Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「これは……ダメなやつだ…。」
風呂上り、バスタオルに身を包んだ状態で乗った
体重計が示す数字に
サーっと血の気が引いた。
Lei e un fiore.
perte(あなたのために)
紆余曲折あって、相思相愛になり、最終的に心身共に気持ちを確認し合えたメローネとyou。
ようやく今まで通り…より少し距離の近くなった日常を過ごし始めた頃…。
「なぁ、you、昼飯どうする?」
「あ、ペッシ…。」
「今日の内勤オレとyouとイルーゾォだけど…多分イルーゾォはオレとは外で食わないと思うし、youが行かないなら、買って来いって言われそうではあるんだけど…。」
「わたしは…っ!」
「う、うん?!」
「お弁当(OBENTOU)なので!!」
「おべ……?!」
「pranzo al sacco(ランチボックス的な)。」
「ああ、なるほど。え、じゃあ外行かないの?」
「ええ、…っく…金欠&ダイエットで…ッツ!!」
「いや、顔が切実過ぎる!!!」
まるで血の涙でも流しそうな勢いで拳を握りしめ、節約と減量目的で昼食を持参したと宣言したyou。
あまりに鬼気迫るオーラで、流石のペッシも引き気味である…。
「節約は仕方ないけど、ダイエットは言う程太ってないんじゃあ…??」
「いや、正直最近服のウェストがきつくなってて……。」
「わぁ……。」
「イタリアの所為だ……イタリアのごはんが美味しすぎるのがいけないんだ!!」
「オレ達の国、褒められてるのか憎まれているのか!!」
机に突っ伏してワッと泣き真似を見せるyou。
ペッシは「う~ん」と頬を人差し指でぽりぽりと掻きながら、彼女を諭して慰める言葉を探したが見つからない…。
こんな時、自分の兄貴分であるプロシュートなら何というだろうかとも考えたが、
恐らく「ンな細けーこと気にすんな!美味ェんだったら食えばいいじゃぁねーか!!いいから飯行くぞ!」で
彼女を引き摺って食事に行くだろうなと想像し、それ以上の考察を止めた。
「ええと、分かった。とりあえずオイラ、イルーゾォに昼飯どうするか聞いてくるね…。」
「あい…。」
なおも机に付したまま、手だけをヒラヒラと振ってみせるyouに苦笑いを向けて、ペッシは事務室から出て行った。
それからすぐにペッシが戻って来ると、買い物に行く身支度を整え始める。
「やっぱりイルーゾォ、youが行かないならいいって。昼飯買いに行ってくるね。」
「そっか…じゃあペッシが戻るまで待ってるね、外には行かないけど、リビングで3人で食べよ。」
「え、いいよ先に食ってても…。」
「近場のテイクアウトだよね?そんな20分も30分も掛かるワケじゃないでしょ?」
「それはそうだけど…。」
「うん、じゃあやっぱり待ってるよ。」
「分かった、じゃあ行ってくるね!」
そうして、ペッシを見送って、だいたい予想通り…15分程経過した頃、
彼は美味しそうな匂いの紙袋を携えて事務所へ戻ってきた。
「ただいま~。」
「おかえりなさいペッシ、今ちょうど皆の飲み物淹れてるとこ。ペッシ何がいい?」
「おれは冷たいミルクかな。」
「了解。」
キッチンの方へ向かうyouとすれ違い、
ペッシはリビングのソファにどっかりと座っているイルーゾォに声を掛けた。
「ちょっと遅くなったみたい、ごめんよイルーゾォ。ちょっと混んでて。」
「別に騒ぐ程遅くはねぇだろ。別に他所の店でも良かったんだがな…。」
「いや、でも久しぶりにおれもあの店のパニーニ食いたかったし…。」
「そうか。」
「あ、そうだ、これおつり。」
「釣りは要らねェ、パシリにした駄賃だから取っとけ。」
「えぇ、いいのかい?」
「ああ。」
「グラッツェ、イルーゾォ。」
ほんの小銭ではあるが、買い出しに行ってくれた駄賃だからおつりは取っておけと言うイルーゾォ。
それは以前のパッショーネで雀の涙程の給料だった際には考えられないことで…。
しかも混雑して遅くなったことを謝った事に対しても、そうだ…。
性格だけでなく、かつてならストレスの所為もあってネチネチ嫌みを言うイルーゾォが許容してくれるということ自体に、
人知れずペッシは環境変化の改善を改めて実感するのだった…。
