しに行ってくるね。」
「な、何で…買い出しはさっき行ってきただろ…。」
「ほら、さっきハンドソープの詰め替え買うの忘れちゃったから、もう1回行ってくる。」
「別に今度でいいって…!」
「久しぶりだから昔のパッショーネ時代の話とかもするなら、わたしがいない方がいいかなって…!」
「オレは昔の話は別にしなくていいって…!」
そうして会話をしながら、廊下を歩くyouとメローネ…。
引き留めようとするメローネに、あれやこれやの言葉で交わして玄関へ辿り着いたyouは、
靴を履いた後で一つ、大きな深呼吸をして彼を見上げた。
「あの、メローネ…!わたし、今ですね、凄い……混乱してて…!」
「分かってるよ、分かってる……オレだってある意味混乱している。ルイーザとは全然そんなんじゃ…」
「あーっ、はい!はい、うん、だから、一回……冷静になるために外行きたくて…!」
「you…。」
「帰ったら……話、聞かせてもらってもいい?」
「…勿論、全然言い訳も無いけどな……本当に、そんなんじゃあないから。寧ろ……ルイーザは…。」
「うん、それも含めて……メローネのこと、信じてるから、落ち着いたら、きっと平気……今の心拍数が凄いだけ。」
「分かった。」
youの言葉に一安心したのか、メローネはフッと微かに息を吐いて笑うと、
彼女の横に流れる髪を指で掬って耳に掛けると、開けて顕わになった頬に軽くリップ音を立てて唇を寄せた。
「Il mio cuore appartiene solo a te (オレの心はキミのものだから)。」
「うん……ありがとう。」
メローネの顔を見上げて、ほんのり頬を赤らめて微笑んだ表情には
もう先程の動揺は見受けられなかったのだが、今そのことをツッコむのも野暮かなと思い、
彼はyouの頭をポンポンと撫でるだけに留め「いってきます」と出ていく彼女を見送った。
youが再び買い出し(という名の逃げ)に出てしまったことで、
事務所にはメローネとルイーザの2名だけになってしまった。
その事実に気付いたメローネはギアッチョでもホルマジオでもいい…
兎に角誰か早く帰ってきてくれないだろうか…と大きく溜息を吐いてしまうのであった。
リビングに戻れば、先程と同じ位置に座ったルイーザが優雅にカッフェを嗜んでおり、
メローネもまた先程と同じように、彼女の向かい側に着席する。
「おかえり。」
「そういえばルイーザ、オレは最近キミには依頼をしていなかったが…ホルマジオやプロシュートからは今も依頼受けてるんだろ?」
「そうよ。あとたまにギアッチョとかからかな。」
「ふーん、流石に現場が少なくなったから…リゾットからの依頼も無くなったんだな。」
「そうね。大出世よね、今はボスやその直属の部下からの依頼を主に受けてるって聞いたわ。」
「その分神経は使うみたいだがな。」
「でしょうねー。」
カッフェの入った小さなカップを持ち上げ、グイッと一気に最後まで飲み干すと、
ルイーザは「さてと…」と、メローネを見据えて笑った。
「それじゃあ、メローネの近況を聞かせてもらおうっと。」
youが帰って来るまで凡そ後30分程…
明らかに「面倒臭い」という、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてしまうメローネであった…。
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こちらは、再度の買い出しに出たyou。
買い忘れたものだけをただ買って戻るだけであれば、ものの十分そこらで終わってしまうため、
ついでに本日の夕飯の買い物でも済ませて帰ろうかと店に入ったところで、携帯の着信音が鳴った。
「プロント?」
「ああ、オレだ、ギアッチョだ。you、お前今事務所か?」
「ええと、わたしは今…ちょっと外にいて…。」
「メローネに掛けたけど出なかった。一緒に物品買い出しに出たんじゃなかったのか?」
