Lei e un fiore. (番外編 / ギアッチョ)
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「今日は良い天気ですねぇ、絶好のお出掛け日和です!」
「あー…まぁ、そうだな。」
そう言って
買い出しの帰り道
綺麗に晴れた空を見上げる2人
Lei e un fiore.
CARTOLERIA(文具屋さん)
基本は外勤の任務が多いギアッチョがこの日は珍しく内勤であったため、
youは買い出しという日常のミッションに彼と共に赴いていた。
「そういえば、ギアッチョと2人で買い出しに出るのってすごく久しぶりだね。」
「ん、あぁ……仕方ねェんじゃねーの?オレ(の能力)は基本外勤向きだしよ…。」
「外勤が多いとキツくない?身体は大丈夫?」
「ハッ、冗談抜かせ。そんなん全然問題ねーし。こちとら気力と体力なんざ有り余っとるわ。」
「おお……頼もし過ぎる…。」
これこのように…と…。
事務所で必要な、そこそこ重たい日用品を入れた両手の買い物袋を軽々と上に持ち上げるギアッチョ。
それからすぐに手を下ろすと、若干怪訝そうな表情でチラリと隣を歩く彼女を見て言った。
「つーか、オレは逆に内勤の方がイラつくがな……メローネやお前が内勤で毎日デスクに齧りついて仕事しとる方が信じられねぇーわ…。」
「う、うーん?でもそれがわたしの仕事ですから…?」
「そりゃそうかもしれんが…。」
「あ、でも、ギアッチョが外勤でいてくれるのはありがたいんですよ、わたし的に!すごく!」
「あ゛?何でだよ!そりゃあつまりおめー……!!」
「!!」
すぐに彼女はギアッチョが「オレと一緒に仕事したくねェ~ってことか?あぁ?!」と言葉を続けそうな気配を察知…。
不機嫌そうに眉間にぎゅっと皴を寄らせた表情を見て、すかさず言葉を割り込ませる。
「一緒に仕事できないのは残念ですけど!」
「・・・。」
「だってギアッチョが外勤任務行って帰って来た時に提出する領収書、ちゃんと全部経費で落とせるものなんだもん!!」
「・・・はぁ?」
キョトンと三白眼の目を更に点にして、ギアッチョがyouを見つめると、
彼女は拳をぐっと握り、それはそれは良い顔で彼を誉め千切る…。
「プロシュートやホルマジオなんてもう本当に酷くて!絶対個人で使ってきたであろう飲み代や何やかんやを「接待費だ」とか「必要経費だ」とか…あまつさえ「ペッシの成長のために必要だった」なんて絶対罷り通らない理由書いて領収書出してくるんだよ?!」
「お…おぅ……そりゃ何つーか……うん…。」
「それに比べてギアッチョは本当に適正な理由と費用の領収書を毎回提出してくれるからすっごく助かってる!!」
「そーかよ…。」
「皆の領収書が提出される度、毎回ずっとギアッチョの株だけがわたしの中で上がり続けているよ……いつもご協力ありがとう、ギアッチョ。」
本音を言えば出張先で任務前や終わりに飲みに行った代金や、急遽必要になって買うことになった物や服なども経費として申請したい時もあるのだが、
自分のモチベーションアップや、最終的に自分のものとして使うことになるのであれば、経費では落ちないだろうと思ったし、
また、その領収書を提供して却下された時に募るイライラ度を考えれば、初めから出さない方がストレスが溜まらない。
そもそもいちいち理由を書いて提供して説明(という名の言い訳)をするのがギアッチョとしては面倒臭いワケで…。
だから自分が「こんなもんでいいだろ」と判断した領収書だけを提供しているというだけの話なのだが、
それを「本当にありがたい」と感謝され、他の外勤メンバーを知らぬ間に追い抜いて彼女の好感度を上げていたのだとすれば、
ギアッチョとしては棚ぼたラッキーというものである…。
そんな賞賛の言葉と感謝を伝えられ、ギアッチョは少し照れくさそうに「…プレーゴ(どういたしまして)」と返すのだった。
「あっ、でも、急遽怪我して病院に行った費用とか…そういうのはちゃんと提出していいんだからね?ギアッチョそういうのも無いから…。」
「怪我はしねーよ。」
「そう……確かにギアッチョは怪我して帰ってくること無いんだけど…。」
「おう。」
「でも、やっぱり外勤任務に出る皆のことはいつも心配だから……これからも気を付けてほしいな…。」
「余計な心配だが……まぁ、ありがとよ。」
「うん、元気で戻ってきてね。」
そう言ってふっと優しく笑う彼女の頭を撫でてやりたかったが、両手が塞がれていることに気付くギアッチョ。