「お待たせしました、はいペッシのミルクとイルーゾォのカッフェ……それからわたしの緑茶…と。」
「「グラッツェ、you。」」
キッチンから飲み物をトレイに乗せて運んできたyou。
各々の座る席の前に飲み物を置いて、再びキッチンへと戻ると、最後に自分の昼食を持ってリビングへ戻ってきた。
「そういえばソルベとジェラートは?今日はいねーのか?日曜だから学校無いんじゃ…。」
「あのガキ共なら、今日は2人で外で食べるってさっき出ていった。」
「そうなんだ、今日天気いいしね。」
ペッシがソルベとジェラートは一緒にお昼を摂らなくていいのかと素朴な疑問を呈せば、
先ほど彼らの会話の中にいたのだろう、イルーゾォが彼らが今ここにいない理由を説明してやるのだった。
イルーゾォの話に「ふーん、なるほどね」と返事をしながら、
ペッシは買ってきたパニーニを1つ紙袋から取り出し、彼へ手渡す。
パニーニを受け取り「グラッツェ」と礼を言うと、包み紙を開いて早速食べ始めるイルーゾォ…。
…を、じーっと羨ましそうな目で見つめるyou…。
流石に1分近く見つめれば誰しも気付くというもの…。
見られているイルーゾォだけでなく、その横に座るペッシも違和感に気付いてyouに声を掛ける。
「you……い、イルーゾォに何か言いたいことでもあるのかい…?」
「ハッ!つい羨ましくて見入ってしまった…ごめんね、イルーゾォ。」
ペッシに呼び掛けられ、そこでようやく我に返ったらしいyou。
びくっと肩を跳ねさせて、はしたなく食料をガン見してすみません、とイルーゾォに謝罪する。
「何だよ…食いたいんなら最初から自分も買ってくりゃあよかったじゃねーか…。」
「それはそうなんですけど……色々ありまして……わたしはお弁当なんです…。」
「色々って?」
「そ、それは……その……し、少々……節約と……その、減量、を…。」
「ハッ。」
「あぁもう!ほら、絶対小馬鹿にすると思ったーー!!」
鼻で笑うという、イルーゾォの失礼な反応に対し、プンスカと怒るyou。
ペッシが「まぁまぁ」と向かい側の席から彼女を宥める言葉を掛けてやり、
youは半泣きで、ぶすくれながら己の持参した弁当の包みを開いた。
確かに、彼女の外食やテイクアウトを控える動機には「お可哀想に」と小馬鹿にして笑ったものの、
イルーゾォもペッシも、youが持参した弁当には興味がある様子…。
モグモグと自分たちのパニーニを咀嚼しながらも、まじまじと彼女の弁当を開く様子を観察する…。
youが持参した弁当は正に日本人が学校や職場、遠足などで持っていくソレで、
可愛らしい布の包みを解くと、これまた子どもが使用するような可愛らしい動物の絵柄のタッパーが現れた。
その時点でペッシは「流石you、やっぱり可愛いものが好きなんだね」と、ほっこり癒された表情を浮かべ、
イルーゾォは「お子ちゃま用の離乳食でも入ってんのかよ~?!」と茶々を入れたそうに口を尖らせて笑いを堪えている…。
だがしかし…。
彼女がそのタッパーの蓋を開いた時、ペッシもイルーゾォも目を丸くし、
2人同時にパニーニを食べる手がピタッと停止した。
「マジかよ…。」
「す、すご……何それ…。」
彼女の開いたタッパーの中にはポテトサラダやショートパスタで作った総菜、
優しい黄色の卵焼きや茹でた緑のブロッコリー、他にも赤いポモドリーニ(ミニトマト)も添えられ、
何とも華やかで色鮮やかな内容の昼食となっており、
基本的には「お弁当」=「1種の総菜をドーンと入れておくだけ」といったようなものであると
考えられているイタリアでは、とてもじゃないが信じられない代物となってた。
「何って……お弁当だけど…。」
「いや、お弁当持参って……それどっかで買ってきてたの?ていうかそんなの見た事ないけど、どんな店?!」
「いや、家で作ってきたけど…っていうかほぼほぼ昨日の夕飯の残りを詰めただけ…。」
「残飯を!?こんなに綺麗に?!」
「いや、残飯って言い方ぁ!!」
「ご、ごめん……あまりにも綺麗でビックリしてさ……ふぇ~……凄い。」
「残り物詰めただけだから全然凄くはないよ……世の中のお母さま方の中には、朝から手作りでもっともっと凄いお弁当を子どもに持たせてる人もいるからね…。」
「「日本人すげぇええ!!?」」