「うん…実は買い出しは終わって一度事務所に戻ったんだけど、買い忘れに気付いてわたしだけ今出てきたの。電話はどうだろ?充電中なのかもね。」
「ああ、そういう事だったんか…。」
「ギアッチョは?もう任務終わったの?」
「ああ。終わって帰ってるところだ。今日は車で出たから、もしお前らが買い物中で、荷物とか結構あるなら拾って帰ってやろうかと思って電話した。」
「え、ギアッチョ優しい!」
思わぬギアッチョの気遣いに、先程まで沈んでいた心が少しだけ温かくなり、軽くなる…。
「んで、オメーどこにいる?アレなら回収して帰るけど?」
「あ、わたしは皆に教えてもらったいつものお店に……ついでに自分の家の食材とかも買って帰ろうかと…。」
「じゃあ多分近くだ。近くの駐車場止まっとくから、終わったら連絡くれ。」
「わ、グラッツェ!!」
事務所の近くはホームグラウンドです、とばかりに……何ともスマートに対応するギアッチョ。
そうして少し急ぎ気味で買い物を終わらせ、youはギアッチョと合流を果たした。
「遅くなってごめんね、ギアッチョ、お待たせしました!」
「いや、そんな待ってねーから大丈夫。」
「お邪魔します。」
「おう、お邪魔しやがれ。」
「自分の買い物したら結構荷物増えちゃったんで、滅茶苦茶助かります…感謝~!!」
「元々は何買いに来たんだ?」
「…ハンドソープの詰め替えです。」
「はぁ?!」
ギアッチョのそれは、予想通りの反応で…。
youはその後に続く彼の言葉をも予想するが、正に思った通りのものであった…。
「んなモン別にわざわざもう1回買いに出なくてもいいだろ……。」
「いや、はい……仰る通りで…。」
「1か所無くても別の場所にあんだろ。キッチンとか手洗い場とか…。」
「はい、そうです…。」
「・・・。」
「ちょっと、ええと……あ、そうです!ギアッチョともお知り合いの方が今事務所に来られてて、積もる話もあるだろうと思って、わたしだけ出てきたと言いますか…。」
「はぁ?なんだそれ…??」
「えーと、ひとまず事務所に戻りましょうか!!」
「意味が分からん……。」
youの割と支離滅裂な説明を受け、頭に疑問符を浮かべながらもとりあえず帰るか…と、車のエンジンを掛けるギアッチョ。
事務所に着くまでの短い時間でも、普段なら自分に対して、任務はどうだったかや怪我などなかったのかの心配や、
自分の買い出しの時の話などをしてくるyouがやけに静かで、それもまたギアッチョを困惑させる要因となるのだった…。
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「なるほどね~、この2年でそこまでパッショーネって改革が成されたんだ。そりゃ凄いわ。人格も生活も変わるわ。」
「というかお前……情報屋だろ…何で調べてないんだ…。」
「依頼された内容や、自分の興味あるものしか調べないから?」
「…だとしても、ホルマジオとかから色々話は聞いてるんじゃあなかったのか。」
「ある程度は聞いてるけど、プロシュートもギアッチョも感情で話すから説明が下手じゃん。ホルマジオはその辺抜け目ないからある程度までしか教えてくれないっていうか。」
「ある程度って。」
「給料や仕事内容がどんだけ変わったとか、ちょっとでも自分にデメリットが生じそうなら話はしない、ってとこかな。」
それは確かに彼らの性格に該当する…と、メローネは小さく息を吐く。
「そういうトコもあるんだよね、ホルマジオと付き合えないのって。」
「一番相性……仲が良いのにか?」
「そ。お互い分かってるからね、深い関係になったら一番良いこの状態が無くなるって、これがベストな関係って認識があるからかな~~。」
「プロシュートはダメなのか?」
「ダメに決まってるでしょ!!アレはダメ!自分も完璧であろうとするから、相手にも完璧か、それと同等の努力を求めてくるタイプ!完全に私向きじゃないわ…!オマケのペッシは弟にしか思えない。」
