Lei e un fiore. (番外編 / メローネ)
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「Stronzo(バカ野郎ッツ)!!」
もしかしたら
はじめて暴言を吐かれたかもしれない
Lei e un fiore.
la bevanda energetica(栄養剤)
「夕飯も会場で食べちゃいましたし、日も暮れてますから…今から外を散策するのは危ないですよね…今日はもう大人しくホテルで休むしかないか…。」
「そうだな、どうせ明日は帰りの列車の時間までフリーだから、観光や散策は明日にしよう。」
出張の目的であったパーティへの参加を終え、ホテルへ戻ってきたメローネとyou。
ここが安全な日本であれば遅くまで開いている店はそこらじゅうにあるため、二次会や三次会、カラオケやボーリング、ダーツバーなどに赴くのかもしれないが、
イタリアの中で比較的治安の良いフィレンツェであっても夜は危険だろうと、自重を選択するyou。
メローネも同意し、自分たちの宿泊する階でホテルのエレベーターから降りた。
隣同士で部屋を1つずつ確保してもらっているので、youは自分の部屋のカードキーで部屋の鍵を開けたのだが…。
「それにしてもやっぱりパーティ用のスーツってのは堅っ苦しくて長時間は着たくないモンだな。脱ご脱ご。」
などと言いながら、部屋の鍵を開けたyouより先に部屋に入室を果たし、
同時に着用してたスーツの上着を脱いで窓際のソファにバサリと放り投げると、ベッドの上にバフっと腰掛けるメローネ。
「もう、メローネ……スーツが皺になっちゃう…。」
「スクーザ!後で片付けるよ。」
「とりあえずハンガーに掛けておくから、後で仕舞ってね。」
「うん……やっぱり違うな……。」
「?なにが??」
「いや……前にプロシュートと出張行った時も同じようにパーティに参加する事があって、同じようにスーツ放り投げたらブチ怒られたの思い出して…。」
「そ、そう……そこまで怒りはしないけど…。」
「しかも優しく諭してハンガーに掛けてくれるなんて、ディ・モールト!最高に親切だ!」
「褒めてもらえて嬉しいけど、できればプロシュートの言うように放り投げないでほしいかな。」
「そうだな、以後気を付けよう!」
「・・・。」
「あ、これ一生気を付けないやつだ」と、生暖かい目でメローネを見つつ、
youは彼のスーツをハンガーに掛けて部屋に備え付けのクローゼットに収めた。
メローネがベッドの上でゴロゴロし始めたので、youは翌日の服や帰宅のための準備をしようと思ったのだが、
パーティドレスのままで準備するのも長いスカートが邪魔になるし、
そもそもこのドレス自体を旅行用カートに仕舞う必要があるため、矢張り脱がなければ片付けができないという結論に至る…。
そこで問題になってくるのがこのベッドの上でゴロゴロし始めた男…基、メローネの存在であった。
「(お風呂に入って明日の準備する流れが好ましいんだけどな…。)」
かと言って「お風呂に入って明日の準備して寝るので自分の部屋に戻ってください」と言うのも、
折角2人でゆっくり過ごせる時間がもてたのに、何だか違う気がする…と、youは悩む…。
そうやって「今からどうすべきか」と自問自答し、クローゼットの前で押し黙ったままで立ち尽くしていると、
当然ながら、メローネに「どうした?」と声を掛けられた。
「そんなところで立ち尽くして、どうした?」
「えっ、ううん、何でもない…デス。」
「とりあえずこっちへ来て座ったらどうだ?」
「うん、そうだね。」
メローネに言われた通り、ベッドの傍に寄り、彼の隣に腰を下ろしたyou。
「そういえばメローネ、今日もこっちの部屋で寝るの?」
「E' logico!(当然じゃあないか!)、こっちの部屋っていうか、寧ろ同じベッドで寝るつもりでいるんだが。」