これより凄いの?!と、今まで黙して聞いていたイルーゾォまでもが声を上げて驚嘆の意を表した。
余談だが、ここで徐(おもむろ)に携帯を取り出し、youは日本のお弁当の真骨頂である「キャラ弁」を画像検索して彼らに見せたのだが、
数々の信じられないクオリティのお弁当にペッシもイルーゾォも「凄い」以外の語彙力を消失させて、ひとしきり画像を見漁ったのであった…。
そんなこんなで、日本人のお弁当が大概凄い…という印象を持ってペッシとイルーゾォが昼食を終えた頃…。
「ただいまぁー!」
「あ、ジェラート、ソルベ、おかえり。」
「ただいま、you!」
昼食を外で食べてきたジェラートとソルベが事務所のリビングへと戻って来たので、youが出迎えの言葉を掛けた。
そうして、自分の弁当箱として使ったタッパーを洗うべく、キッチンへと向かったyouを見て、
ジェラートがイルーゾォに声を掛ける。
「ねぇ、イルーゾォ、皆で何かフルーツでも食べてたの?」
「あ?何も食ってねぇ。何でだ?」
「今、youがタッパー洗いに行ってたから。おれも口直しにさっぱりしたフルーツ欲しかったなって。」
「いや……あれは違う……。」
そう言うや否や、イルーゾォとペッシは顔を見合わせて「そんな単純な代物じゃあねぇ」と声を揃えて言うので、
声を掛けたジェラートだけでなく、一緒にいるソルベも「??」と、困惑して頭に疑問符を浮かべることとなる…。
「あれはyouのBENTO…pranzo al saccoだよ…。」
「あぁ、pranzo al sacco……BENTOU…?」
「pranzo al saccoってこと?」
「pranzo al saccoなんかじゃない!あれは……あれは……「BENTOU」だ…。」
「B……BENTOU…。」
「おいら、さっき写真撮らせてもらったから、見るかい、ジェラート……凄いよ…。」
そう言ってスッと自分の携帯の写真フォルダから、先程撮影したyouの弁当の写真を見せるペッシ。
「えぇえ?!何これ、こんなのpranzo al saccoじゃないよ!!」
「だから言ってるだろ、これは…!」
「「BENTOU…。」」
ゴクリと生唾を飲み込むジェラート…。
ペッシは深く頷いた…。
実物は見ずとも、その写真とペッシ、イルーゾォの表情で日本人の作る「BENTOU」なるものが如何に凄いものだったかを知らしめた…。
そして、そのような興味深いものに直面した時、少年たちがどのような思考に走るかというと…。
「youーー!おれにもBENTOU作ってーー!!!」
「あっ、おい!待てよぅ、ジェラート!!」
大きな声でキッチンへ走っていくジェラートに、ペッシが何故引き止めの言葉を放ったのかは、彼自身も気付いてはいないが、
恐らくは「羨ましい」とか「ズルい」といった類のものであろうな、と眺めるソルベとイルーゾォであった…。
「you!」
「ん、ジェラート…どうしたの?」
「ねぇねぇ、おれにもOBENTOU作って!」
「え?」
「さっきペッシに見せてもらったの、youの作ってきたOBENTOU!!すごかった!」
「ああ、そういえばさっき写真撮ってたね、ペッシ。」
「ねェ、O-BE-N-TO-OOOO~~!!」
「わ、分かった分かった。」
「ほんとう?!」
「来週でもいい?わたし来週は日曜日が休みだから、作って持ってくることにする。ジェラートとソルベ、わたしの3人で事務所でお弁当食べようか。」
「Viva(やったーー)!」
まるでゴールを決めたサッカー選手のように両手を掲げてガッツポーズをするジェラートが、
年齢の割に幼く見えて、思わずふっと笑ってしまうyouだった…。
そうして、自分にも作ってほしいと言うジェラートの願いは叶い、
翌週の日曜日、学校が休みの日にソルベとジェラートの分を作って事務所に持って来てあげたyou。
そして更にその数日後…。
youのお弁当を食べた、凄かったと嬉々として語るジェラートやソルベの反応に、
実際に彼女のお弁当を見てしまったが故に、その自慢に我慢できなくなったペッシとイルーゾォが、金を払うから作ってほしいと依頼…。
流石にお金は取れないので、夕飯の残りのおかずでもいいなら…と、彼らの分も作って提供することとなった…。
・
・
・
・