「確かに…。」
「あ、イルーゾォなんて以ての外だからね?!会う度、あんな上から目線で自分以外を小馬鹿にしたような態度取られたらストレス溜まり過ぎてハゲ散らかすわ!」
「いや、今はイルーゾォも多少は丸くなってると思うぞ。」
「そりゃ身内から見ればそうでしょうけど、女からするとマジでただの嫌味な男ってとこはそう変わってないでしょ、見なくても分かるもん。」
「そこは……まぁ、相手によるんじゃあないか…?」
「じゃあ、多分私とは合わないわね。」
「・・・。」
恋愛の引き合いに出すにはメンバー全員のクセが強すぎたか…と、ルイーザのストレートな物言いに思わず押し黙ってしまうメローネ…。
ただ、そこを突き詰めていくと、自分こそ彼女のタイプではなかったはずだと思い返す…。
ざっくり言えば以前のパッショーネ時代の自分にとって、女性という存在は完全にスタンド能力の糧としか考えておらず、
こと、このルイーザに対しても「酒と煙草はやっている、薬は手を出していない、ギャングなので暴力や殺人の意識は一般より強め、兎に角馴れ馴れしくて若干無礼、物言いに品が無いため母体の素質としては中の上。ターゲットとの相性が良くても、生まれるベイビーにそのペチャクチャと五月蠅い性格が反映されると教育がディ・モールト面倒臭いので母体にはしない方が良い」という認識でしかなかった。
恐らく、ルイーザもメローネがそのような認識でしか自分を見ていないことを気付いていたため、必要以上に仲良くなろうとはしなかったし、
寧ろ(遠隔操作型スタンドなので)メローネがほぼ外へ出ないがため、仕事の依頼を受けても連絡はメールや電話が主で、敢えてこの事務所に寄り付かなかった節さえある。
それが何故、どうして…2年ぶりに会ってちょっと会話をしただけで、何となく嫌悪感を抱いていた相手に、
身体を許して結婚したいという感情が湧くのかと、困惑を来しているメローネ。
いよいよ引き合いに出せる人物が少なくなり、大変不本意だが、まるで追い詰められた草食動物のような気持ちになってくる…。
「リゾット……リゾットがいるじゃあないか…ディ・モールト優良物件。」
「優良だけど、あの人シシリー出身でしょ。」
「・・・。」
「シチリアの男は世界一嫉妬深いって言うし、そういうの面倒。顔も身体も性格も良いけど言い換えれば面白味無いカタブツだし、私はパス。」
「(Cazzo…!(クソッ…!))」
「ん?何か言った?」
「いや……何も。」
「その点メローネはお互い色々合わなくなったら、後腐れなくバイバイな感じだしさ!」
「 …さぁ、どうだろうな。」
「まぁ、とにかく……2年前のアンタは私にとってただの気色悪い変態だったけど、今の雰囲気はサイコーだよ、変態だけど何かイイ感じ!」
「だから一体何がだ!変わらず変態なんだろ?!」
「だーかーらー……あーもう、何…上手くは言えないけどさ……アンタ、今、私の事「人間」として見てるでしょ。」
「!!」
「そういうこと。」
「・・・。」
「前は多分「人間」とさえ思ってなかったんじゃない?多分だけど…それこそ、チームの奴等以外はさ……特別親しい間柄以外の相手のこと「生き物」とか「雄」とか「雌」とかそう思ってたでしょ。仲良くなるにしても、興味が湧くか湧かないかで判断するっていうか…。」
「・・・。」
「で、昔は私の事は「関わって面白くない生き物、生物学上の呼称『人間』、性別『雌』」くらいにしか思ってなかった……正解デショ?」
「ルイーザ…。」
「私から言わせると逆もいいところだよ、本当……アンタの方こそ、今「人間」になってるよ。」
「!」
「ね、お互い「人間」って認識できた。これなら愛し合えそうでしょ?」
「キミの……言いたい事は理解した。」
「お!マジ?」
ルイーザからのこれ以上ないくらいの的確な言葉で自分の思考の変化を突き付けられ、