「そういえば、昨日……寝る時同じベッドじゃなかった気がするんですけど…起きたら同じベッドにいたのは…あれは…。」
「・・・寒くなったから…。」
「絶対嘘ですよね。」
パッショーネの本部が2室で取ってくれたこのホテルの部屋は、駅近くの観光客が泊まる規模のもので、
部屋も簡素なシングルタイプというわけでなく、ちゃんとベッドが1室2つ設置してあるなかなかの広さのもの。
2泊する中で、昨日もメローネはyouの部屋に押しかけて彼女を困惑させたのだが、そのままゴリ押しで居座った。
しかも、各々違うベッドで就寝したはずだったが朝起きたら勝手に自分のベッドに潜り込んでいましたよね?と指摘するyou。
ジト目で睨まれるも、一向に堪えていないメローネは、彼女の視線が自分に注がれていること自体が嬉しいようで、
締まりのない笑みで「えぇ~だって…」と言いながら彼女の身体をぎゅう…と抱きしめた。
「嘘、うそ。だってさ、寂しくなったんだよ……youがすぐ隣のベッドで寝てるのに、触れられないなんてもどかしすぎてさ。」
「うぅ……寂しいとか言われると……怒れなくなる…。」
「(知ってる。)」
だからその単語を使ったんだよね…と、youに見えないように、してやったりの顔をしてほくそ笑むメローネ…。
次いで、叱られそうな雰囲気を打破&回避すべく、少し身体を離して顔を合わせると、
いつものように話題を別のものに挿げ替える…。
「にしても…やっぱりそのドレスにして正解だったな……凄く…ベリッシモ……それにディ・モールトキミに似合ってる。」
「グラッツェ、メローネ……もう上着脱いじゃってるけど、メローネのスーツ姿もとっても素敵だった。」
「惚れ直した?」
「そうだね、どんな格好でも素敵だと思うけど……普段と違う格好をしてると、確かに一層カッコ良く見えたかも…。」
「ふーん………それは……ブチャラティよりかい?」
「うん?ブチャラティもカッコ良かったね。でもわたしにはメローネが好きだから、見てドキドキするのはメローネだけかな…。」
「・・・。」
「メローネ…?」
ちょっと意地悪な質問でブチャラティと自分をどう比較するかなどと、軽く興味本位で尋ねただけだったのに、
彼女の言葉のチョイスを完全に舐め切っていたメローネはとんでもない返り討ちに遭い、両手でワッと顔を覆う事となった。
「・・・あーーーー…………あー……もう無理だ……本当に、マジで、ヤバ過ぎるんだが……どうしたらいいんだ…。」
「あの…。」
「去勢……するしか…。」
「め、メローネ?!メローネ、何か怖い単語聞こえたけど?!」
自分がそうであるように、彼女もまた他の男と恋人である相手ではときめく度合いが全く違うのだとハッキリ伝えてもらったこの瞬間…。
メローネは、すぐ隣でオロオロする彼女を押し倒して深い深いキスで蕩かして、服など引ん剥いて、
心の儘に掻き抱いてしまいたい衝動に駆られた。
何とか理性と葛藤する中で様々な対処法が思い浮かんでは消えていき、その中の一つとして浮かんできた、
強制的に性欲を(物理的な意味で)カットするための方法を呟いたので、youがギョッとしてメローネの名を何度も呼んで身体を揺さぶる…。
「なぁ、you……悪いんだが…。」
「う、うん?」
「オレがキミのこと襲いそうになったら部屋に備え付けのアイスピックか何かでオレのこと刺してもらっていいか?」
「よくないよ?!!」
全力で自己防衛をお願いしますと白い目で言い放ったメローネに、youは即座にツッコミを入れた。
「それなら別のベッドどころか、別の部屋で寝たらいいじゃないかって言いたいんだろ、ああ、そうだよ、そんなの分かってるさ…だがな!!!」
「?!!」
「残念ながら!それは!いやだ!」
「い、いやなんだ…。」
先程の白目から自我が戻って覚醒したように、
くわっと目を見開いて拒否の自己主張(というより最早ただの我儘)を言ってのけたメローネ。
どうせ後にはいつもの如くの下半身事情が続くのだろうな…などと予想していたyouだったのだが…。
