Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
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「10分、待ってて。」
『え、あの、メローネ?!』
この行動力は愛の成せる業であって
決してフットワークが軽いからとかそんなモンで片付けてもらっちゃあ困るなと思いながら
アパートの階段を駆け下りて、バイクのエンジンを掛けたんだ。
Lei e un fiore.
Mi manchi.(会いたい)
「折角のフィレンツェ旅行……じゃなかった、出張だったのに……勿体無かったなぁ…。」
メローネとの二泊三日のフィレンツェ出張を終えて夜に帰宅後、
youは自宅で風呂を終えた後、旅行の荷解きをしながら一人呟く。
3日目は夕刻の列車の時間まで仕事は入っておらず、完全にフリーだったため、
初めてフィレンツェを訪れるyouとしては世界遺産ドゥオモやジョットの鐘楼、
他にもフィレンツェといえばのトスカーナ料理の店にも行きたかった…ということで、彼女は残念そうに深い溜息を吐いた…。
「まぁ…観光はできなかったけど……わたしにとっては良かった事の方が大きいか…。」
観光を断念する原因となったのはメローネとの対話や問答、お互いに向き合った結果の行為…。
まだ不安は完全に拭えていない部分はあるが、心身共に繋がれたという事実は、
今まで以上にメローネと向き合うことができるだろう、と確信するには十分な要素となった。
明日以降の職場とプライベートの関係性を思うと、少しばかり気恥ずかしい気もするが、
仕事上では今まで通り、プライベートでは今まで以上に沢山の会話ができればいいな…などと考え、
彼女が一人でふふっと微笑んだ刹那、テーブルの上に置いていた携帯が鳴った。
『プロント、you。』
「メローネ、今家に着いたの?」
『ああ、今しがた着いたよ。ていうか起きてたのか…。』
「お風呂は入ったけど、まだ荷解き中なので……服は洗濯機とか掛けておかないとと思って…。」
『偉いな日本人…オレなんて疲れてたら服も下着も出し散らかしてそのまま寝るな…。』
「そこはせめて洗濯機の中に放りましょうよ…。」
『あー………まぁ、考えておく。』
「もう!」
『あっ、あー!今、今のはディ・モールト可愛かった、目の前で叱ってほしい!』
「・・・。」
『すまない、冗談(本気)だ。ええと、そうだ、本来の目的を忘れていた。』
「目的?わたしを送ってくれた後、メローネも家に着いたって報告じゃなくて?」
『勿論それもあるんだが………ちょっとな、伝え忘れていたことがあって…。』
「なにを…?」
『キミと過ごせた時間が嬉しすぎて、失念してたんだ。3日目にフィレンツェの観光ができなかったことを謝るのを忘れていた。』
「え、え??」
『楽しみにしてただろう?行く前からずっとトスカーナ料理を食べたいとか、フィレンツェで有名なパスティチェリアを調べたりしてたし…。』
「それはまぁ……そうですけど…。」
若干、色気より食い気みたいな言い方が気になり、ちゃんと観光地も巡りたいと思ってましたよ…とツッコみたいところではあったが、
それ以上にそんな事の為にわざわざ電話で謝らなくても、という気持ちの方が当然上回る。
「わざわざ電話までしなくてもいいのに……というか、そもそもメローネの所為じゃないですし…。」
『結果的にはそうかもしれないけれど、元々はオレが無意識に急かしていて、我儘だった所為だからな…。』
「遅かれ早かれ向き合わなきゃいけない問題だったし…。」
『キミは優しいな……そういうところがディ・モールト好きだ。』
「ふふ、ありがとうございます。」
『けど、まぁ……何だ、その……行く前にあんなに楽しみにしていたのを知っていたから、ってのが大きいな、やっぱり。叶えてやれなくて悪かった。』
「メローネ…。」
『いつか必ず連れて行く。』
「うん……ありがとうございます。」