「ディ・モールトずるい。」
「え?」
「今日、事務所に戻って聞いたよ、キミ、ソルベとジェラートだけじゃあなく、ペッシやイルーゾォにもpranzo al sacco(ランチボックス)を作ってあげたって。」
「え、ああ、うん……元々はわたしが節約と減量のためにお弁当を持って行っただけだったんだけど…日本式のお弁当が物珍しかったみたいで…。」
「ソルベとジェラートだけならまだしも、ペッシとイルーゾォはどうなんだ、事務所で作るとかじゃあなく、態々家で作って事務所に持って行ったんだろう?」
「まぁ……作って持っていくのがお弁当だから…。」
「・・・何か、ずるい。」
「そんなに大したものじゃないですよ、それこそ、メローネと一緒に食べたご飯の残りを詰めただけで…。」
「一緒に食べた夕飯というのもだし、家で態々2人の分を準備して持って行ってやるのも併せて、何だかやけにモヤモヤするんだ。うん、ディ・モールト心が狭いな、オレは。滅茶苦茶嫉妬している。」
「あらら…。」
本日は休みだったyouの家に、仕事が終わってやって来たメローネ。
2人で夕飯を食べた後、お決まりのように彼女の家のリビングルームのソファで寛ぐ最中にそんな話をし始めた。
ソルベとジェラートはまだ子どもだから許せるが、同僚の成人男性は嫉妬の対象ですと、
少し不機嫌そうに言うと、メローネはyouの膝にポスっと己が頭を預けて、ソファに寝転ぶ。
「仕方ないなぁ……わたし、明日も休みだし、お弁当作るから…明日はそれ持って行く?」
「・・・いいのかい?」
「持っていきたいんでしょ?」
「Certo(もっちろん)!!」
お弁当を作ってあげると言われ、メローネはガバッと身体を起こす。
次いで、彼女の目を見て「グラッツェ!」と満面の笑みを向けて、ぎゅうっとその首根っこに抱き着いた。
「you~!」
「はいはい、でもどうしよっかな、今日の残りも入れるけど、いいよね?」
「作ってくれるだけで嬉しいんだ、中身に文句なんてつけないよ!」
「他には何を入れよう…日本みたいなお弁当用の冷凍食品とか無いもんなぁ…う~ん…。」
メローネに抱き着かれたまま、明日の弁当にいれるおかずは何にすればいいだろうかと悩み始めるyou。
自分の為の弁当の中身に悩んでくれる恋人が嬉しいのと、皆が騒ぐ「BENTOU」なるもののと
対面できることもウキウキしてしまう…と、メローネは口角を上げていたのだが…。
不意に、今のお弁当の遣り取りの中で違和感に気付く…。
違和感、というよりは「おや?」と不思議に思う…というような感じだが、
遡って会話を思い返し、矢張り「おやおやおや?」と、自分の気付きを彼女に問うべきだと確信を持った。
そうしてメローネは、そっと身体を離して、今度はyouの両肩を優しく掴んで問いかけた。
「なぁ、you…少し尋ねてもいいか?」
「なぁに、メローネ?」
「オレの聞き間違いでなければ、キミ、明日も休みだから、明日も出勤のオレの為に弁当を作ってくれるって言ってくれた?」
「うん?そうだよね?」
「それをオレに持たせてくれるんだよな?」
「そうですよね?」
「持たせてくれるって事はつまり、弁当をオレが持って行っていいってことだよな?」
「だから、そう言ってるじゃないですか……意味が分からないです…。」
「いや、だからつまり、それって……。」
「?」
「だって、youが弁当を作って「届けてくれる」んじゃあないってことだろ?」
「あ…。」
「事務所に出勤したオレに「届けてくれる」んじゃあないってことは、朝からキミの作った弁当をこの家からオレが持って行くってことだ。違うか?」
「あの…えっと…!」
「とどのつまり、それは、オレがこの家で朝を迎えるってことだろう?」
「め、メローネ…!」
「you。」
「あ、う…!」
恐らくは無自覚で、お弁当を渡す流れを口にしてしまっただけなのだろう…。
だがしかし、結果的に自分がメローネに泊まっていくように提案したような状況に陥り、
言葉に詰まり、顔を赤くし、youはそれはもう顕著に動揺する姿を見せる。
「なぁ…そういうつもりじゃなかったかもしれない…ってのは分かってるけど…。」
「……メローネ…。」
「今日、泊まっていってもいい?」
耳まで赤くしたyouの頬に長い指をするりと這わせ、擽るように動かして横に流れてきた髪を耳に掛けてやる。