彼は小さくハァ…と息を吐くと、少し困ったように眉を寄せて、
たった今しがたの興奮状態が嘘のように、静かに、優しくyouの身体を抱き寄せた…。
「……youの傍にいたい。」
「メローネ…。」
「ただ、それだけなんだ…。」
「・・・。」
ぎゅうっと、しがみ付くように抱きしめられ、その言葉が真実なのだということを察するyou…。
彼女はメローネをそっと抱き返し、目を閉じてその背中を優しく撫でるように摩る…。
「ありがとう、メローネ……。」
「礼なんて言っちゃあ駄目だ……結局その心と裏腹に性欲って本能が否が応でも付いてきちまうんだから…。」
はぁ…と、自分を情けないと言わんばかりに盛大な溜息を零すメローネ。
「だけど、オレはyouをもう二度と傷付けないように守るって覚悟してるからな。」
「それは、心の話だよね?」
「なワケあるか。心も身体もに決まってる。相手は第三者だけでなく、オレ自身もその対象にしてんだから。」
だからこそ、先程のアイスピックで刺すことも本気の本気、と言ってのけるメローネ…。
そうなると、先程ぼそりと呟いた去勢云々も強(あなが)ち冗談ではないのかもしれない、と。
youは若干口元をヒク付かせる。
「だからさ、you……今日は、同じベッドで……オレと一緒に……健全に、寝てくれるか?」
「メローネ…。」
「あっ、あー…!だがな、アレだ……こう、硬いナニカが当たっててもスルーだ、気にしないでくれ。大事なのはキミがオレの傍で安眠してくれる事なのだから、絶対にスルーしてくれ。」
「メローネ、あの…。」
「頼む、you……ずっと傍にいたいんだ。」
「うん………分かった。」
「you…!」
彼女からの許容の言葉に、ぱぁっと明るい表情を浮かべ、ゆるりと身体を離したメローネ。
そこで顔を見合わせた瞬間、メローネの表情が一瞬で凍り付いた…。
というのも、対峙した際の彼女は、眉根を寄せて瞳を閏わせ、今にも泣いてしまいそうな顔をしていたから。
自分のどの発言が彼女を傷付けて泣かせたのかと、サーっと顔面を蒼くさせながら思い返してみるも、
何が彼女の琴線に触れたのかが分からない…。
たった今、身も心も守ると口に出したにも関わらずだ…。
「え、わっ、わわ、悪い!すまない、you!?嫌だったのか、そんなに……オレと一緒のベッドで寝るの…!」
「や、ちが……!」
「お、思えばかなり一方的だったか…悪かった、謝るよ……浮かれてただけで、実際はオレのただの我儘だよな…。」
「違うの、メローネ……逆なの…。」
「ふ、へ。」
「メローネが大事にすることを覚悟してるなら、わたしも……覚悟しなきゃって…思えたの。」
「you…?」
「大事にしてくれるメローネに見合うような女性にならなきゃ駄目だね……大事にされる覚悟、しなきゃ駄目だねって。」
「それは……まぁ、そうなんだが……別にそこは無条件で…。」
「メローネ…。」
「うん?」
「これから、わたしがすること……許してね。」
「いや、何をだ……勿論、アンタがすることは大概何でも許すつもりではいるが…。」
「ありがとう。」
会話の最後にそう言うと、youはメローネに軽いハグをしてベッドサイドから立ち上がる…。
そしてそのままクローゼットの方へと向かう。
そこで何かをしているようだったが、よく分からず、メローネが首を傾げていると、
何らかの作業が終わったであろうyouがその場でメローネの名を呼んだ…。
「メローネ。」
「you…?」
「できれば救急車は……呼ばれたくないかな。」
「は?何で救急……しゃ……ッツ!?!おい、何してる?!それは何のつもりだ?!」
「メローネ……わたしの事………心も身体も……守ってね。」
「Stronzo(バカ野郎ッツ)!!」
もしかしたら
はじめて暴言を吐かれたかもしれない…、などと考えながら、
youは、舌に伝わる苦くて甘い、咳止めのシロップのような液体をゴクリと一気に飲み干した。