そうできず、少し勿体無かったな…などと思ってしまった…。
そんな風に話をしながら歩いている途中で、ふいに彼女は日頃通って帰る事務所への道ではなく、
別の小道を歩いていることに気が付く…。
「あ、あれ、しまった…いつもの道と違うとこに…。」
「んぁ?別にこの道でも帰れんだろ。」
「そ、そうなの、かな……まだまだわたし、道を分かってなくて…メイン通りや比較的広い道はやっと覚えてきたんだけど……知らない道だと携帯のマップ見ながらじゃないと…。」
「・・・不安だな…おめー…買い出しは極力1人で行くなよ?」
「えぇ…。」
ギアッチョに若干呆れたような視線を投げ掛けられ、情けない声を上げるyou…。
しかしながら、知らない道を歩くということは未発見のものを知るということで…。
道を把握しているギアッチョも一緒にいるという安心感もあってか、
先程の不安気な表情は何処へやら…数分と経たないうちに
youはウキウキと楽しそうな表情で小道を歩き始めた…。
「メイン通りではないけど、人の多さが適度な感じでお店もゆっくり見れそうないい通りですね、ここ!」
「そうだな、オレはメイン通りよりこういう中間の賑わいがある通りの方が好きだ。(慣れてんのはもっと狭い裏通りなんだけどな…。)」
「わたしもかもです……この通りはどんなお店があるのかな……あ、向こうにジェラテリアある……あっちはピッツェリアでしょうか、メニュー表が……良い匂い。」
「総菜なんかも売ってたりするな……あとは何だ、文具屋とか…?」
「あっ…?!」
「あ?」
その場でピタリと歩みを止め、停止したyou。
ギアッチョはその数歩先で立ち止まり、彼女を振り返る…。
「どうした?」
「文具屋で思い出した!備品のファイルを買い損ねてました!!」
「おー……そりゃ都合良く思い出せて良かったな。」
「はい!というわけで、寄ってもいいかな……文具屋…。」
「別に構わねーよ。」
「ありがとうございます!ええと、どこでしょう…文具屋さん…。」
「確か向こうにあったハズだぜ。」
両手が塞がっているため、ギアッチョは顎を使って通りの右手、その向こう側を大体の感覚で示した。
youはそれに一度頷くと、再びギアッチョと共に歩き出す…。
ものの数分で『CARTOLERIA(文具屋)』と書かれた看板の小さな入口を発見し、2人はそこへと入っていった。
「わぁぁ…っ、すごい、え、すごいよギアッチョ!文具屋さん!」
「オメーこの間も眼鏡屋で同じような反応しとらんかったか……一体店の何処にそんな感動する要因があんだよ…。」
「全 部 で す 。」
「目ェこわ。」
ヨーロピアンでオールドノスタルジックな雰囲気の店内にテンション上がっているのだろう、
店内を四方八方キョロキョロと見回しながら、絶対に使いどころの無い子ども用のペンやぬりえ、
おしゃれで綺麗な便箋などをみつけてはしゃぐyou…。
最初の方こそ呆れた表情で彼女を遠巻きに見ていたギアッチョだったが、
やがて観念したように彼女の小さな反応1つひとつに反応してやることにしたようだった。
「ギアッチョ見て、リアルに羽ペンとか売ってます!所狭しと可愛いスタンプが…あー!いかにも海外ですっていうデザインのノートぉおお!!」
「落ち着け。」
「えー、ファイルは必要だから買うけど……折角だし、何か自分用に自腹で買って帰りたいなぁ…。」
「そんなんボールペン1,2本買い足して経費で落としときゃいいだろ。」
「やだ!実に面白くない!!」
「あ゛?」
「い、いやその……こ、個人的にデスクで使えるものがいいなァ~~……って…ほら、付箋とか…手帳のシールとか…ね?」
地元民であるギアッチョと、未だ若干観光客気分の抜けないyouとの温度差もあるのだろうが、
小さな反論で、危うく店内で怒声を浴びせられるのを、必死で回避するため尽力することになるのだった…。
ひとまず、もう忘れないようにと目的であったファイルを手に取り、
個人的に何を買おうかと店内の商品を物色し始めるyou…。
「ごめんね、ギアッチョ……まだ時間いい?」
「確か今日はリゾットは休みだったよなァ~……ホルマジオはいるが特に何も文句は言わねェし……文句言いそうなイルーゾォは遅番だ……んなら、このくらいの寄り道…いいんじゃねェの?」
「良かった、ありがとう!」
「つか、何買うんだよ…。」
「うーん……色々あり過ぎて迷っちゃう……何がいいかなぁ…。」