『ああっ!フィレンツェだけじゃあないぞ、なかなか北には行かないが、ミラノやベネツィアも良い所だし、近場だとシチリアもオススメだ。イタリアを飛び出したっていい……you…キミと、色んな場所に行きたい。綺麗な景色を見て、美味い料理を食べて、一緒の時間を過ごしたい。』
「それは……うん、とっても素敵、だけど…。」
『だけど、そう、別に特別な場所でなくたってもいい。キミの隣なら、そこがいつだってottimo(最高の)空間だ。」
「えぇ……すごいね……以心伝心だ……。」
『Ma certo!(勿論そうだよ!)』
そう電話越しに綺麗な声で言い切って、メローネは目的を達したので電話を終えようとする…。
「それじゃあ、また明日だな。遅くに連絡して悪かった、ボナノッテ、you。」
『・・・。』
「おや………you……?」
『っ……ごめ、なさ……』
「え、あ、どうした?何かあったのか?」
受話器越しに急に言葉に詰まった後、急に謝り始めたyou。
泣いているという様子ではないようだが、謝られる理由も無いため、メローネは少し動揺した様子で彼女へ尋ねたのだが…。
『メローネ…。』
「ああ、どうした?」
『……会いたい。』
「ッ…?!」
『ご、ごめ……違うの、違わないけど、違うくて!ああ…!』
「you。」
『は……はぃ…。』
「10分、待ってて。」
『え、あの、メローネ?!』
彼女が彼の名前を呼んだ時にはもう既に電話は切れており、ツーツーという終話音が耳に届くだけで…。
youはうっかり自分の気持ちを吐露してしまったことを後悔するのだった…。
それから本当に10分経つか経たないかという時間で、外からバイクのエンジン音が聞こえた後、
アパートのエントランスを開いてほしいとインターホンが鳴るので、
エントランスと、その後すぐにドアのカギを開けば、先程出張から一緒にナポリに帰って来た恋人と数時間ぶりにまた再会することとなった。
自分も寝る準備はしておりパジャマ姿だが、メローネも同じように先程別れた時の服装ではなく
簡単に脱ぎ着できるようなシャツとパンツという状態だったため、
今から寝るところだったのを押して此処へ来てくれたのだと察せられた。
「メ……メローネ……あの……っ?!」
一番は勿論、まさか本当に会いにくると思っていなかったという驚きと、
こうして実際バイクを走らせて会いに来てくれたとなると、自分の我儘の所為でメローネに足労を掛けてしまったことが申し訳ないという気持ちで混沌となり、わたわたと困惑するyou。
メローネはそんな彼女を見て、何も言わずに腕を引き、正面からその身体を抱きしめた。
「あ、メローネ…。」
「会いたいなんて…キミに言われて……オレが我慢できるワケないじゃないか……ずっと、傍にいたいんだから。」
「だ、だからって……また会いに来なくても…わざわざ…。」
「会いたかったから来た、ただそれだけだ。youは?」
「え…。」
するりと抱きしめていた身体を離し、少し距離を取って向かい合う。
「オレに会いたかったんじゃあないのか?」
「それは……確かにそう言いました、けど…。」
「うん?そうか……じゃあ、顔も見れたし、帰ろうか。」
「えぇっ、もう?!」
「「もう?」……とは、つまり?」
首を傾げるというより、彼女の意図するものを理解している事を前提に、その顔を覗き込むメローネ。
案の定、彼女は顔を赤く染めながら、彼の服の袖をぎゅっと掴んで言う…。
「うぅ………まだ、帰らないで…くだ、さい…。」
「ベネ。」
「あああ、メローネ、うっかり会いたいなんて言っちゃってごめんなさい……とんだ迷惑掛けちゃって…。」
「まさかだろ。飛び上がるくらい嬉しかった。だからこうして此処に来ちまってる…。」
「わたし、凄く嬉しかったの……フィレンツェの観光を楽しみにしてたって、わたしのことを想ってくれたこと…叶わなかったのは別にメローネの所為じゃないのに、わざわざ思い出して電話をくれて…。」
「ああ。」