駆け寄ってきたメローネにバシッと瓶を叩き落されたものの、時すでに遅し…。
先程のパーティでパッショーネが交渉を持ち掛けた企業、
その重役であるミレーユに渡された催淫剤であろう試供品…。
フロア全体に敷かれたカーペットのお陰で割れることはなかったが、
空の瓶はそのままワンバウンドしてカツン!と小気味良い音を立てて壁に当たり、床に転がった…。
「何てことを!すぐに吐き出すんだ!!」
「!!」
まるで致死量の毒でも飲んだかのような反応で声を荒げ、
メローネはyouの口をこじ開けて、その長い指をツッコんで、強制的に吐かせようとする…。
youは、その行為に驚いたのと、それでは自分の覚悟が水泡と帰すと察し、
全力でメローネを突き飛ばして距離を取った。
「やめてメローネ!」
「you!!」
「いい子だから」と、また一歩近付いてきたところで、
youは何かを思い出したように踵を返し、玄関方面へと走り出した。
この状況で外へは出られないだろうし、一体彼女は何処へ行くのかと戸惑ったメローネ…。
そしてすぐに彼女の向かう場所を察して追いかけたのだが、一瞬の戸惑いの時間はあまりに大きく…。
youがバスルームに駆け込み、ガチャリと鍵を掛けた音でいよいよ取り返しのつかない状況になったことを理解するに至った…。
「おい!開けろ!you、開けるんだ!」
『鍵壊しちゃ駄目だからね、メローネ!』
「だったら今すぐ鍵を開けるんだ!さもないと…!」
『ここはわたしの名前で予約された部屋!!力づくで鍵なんか壊すトラブルが起こったら、後々ブチャラティやリゾット……ひいてはボスに突き詰められて、大変なことになるのはメローネの方だよ?』
「Cazzo(クソッタレ)!!」
最後にバスルームのドアをバァン!と叩いて、メローネはその場にずるずると力なくしゃがみ込む…。
「何で……どうしてだ……どうしてこうなるんだ…。」
『・・・。』
「こんなことなら、一緒に寝たいなんて我儘言わなければ良かった。」
『メローネ、あのね……それは……。』
「………悪い、少し隣の部屋で頭冷やしてくる……。」
そう言うと、メローネは壁に手を付いて立ち上がり、よろよろと力なく歩き出す…。
バスルームに籠城しているのだ、どうせ彼女も今から風呂に入るだろうと考え、
自分も文字通り冷水でも浴びて頭を冷やして、改めて彼女と問答しようと決めた。
ただ、その時に彼女の状態がどうなっているのか、問答自体が叶うかはそれ次第ではある…。
自分が判断した効能が間違いで、ミレーユが渡したものが本当に滋養強壮剤でありますようにと切に願うばかりだった…。
・
・
・
・
それから、一度メローネは当初自分に宛がわれていた部屋に戻り、
力任せにバスルームのドアを開くと、誰もいないのをいいことに服や下着を乱雑に脱いで放り投げ、
浴槽上のシャワーで冷たい水を頭から浴び始めた。
「Dannazione(何でだよ畜生)!」
「…Fa un freddo boia…(寒すぎんだろ…)。」
「Lo so, e' colpa mia…(分かってる、オレの所為だ…)。」
敢えて温水を出さないようにしているのは自分であるのに、
誰に対してか分からないような文句が次々と口を突いて出てくる…。
いつもと同じように、自分なりの我儘をほんのちょっと押し通したかっただけなのに、
それが彼女をそこまで追い詰めるとは思っていなかったことは確かで…。
もっとちゃんと彼女が自分の傍にいることに関して、
どこまでを自然に受け入れられるのかを確認して、少しずつ距離を縮めていけばよかったと…。
今更後悔しても、どうにもならないと分かっているが、そんな考えばかりが脳内を逡巡する…。
結局頭の中はごちゃごちゃと散らかったまま、冷静になったというよりは、
どうしようもないという諦めのような感覚で気落ちしただけの状態で…。
ただ自分の体温だけを下げただけで、バスタイムを終わらせることとなったメローネ…。