う~ん…と唸りながらゆっくりと店を歩いていると、2人の会話が聞こえていたのだろう…
店主であろう老女がyouに声を掛けてきた。
「チャオ、何か探してるものがあるかい?」
「あっ、えっと!ええと……事務で使える小物で自分用に何か良いのがあるかなって……ペンとか付箋とか、メモでも…。」
「『自分用』か……それなら最近入荷した商品で若い子達に人気だから、これなんかどうだい?」
そう言って女性店主が紹介したのは「カスタマイズできるインクペン」というものだった。
本体をベースに、ペン先の種類、キャップの色、インクの色を自分好みに選べるというもので、
1つ1つのパーツもそこまで高額ではないため、全て合わせてもグランデのジェラートを数回程我慢すればいいくらいのお値段…。
「ボールペンと万年筆、筆ペン…え、ガラスペンにもできるんですか?」
「ああ、それだけはインクがカートリッジではなく付けペン用のインクになるがね。」
「そっか……ボールペンなら普段使いできるし…お値段も自分用のプレゼントとしてはいい感じ…これにしようかな!」
「全部選んだらレジに持っておいで。」
「はいっ、ありがとうございます!」
店主が紹介した商品を気に入ったyou。
すぐに「自分用のペン」を作るべく、キャップとインクの色を選び始める…。
「キャップはわたしの好きな色にするとして……インクはどうしよう…。」
「インクも好きな色にしたらいいんじゃあねェの?」
「うーん…でも、普段使いなら黒とか赤が無難じゃないですか…。」
「別に何色で書いたっていいだろそんなん……文字が読めりゃ構わんだろ。」
学校や会社などに於ける型にはまった日本人的思考故か、提出物は「一般的な色」であるべきと判断するyouに対し、
ギアッチョは、細かい事は気にせず「絶対この色で書いて提出しろ」と言われていないのなら、指定していない方が悪いのだと言わんばかりの発想力…。
両極端な考え方は文化の違いか、はたまた性格の違いか…。
少しだけ苦笑しながら「そ、そうかもね…」とやんわりギアッチョに同意しておくyouであった…。
「でも、黒か赤にしちゃうのが勿体ないくらい色んな色があるなぁ……ピンクにオレンジに…。」
「そんなに悩むモンかァ~?好きな色パパっと買っちまえばいいのによォ…。」
「素敵な色ばっかりなので……あっ!これ!」
「あ?」
「見てみて!この色綺麗だね、ラピスラズリ!プロシュートの瞳の色みたい!ね、ギアッチョ、そう思わない?」
「・・・。」
瞬間、ビキっとギアッチョの眉間に皴が寄った。
しかしながら、すぐに彼が顔を下に向けたためyouにはその表情が見えていない状態で…。
暫くしても何の返事も無かったため、youが不思議そうに小首を傾げて、
「ギアッチョ?」と彼の名前を呼べば、ギアッチョは俯いたままでユラリと身体を反転させて、その猫背を彼女へと向けた。
「あの…?」
「プロシュートの目の色なんか普段観察しねェから、そんなモンは知らん。」
「そ、そっか…。」
「そもそも文具なんて興味もねェからな……オレはもう外に出る。」
「えっ?!あ、えっ?!」
先程までの様子とは全く異なる重低音の声色で言葉を紡ぎ、ギアッチョは一度も振り向かないまま、
戸惑うyouを他所に、店の外に出て行ってしまった。
それからややあって、文具店での買い物を済ませたyou…。
店から出てきて、ギアッチョの元へと駆け寄ってきた。
「すいません、お待たせしました!」
「・・・。」
「それでね、ギアッチョ、結局わたし、インクの色は...」
と…。
そこまで言ったところで、通りを歩く誰しもが振り向く程の大声が目の前から発される…。
「るせぇええ、知るかぁッツ!!誰の!何の色が好きか知らんが何の興味もねぇわボケェ!」
「!!」
先程まで、いたって普通に…否、寧ろどちらかといえば和やかに会話をしていたというのに、何が彼をそんなに怒らせたのか…。
特にこれといった理由もなく、あまりにも理不尽に怒声を浴びせられたyou…。
その大ボリュームの音声に驚いたこととと、何より折角穏やかに過ごしていたギアッチョを
自分な何か失言をした所為で不愉快にさせてしまったのだろうという罪悪感…。
目の奥がじんわり熱くなり、気付けばそのまま涙がポロリと零れ落ちていた。
「ごめん、なさい…久しぶりにギアッチョと一緒に買い出しで出掛けられたから、嬉しくて浮かれてたみたい…。」
「…ハッ…?!」