恐る恐る目を合わせ、コクリと頷くyouに「ベネ」と笑って、彼女の額にキスを落とした。
その反応で頷いてくれた時点で、夜伽も許可してくれたようなものではあるのだが、
未だ拒絶の反応が出ないとも限らないし、何よりメローネとしては彼女に対して無理強いして傷付けることだけはしないと、
人知れず暗黙の誓いを立てているため、日の終わり、同じベッドに入っても暫くは何もせずにただ、平素のように振る舞って会話を続けることに…。
「…それでさ、キッチンにたまたま入って来たギアッチョの頭にそのゴキが飛んで止まったもんだから、そっから空気が一瞬で凍ったよね、あ、これ比喩表現じゃなくて物理的に。」
「えぇぇ…Gが自分に向かって飛んできて、頭に止まるのも怖いし、ギアッチョの能力が瞬時に全開放されるのも怖い!皆無事だった?」
「いやぁ~…結構大変だったな……そこにいた奴等皆凍傷、霜焼けみたいな感じに…。」
「ひぇ…。」
「でもまぁ、あれは滅茶苦茶不意打ちだったし…今は多分向かって飛んでくる途中で瞬殺できるよ、ギアッチョ。」
「凄いけど、そもそもGの出ないように対策とる事が大事かも……夏場は注意です……ふぁ…。」
「ん、眠くなった?」
他愛も無い会話をする最中、小さくあくびをするyouにメローネが問いかける。
「ちょっとだけ……でも、何か勿体ないような。」
「何が?」
「まだ、メローネと話していたいから、寝るのが勿体ないなって…ふふ、ダメだねぇ、だって明日わたしが休みでメローネは出勤だから、メローネを寝せてあげないといけないのに。」
横になってお互いに顔を見合わせた状態で、くすくすと笑いながら、少しだけ困ったような顔で「ごめんね」と謝るyou。
いや、そもそも同じベッドにこうして添い寝している状態で、
彼女がGOサインを出してくれさえすれば、すぐにでも手を出さんとしているのだ。
そんな状況でこの煩悩の塊のような男が眠れるワケもなく…。
「オレは全然、全く、これっぽっちも眠くないからな…。」
「全然なんだ…。」
「ああ、全然。」
「・・・。」
「…聞かないのか、理由。」
「だって……聞いたら…食べられちゃう…でしょ?」
「…オレに食べられるのは、いや?」
「嫌じゃ、ないけど………美味しくない、かも…。」
「・・・。」
きっと自主的に動くことはできない、貴方を悦ばせることができない、と…。
申し訳なさそうに呟いて視線を逸らしたyou…。
メローネはそんな彼女に微かな溜息を洩らすと、片手をその頬に添えて軽く唇に口付けた。
「!?」
「ベネ。」
「め、メローネ…?」
「ディ・モールト美味い唇じゃあないか…。」
「は、は…っ?!」
彼の癖なのだろう、よく目にするぺろりと舌なめずりをする姿も、普段とは違い、この状況ではただただ妖艶に見える。
そんなメローネの言葉と仕草にカッと赤くなったyouは、恥ずかしい台詞にはくはくと金魚のように口を開閉させている…。
「youのさ…唇以外も味わってみたいんだが……構わない?」
「ぁ……わ、。」
「…ん?」
「わたしで、よければ…。」
「youがいいんだよ……オレはyouしか食べたくない。」
「…はい。」
こうして横で並んでベッドに入っている時点で、メローネからの誘いは断れないだろうと覚悟もしていたためか、
youは恥ずかしそうにしながらも、目の前のギラついた雄からの視線に中てられて、蕩けるような表情で頷いてしまうのだった。
今一度「ベネ」と口角を上げ、メローネは繋がり合う合図とばかりに、深いキスを彼女に落とした…。
・
・
・
・
翌朝…
折角の休みではあるが、お弁当作りのために普段通りの時間に起床するyou…。
隣でぐっすり眠っているメローネを起こさないようにそっとベッドを抜け出て、
顔を洗ったり、着替えたりと朝の準備を終わらせた後、キッチンに立った…。
そうして暫く…。
お弁当作りの最中に漂う食事のいい匂いで、メローネの鼻がスン…と動き、小さく呻きながら薄っすらと目が開かれた。
「ん……you……。」
すぐ横にいる彼女を抱きしめようと伸ばした手はシーツと布団の間をただ上下に行き来する。
「…you……?」
どれだけ腕を動かしても捕まえられない彼女を、目視で確認するしかないか…と仕方なく目をしっかりと開いたものの、