いつもなら、きちんとドライヤーで髪を乾かすところだが、
そんな時間があるならば、もっと思い悩むことに時間を費やしたい…だが、何を思い悩めばいいかすら分からない…。
「っ~~~!!!」
声にならない声を吐き出しながら、ホテルのタオルで髪を乱暴にガシガシと拭いて、
自分で放り投げた下着とズボンを履き直す…。
バスルームを出て部屋のメインフロアに出た後、スーツ用のカッターシャツに袖を通した後に、
ホテルに備え付けの時計に目を遣ると思った以上に時間が経過しており、
自分が風呂場でなかなかに長く悩み続けていたらしいと気付く。
そこでハッと当初の悩みの根源である彼女の存在を思い出すメローネ。
時間の経過で言うと、かれこれこちらの部屋に来て2、30分程経っているため、
もし、彼女が飲み干してしまった試供品とやらが滋養強壮剤ではなく、催淫剤の場合、その効能が顕現してくる頃ではないかと…。
対面することが恐ろしく思えるが、かと言って放置して良い問題でもない…。
更に言うなら、副作用や拒否反応などで本当に救急車を呼ばなければならないという可能性もあるため、
メローネは盛大な溜息を吐いて、彼女の部屋のカードキーを手に取り、隣の部屋へと向かった…。
オートロックのドアをカードキーで開き、ゆっくりとyouの部屋のドアを開くメローネ…。
「…you……ッ…?!!」
ドアを開いた瞬間、彼の目に飛び込んできたのは、床に倒れ伏している恋人の姿。
まさか本当に救急車を呼ぶ案件に発展しているのではと、メローネは彼女の名を叫んですぐ傍に駆け寄った。
「you!!しっかりしろ!」
「ぅ……。」
呼び掛ければ小さく呻く声が聞こえたため、心臓は動いているのだと僅かだけ安堵する…。
抱き起して意識を確認しようと、メローネがyouの身体に触れた瞬間。
「あぁっ!っ……んぐ…!!」
「you…?!」
「はぁ、は…っ、あ……っめ…めろ、ね………っ、ごめ…!」
「なん…ッ?!」
抱き起して意識や状態を確認すれば、彼女はまるで発熱しているかのように上気した顔で、
困ったように苦しそうな表情でポロポロと涙を零しながらメローネにたどたどしくこうなった経緯を話し出した…。
「さっきまで…大丈夫だった、の……今、すごく……っ、苦し……て…お水………飲もうと…。」
「苦しいのか?!ッツ、救急車を…!」
「まっ!ちが、くて……!」
「違わないだろ!嫌な予感はしていた!!試供品で内容量が少ないとはいえ、ヨーロッパ圏の人種向けのものだ、アジア人には効果が強すぎるんじゃあないかって!!」
「っ…そ、か……たし、かに…。」
「そういうの……飲みなれたヤツならまだしも……アンタ、絶対一度もそんなモン飲んだこと無いだろ…!」
「は……ひ…。」
「とりあえずはベッドまで運ぶ。その後で救急車を呼ぶから…!」
「あっ!?ん……ぅっ…!」
身体を抱き上げると、その揺れた衝撃でyouの口から堪えられず甘い声が吐き出される…。
普段のメローネならば、茶化したり自分の本能に素直な言葉でもって彼女を困惑させるのだろうが、
今の彼にはそれを右から左へと聞き流せる程には彼女の命の方が最優先らしい…。
すぐにベッドに向かい、そっとyouの身体を下ろすと、
部屋に備え付けのミニバーからペットボトルの水を引っ掴んで彼女に手渡した。
「はぁ……は……あ、りが…と……メロー、ネ…。」
「プレーゴ、いいから一気に飲み干しちまいな…少しでも胃の中で薄められれば……ああ、ええと…救急車を呼ぶから、ここの住所を確認しないと…いや、フロントに頼んで呼んでもらえばいいか……フロントの番号、フロントの番号…。」
「ッツ…!!」
再びベッドを離れ、部屋の電話機の元へ向かおうとするメローネだったが、
それは彼のカッターシャツの背中をぎゅうっと恋人に握られたことにより、阻止されてしまった…。
バフ、と彼女を寝かせたベッドに着席することになってしまったため、
そのままそっと後ろを振り向けば、相変わらずの表情で自分を見上げてくるyouの姿…。