「っ…いつも外勤で疲れてるのに寄り道まで付き合わせて、本当にごめん...…ごめんね、ごめんなさい…!!」
「ぁ?!」
手を伸ばした時には既に遅し…。
居た堪れなくなったyouは、泣きながらその場を走り去っていってしまった…。
あんなに急に態度が一変したら、誰だってビビるし、
しかも怒った理由も全く不透明とくれば、これは弁解の余地なく自分が悪い、と…流石のギアッチョも己を省みる…。
「ぉぉおお……っ理不尽過ぎるだろぉお!何でオレはあんな...ぁぁぁ!っチクショーがぁぁ!クソっ!クソっ!!」
一人叫んで頭を両手で抱えながらしゃがみ込んだギアッチョ…。
自己嫌悪に苛まれながら、事務所に戻って彼女に何と言葉を掛ければいいものかと悩み、
ふと顔を上げると、わだかまりの原因…その舞台となった『CARTOLERIA(文具屋)』の看板が目に入った…。
「文具……屋……。」
そう呟き、その場からフラッとよろけながら立ち上がると、ギアッチョは何かに呼ばれるかのように
その年季の入った文具店の入り口のドアを開き、その中へと入っていった…。
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一方、事務所に戻ってきたyouは、既に事務所内に戻っていたホルマジオを見つけると、
「お~、おかえり」といつものヘラリと穏やかな笑顔を向けられて、どうしようもなく安堵し、再び涙腺が崩壊してしまった。
「う…うわぁああ…ん…!!」
「うぉっ?!ど、どうした?!!何があった、you?!ていうかギアッチョは?!」
「ほ、ホルマジオどうしよう……わたしの所為で…ぇえ…!」
「おいおいおい、しょ~がねェ~なぁ……落ち着けよ、ガッティーナ…。」
「もう、もうギアッチョは……2度とわたしと買い出しに行ってくれないかも...ですぅうう!!」
「はぁ???」
ズビズビと鼻を啜る音が生粋のイタリアーノとしては不快で、
ホルマジオは彼女にボックスティッシュをそれごと渡して「ほれ、これで鼻かみな」と指摘する。
「ずびばせ…ん゛…」とべそべそ泣きながら謝り、しゃくり上げて言葉が紡げない状態を脱したあたりで、
youはぽつぽつと先程ギアッチョとどんなことがあったのかを説明し始めた…。
文具屋に行くまでは至って普通に会話をしていたのに、
そこでyouが自分用の文具を購入することにした際に急に態度が一変して怒鳴られてしまったこと…。
「何だぁ~そりゃ……何で自分用の文具を選んでキレなきゃいけねェ~んだ??」
「わっ…わたしにも分かりません……もしかしたら外勤続きで本当は凄く疲れてたんだろうなって…。」
「(任務で疲れる……アイツが?あのギアッチョが??)」
「なのに無理してわたしに付き合って買い出しに行ってくれたんだと思うんです…。」
「いやいやいや…。」
確かに、以前のように「ただ暗殺すればいい」というものではなく、
あれこれ条件が付けられた上で人を護衛したり、敵対する者らを確保したりと、任務の内容は複雑化してはいるが、
以前のパッショーネでの危険と隣り合わせの任務を思えば、今の新制パッショーネでの任務は遥かに優しい。
おまけにすぐにキレる若者……基、沸点の低い性格であるギアッチョが
youが「買い出しに着いてきてほしい」と言えば「かったりぃな…」と口を尖らせながらも、
満更でもなさそうな顔でいそいそと街に出る準備を始めるのだ…。
買い出しの誘いなど、ペッシかメローネあたりであれば「一人で行ってきやがれ」で一蹴するであろう案件を、だ。
故にホルマジオは思う…ギアッチョがyouとの買い出しの最中、
疲労からのストレスで彼女に怒りをぶつけるなどは「いや、絶対そんなことはないはず...」と。
「いやぁ……絶対何か理由があると思うぜェ~、オレはよ…。」
「理由…。」
「お、何か思い当たるモンがあったか?」
「…選ぶのに時間が掛かったからでしょうか……。」
「ん~……確かに気が短いとこはあるかもだが……。」
「インクの色のたとえが悪かったのかな……でもそれは違うはず……だってプロシュートだったし。」
「ん、なんて?」
「え?」
「何がプロシュートなんだ?」
「ええと……色です、ペンのインクの色。何色にしようって悩んでいる時に、沢山の色があって…黒や赤やピンク……それで、青のインクの色がプロシュートの瞳の色に似てるねって話して…。」
「(あーーー、なるほど。)」
「チームの皆の話なんて、別にギアッチョといつも話してますし、怒る理由にはならないですね…。」