目の前にはもぬけの殻になった隣のスペース…。
昨日確かに抱き合って眠ったはずの恋人の存在が消え失せたことに危機感を感じたメローネは
ガバッとベッドから起き上がり、キョロキョロと周囲を見回す…。
「ッ……you!?」
バサっと布団から飛び出して、リビングルームへと出たところで、
キッチンの方から良い匂いとフライパンか何かで調理をする音が聞こえてくる。
そこでようやく彼女がベッドにいなかった理由を知って安堵はしたものの、
実際に確認するまでは信じられないと、メローネはズンズン歩いてキッチンに顔を出した。
「you!」
「ぅわっ?!」
「良かった……起きたら隣にいなくてディ・モールト驚いた……Buona mattina。」
「うん、おはよう。ごめんね、だってお弁当作らなきゃだったから………って…ぇええ!?」
「うん?」
「何で全裸なの?!」
「ああ?うん、だってキミがいなかったから、焦ってそのまま探しに来た。」
「ふっ、服を着て!色々ツッコミしたいけど火を扱ってるから構えない!!」
「良い匂いだよね~、何作ってるんだ?」
「全裸で来ないで!服を着て!熱したフライパンで全力防衛しますよ!?!?」
「ちぇ~…。」
流石にプライパンの根性焼きは勘弁願いたい…と、大人しくその場を引き下がるメローネ…。
渋々、言われた通りに着替えをしてキッチンに戻ると、
youはいましたが焼き上がったばかりの卵焼きを包丁で切り分けていた。
「わ、それタマゴヤキ?それもBENTOUに入れてくれるの?やった!」
「今、少し食べる?」
「え、良いの?食べたい。」
「ん、じゃあ、はい、あーん。」
「え。」
「え?」
卵焼きを箸で掴み、それをメローネの口元へ運ぶyou。
何の気無しに行うその行為も、メローネの中では特別なものになるようで…。
彼はその場でワナワナと震え始めた。
「ディ・モールト……何だこれは…こんなこと、あっていいのか…。」
「何が?」
仕事終わりに恋人の家で夕飯をご馳走になり、食後のドルチェに彼女自身をいただいてしまった。
更にはそのまま泊まらせてもらった上に、翌日も仕事に赴く自分の為に朝からお弁当を作ってもらっている…。
そんな中、作り立てのおかずを彼女の優しい手から差し伸べられて味見するなど…。
しかも、有り得ない程に自分が惚れ込んだ女性が相手とくれば、
こんな状況は幸せのキャパオーバーだ、と目頭を押さえて人知れず感激に浸るメローネ…。
そんな彼の心情など知らず、youは小首を傾げて怪訝そうな表情を浮かべる…。
「メローネ、食べないの?」
「いや、食べる、食べるとも!」
カッと目を見開き、次いで大きく口も開け、ゆっくりと差し入れられた卵焼きを口に含んで咀嚼する…。
「ん……やっぱりディ・モールト・ボーノだ。」
「ふふ、良かった。もう少しでできるので、出勤の準備でもしてて。」
「グラッツェ、you。」
そう言って一度youを後ろからぎゅうっと抱きしめて、キッチンを離れたメローネ…。
それからyouは最後の仕上げに卵焼きをお弁当箱代わりのタッパーに詰めて、蓋をして布巾で包むと、
家にストックしていた適当なショッパーの紙袋に入れてメローネに渡す準備を整えた。
同じ頃、顔を洗ったり靴下を履いたりと、準備を済ませたメローネ。
再びリビングルームに戻ると紙袋を持ったyouと鉢合わせた。
「あ、メローネ、これお弁当ね。朝ごはんどうする?カッフェと何か軽く食べてく?」
「カッフェだけでいいかな。」
イタリア人の朝食は基本的に軽食も軽食で、クッキーやビスコッティなどのお菓子とカッフェが一般的で、
日本人のyouのようにごはんと味噌汁に焼き魚、西洋のトースト、スープ、ハムエッグでさえも、
彼等にしてみれば、朝から何て塩分の多く重たいものを食べるのか…と顔をしかめるレベルだそうで…。
メローネも類を見ず、その類であった様子…。
飲み物だけで構わない、という彼にyouは少しフッと遠い目をして、
彼が出勤してから、そっと自分の朝食の時間を取ろう…と考えるのだった…。
それから、30分弱程、一緒にTVを見ながらカッフェを飲んで少し会話をして、
メローネの出勤する時間になったので、玄関まで見送るyou…。