「you…?」
名前を呼べば、彼女は泣きながら首をブンブンと横に振る…。
「いらな…い、です、から……っ!」
「要らないって…。」
「っきゅ……救急車……は、要らない、です!」
「何言ってるんだ……こんなに苦しがってるってのに!」
「くるし、のは………はぁ…んっ……息できない、とか、痛い、じゃな…から…!」
「けど…!!」
「メローネ、が……!」
「あ…?」
身体を思うように動かすことも厳しいのか、まるで酔いが回ったような大きな動きで、ズン…と、メローネの背中に倒れ込んだyou…。
おいおい、大丈夫か…と、彼女の方へと身体を向けてその身体を抱きとめると、
youは熱を帯びた瞳で泣きながらメローネの頬に手を伸ばした…。
「っ……メローネが、ほしい、の…。」
「!!!」
一難も去らないうちにまた一難……。
確かに、彼女の命に別条が無いのであればそれが何よりではあるのだが、
こちらもまた自分にとって避けたかった最悪の状況の1つでもある…。
「だ……駄目だ……それは駄目だ。ダメなんだよ、you…。」
「っ……だめじゃないの……メローネ……ねぇ…。」
「やめろ…頼むから……。」
「いま……ね、わたし……色んな意味で、すごく苦しい…の…。」
「you…。」
「わ……っ、わたし、…は、メローネに助けてほしい、メローネに抱いて欲しい…。」
「・・・。」
「わたし……メローネとしか……したくない…。」
「ッ……!!」
背中に手を回されて抱き留められたまま、youは物凄い感情を吐露し始める…。
普段の凡そ性欲とは縁遠い控えめな彼女からは考えられない発言の数々に、
一体何が起こっているのかまるで理解が追い付かないと、メローネは目をぐるぐるとさせて困惑し続けるが…。
「や…っ、だが、やはりダメだ、オレはこんな状態のアンタは抱けない…辛いだろうが…。」
「メローネ……わたしね……気付いて、分かっちゃったの……。」
「?」
「こうでもしないと、ダメだって分かっちゃった。」
「!!」
「だから……わたし、覚悟して飲んだの……。」
「you…どうして……!」
お互いに想いを伝えるきっかけでもあったかもしれないが、
酷い目に遭った時の事を思い出すと、どうしても恐怖だったり、躊躇だったり、防衛本能が先に立って、
いつまでも貴方に近付けない、と……彼女は言う。
「だけど……こんな形で…。」
「いいの……だって、今だけじゃ…ない、メローネがわたしのこと……抱きたいって思ってくれるように、わたしも……メローネに抱きしめられたい……って思うから…。」
「you…。」
「怖いままで……いたくない、辛いままで、いたくない…。」
「何だよ……それ……そんなの……全部、最初から……オレの所為なのに…。」
「ちがうよ。ね………わたし、メローネに救ってほしいの……。」
上気した表情と大きな呼吸を何度か繰り返して、youは自らメローネに触れるだけのキスをする。
「っ……!?」
「だって……わたしのこと、メローネにしか……助けられないでしょ?」
「……そうかもしれない、な……。」
「きっとわたし……これが、そういう薬だって、分かった時から……っ…。」
「もういい……分かった、you…。」
「メローネ…。」
やっとキミの、この馬鹿な行為の理由が全部理解できた…と、メローネは眉をハの字にして、泣きそうに笑う…。
「…嫌がっても止めてやれないと思うが………本当にそれでもいいのか?」
彼女の「うん」という小さな肯定の言葉に、いつもと同じように「ベネ」と返して、
メローネは一度コツン…とyouと額でキスをした後、その続きとばかりに次は唇に口付けるのだった。
→ 「本当にそれでもいい、の。」
la bevanda energetica
栄養剤
words from:yu-a
※「Lo so, e' colpa mia」は「e」の上に「`」が正しい表記となります。
*。゜.*。゜.*。゜.*