「(いや、絶対それだ。120%それだよ。100ユーロ賭けてもいい…。)」
「だったとしたらもう本当に……ギアッチョが疲れてる事に気付かずに買い出しに誘ったわたしの所為です…ぅっ…。」
「いや、you……それは…。」
「もう、もう絶対……一緒に買い出し…うぅっ、行ってくれません……きっと…ぉお…。」
「あ~~…もう…しょ~がねェなァ……お前らはよぉ…。」
自分で言っておいて、それが現実になると思うと悲しくなったらしい…。
再びメソメソと泣き始めたyouを、とりあえずひとしきり慰めるホルマジオ。
しかしながら、余程怒鳴られたショックが大きかったのか、以降もyouは立ち直れないようで、
そのあまりの絶望っぷりに見ていられなくなったホルマジオは、彼女を早退させることにした…。
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そしてこちらは、少し前……再び文具屋に戻る事になったギアッチョ…。
店内に入るや否や、それはもう大きな声で「おいババァ!!」と、店主の老女に向かって暴言(本人は呼び掛けただけ)を吐いた。
「ドアは丁寧に開け閉めしないか!全く!粗暴で口の悪いガキだね!xxxをそこの切れ味の良いハサミで切り取っちまおうか!!」
「おう、スマン……って、テメーも頗る口悪ィじゃあねーか!!」
勿論、邂逅一発の自分の失礼な呼びかけ方が悪かったこともあるのだが、
先程youにお勧めの商品の案内をしている時の穏やかな口調は何処へやら、
驚きも銀河の彼方に吹っ飛ぶような品の無い言葉で、ギアッチョと口論する店主の老女…。
「馬鹿デカい声を出すんじゃない!全く……さっきの娘はどこだい?!コイツの何処がそんなに好きなんだか教えてもらいたいんだけどね!!」
「アイツはもういねェー……って、今なんて?アイツが、何て?」
確かについ今しがたまでいたはずのyouの姿が此処にない事に違和感を感じてそのように言うのは分かるが、
それよりも気になったのは最後の言葉で...。
ギアッチョは「何を言っているのか全く分からない」とばかりに目を点にして言葉の真意を老女に問いかける。
「アイツが、何が好きだって???は??何でそんな??」
「あ?そりゃ、あの娘が空色のインクを買ってったからだよ。」
「あ?何で?あいつが買ったのは青のインクだろ。」
「いいや、あの後迷わず水色を持ってきたよ。」
「なんで?!」
更に「意味が分からない!」と事の真相を確かめるべく、老女が着席して寛ぐレジの方までズンズンと近付いていくギアッチョ…。
「普段使いしたいと言っていたからね……黒か赤、それこそ見ていた青じゃなくていいか聞いたが『この髪色の彼と、この色の空の下で一緒にこのインクを見つけたって思い出にするから』って...そりゃあ嬉しそうな顔で...。」
「…ッ?!」
「ハァ...久しぶりに若い頃にウチの旦那を好きになった時の事を思い出しちまったよ...。」
「最後の話はどーでもいい、マジでどーでもいいが...アイツ...アイツ、またそんなこっ恥ずかしい事を~~ッツ!!」
額に手を当て、そのまま手を下ろして目を覆い、最後はむず痒く緩みそうになる口元を隠すように覆った。
今此処に彼女がいなくて良かったと心の底から思う程、頬だけでなく耳まで真っ赤に染まった顔で、ギアッチョは店主の老女を呼ぶ。
「おいばーさん!」
「またこのクソガキは!シニョーラと呼ばないか!」
「いてて!わぁかったよ!シニョーラ!おい、頼む!この店でほしいもんがある!」
レジ前に置いてあった消しゴムを見事な投球コントロールでギアッチョの眉間にクリーンヒットさせた老女。
ギアッチョは額を摩りながら彼女に謝り、その後すぐに「文具屋の店主」としての協力を求めた。
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その翌日…。
youが少し腫れぼったい目を必死でメイクで隠す努力をして事務所に出勤をすると、
事務室の自分のデスクの上に何かが置いてあることに気付く…。
小首を傾げながら近付いていくとそこには、近所のパスティチェリアの紙袋に入った焼き菓子と、可愛らしいウサギの形をしたメッセージカード…。
「これ…。」
youはそっとメッセージカードを持ち上げ、その裏面を見る。
『Senti, non avrei dovuto dire quelle cose, ieri.