「メローネ、気をつけてね。」
「ああ、勿論。あと、お弁当ありがとう、食べるのディ・モールト楽しみにしてる。」
「そ、そんなに期待しないでください……本当に、大したことないから…。」
「youがオレのために作ってくれたってだけで十分嬉しい。」
「…う。」
「では、行ってくるが……。」
「うん、行ってらっしゃい。」
「・・・。」
「・・・?」
「行ってきます」と宣言した割に、玄関で靴を履いた後じっと目を見つめたまま動かないメローネ。
youは頭に疑問符を浮かべて、ひとまず名前を呼んでみる…。
「ええと……どうかしたのメローネ。忘れ物??」
「ああ、そうだな……割と重大な忘れ物。」
「え、何……取って来るよ、何処に…何を忘れて……っん……ぁ!」
瞬間、片手が頬に添えられたかと思えば、間髪入れずにメローネの唇が押し付けられた。
驚いて彼の名を呼ぼうと開けば、その機を待っていたかのようにぬるりと挿入ってくる生温い舌…。
くちゅりと、爽やかな朝には些か似つかわしくはないような音が、昨夜の濃密な行為を彷彿とさせ、徐々にyouの体温を上げさせた…。
最終的に、もう立っていられない…と、youがメローネの胸に両手を添えて寄り掛かり、
腰が砕けそうになったところで、頬に添えていた手が彼女の身体を支える。
「っ…は…ぁ……ぁ…。」
「は……っ…。」
何故、朝っぱらから腰が砕ける程濃厚なキスをかまされたのか分からずに困惑しながらも、
そのキスで意識が若干朦朧としているのか、トロンと蕩けた瞳を潤ませながら、メローネを見つめるyou…。
「はぁ……ディ・モールト ベネ……朝から勃っちまいそうなくらい可愛いな、オレのテゾーロは…。」
「は…っ、ぁ、め……めろーね……な、何で…??」
「何でって……「行ってきます」のバーチョが欲しかったから、した。」
「ふ、フツーはもっとこう、ら……ライトな感じなやつじゃないですか?!!?」
「いや、そうしようと思ったんだけどな……朝からもう、youがどうにも可愛くて……ああなった。」
「えぇぇ…。」
「グラッツェ・ミッレ、you…お陰で今日一日頑張れそうだ、行ってきます!」
「あ、行ってらっしゃ…」
「あっ、あぁー!you!」
「は、はい???」
時間が押してきて、急にバタバタし始めたかと思えば、何故か彼女からの見送りの言葉を遮ったメローネ。
不思議そうに小首を傾げるyouに再びキスをするかのように顔を近付けると、
メローネは彼女の耳元に唇を寄せて、その低い声で囁いた。
「今のバーチョでオレが恋しくなっても、一人でシちゃあ駄目だぜ…?」
「ひ……ぅっ…んっ?!」
「ちゃんとオレが帰ってくるまで、イイ子で待っててくれよな、you?」
「~~ッ!!?」
ちゅ、と挨拶のリップ音を鳴らした後、身体を離したメローネ。
最後は颯爽と「チャオ!」と綺麗なウィンクをしてyouの家を出発するのだった…。
・
・
・
・
そうしてその日の昼…。
メローネにとって待ち侘びた昼の休憩時間が訪れた。
本心としては内勤の本日、其処に集う同僚に見せびらかすようにして
彼女が作ってくれた弁当をその場で広げたい気持ちでいっぱいだったが、
色々考えた結果、周囲が自分とyouが恋人同士という関係であると確信を持たれるのも面倒な気がしたし、
何よりこのお弁当は彼女が自分のためだけに作ってくれたというところもあって、独占欲が勝利…。
「今日は所要ついでに外で食べて来る」と他の内勤のメンバーに告げ、
メローネは手頃に休息できる公園で弁当を広げることにした…。
「嘘だろ……マジかよ……マンマミーア…。」
最早その後の言葉も出ないと、メローネはあんぐりと口を開けて弁当を見つめる…。
そこには、彩りは勿論のこと、残り物とはいえ、数種のおかずが綺麗に詰められており、
更には卵焼きやハムとチーズの形をアレンジしてハートにして飾り切りされているではないか…。
そしておかずのみのお弁当とは別におにぎりもあって、量も十分。
よく見るとラップには態々ペンで書いたのだろう、可愛い動物のイラストと「お仕事頑張って」の文字…。
イタリアでは凡そ考えられないようなお弁当を、朝から自分の為に作ってくれたことに感激もするが、
それ以上にあまりの繊細さに驚いてしまう…。