「一緒に色んなところに行きたいねって言ってくれたこと、でも一緒ならどこでも幸せなんだって言ってくれたこと……全部が嬉しくて……そしたら、今隣にメローネがいないのが急に寂しくなってしまって……それで…。」
「それで『会いたい』って?」
「う……ごめんなさい…。」
「ディ・モールト……いや、最高に嬉しい、本当だ。オレばかりがキミを好きなんだと思っていたから……あ、これ気持ちが「重い」って意味でな。だから、そうじゃあなくて……ちゃんと、youも結構オレに依存してくれてるのかって分かって……割と本気で嬉しくてさ……ニヤけちまうオレがいる。」
「お、重い……依存……ごめんなさい。」
「あっ、あー!いいんだ、寧ろもっと!オレに!身も心も預けて抜け出せないくらいハマってくれて構わない!」
「我儘も程々にしておきます。」
「つれないな…。」
「コホン!と、とりあえず中にどうぞ……今、何か飲み物でも出すね…。」
「プレーゴ、でも気にしないでくれ、本当に会いに来ただけなんだ。」
とは言いつつも、流石にすぐに帰るという選択肢にはならないため、メローネはyouの家に上がり、
いつものように見知った部屋のソファに腰掛けて…と思いきや。
「you、もう荷解きや明日の準備は終わったのか?パジャマを着てるから風呂は入ったみたいだな、歯磨きは?」
「え?え?お風呂は入ったし、歯磨きもしたよ……荷解きはさっき終わって、洗濯物も干した……明日の準備はまぁ、ぼちぼち…。」
「ベネ!ほとんど終わっているな、優秀優秀!」
「???」
「じゃあ、もう寝るだけということか。」
「え、うん……そうだね?」
「じゃあ、うん、もうベッドに入らなければな。」
「え??」
youの背に手を添え、リビングのソファを素通りして、
メローネはまるで自分の家のようにナチュラルにyouのベッドルームへと入っていく。
「あの、あの……メ、メローネ??」
「うん?」
「えと…折角来てくれたし……カッフェでも…淹れようか?」
「寝る前のカフェイン摂取はあまり良くないぞ、you。」
「や、そうなんだけど、そうじゃなくて!」
「ああっ!大丈夫だ!しないよ、セックスなんて!明日は出張開けの仕事だし!ただ一緒に添い寝するだけで。」
「な……なぜ。」
「ん?シたいのか?」
「しませんよ!?」
「そうか……youがその気ならオレも全く吝かじゃあなかったんだが…。」
「~~!!」
「オレのこと、追い出すか?」
「もうっ!」
「おっ!(怒ってるyou、見れた!)」
youは、ふく…と頬をリスのように膨らませてメローネをジト目で睨むも、
当のメローネ本人は電話越しで体験したいと妄想していた彼女からの叱咤を受けて大変嬉しそうにしているワケで…。
これは全く堪えてないなと分かれば、真剣に怒るのも馬鹿馬鹿しくなる…。
結局、そんなに怒り散らかす程でもない…どころか、
事実、ここまで自分の為に足労を掛けてくれたメローネを追い出そうなどとは微塵も思っていないため、
youは、小さくハァ…と観念したような溜息を吐いて、少し困ったような笑みを、メローネに向けた…。
「添い寝……してくれるの……?」
「シていい?」
「……本当はそのために来てくれたんでしょ…。」
「さぁ……どうかな…。」
ベッドのすぐ側で問答を終わらせて、youの腰を引き寄せるメローネ。
ぴたりと身体が密着すると、youも彼の細い腰に両腕を回して抱き着いた。
「Te lo lascio immaginare.(ご想像にお任せするよ)」
そう不適に口角を上げると同時に、メローネはyouの顎に指を添えて上を向かせると、
ゆっくり瞼を閉じた彼女の唇に、それは嬉しそうな顔でキスを落とすのだった。
Mi manchi.
(会いたい)
words from:yu-a
※「lascio」は「a」の下に「_」が正しい表記となります。
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