それに対しては、概ね正解…ある程度自覚はあったが、他社から見た時の自身の変化も改めて享受せねばならないと感じたメローネ…。
項垂れて下を向いて、盛大な溜息を吐いたところで、向かいに座っていたルイーザが嬉々とした顔で立ち上がり、
メローネの横にドスンと着席して、そのままぎゅうっと腕にしがみ付いた。
「うん、やっぱりいい感じ!メローネ体格もちょっと良くなったんじゃない?前は……筋肉はあったかもだけど、ひょろっとして女みたいに腰も細かったじゃん?……今平均体型っていうか……健康そうに見えるしぃ?」
「ちょっと前までずっと外勤ばっか請け負っていたから、体力と筋力はその時上がったと思う。」
「へー、外勤に就いてたんだ、初耳~。」
「あとはオレのアモーレのお陰。」
「えーっ!」
「ディ・モールト優しくて思いやりがある。オレの食生活なんかも心配してくれて、今は一緒に飯を食べている。外勤で怪我したら泣いてくれたりするしな…。」
「何それ変態のメローネには勿体ないくらい、めっちゃいい子じゃん!」
「ああ、そうだ!お前に言われたくないがな!」
「うーん、でもそういうのアンタのタイプじゃないでしょ、イイ子ちゃん嫌いじゃない?偽善者とかお人好しとか、メローネは自分と正反対で嫌悪感抱いちゃうって。どっちかというとそういう子ってギアッチョが好きなタイプっていうか……。」
「・・・。」
「あっ!」
「なんだ。」
ぱっと閃いたように目を明るく見開き、ルイーザはメローネの腕を掴んだまま、上目遣いで爆弾発言を投下した…。
「今思ったけど、さっきのyouチャン、だっけ?あの子ギアッチョのタイプなんじゃない?てかお似合いだと思う!」
「なんだって?」
「ギアッチョってさぁ、常にイライラしてて沸点低いから人に対してもすぐ怒るし、ワケの分からない事でブチ切れるじゃん?あの子日本人なんでしょ?そういうのサラッとフォローして、ギアッチョが切れる前に謝ったり、宥めたりできそうじゃん?」
「ルイーザ…キミ日本人を何だと思ってるんだ…。」
「あの子そういうのできないの?」
「いや……できて、る……んだが……。」
「ほらねぇ!!やっぱそうだと思った!いいじゃん、彼女ギアッチョの恋人にぴったりじゃん!ギアッチョどっちかと言えば恋愛に夢見るタイプじゃん?ビッチより清楚系好きっぽいし。」
「誰だってビッチより清楚系が好きだろ!!というかお前、ギアッチョへの偏見が凄いな!アイツの前で絶対それ言うなよ、氷漬けにされるぞ…ッツ!!」
「えー。」
「えー、じゃないッツ!!」
ついでに言えば自分の大事な恋人が勝手に同僚の恋人候補にされて不快極まりないという点でも、声に怒りが乗ってしまう。
珍しく大声を出してしまったと、グッと握りしめていた拳を解いて顔面を覆い、
はぁ~っと盛大な溜息を吐いたところで、事務所の玄関がガチャガチャと開く音がした。
やっと誰かが、恐らくは時間的に考えてyouが買い物を終えて戻ってきたのかと思い、
絡みついたルイーザの腕をやんわりと解き、彼女を出迎える為に立ち上がる。
「誰か帰ってきた?」
「多分youじゃあないか……そう時間が掛かる場所には行ってないはずだから…。」
「ふーん。」
ルイーザの問いに答えたところで、リビングの扉が開かれ、そこにyou…とギアッチョが入ってきた。
「ただいま戻りました。」
「……おかえり、you……ギアッチョも。何で一緒なんだ?」
「ああ、買い物してる時にギアッチョから電話があって、任務が終わったって連絡と、買い出し中なら、荷物があるなら回収して帰るって言ってくれて。」
「そうか…。」
「買い忘れのハンドソープ買うついでに自分の夕飯の買い物もしてたから助かっちゃった……本当、ありがとうね、ギアッチョ。」
メローネの前で、ギアッチョの方を向いて笑顔で感謝を伝えるyou。
つい、今しがたのルイーザとの会話の流れもあり、モヤモヤとした気持ちがメローネの胸中を覆っていく。