「これを朝から毎日作るとか、ジャポネーゼマンマ……クレイジー過ぎるだろ……。」
それは誉め言葉でもあり、若干の哀れみもあったのかもしれないが、
何は無くとも日本のお弁当に感動したのは事実…。
結果的に、余すところなく、ありがたく美味しくお弁当を食べ尽くしたメローネであった…。
・
・
・
・
「ただいま!!」
まるで子どものように帰宅時に大きな声を張ってyouの家の玄関を越えてきたメローネ。
ここで彼本人の自宅ではなく、彼女の家にやって来たのは、もちろんお弁当の感想を伝えるために
「今日も仕事が終わってキミの家に行く」と連絡しておいたからなのだが…。
「あ、メローネ。おかえりなさい。」
今、彼女の家に上がって「おかえりなさい」と言われた瞬間に、
本当はお弁当の感想は建前で、明日も明後日もその後も「行ってきます」や「ただいま」を言って
いつも顔を合わせていたいだけなのかもしれない…と人知れず考えてしまうメローネであった。
そうしていつものように一緒に夕飯を摂って、リビングルームのソファで一息。
TVを流してはいるが、特に集中して見る番組もないため、2人は本日あった出来事などを話題に語り合う…。
具体的に言えば「お弁当の感想」だ。
「…さて、さっきからずっと我慢していたんだが、お弁当の感想を語ってもいいか?」
「あ、うん、どうだった?メローネ何も言わないから、実はちょっと不安だったんだけど…。」
「どうもこうも……何あれ凄すぎない?ヤバくない?」
「え、や、やばいって……食べるとき中身痛んでた?」
「いや、全然。ヤバいっていうのは、凄すぎて驚いたって意味で……つまりめちゃくちゃ美味しかったし、面白かったし、マジで嬉しかった!!グラッツエ、グラッツエ・ミッレ、you!!」
「そっか、良かった!」
「けど、食べるの勿体なかったな……繊細過ぎてさ……ああいうの朝から子どもの為に作るなんて、日本の母親ってマジでどうかして……ええと、うん、すごい。滅茶苦茶凄いと思った。」
本日、youが作ったお弁当に対して、正直に抱いた感想をそのまま伝えたメローネ。
兎に角と嬉しかったのと美味しかったという感想と、感謝の言葉は嬉しいもので、youも彼の反応に嬉しそうに笑みを返す。
「喜んでもらえたなら良かった。頑張った甲斐がありました…!」
「彩はもちろんだけどさ、何なのあれ…切ったあと形を整えるだけかもだけどハートになってたりとかさ、アイディア凄すぎないか?」
「ネットで色んな人お弁当画像を参考に、ね。本当、いつもはハートに形を整えたりしないから、今回はメローネの分だったから特別繊細だったかもね。」
そんな手間を掛けたのは貴方の分だけで、ペッシやイルーゾォのお弁当にはそんなことしてないよ、と笑うyou。
「そうなのか?」と少しだけ驚いた顔を見せたメローネに、youは少し照れたような表情でコクリと頷くと、急にソファから立ち上がる…。
「まぁ……メローネに作るのは愛妻弁当というものにあたりますからね…ちょっと、自分のできうる限りで頑張ってみました。」
「AI…SAIBENTOU???」
「お風呂入ってくるね。」
まるで更なる追及を逃れるようにして、そそくさとバスルームへと去っていったyou…。
つまりその間にその単語を調べておけ、という意味だと取ったメローネは、彼女の背中を見送ってから徐(おもむろ)に自分の携帯を取り出した…。
『AISAIBENTOU』 『Giapponese』 『OBENTOU』などの単語で検索してみれば、
親日のイタリア人や、親伊の日本人などが、ブログ等でその意味合いについての説明をしており、メローネは徐々にその意味合いを理解し、そして…。
「Che casino!Che casino!!Che casino!!!」
ソファの上で「ちょっと待って」「マジでヤバい」「本当パニックなんだが」と、
ソファの上で一人、愛妻弁当の意味を悟り、混乱して悶絶していた…。
ひとしきり感激と愛しさで悶えた後、大きく深呼吸をしたメローネ…。
「よし、行くか。」そう言って立ち上がり、
風呂場に突撃し、華麗にビンタを食らうまであと数分…。
perte
あなたのために
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*