(昨日はひどい事言って悪かった)』
書かれた内容ですぐにそれがギアッチョからのメッセージであると察したyou。
今日は何と言って彼に謝ろうかと暗中模索していた彼女にとって、それは有難くも戸惑うもので…。
一人、デスクの前で「え?え?」と困惑していると、心の準備が整う前に当事者であるギアッチョが出勤してきてしまった。
「うぉっ、ビックリした!お前、もうおったんか……!」
「…ギアッチョ…。」
「あー...おう......昨日は、キツい言い方しちまって...その、悪かった。その菓子は侘びだ。」
「あり、がとう………はっ、というか、このメッセージカード…は…。」
「それは……あの後、あそこの文具屋のババぁ……じゃなくて店主に!選んでもらって買ったヤツだ。」
「ギアッチョ、また文具屋さん戻ったんだ…。」
「おう……んで、バ……店主に聞いたけどよ……お前、水色のインク……買ったって…。」
「え、う………うん…。」
「あー……えっ…と………何だ………だから……その………水色にした理由も聞いた。」
「えっ、あ……聞いたんだね…。」
「お前よぉ~~~……何ッでいつもいつもそんなこっ恥ずかしい事を人につらつら話せるな…っとに…。」
「うーん?わたしは別に恥ずかしくないから…。」
「マジかお前…。」
「は、はい……。」
「・・・。」
「・・・。」
「……つーかだな!!」
「?!」
ずっとボソボソと小さめの声で話していたギアッチョが、急に大きな声を出したため、ビクゥっと肩を跳ねさせるyou…。
何事かと思えば、彼は両手をパンツの左右のポケットにツッコみ、
まるで(you的に言うと)田舎のヤンキーのように前屈みで彼女を覗き込むようにして目を合わせながら、物申す。
「オレは!別に!」
「?!」
「これからもお前との買い出しを拒否したりしねー。別に嫌じゃあねーからな......。」
「ほ、本当?本当に?よかった……!」
「寧ろ......。」
「?」
「...寧ろ好きだ。」
「え...。」
「だが!」
「?!」
「だがよぉお!何か知らんが!買い出し中に、オレ意外の男の話を、オレの前ですんじゃあねぇッ!なんか知らんがイラつくくからなぁぁあッツ!」
「わ、分かりました!??以後気をつけます!」
カッと目を見開いて圧を掛けるギアッチョに、困惑しながらも了解の意を示すyou…。
内容そのものは端的に言えば嫉妬心丸出しの男の台詞そのものであるのだが、
言い放ったギアッチョ自身はそれに気付いておらず、youもまた、違和感は感じたものの、勢いに押されて気持ちが流されてしまっていた…。
結局そのまま、彼の心の内は2人の間に於いて霧散することになったのだが、
傍で聞いていた第三者としては間違いなく、目を点にして口をあんぐり開けて呆けた顔をすること必至な事待ったなしの案件なワケで…。
「なぁ、何でギアッチョは朝っぱらからyouに愛の告白してるんだ、ホルマジオ...?」
出勤後、事務室の入り口でギアッチョとyouの遣り取りを静観していたホルマジオとメローネ。
「昨日色々あったんだよ...ってかそれあいつらの前で言うなよメローネ...2人して全くそんな話してるつもりねーっていうか、そもそもお互い気持ちに気付いてねーから」
「嘘だろ、マンマミーア...。」
昨日のyouとギアッチョの「色々あった件」を知っているホルマジオが遠い目で答えれば、
メローネは、まるで珍獣かUMAでも見るような驚愕の目をして2人を見る。
ややあって、入り口に立ち尽くす2人に気付いたギアッチョとyou。
「ボンジョルノ」と声を掛けられれ、朝から生暖かい笑いを浮かべてしまうホルマジオとメローネであった…。
CARTOLERIA
文具屋さん
words from:yu-a
*。゜.*。゜.*。゜.*