すると、そんな彼の心情の揺らぎに拍車を掛けるかのように、ルイーザがメローネの背中をバシバシと叩いて笑い出した。
「ホラッ!やっぱそうじゃん!メローネ、聞いた?!あのギアッチョがお気遣いだよ?!えぇ、最高にハマってるしお似合いじゃん!」
「・・・。」
一人で盛り上がるルイーザと、一人で盛り下が(っているように見え)るメローネの対比が凄く、
帰宅早々に不思議過ぎる光景に遭遇したyouとギアッチョは、顔を見合わせて首を傾げる…。
ひとまず、この事務所に現れた顔見知りの女性に、ギアッチョが挨拶がてらに声を掛けた。
「ルイーザ、オメー何でここにいるんだ?」
「ああ、ホルマジオからの依頼の資料を渡しに。たまたま近く通り掛かったから、久しぶりに皆の顔見ようかなって。」
「そうかよ。」
「ホルマジオとプロシュートは割と会うけど、メローネやイルーゾォとかは全然会ってなかったしね。ギアッチョも、ちょっとぶり、元気してた?」
「ああ、まぁな。」
「ざっくりだけど、色々メローネに話聞かせてもらったよ。」
「色々って。」
「パッショーネがどう変わったとか~。」
「ああ、そういう…。」
「あとギアッチョ!アンタも恋してんのね~!頑張んなさいよ!応援するからさ!!めっちゃお似合いだと思うし!!」
「…………はぁ??」
「私もメローネが…」
と、そこまでルイーザが言葉を発した刹那…。
「ルイーザ!!!」
それこそ、いつもギアッチョが怒りを顕にした時と同じくらいビリビリとした大声がリビングフロアに響いた。
それを発したのがメローネだと一瞬では誰も気付かず、彼以外の全員が目を点にする。
「な……なによメローネ…ビックリした……急に大声出さないでよ…!」
「お前、もう用事は済んだだろう、そろそろ帰ったらどうだ。」
「は、何急に…!」
「オレもこれから仕上げないといけない資料もあるし、仕事に戻らせてもらう。」
「え、は?ねぇ、ちょっと!!」
そのまま一言も発さず、後ろも振り向かずにリビングを離れて事務室に入っていったメローネ。
扉が壊れる程…とまではいかないが、それでもバン!と大きな音を敢えて立てて、見えない怒りを体現している様子だった。
先程から一体何が何だか分からないといった様子だったギアッチョだが、
メローネが戻って行った事務室の扉をじっと見つめながら「おい」と呼び掛けの言葉を発した。
「ルイーザ、オメー……メローネに何かしたんか?」
「はぁ?何もしてないわよ。」
「何か知らんが、とりあえず今日はもう帰れ。」
「え、何でよ…まだいいじゃん。」
「よくあそこまでアイツのこと怒らせたな、オメー。最悪向こう3年くらい口きいてもらえねーかもしんねーぞ。」
「原因なんて知らないわよ!ちょっと不機嫌にさせただけじゃん!!」
「あーもう、いいから兎に角帰れって。下手したらオレらまでとばっちり喰らうんだよ!」
「えー!何でよ、納得い~か~な~いー!!」
「もし平気になってたらまた来ればいいだろ、兎に角今は同じ空間にいてくれるな!」
「もぉー!」
性格もあってか、尚も「納得いかない」とプンスカ怒りながらも、
ギアッチョに背を押されながら玄関まで誘導されるルイーザ…。
youは困惑しながらも一緒に玄関まで付いて行き、彼女を見送ることにした。
「ルイーザさん、資料はちゃんとホルマジオに渡しておきますね。」
「ああ、うん、よろしくね!」
「お元気で、またお会いしましょう。」
「youチャンもねー!じゃあ、ギアッチョ、youちゃん、末永くお幸せに~~!!」
「「???」」
手をヒラヒラと振って「チャオ~!」と去っていったルイーザ…。
話の流れを知らないギアッチョとyouには彼女の言わんとすることが全く意味が分からず、
本日何回目かの、顔を見合わせてお互い「ワケが分からない」というアイコンタクトを取るのであった…。
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